MMA
インタビュー

【ONE】連敗ストップの箕輪ひろば、ダウン乗り越え大逆転「吹っ切れた。僕は傷つきながら頑張っていく」

2024/07/12 11:07
 2024年7月6日にタイ・バンコクのルンピニースタジアムで開催された『ONE Fight Night 23』のストロー級MMAでジェレミー・ミアド(フィリピン)に判定勝利を飾った同級4位の箕輪ひろば(総合格闘技道場STF)。  1Rにダウンを奪われるピンチに見舞われたもののそこから反撃。得意のグラウンドの展開で相手をしっかりドミネートしての逆転勝利、連敗を止めた。傷だらけで白星を掴んだ箕輪が試合後のONE公式インタビューに応えた。 合計10針は初めて ──まさに「箕輪ひろば劇場」、激闘の中での勝利おめでとうございます。 「本当はスムーズに行く予定だったんですけど、アクシデントもあって。それが試合なので仕方がないですが、結果的に勝利できて良かったです」 ──アクシデントというのはどの場面のことでしょうか。 「(1R目の相手の)ストレートです。あんなに綺麗にもらうとは思ってなかったので。あと、タックルで押し込む側だったのは今回が初めてなんです。しかもリングで。そこで相手に足を(ロープの)外に出されるとあんなに引っ張って来れないんだなっていうのは結構思いました」 ──その辺りケージでの試合とはやはり勝手が違う感じだったのでしょうか。 「そうですね。もっと簡単に引っこ抜けるかなと思ってたんですけど。でもレフェリーはよく見てくれていたなという感じでした」 ──1R目のダウンについて、ご自身ではどういう状況だったのでしょうか。 「バーンってもらって後ろに倒れたんですけど、こう、別に(意識が)飛んじゃってるとかはなかったので、冷静に相手がヒザ蹴り来てるなと思いながら、タックルに入りました」 ──では、あの辺りはほぼフラッシュダウンに近いような感じですか。 「そうですね。フラッシュ(ダウン)よりも、(意識は)しっかりはしていました。あのストレートは来るのが見えてましたし、『これもらうな』と意識できるタイミングでもありました。ただ、こんなに目が腫れるとは思っていなかったです」 ──その目の周囲の怪我の状態はいかがですか。 「目の下と上も切っていますが、下が6針、上4針で合計10針縫っています。でも1週間後には抜糸ができる状態です」 ──ここまでカットした、これ程の怪我はキャリアでは初めてですか。 「10針は無いですね。ブルックス戦で大きくカットしましたが、10針は初めてかもしれないです」 [nextpage] 逃げて勝つよりも、どんなことでも戦って勝つというのを目標にしていた ──その辺り、リーチあるミアドの距離感というのが掴み辛かった事があったのでしょうか。 「僕の今回の試合のコンセプトが『逃げない』という事だったので。いつもだったらバックステップしてかわして、距離を作り直せば良かったのですが、今回は立ち向かおうとした部分がありました。あの状況も想定して試合の構成も組んでたので、『別にこうなるよね』って感じではありました」 ──今までとは違う戦い方をイメージしたのは、どういう気持ちがあったからなのでしょうか。 「やはり、あそこを避けては勝てないだろうなっていう気持ちがありました。ああいう展開にできたからこそ、あるか分かりませんが、ミアドと再戦したとしても次回も多分勝てると思います。あそこ逃げていたら、もしかしたらまたあの距離を潰されたらどうなるんだろう、みたいな想定があったかもしれないですけど。結果として、あの距離でもきちんと勝てたと僕は思っています。ミアドに関してですが、もう正直怖いものはないです。やっぱり逃げて勝つというよりも、どんなことでも戦って勝つというのを、今回1個こう目標にしていたので、そこはクリアできたかなっていう風に思います」 ──いつものクレバーな戦い方と比べ、今回はこれまで以上に“リスク上等”的なアグレッシブさが前に出る姿勢に見えた印象ですが、その意識はありましたか。 「そうですね。クレバーに戦うイメージもありましたが、(実際は)クレバーに戦っているんですけど、その中でもその根本にある闘志というもの自体を殺してはいけないという気持ちがありました。今回はその闘志が少し多めでした。結果論になってしまいますが、バランス的にはこれぐらい闘志があって、その上でそのクレバーな部分もあってっていう、それがやっぱ総合なんじゃないかなと思います」 ──確かに今回はもの凄く闘志を感じさせられました。 「そうですね。