2024年7月27日(日本時間28日)『UFC 304: Edwards vs. Muhammad 2』英国大会で、UFC4連勝中の元RIZINバンタム級王者のマネル・ケイプ(ポルトガル)に判定勝ちし、オクタゴン7連勝としながらもUFCをリリースされたムハンマド・モカエフ(英国)について、PFLのレイ・セフォー社長が「興味がない」と、獲得しない方針を会見で示した。
接戦ながら、プロMMA13戦無敗としたモカエフは、マンチェスターでの試合をもってUFCとの契約が満了となることについて、「新しい契約を結んでくれることを願っている。僕は23歳で、UFCチャンピオンになるのが夢だ。他の団体にいるつもりはない」と語っていた。
しかし、大会後の会見でデイナ・ホワイト代表は、「彼はもう契約していない。PFLは素晴らしい無敗の男を手に入れることになると思う。彼の幸運を祈る」と、UFCがモカエフをリリースしたことを明かした。
その理由や今後について、ファイター・関係者たちが自身のSNS等でコメント。モカエフの去就が注目されている。
今回の試合前には、様々な噂が流れていた。いわく、モカエフの前戦アレックス・ペレス戦の5日前のUFCのPIで、ケイプがモカエフと口論となり、ケイプが頭突きとヒジ打ちを食らわせていた、あるいは、今回のマンチェスター大会の試合前に、モカエフがケイプと写真を撮るふりをしてケイプに近づき殴った──等々。後者についてはモカエフ自身も会見でトラブルを認めている。
しかし、これらのことが単に喧嘩両成敗で収まらなかったのには理由がある、とUFC世界ウェルター級6位のギルバート・バーンズは、YouTubeで語る。
「モカエフは勇敢な子供だが、彼は間違いを犯した。モカエフvs.ペレス(2024年3月2日)の勝者が『UFC301』(2024年5月4日)でパントージャに挑戦する予定だった。でもモカエフは“準備が出来ていない”とタイトルマッチを断り、デイナ(ホワイト代表)のマッチメークに冷水を浴びせ、ハンター(キャンベルCBO)、マッチメーカーたちを困らせた。
フライ級は1位のブランドン・ロイバルがパントージャに負けたばかり(※10月に平良達郎と対戦)、ブランドン・モレノは2回パントージャに負けている。マネル・ケイプは計量ミス。マテウス・ニコラウはペレスにKO負け。アミール・アルバジは怪我。カイ・カラフランスもモレノとアラバジに負けたばかり。トップ9がみんな負けたか、怪我か。
そこでモカエフが王座戦を断り、仕方なく10位のスティーブ・エルセグが選ばれた。私は彼をよく知らなかったが、皆は『こいつはタフだ』と言っていた。モカエフは1位ではなく、勢いに乗っていただけ。やつら(モカエフとケイプ)はどこでも喧嘩するくせに試合が始まるとどちらも仕掛けない。あれじゃあ、プロモーターは怒るよ。モカエフはフライ級を救うチャンスがあったのに」(バーンズ)
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モカエフの代わりにパントージャと戦ったエルセグ「学びが必要だ」
ペレス戦から2カ月後に王者アレッシャンドリ・パントージャのホームのブラジルで5Rを戦うことは、モカエフにとっても厳しい選択だっただろう。モカエフはこのタイミングでのタイトルマッチを断り、当時10位だったスティーブ・エルセグが挑戦者に抜擢されている。
かくして判定は3-0ながらも、2者が48-47をつける接戦で敗れたエルセグは3日、『MiddleEasy』の動画でモカエフvs.ケイプの試合について問われ、「ショーツを引っ張ったり、他にもいくつか問題があったけど、マネルのキックはよく見えていたし、彼のレスリングは綺麗だった。でもマネルのレスリングのディフェンスが良かった。素晴らしい試合だったけど……僕が期待していたものとは違った」と、エキサイティングな試合にはならなかったとした。
