今回は2名と今までの半分の枠となった日本人選手枠に入ったのは稲垣(左)と鈴木
2024年9月29日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館『K-1 WORLD MAX 2024』の対戦カード発表記者会見が、7月24日(水)都内にて行われた。
今大会で「第7代K-1 WORLD GPスーパー・ライト級王座決定トーナメント」が行われることが決まった。スーパー・ライト級(-65.0kg)王座は2014年11月3日に行われた新生K-1の旗揚げ大会で初代王座が争われ、今年でちょうど10年となる。
これまでの王座決定トーナメントは日本人4選手、外国人4選手の8名で争われることが通例となっていたが、今回は「K-1の開国にともなって海外プロモーター、エージェントなどのルートが拡大されている。65kgはアジアだけじゃなくヨーロッパにもたくさん強い選手がいる。多くのファイターのプロフィールが集まっています」(宮田充Krushプロデューサー)とのことで、日本人選手2名と外国人選手6名で争われることが発表された。
ただし、「自薦・他薦問わず国内ファイターで、それをどかしてでもファンの皆さんがこのファイターが出るなら入った方がいい、という選手がいれば削るのはやぶさかではない」(同)と、他団体を含めてトーナメントにふさわしい日本人選手がいれば特例もありえるとした。
出場が決定したのは、Krushスーパー・ライト級王者の稲垣柊(K-1ジム大宮チームレオン)と第7代Krushスーパー・ライト級王者の鈴木勇人(K-1ジム五反田チームキングス)。
稲垣は極真空手出身で少年時代に数々の大会で優勝・入賞を果たす。中学・高校はバレーボールで全国大会に出場するなど活躍。高校卒業後に格闘技に戻ると「格闘代理戦争」出演を経て2019年9月にプロデビュー。2戦目で瓦田脩二にKO負けを喫したが、その後は11連勝。2023年1月・4月の王座決定トーナメントを制し、第9代Krushスーパー・ライト級王者に。11月には小嶋瑠久に判定勝ちで初防衛に成功すると、2024年4月に第3代K-1ライト級王者である林健太を破る番狂わせを起こした。戦績は12勝(6KO)1敗。
鈴木は2016年12月にKrushでプロデビューすると、サウスポースタイルから繰り出す左ミドル&左ストレートを武器に頭角を現し、2019年1月にKrushスーパー・ライト級王座を獲得。しかし2020年2月に佐々木大蔵にタイトルを奪われた。2022年4月の林健太戦で元K-1ライト級王者の林をKOする金星を得ると、8月には近藤魁成に先制のダウンを奪われるも延長戦で大逆転KOに成功した。2024年3月にはK-1で2階級制覇を達成した卜部功也からも殊勲の勝利を収め、2023年7月のデンサヤーム戦から4連勝中。戦績は17勝(10KO)8敗1分。
稲垣は「デビューして5年、強さだけを求めて戦ってきました。階級を上げて11連勝中でやっと世界のベルトを巻くチャンスが来ました。Krush王者としてK-1も制覇して65kgを僕の階級にします」、鈴木は「やっとこの時が来たと思っています。今までトーナメントの経験がなくて1日3試合は未知なところがあるけれど、このトーナメントは自分のためにやるトーナメントだと思うので、いつも通り普通にやって普通に勝とうと思います」と、それぞれ“待ちに待ったチャンス”だと意気込みを語った。
日本人2人の枠に選ばれた心境を聞かれると、稲垣は「率直に嬉しい気持ちと、これまで世界トーナメントをやって日本人4人は正直多いと思っていたので、理想とするトーナメントとになったと思っているので必ず頂点に行きます」、鈴木は「選ばれて当然かなと思いました」と、それぞれの感想。
トーナメントの組み合わせでは両者別ブロックになることが決まっており、戦うとすれば決勝戦となる。互いの印象を聞かれると、稲垣は「僕がデビューした頃から鈴木選手はKrush王者で、ずっと見てきた選手なのでいつかは戦いたいと思っていて。根性あるファイターだと思います」、鈴木は「丁寧に戦うファイターだと思っています。当たるとしたら決勝戦ですが、2人とも勝ち上がるのが面白いと思うので決勝で戦いたいと思います」と、それぞれ評した。
外国人選手6名の顔ぶれはまだ未定だが、稲垣は「(同じ階級の外国人選手は)まだ一人しか見てないんですが、シヴァクという選手を見て、凄く強いと思ってワクワクも出てきて、準備して迎え撃ちたいです」、鈴木は「外国の選手は全く分からなくて(笑)。ベルトをいっぱい持っている選手、海外で実績を持っている選手を倒したら強さが証明できるので、ベルトをいっぱい持っている選手とやりたいですね」と、それぞれ楽しみだとした。