でも結構クレバーでした。パーンって倒されて、1ラウンド終わった時に僕の中で、これも結果論になってしまいますが“分かったな”と思ったんです。多分、この2ラウンド終盤か3ラウンド頭で、俺は一本取れる気ではいました。結局、取れなかったですが。そのタイミングで多分勝てるなと思いましたし、それと同時に、1ラウンドのあそこで倒されたけど“盛り上がるでしょ”と思ったんで。それぐらい考える余裕はありました」 ──1ラウンド終盤、 箕輪選手がテイクダウンを奪って、最後いい形で終わりました。あの辺りで「これはいけるな」みたいなイメージはあったのでしょうか。 「後半打撃も少し当たりだしたし、打撃を制したかなっていう気もあったんで。タックルもあそこで入れる形もできましたし、別にこのまま行ったらいけるなっていう気も全然ありました」 ──ミアド選手のテイクダウンディフェンスはいかがでしたか。 「思ったより上手かったです。その(ロープ外に)足を出すっていうのも踏まえて。山北(渓人)選手との試合を見てたら、もう少しポロっといくかなと思ったんですけど、結構粘り強かったです」 [nextpage] 報われない努力があって、報われる努力があって、そこで僕は続けるっていう選択をした ──今回の勝利で連敗脱出ですが、その点についての心境はいかがですか。 「“やっとか”っていうのもありますし。勝ち方を思い出したじゃないですけど、どういう風に勝ってたかなっていうのが、しっかり思い出せました。僕は無傷では絶対勝てないので、もう血みどろにされても勝ちます。その一点です」 ──まさに“一皮剥けた”感覚でしょうか。 「振り切れました。あのカッコつけの無傷でスパンと勝つのは無理でした、僕には。リスク背負って勝つしかないです」 ──箕輪選手からそういう言葉が聞けるとは正直想定外でした。 「スッキリ勝つと言っていたのですが、無理でした。やっぱリスク背負って戦わないと」 ──試合後のSNSで「頑張って努力すれば報われるんなんて事を思っている訳でも言いたい訳でもない。この連敗中も死ぬほど努力してきたつもりだったが、中々勝利に辿りつかなかった。だが今回の勝利は努力を続けてた結果なのは間違いない。だから報われない努力があって、報われる努力もあっていい。応援ありがとうございました」と記しました。今回の勝利は感情的に来るものがありましたか。 「そうですね。ずっと努力はし続けてきているつもりで。でも、その報われない時期があって。それに対して努力をすることを止めようが、その競技自体を辞めようが、それは本人の勝手だとは思うし。ただ、僕はそこで続けるっていう選択をした手前、何が正しいとか、何が間違いっていうのは、僕が到底言えたことじゃないですけど、ただ僕の一つの努力し続けるって形で正解だったのかなっていう風に僕は思っていました。報われない努力があって、報われる努力があって、各々の形でいいんじゃないかなっていう。努力するのが正解とか、しないのが間違いとかじゃない」 ──情熱と冷静の間もあったなかで、今回の試合を通し、技術的な意味で手応えを感じた部分はありましたか。 「ありました。それこそJTT(※箕輪が出稽古するジャパントップチーム)でビリー・ビゲロウコーチに言われるのですが、“ドミネート”力、“グラウンドコントロール”力は間違いなく上がっているなっていう風には思ってました。多分前の僕だったら、一本勝ちにこだわって、例えば行けない体勢から技に行ったりとか、無理にバック回るっていう展開もあったのですが、今回はやらなかった。別に行っても良かったんですけど、やっぱり今回なんとしてでも勝ちたかったので。そこのリスクは回避したつもりです。自分が一本を取りに行ってポジションを失うよりは、そのまま続けてパウンドアウトもしたかったですし、肩固めも狙ったんですけど、無理だなっていう風に判断して、あのままポジション コントロールに専念したって感じです」 ──手応えのあった“ドミネート”力向上について、それは純粋にレスリング力の部分でしょうか、それとも組んだ動きの中での瞬時の判断力の部分でしょうか? 「いい質問ですね。難しいんですけど、あれはレスリングだと、多分パウンド打たなくていいんです。だから、もっと徹底した──言い方悪いですけど、塩漬けみたいな形になると思うんです。そうではなくて、きちっと削りながら、あくまでも“ドミネート”というのは、“固めることに固執しない”というか、“動きの中で相手に動かせない”っていう、ちょっと言葉で説明しづらいんですけど。