2024年9月14日(日本時間15日朝8時30分~)米国ネバダ州ラスベガスのスフィアにて、『UFC 306: O'Malley vs. Dvalishvili』(U-NEXT配信)が開催される。
『ノーチェ(※スペイン語で『夜』を意味する)UFC』とも呼ばれる同大会のメインイベントは、UFC世界バンタム級タイトルマッチ(5分5R)で、王者ショーン・オマリー(米国)に、同級1位メラブ・ドバリシビリ(ジョージア)が挑戦する。
▼UFC世界バンタム級選手権試合 5分5Rショーン・オマリー(米国)135lbs/61.24kg 18勝1敗(UFC10勝1敗)※UFC3連勝中メラブ・ドバリシビリ(ジョージア)134lbs/60.78kg 17勝4敗(UFC10勝2敗)※UFC10連勝中
オマリーは、MMA18勝1敗1NC。登竜門大会『DWCS』を経てUFCと契約し、プロスペクトとして期待され、KO勝ちの山を築いて、2023年8月の『UFC292』で当時バンタム級王者だったアルジャメイン・スターリング(米国)に挑戦。2Rに右ストレートでダウンを奪い、パウンド連打で王座を獲得した。
2024年3月の『UFC299』での初防衛戦では、同級5位のマルロン・ヴェラ(エクアドル)と3年7カ月ぶりに再戦し、スタンドで攻勢となり判定勝ち。唯一の黒星を喫していた相手にリベンジを果たしている。今回は2度目の防衛戦。
対するドバリシビリは、MMA17勝4敗。強靭なスタミナとノンストップレスリングを武器に、直近でUFCの歴代王者を3連破してタイトル戦を迎える。
2022年8月に元フェザー級王者ジョゼ・アルド(ブラジル)に判定勝ちすると、2023年3月に元バンタム級王者ピョートル・ヤン(ロシア)に判定勝ち。2024年2月には、北京五輪のレスリング・フリースタイル55kg級金メダリストで、フライ&バンタム級の元二階級制覇王者ヘンリー・セフード(米国)にも組みで譲らず判定勝ちを収めている。2018年9月から負けなしの10連勝で満を持してオマリーに挑む。
前日計量はともにパス。打撃のオマリーと組みのドバリシビリ、どちらが己を貫き通せるか──試合前会見で挑戦者ドバリシビリは「オマリーは1発で試合をひっくり返せる。俺は5Rを通して賢く戦う」と語った。
一番大事なのは、自分自身に集中すること。誰か他の人に合わせる必要はない
──ラスベガスのスフィアでタイトルをかけて戦うことについて、どれくらい興奮していますか。
「本当に特別なことだし、すごく興奮してる。スフィアで試合をするって発表があった時から、夢のような気分だった。メキシコ独立記念日に戦うのも夢だったし、きっとUFCのファイター全員がスフィアで戦うことを夢見てると思うが、俺もその一人だったんだ。だからこそ、動画を作ったりしてたんだよ。“ショーン・オマリーと戦いたいし、スフィアで戦いたい”って、2つの目標を同時に追ってた。そして、どっちも実現できて感謝してるよ。2カ月前にベルトをかけてメキシコ独立記念日にスフィアで戦うって聞いた時は、本当に嬉しかった。でも、その翌日からは試合に集中してる。今はただ試合に集中していて、周りのことはどうでもいい。プロフェッショナルとして、やるべき仕事があるんだ」
──ショーン・オマリーと戦いたいと思ったのはいつから?
「彼に注目したのは、コンテンダーシリーズで素晴らしい勝ち方をして、UFCの契約を手に入れた時だった。それ以来、注目していたよ。俺のUFCの最初の2試合は物議を醸す判定負けだった。負けた時は誰かに対戦をアピールしたくないけど、2018年9月にテリオン・ウェアを倒して初白星をあげた時から、オマリーと戦いたいと思うようになった。オマリーもテリオン・ウェアに勝っていて、だからショーン・オマリーと戦いたいと思ったんだ。当時は俺の戦績があまり良くなかったから、オマリーが俺のことを楽な相手とみなすと思ったんだ。でも、彼は一度も返事をしてこなかった。彼の戦い方やKO能力は凄いと思っていたから、当時から挑戦したかった。楽な試合になるとは当時も今も思っていない。彼と戦うのが楽しみだよ」
──グラウンドに持ち込めれば、楽に勝てるという意見もありますが?
