2024年7月6日(土)タイ・ ルンピニースタジアムにて『ONE Fight Night 23: Ok vs. Rasulov』(U-NEXT見逃し配信)が開催され、コメインンでスコットランドのニコ・カリロがセーマペッチ(タイ)を衝撃の左フックで3回のダウンを奪い、KO勝ち。4戦連続のKO勝利をマークし、現王者のジョナサン・ハガティ(英国)との対戦をアピールした。
ONEバンタム級ムエタイは、1位カリロ、2位ノンオー、3位フェリペ・ロボ、4位セーマペッチ、5位リアム・ハリソンのほかにも、20戦全勝のロシアのカムラン・ナバティ(29歳)も3連勝中(ポンシリ、アバター、スーブラックに勝利)で頭角を現してきている。
9月7日にはハガティーが、ONEフライ級キックボクシング世界王者のスーパーレック・キアトモー9との階級を越えた挑戦を受けることも決定しており、目が離せない状況だ。試合後のカリロとの一問一答を、下記に紹介したい。
MMAグローブの破壊力、左フックでセーマペッチをなぎ倒した
1位のカリロはスコットランド出身の25歳で、WMOウェルター&スーパーウェルター級王座、ISKAムエタイ世界65㎏級王座などを獲得。2023年4月にONEに初参戦すると、フルカン・カラバフを3R TKO。
6月にムアンタイ・PK・センチャイを2R TKO。12月には元王者のノンオー・ハマをヒジ打ちで2R 失神KOに下し、3戦連続のKO勝利をマークしている。
対するセーマペッチは、ONEムエタイ・バンタム級4位。17歳でタイの「タイガー・セメント・トーナメント」で優勝。2018年4月には、英国を拠点とした団体「ムエタイグランプリ(MTGP)」ウェルター級世界王者に。
2018年7月にONEに参戦。これまでロドレック、クラップダム、リッテワダ、ジャン・チェンロン、ガオナーらに勝利し、2024年2月の前戦でモハメド・ユネス・ラバーとの再戦で怒涛のパンチラッシュで初回KO勝ちでリベンジを果たしている。
▼バンタム級ムエタイ (Over 135-145 lbs)3分3R〇ニコ・カリロ(スコットランド)145.00 lbs, 1.0191[2R 2分03秒 KO] ※3ノックダウン×セーマペッチ(タイ) 144.50 lbs, 1.0160
1R、サウスポー構えのセーマペッチ、オーソのカリロはコーナーに詰めて右ヒジを打ち込む。ブロッキングのセーマペッチはコーナーに詰まるとカリロは左ヒジ。かわすセーマペッチを追うカリロ。
ワンツーから左アッパー! コーナーを出るセーマペッチは右を合わせに行くが、そこに左を強振するカリロは首相撲にとらえて左ヒザ! さらに左右ヒザの連打! 打ち合いにセーマペッチも挑む。
2R、右ローのセーマペッチに右ローを返して詰めるカリロ。オーソドックス構えに。相打ちの左でなぎ倒すようにダウンを奪うと、立つセーマペッチに右アッパーのフェイント。
左ストレートを当てるセーマペッチ! しかし詰めるカリロが左フックで2回目のダウンを奪取! さらに詰めて左から右でセーマペッチを3ノックダウンに下し、カリロがKO勝ちした。
試合後、タイ語でも挨拶したカリロは、スーパーレックとハガティの勝者との対戦、「GOAT」と戦いたいとタイトルショットを望んだ。さらにボーナスを獲得すると、5回目のバック宙をリング上で見せた。
以下は、カリロとの試合後の一問一答だ。
僕は高級ワインのようなものだ。これからもっと熟成される
──ノンオーに続き、タイのレジェンドを倒しましたね。
「そうだね。ありがとう、雲の上の存在だよ。自分のパフォーマンスにとても満足している。タイの伝説がまた1人増えた。僕がやっていることをやったと言える人はあまりいないよ」
──セーマペッチのタフさをどう感じましたか。
「驚いていないよ。彼は少し奇妙な戦術を持っていたと思う。彼は僕が接近してくると頭を下げてくるんだけど、その距離で僕のショットの威力を奪ってしまうから、それに合わせ直さなければならなかった。ちょっと変だったね。でも調整し直したら、ああ、彼はショットを打てないと分かったよ」
──再びボーナスも獲得しました。
「ボーナスがもらえて大喜びさ。目標があるからモチベーションが上がるけど、もちろん、何か得意なことがあれば、それに対する報酬も得るべきだと思っている。だからとても嬉しい。何に使うかというと、正直なところ、銀行に預けているのが好きなんだ。お金を貯めて、積み上げていきたいんだ」
──進化を続けていますね。
「ああ、このキャンプだけでも、僕はまだ上達しているよ。ノンオーと戦った7カ月前と比べたら、僕は新しいファイターだ。1試合の合宿の間に(自分が)どれだけ上達しているかが分かる。手術のために5カ月から3カ月は活動できなかったから、復帰したのは10週間くらい前かな。その10週間どころか6週間でも、僕はすごく上達したし、まだ全盛期だとは思っていない。全盛期になるのは27、28歳くらいだと思う。まだニコのベストが(これから)見られるはずだし、僕は高級ワインのようなものだからね。これからもっと熟成される」
──改善したい点については?