すでに行われている70kg、55kgのトーナメントから刺激は受けたかと聞かれると、稲垣は「会場に見に行って1日3試合を見て、過酷だなと思って。だからやる気が入りましたね。日本人として今後K-1を引っ張っていくのは自分だと思われたいので」と、K-1を引っ張って行く存在になりたい気持ちになったとする。
鈴木は「55kgでチームメイトの玖村将史が勝ち上がって、同じ9月にトーナメントがある。そこで将史も自分も優勝したら一気にベルトが2本になるので、K-1ジム五反田の強さが証明できる。自分たちがどの次元で格闘技をやっているかを見せたいので2人でベルトを獲りたい」と、玖村とのダブル制覇を狙いたいとぶち上げた。
稲垣は11連勝の理由を聞かれると「誰よりも僕は頂点を目指して練習している。それだけだと思います」ときっぱり。
鈴木は、3月の卜部功也との激闘で得たものが今回活きるかと聞かれると「本当のトップの選手と初めて試合したので、今まで味わったことがないくらいの攻撃力、ポイントがどこに付くか、細かいテクニックが勉強になりました。本当に強い選手の次元を肌で感じることが出来たのでよかったです。それは今回のトーナメントに活きると思いますが、あの試合を3試合したらキツいので(笑)。倒して勝つ練習をしています」とした。
宮田Pからは「卜部功也が出来なかったことを鈴木勇人に期待する。功也の分まで頑張ってほしい」とのエールもあった。
稲垣がこれまで外国人選手と戦ったことは2022年4月のヴィトー・トファネリのみ。経験が少ないことが不安視もされるが、「経験は少ないですけれどイメージ力では誰よりもやっているつもりです。自分もトップ選手とやったのが前回初めてだったんですが、イメージして練習して勝つこと出来たので、今回もめちゃくちゃ強いとイメージして練習していきたい」と、イメージ力で補うとする。
「外国人選手は見ていて攻撃が強いし、荒さもあって。でも自分はディフェンス力が優れていると思うので、外国人選手の粗さを突いていけると思います」と自信をのぞかせた。
一方、外国人選手との対戦経験も多い鈴木は「昔に聞いた話では、外国人選手は気持ちが強くないと聞いていたんですが、みんな強かったです(笑)。まず身体が丈夫。凄いタフで根性もあるし、海外の選手は凄く強いです。そこで日本人が戦って勝っていくのが面白い」と、外国人選手はどんな選手でも侮れないと先輩としてアドバイスを送った。
鈴木は「身体が使えなくなる想定はしています。足が使えなくても他が使える、その時々の状況でやっていければと思う。自分が勝ち上がります」と、過酷なワンデートーナメントの途中で得意の蹴りが使えなくなってもどう戦うかをイメージしているとする。
では、ワンデートーナメントを勝ち抜く上で気持ち以外の何が必要かと問われると、稲垣は「気持ちと根性は絶対に必要という大前提。僕はこのベルトを獲得するうえで技術と根性は最低限として、その日の運を持っている人が獲ると思う」と“運”を要素としてあげる。
鈴木は「怪我無く上手く戦うのが大事だと。それもひとつのテクニックなので、自分の戦いを貫き通せれば怪我をせず、全試合KOでスカ勝ち出来ればと思っています。あとは集中力じゃないですかね。1試合終わって間隔が空くので、何時間も集中力は続かない。1回切ってまたスイッチ入れて。それが出来ればいつも通りの試合と変わらないと思うので」と、怪我をしないことと集中力をあげた。
外国人選手に関して、宮田Pは「65kgがベストの、30人くらいリストがある。それを絞る。王座決定トーナメントなので、優勝者には防衛戦をやってもらわないといけないのでその条件付き。いろいろ候補がいるので、素晴らしいトーナメントにしたい。リザーブは2試合組もうと思っています。そこは日本人同士で」と説明。
最後に、王者になったらこういう王者になりたいというイメージを聞かれた両者は次のように答えている。
稲垣「僕はデビューした時から強さだけを求めて、K-1の強さの象徴は野杁選手だと思っていて。このタイミングで僕がこのベルトを巻けるのは意味があることだと思っています。K-1を引っ張っていく存在、強さ=稲垣柊になるように」
鈴木「パッと出てきたのは山崎秀晃選手。ファイトスタイルが思い切りがいい。王者に捉われていないと言うか、いい意味で王者らしくない。思い切りの良さとか。ああいうのを見てると王者という肩書きに頼っていないと自分は思っていて、一人の男として戦っているように見えたので、そういうファイターでありたいと自分も思っています」