「確かにスタイル的に見れば、俺にとっては楽な試合になるかもしれない。俺のスタミナも優位に働くだろう。でも同時に、彼が何をするか分からない。彼は大きな1発を放って、試合の流れを変えることができる。俺が支配する展開が続くかもしれないけど、彼は1発で試合をひっくり返すことも出来る。UFCの試合で簡単な試合はないんだ。常にベストなファイターが勝つとも限らない。俺もUFC2戦目のリッキー・シモンとの試合では支配していたけど、最後の1分でミスをして、逆転負けになってしまった。だから、オマリーとの試合では5ラウンドを通して賢く戦う必要がある」
──ショーン・オマリーのコーチは「ショーンのような戦い方をして、長身でリーチのあるスパークリングパートナーを見つけるのは難しいだろう」と言っていました。特定のスパーリングパートナーは見つけられたでしょうか。
「ショーン・オマリーのようなファイターは他にいないから、彼と同じスタイルの相手を見つける必要はない。髪の毛を彼のように染める必要もない(笑)。でも、何人もの優れたトレーニングパートナーや優れたキックボクサーたちとスパーリングしてきたよ。一番大事なのは、自分自身に集中すること。誰か他の人に合わせる必要はない。いつも通りに自分のやるべきことを続けて、素晴らしいトレーニングキャンプができた。今の俺は体調も良いし、健康で、幸せで、準備万端だし、モチベーションが高くて、ハングリーにもなっている」
──あなたはここラスベガスに住んでいますが、その好影響は?
「ラスベガスで戦うのは確実に負担が減るよ。今は車でどこへでも行けるし、ラスベガスでのトレーニングはすごく楽だ。俺がトレーニングしているシンジケートジムでウォームアップして、午前中に少し動いて、その後家に帰ってランチを食べてから試合に向かう。試合日は、普通の日みたいに感じるだろうね」
──オマリーは「自分はメキシコ人の家族がいるから、俺の方がメキシカンだ」と言っていましたけど、どう思いますか。
「彼にはメキシコ人の家族がいるけど、俺はメキシコを代表してるんだ。俺はメキシコに行ってトレーニングキャンプをして、ティフアナでタコスを食べながらトレーニングしたし、メキシコ人の友達もたくさんいる。俺はメキシコとメキシコ人を愛してるんだ。彼も同じようにやってるなら、それは彼にとっていいことだと思う。どっちのほうがメキシカンかは分からないけど、良い試合をして、メキシコの人々に誇りを感じてもらいたい。そして、ベルトを持ってチャンピオンとしてもう一度メキシコを訪れたいね」
──プロモーションの一環で、オマリーに似た友達がカツラを被って登場する動画を作りましたね。SNSで大反響でしたが、あのアイデアは誰が考えたのですか。
「動画のアイデアは俺だよ。でも、もちろん友達の2人が手伝ってくれて、撮影中に細かい部分を変えたりしてたけど、ほとんどのアイデアは俺が考えた。俺はショーン・オマリーと戦いたくて仕方なかったから、集中してトレーニングしながら、できる限りのことをやりたかった。だから、彼に似た友達を見つけて、みんなを騙して、面白い動画をたくさん作ったんだ」
──UFCから、あなたのSNSの投稿について助言されたことはある?
「いや、UFCが俺に何を言うべきかとか、何をSNSに投稿するべきか、なんて指示されたことは一度もないよ。UFCには感謝しているし、ありがとうと言いたいけど、俺は自分の意思で投稿してるんだ。アドバイスしてくれる人はいない。友達がビデオ撮影や編集を手伝ってくれているけど、投稿する内容を決めるのは俺自身だ。これが俺なんだ。誰かが『これを投稿しろ、これはやめろ』って言ってくれたらいいなと思う時もあるけどね。デイナ・ホワイトの反応を見て、『ああ、もしかして俺は変なことしたかな』って思うこともある(笑)。でも、それが俺なんだよ。頭で氷を割ってしまった時もそうだったけど、俺は何も隠さない。普通の男だし、これからも普通の男であり続けるよ」
──ショーンに対して、個人的な恨みもありますか。
「いや、個人的なものじゃないよ。これはプロの試合だし、UFCのベルトがかかっている、レガシーのための戦いだ。ただ、彼に対して怒ったことが何度かあったのは事実だね。彼が俺の国について不敬な発言をした時、ものすごく怒ったよ。俺にとって祖国は宗教以上のものなんだ。ここ(ネックレス)に祖国があるし、俺が戦い始めた理由の一つは、自分の国を代表したい気持ちがあったんだ。だから、誰かが家族や国を侮辱したら、当然怒るべきだ。男なら怒るべきだし、そのときは殴りたかった。
でも今は、もっと大事なことがある。試合で彼を倒して、ベルトを奪うこと。試合が終わったら、その後に話す機会があるかもしれないし、もしかしたら許すこともできるかもしれない。今はとにかく勝ちたい。そして、彼に謙虚になる必要があること、すべての人を尊重すべきだということを教えたい。今は、個人的な感情は置いておいて、プロフェッショナルな試合として挑むつもりだ」
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一つだけ確かなことがある。チャンピオンになったら、若いファイターたちを激励していきたい
──イリア・トプリアがベルトを持ち帰ったときの映像を見たと思います。あなたもベルトを祖国に持ち帰る姿を想像していますか。
