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インタビュー

【RIZIN】新王者・井上直樹「ベルトはRIZINでトップの証明にはなるけど、まだまだ」×スーチョル「『命懸けで戦う』と言っていたけれども、実際には“助かりたい”という気持ちがロープ外に」

2024/09/30 18:09
 2024年9月29日(日)『RIZIN.48』(さいたまスーパーアリーナ)が行われた。  第10試合のセミファイナルでは「RIZINバンタム級(61.0kg)王座決定戦」として、井上直樹(Kill Cliff FC)とキム・スーチョル(ROAD GYM WONJU MMA)が対戦。  試合は、前に出るスーチョルに、井上は巧みなステップとサークリングで、下がりながらも左ジャブ、左フックで迎撃。スーチョルが前に出てきたところに、井上が左フックを当てて、最後はワンツーの右でダウンを奪い、ラッシュ。連打を避けようとしたスーチョルの身体がロープ間に出て、レフェリーが試合をストップした。  1R 3分55秒、井上直樹がTKO勝ち。RIZINバンタム級のベルトを巻いた。  試合後、井上は大晦日参戦を希望。会見では「今日勝った元谷友貴選手と再戦するのもいいと思いますし、他にも強い選手たくさんいると思うので“ここからスタート」と防衛戦を語った。  また、初めて日本人相手に黒星を喫したスーチョルは「インファイトで臨もうとすると、井上選手はジャブでワンツーを打ってきて距離を開けることが巧みだった。自分の攻撃パターンをよく読んでいる気がしました」と敗因を語った。 井上「元谷選手と再戦するのもいいし、ほかにも強い選手はいる」 ──見事なKO勝利で新王者となりました。率直な感想をお聞かせください。 「嬉しいです。いつもの試合より嬉しいな、っていう気持ちはあります」 ──いつも通りの声のトーンですが気持ちはいつもより嬉しいのですね。 「そうですね(笑)。リング内でもコーチの方々がすごく喜んでくれたので、そういうのも含めて、“チャンピオンになったんだな”という嬉しい気持ちがそこでもこみ上げてきて、ちょっと落ち着いた感じです、今は」 ──スーチョル選手の対戦前のイメージと違った部分など、感じたことがあったら教えてください。 「そのままのイメージで、うまくハマったなという感じでした」 ──決まり手となったアゴへのパンチは作戦どおりでしたか? 「そうですね」 ──その辺の具体的なプランや作戦を少し教えていただけますか。 「まあ、(前に出て)来るだろうなというものが分かっていたので、全部アゴに合わせる練習をずっとしてきました。水垣(偉弥)さんを使って、水垣さんが頑張ってくれました(笑)。仮想スーチョルでアゴが壊れそうなくらいちょっとやっちゃいました」 ──水垣さんはご健在ですよね 「生きてます(笑)」 ──水垣さんが「仮想スーチョル」とのことで、前に出てきて一撃もあって、スーチョル役にピッタリだと思いました。ご本人としても、トレーニングしてそう感じましたか? 「水垣さんは……体力は全然ないんで、まあ軽いマスにはなるんですけど、それでも結構ガツガツ来てくれて。本当に、一番多分、頑張ってくれたんじゃないかというふうに思います、ありがとうございます」 ──日本人選手にとって難攻不落のスーチョル選手に、ジャブを当てることは今までもできていたとしても下がってくれませんでした。よりジャブを効果的に、効き目のある形で打とうと心がけていたということですか? 「ジャブは目のあたりを狙っていて。それで、顔のなかで打ち分ける練習もしていて。だから別に顎を上げさせるわけではなかったんですけど、しっかりジャブを打って(相手の)目が見えなくなってきたところでしっかりフックを狙って、みたいなイメージでしたね」 ──相手にジャブを額で受けさせないように、目を? 「そうですね(額あたり囲って)この辺が固そうだったので、テンプルとかは狙わず、目と鼻を狙ってて、来たところでフックを顎に合わせる、みたいな」 ──アゴを撃ち抜く練習をしてきたということでしたが、グラウンドになる展開は考えてなかったですか? 