MMAの中でのその拘束力を上げていきたつもりでした。そこら辺りが出たかのかなと思います」 ──なるほど。「MMAのなかでの拘束力」だと。 「以前よりもポジションを気にしてできたかなと思います。上に回ってグラウンドヒザっていう展開をアディワン戦の時もやってたと思うんですけど、今回それをやらなかった理由は、ポジションキープを意識したから。ミアドはタックルっぽく起き上がってくるのが上手かったので、多分、上四方固めにいったら、このまま起き上がってくるの強いだろうなって判断したんです。よってサイドでも下半身寄りというか、相手の足をずっと掴んでいる展開で、横から抑え込むというのに切り替えました」 ──この流れの中で年内の展望として、誰と戦いたいとかはありますか。 「(ジャレッド)ブルックスとやりたいです。前にも言ったんですけど、きっちりと借りを返して精算しなきゃいけないなと。それ以外であれば、別にランカーであれば誰でもいいです。ランカーでなければ、別にあんまり興味はないですね」 ──選手目線で、ブルックスはストロー級で一つ頭抜けている存在ですか。 「そこは間違いないです。やっぱ試合を見ていても、チャンピオンは(ジョシュオ)パシオですが、前回は望んでない形でのベルトの取り方ではあったと思うので、あのタイトル戦を待ち出さないのであれば、ブルックスが(実力的には)チャンピオンだと思います。ただチャンピオン云々っていうよりも、まずは(一度負けている)ブルックスに借りを返したいですし、その後ベルトを別の人間が持っているのであればベルト取りに行きたいです」 ──ところで、ルオトロ兄弟と一緒に記念撮影している様子をSNSで公開していましたが、仲が良いのでしょうか。 「前回の日本大会の時に宿泊先のホテルで朝食するタイミングが一緒で。向こうは英語で、こっち日本語で喋ってみて、何言ってるか分からなかったですが、ノリが合うというか。『お互い頑張ろうぜ』みたいなことを言っていたら、控室も一緒で(笑)。自分の試合を見た、ルオトロが『お前すげえな。お前の根性は練習じゃ絶対につかない。アメリカに来る機会あったらいつでも一緒に練習しよう。』と言ってくれたんです。そしたら今回も大会で一緒になって」 ──箕輪選手がルオトロ兄弟のところで出稽古する予定はありますか? 「西海岸の雰囲気好きですし、いいですね。彼らの根っていうものも僕は好きですけど、彼らのそのカルチャー的なものも好きなので。横乗り系の感覚的にもね」 ──今回の試合は色々な意味で箕輪選手が前に進める内容になりましたね。 「そうですね。吹っ切れました。セコンドにも言われましたけど、傷つかないで戦うことがないので、僕は傷つきながら頑張って行かなきゃいけないんだなって。大沢(ケンジ)さんが言ってましたけど、アディワン戦もアームロック極まらなかったから僕が勝っただけで、あそこで極められていたら僕の負けでしたし。今回もストレートでKOされてたら、僕のKO負けでした。やっぱり、そこでやられないっていうのが、僕の強さだっていうことに改めて気づきました。そういうのを起こらないようにして戦うのは、リスク回避とはまたちょっと違うんだなと」 ──リスクを負うことでピンチにも陥りながらも、そこを凌いで勝利に繋げられた。それは、安全に戦ったまま敗れるのとは違うと。次の試合も楽しみでしょうがないです。本当に素晴らしい試合でした。 「本当に毎試合血だらけで、本当勝っても負けても縫っているので。アディワン戦は筋肉が断裂し腱も切れたし、シウバ戦も拳が折れていました。ブルックス戦もカットしたし、ボカン戦は股間が痛かった(笑)。バラート戦は指をカットし……ずっと壊れていますね(苦笑)。なので、とりあえず怪我を治したいです」 ──最後にファンへメッセージをお願いします。 「お世話になってます。箕輪ひろばです。応援ありがとうございました。本当にとても力になりました。結構やられた試合でしたけど、箕輪らしい試合にはなり、盛り上がったんじゃないでしょうか。僕がやられて勝つという、いつもの展開にはなったと思います。本当セコンドには和製ディアスだなって言われるぐらいボコボコにされているんで。本当にネイト・ディアスみたいボコボコにされても勝つような選手になっていくしかないなって風には思いました。次回以降もきちっとやられてでも勝てるように練習していきますので、引き続き応援よろしくお願いします」
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