「もちろんだよ。最近ジョージアに戻った時も、空港にはたくさんの人が集まってくれて、愛を感じたよ。アメリカで戦ってる時、俺の国ではみんな夜遅くまで起きてるか、朝早くから試合を見て応援してくれる。ジョージアの人々全員が俺を知っていて、たくさんのサポートをしてくれてるんだ。もし俺がベルトを獲ったら、どれだけ彼らが喜ぶか想像もつかない。最近は誰にも言わずにジョージアに行こうとしてるんだ。なぜなら、家族と過ごす時間が欲しいのに、どこに行っても人々に囲まれて身動きが取れなくなっちゃうから。
でも、今回はベルトを持ち帰ったら絶対にジョージアに戻って、みんなと一緒に祝うよ。みんなが通りに出て、お祭り騒ぎになるはずさ。どれだけ盛り上がるか見てもらいたいね。それに、いくつかの国を訪れて、ベルトを見せたいんだ。俺はただの普通の男、ジョージアの村から来たメラブだ。でも、俺は一生懸命努力して、このベルトを手に入れた。だから、みんなにも夢を追いかければ、何だってできるってことを伝えたい。メキシコにも行きたい。今じゃ俺はほとんどメキシコ人みたいだし(笑)。
でも、あまり考えすぎたくないんだ。自然に、ありのままを感じたい。何を言うかも、何をするかも分からないけど、一つだけ確かなことがある。それは、チャンピオンとしての地位を手にしたら、若いファイターたちを激励して、良いことをたくさんしたいってことだ。ジョージアや他の国で柔術やMMAのジムを開いたり、チャリティー活動もしたい。たくさんのアイデアが頭の中にあるんだ。でも、まずは目の前の仕事を片付けることが重要。まずは体重をしっかり落とすことに集中して、その次にケージに入ることだ。ケージに入れば、やるべきことは分かってる」
──この試合の勝者は、ウマル・ヌルマゴメドフと戦うことになるかもしれませんが、このマッチアップについてはどう思いますか。
「まずはショーン・オマリー戦に集中している。もし彼に勝てば、UFCが次に誰を指名してきても俺は戦うよ。俺は相手を選ばない。いつもUFCが決めた相手と戦ってきたから、もしウマルが次の相手ならそれで構わないし、問題なく支配できるだろう。でも、もっと楽しみなのはデイブソン・ フィゲイレードとの対戦だ。彼は元王者だが、俺はすでに3人の元王者を倒してきた(※ジョゼ・アルド、ピョートル・ヤン、ヘンリー・セフード)。ショーン・オマリーに勝てば4人目の王者を倒したことになる。もしフィゲイレードと戦えば、5人目になるんだ。これを達成したファイターは他にいないと思う。それが俺の目標だし、フィゲイレードはノックアウトパワーもあって、サブミッションも上手いし、グラウンドも強い。彼は俺より大きいし、元タイトル挑戦者のマルロン・ ヴェラを支配した。しかも、ショーン・オマリー以上に印象的にヴェラを倒したと思う。ただ、誰が相手でも次の挑戦者が誰でも、俺は戦う」
──あなたはアメリカに移住して建設業で働きながらトレーニングしてきました。これまでの経験を振り返ることはありますか。
「もちろんだよ。長い道のりを歩んできたんだ。2020年までの生活がどれだけ大変だったか考えると、本当にいろんな苦労があった。“格闘技を続けるべきか、それとも建設業に専念するべきか、結婚して夢を諦めるべきか”って、毎日自分に問いかけてたんだ。“もしかしたら、これは自分には向いてないのかも”と思ったり、フルタイムの仕事をしながらトレーニングするのがどれだけ大変だったか。炎天下や雪の中で働き、家に帰ってからもトレーニングを続けた。それが本当にきつかった。
でも2020年以降、たくさんのことが変わった。UFCで試合をたくさんして、いい収入を得るようになり、仕事を辞めてフルタイムのファイターになったんだ。そしてラスベガスに引っ越して、移民の書類も整って、今では祖国や他の国に自由に行けるようになった。今では市民権を得て、ショーン・オマリーのコーチを叩いても、アメリカから追放されることはない(笑)。本当に嬉しいよ。多くのことが変わって、感謝してる。まずはUFCに感謝してる。今は自分の家で眠れて、家族や友達をサポートできる。さらに、他の人々を励ますことまで出来る。俺は良いサンプルだと思う。俺にできたんだから、みんなもできる。ただ夢を追いかけて努力し続ければ、すべては可能だよ」
──UFC10勝のうち9勝が判定勝ち。フィニッシュしなきゃいけないというプレッシャーはありますか。
「いや、全然プレッシャーはないよ。俺はいつも勝利に集中してる。もちろん、フィニッシュを狙いたいけど、相手はいつもトップファイターだったからフィニッシュするのは本当に難しかったんだ。ブラッド・カトーナや、ヘンリー・セフード、ジョゼ・アルド、ピョートル・ヤンは誰だろうと簡単にフィニッシュできる相手じゃない。ジョン・ドッドソンだって、いまだフィニッシュ負けはゼロだ。ただ、ショーン・オマリーをフィニッシュできる自信はあるよ。でもプレッシャーはない。勝ったものが勝者だし、勝者を誰も批判しない。もちろん、良い試合を見せたいし、フィニッシュを狙う。彼をTKOするか、ノックアウトするか、あるいは失神させてやりたい。
だから、俺は良い試合を見せることに集中している。人々にエンターテインメントな試合を提供したいんだ。勝ち方にプレッシャーはないよ」