「グラウンドも全然考えていて、判定まで行くつもりで試合は組み立ててきていますし、そのなかでうまくハマったものがあったから、それで決まったって感じですかね」 ──1Rで試合が終わることはそこまで想定していなかったですか? 「試合のなかで、そうなったという感じでした。そう決めたというか、決まり手があったからそういうふうになったという感じでした」 ──最後に畳み掛けてサイドバックになったときにチョークなりの寝技を考えずに、パウンドで仕留めようと? 「チョークを狙おうと思ったのですけどしっかりディフェンスしていたので、まだ生きていると思い、パウンドに切り替えました」 ──練習仲間の高木凌選手の試合はどのように見ていましたか? 「ちょっと見てないんですよね、バンデージ巻いていて。あとで見返したいと思います」 ──ベルトを巻いた感触はいかがですか? 「感触……、感触? まあ、重いなっていうんですかね(笑)。重みがあるなって感じです」 ──イメージ通りですか? イメージとはちょっと違いますか? 「(ベルトを見やり)……いやあ、何とも。これを持ったからといって、RIZINでトップの選手っていう証明にはなると思いますけど、まだまだ強い選手がたくさんいると思うので。本当にここからだなっていう、ここからまたレベルアップしていかないといけないと思います」 ──レベルアップした先にどんなチャンピオン像を思い描いていますか? 「しっかり防衛して海外の選手ともたくさんやっていければいいかなと思います」 ──王者になってRIZINの顔と言えます。フェザー級王者の鈴木千裕選手は王者になって、イベントなど話す場が多くなりました。井上選手にそう言う機会が増える心構えは? 「それは、RIZIN側が(トークが苦手なことを)一番よく分かっていると思うので(笑)。まあ、分かってると思います」 ──トークも磨いていく? 「まあ、ちょっとそうですね。ネタがあれば。頑張ります」 ──RIZINバンタム級のベルトは一度も防衛されたことがないのをご存知ですか? 「あ、そうなんですか(笑)」 ──返上や剥奪が続いています。井上選手が防衛すると、初防衛になります。 「防衛するつもりでリング立ってたんで、マイクもその通りだと思うので、しっかりそのつもりでいます」 ──さて、これでバンタム級新王者となりました。リング上で大晦日の話も出ましたが、今後の目標・展望をお話いただけますか。 「チャンピオンになって、ちょっと目が腫れているくらいなので全然試合もできると思いますし、大晦日っていう舞台で、去年は大晦日に出られなかったので今年は出られたらいいなと思います。もし相手がいれば、ですけど」 ──具体的な名前は出さない? 特に決まっていないということですか。 「誰がいるか分からないんで(笑)。誰ができるか。今日勝った元谷(友貴)選手と再戦するのもいいと思いますし、他にも強い選手たくさんいると思うので。まあ、“ここからスタートだな”っていう感じですね」 ──ところで、困ったときに水垣さんの名前をいつも出すのはちょっとズルイと思うのですが(笑)。 「いえ、ハハハ(笑)。本当に今回は水垣さんのおかげなので」 [nextpage] スーチョル「家では100パーセント、泣くと思います」 ──井上直樹選手との試合を終えた、率直な感想をお聞かせください。 「感想としては“井上選手は強かったな”というのが率直な想いです。家族に申し訳ないというのと、チームのメンバーに申し訳ない、そういう気持ちでいっぱいです。ただ、人生というのは、先がどうなるか分からないものだと思っています。こういう辛い日もあればそうではない日も、いろいろな日があるのではないかと思っています」 ──辛い状況を乗り越えてきた話も伺いましたが、敗戦のこの場でにこやかでいるのはどのような気持ちから出ているのでしょうか。 「皆さんの前ではこのように笑顔でいますけれども、家では100パーセント、泣くと思います。自分のことは自分が一番よく分かっています。