さらにモカエフがUFCをリリースされたことについて、「成長が必要だ」という。
「彼の人に対する接し方は──ファンがそれを見ることができるかどうかは分からないけど──私は好きじゃなかった。自分には権利があって、とても重要な存在だと思っているようで、そんな態度は明らかにUFCは好きではなかっただろう。彼はここから成長し、教訓を学ぶだろう。
同じ大会のときに見たけど、UFCの栄養士チームへの接し方とか、些細なことだけど、見下すようで無礼なことだった。まだ若いし、この瞬間から学んでくれればいいのだけど」と助言している。
モカエフはこの動画に対しても噛みつき、「本当じゃないよ、UFCの栄養士の周りで聞いて教えてくれよ。この男がくだらないことを喋っているから。私は舞台裏のスタッフにとても敬意を抱いています」と反論をしている。
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レイ・セフォーPFL社長「厄介者だと聞いている」RIZIN海外事業担当の柏木氏は──
そんななか、8月2日に米国テネシー州ナッシュビルで『PFL 7: 2024 Playoffs』を開幕させたレイ・セフォー社長は、大会後、UFCのデイナ・ホワイト代表の会見での「PFLは素晴らしい無敗の男を手に入れることになる」という発言について問われ、モカエフを獲得しない意思を示した。
UFCとPFLを天秤にかけ、契約交渉を優位に進めようとしてデイナ代表の逆鱗に触れたとの報道もあるなか、セフォー社長は、モカエフのPFL入りについて「ムハン……マド? ああ、彼(モカエフ)を知っている人に聞いたのだが、どうやら彼は“厄介者だ”と聞いている。だから興味はない」と一蹴している。
その動画切り取りを見たモカエフは、「もちろんそう言うだろう。私はあなた(PFLと)の取引を受け入れたことはない、ナイスムーブ」と、PFLとは交渉が決裂したことを匂わせる投稿で返した。
レスリング英国選手権61kg級金メダル、ADCC英国大会65kg級金メダル、アマチュアMMAでも23戦無敗で、プロMMA13勝無敗1NC(UFC7勝無敗)の記録を持つモカエフは、一連の騒動の後、Xで「ランキング上位の相手に対して4勝0敗、37連勝! 喧嘩を売ったことも、体重を落とさなかったことも、喧嘩から逃げたこともない。思ったより早く戻って来るよ! 最大のMMAプラットフォームで世界最高の選手たちと戦わせてくれたUFCに感謝する」と、投稿。
さらに「どんな状況でも、私はさらに強くなる。大きな歴史を作るぞ、インシャーアッラー! これは道の上の小さな障害に過ぎまない。私たちは挑戦のために生まれてきた人間。逆境に直面した後に私たちが何をするか」と、新たな戦いの場を求めて行くことを誓っている。
そんなか、3日のONE Championshipで、グスタボ・バラートを1R、リアネイキドチョークで極めたONEフライ級暫定王者のジャレッド・ブルックスは、フリーとなったモカエフについて問われ、「俺はダゲスタン人キラーだ。結局のところ、彼がチャンピオンに相応しいメンタルを持っているとは思えない。俺が聞く限り、常にUFCと契約で揉めてたようだし、実際より自分を高く評価してると思う。ONEに来るなら、俺がすぐにリアルを見せてやるよ」と、参戦するなら新たな挑戦者の一人として迎え撃つと語っている。
一方、セフォー代表が獲得しないと表明したPFLが買収しているBellatorでも、最軽量級はバンタム級。“幻のBellatorフライ級王者”で、現RIZINフライ級王者の堀口恭司でさえも、Bellatorにおいては対戦相手探しが難航している状況だ。
では、日本のRIZINは……海外事業部の柏木信吾氏は、現時点では、一連の報道に白旗の絵文字で、獲得競争に参加しない考えをユーモアとともに示している。
果たして、無敗の24歳は、どこに向かうか。