そのかわり辛いことは一人で必ず乗り越えて打ち勝つ、というのが自分だと思っています」 ──実際に対戦してみて、井上選手の印象を教えてください。 「とてもスピードのある、速い選手だと思いました。ジャブをチェックしようと思ったけれど、なかなかそれができませんでした。井上選手のスピードを潰して戦おうと思っていたのですが、自分が思うような試合運びになりませんでした」 ──試合を終えたばかりですが、今後の目標や、どうしていきたいというものがあったら教えてください。 「常に抱いている夢と言いますか、目標がありまして。それは第一に、家族を守ること。第二に健康を守ること、そして第三にお金をたくさん稼ぐことです。だからこれからの展望や目標というのも、同じように家族を守り、健康でいて、お金を稼ぎたいと思います」 ──このあと、10月27日に『ROAD FC 70』で63kgトーナメント準決勝(vs.キム・ヒョンウ)がありますが、そのあとにまたRIZINに戻ってきてチャレンジを続けるでしょうか。 「『はい』とお答えしたいと思います。まだまだ、諦めたり、もう投げ出したりするという時期ではないと思っていますので、ここから気合いを入れなおして頑張りたいと思います。自分のことを想ってくださる方、応援してくださる方がたくさんいらっしゃるので、その人たちのためにも、踏ん張りたいと思います」 ──ご自身が日本で、人間味もそうですが、Nintendo Switchの話題でも人気が出るようなことは想像していたことでしょうか。そのSwitchのストーリーがまだ続いてしまうかもしれないなかで、後継機のSwitch2が出てしまうようですが……。 「もちろんこのような状況になることは全く予想もしていませんでした。本当にこれほど関心を持っていただけるということは予想もしていなかったので、とてもみなさんに感謝をしています。『Switch2』、後続機が出ることは、ゲームを愛するものとしてもちろん知っていました。ただし、それが手に入るかどうかは妻次第ということになります」 ──井上選手のスピードを潰して戦うということでしたが、具体的にはどういうことによって、それをしようとしていたのかを教えてください。 「まず、左右に動くルートを遮断して、井上選手との間隔をせばめて、クリンチ、グラウンドに持ち込んで攻撃を仕掛けるという戦略を立てていたのですけれども、逆に井上選手のほうが、それに対して自分が出るであろうという備えがしっかりできていたと思いましたので、今回は井上選手に学ぶ点が多かったと思っています」 ──その備えができていたと感じたのはどのような点からでしょうか? 「自分がインファイトで臨もうとすると、ジャブでワンツーを打ってきて、また自分との距離を保つことや、距離を開けることが上手くできていて、彼に死角地帯がなかったというのでしょうか。自分の攻撃パターンをとてもよく読んでいる気がしました」 ──フィニッシュの時、体がロープから出てしまってストップがかかりました。あれをどう思いますか? 「我ながら、情けないというか、セコいというか(苦笑)。なんとかして生き延びようと、思わず頭が外に出てしまったのだと思います。試合をやる前のインタビューでは『命懸けで、命を懸けて戦う』と言っていたけれども、実際にはあのシーンでは“助かりたい”という気持ちが、頭が外に出ることに繋がったと思います。そういう点からも今回学ぶべき点が多かったと思います」 ──ということは無意識に出ていたのですか? 「何とか生き延びようと、負けまいとした悪あがきといったものでしょうか。そのせいだと思います」 ──10月のROAD FCが待つなか、負傷の状況はいかがでしょうか、10月に試合に出ても無理がないでしょうか? 「まず結構強烈なパンチを食らったので少しクラクラした状況ですが、特に大きな負傷も無いので問題はないと思います。チームで相談して、自分はすぐできると思っていますが、すこしクラクラしているので、数日間はしっかりと寝て、体を回復させたいと思います」
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