「分からない。試合次第なんだ。ただ、もっとうまくやれると思う」
──タイのファンについて
「今までで最高の歓迎だった。歩いていて、まるでスコットランドにいるような気分だった。スコットランドの人たちが大勢いたのは知っているけど、タイのファンまでもが僕にたくさんの愛を注いでくれた」
──9月6日の『ONE 168: Denver』米国大会で行われるスーパーレックとジョナサン・ハガティの勝者はどちらになると思いますか。
「うーん、分からないな」
──では、スーパーレックとジョナサン・ハガティのどちらと戦いたい?
「ハガティと戦いたい。ただ、彼からベルトを奪いたいんだ」
──スコットランドのムエタイを世界の格闘技地図に載せることについてどんな思いがありますか。
「英国の人々、スコットランドの人々、私が育った土地の人々にインスピレーションを与えること。それが目標だ。お金や金メダルとは別に、それが僕にとっての最終目標なんだ。レガシー(遺産)を残し、僕が育った道を人々に知ってもらうこと。別の道、偉大な道を選ぶこともできる。しかし、それには多くのハードワークと献身が伴うが、それをやりたいかどうかは自分次第だ」
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元王者オク・レユン敗れる! 14戦無敗のラスロフ「クリスチャン・リーだけではなく、ベルトを持っている選手なら誰とでも」
『ONE Fight Night 23: Ok vs. Rasulov』メインイベントは、元ONEライト級MMA世界王者のオク・レユンとONE初参戦のアリベック・ラスロフがONEライト級MMA暫定世界タイトルをかけて対戦。勝者は現王者のクリスチャン・リーとの王座統一戦への切符を手にすることになる大一番だった。
リーと1勝1敗のレユンは、2023年5月に強豪ローウェン・タイナネスに判定勝ち、復活を果たした。33歳。
ラスロフは、ダゲスタン出身の13勝無敗の強豪。フリースタイルレスリングをベースとし、アマチュアMMAで経験を積み、Berkut Young Eaglesなどロシア、トルコで連勝。プロキャリア13勝中10フィニッシュ(6KO・TKO・4一本)と決定力が高い。ONEデビュー戦でいきなり王座戦となる。31歳。
▼ライト級MMA (Over 155-170 lbs)変則王座戦 5分5R×オク・レユン(韓国) 170.00 lbs, 1.0210[5R判定0-3]〇アリベック・ラスロフ(トルコ) 170.00 lbs, 1.0226 ※計量ミス※ラスロフが計量をパスすることが出来ず。試合は実施されるが、レユンが勝利した場合のみタイトルを獲得。
試合は、上組みでも勝負したラスロフが粘るレユンの反撃に苦しみながらも判定3-0で勝利。しかし、計量失敗のため、暫定王座を獲得することはできなかった。
試合後の一問一答でラスロフは、「ONEライト級にとどまる」と語った。
ラスロフ「次の準備もできている」
──試合を終えて。
「まず最初に、ありがとうと言いたい。ONE Championshipには初参戦で、初めてにしては(いい)試合だった。5ラウンド戦った。ONE Championshipにありがとうと言いたい」
──ONE初陣に臨んだ心境について。
「僕には経験がある。過去にはもっと多くの人と戦ってきた。たくさんの試合をしてきた。だから、準備だけはしていた。あまり心配はしていなかったし、このONEライト級にとどまるつもりだ」
──計量ミスについて。
「ONE Championshipに出場するのは初めて。水分補給のハイドレーションテストもあるし、僕にとっては少し新しいことなんだ。だから2回も体重を減らさなければならなかった。だから、もっといい試合ができると言っているんだ。でも同時に、いい経験にもなった。これからはもっといい試合をするよ」
──自身のパフォーマンスを評価すると?
「かなり難しい試合だった。勝てて本当に嬉しいし、相手も強かったけど、それでも僕が勝った。でも、もっといい試合ができると思う」
──チャンピオンのクリスチャン・リーと対戦する可能性について。
「それはクリスチャン・リーのことではないんだ。ベルトがすべてだ。ベルトを持っている選手なら誰とでも対戦するし、このベルトを獲るつもりだ」
──すぐに次戦をしたいと?
「すべてはONE次第だ。怪我はしていないし、体調もいい。大きなダメージは受けていないから、準備はできているつもりだ。それと、時間を無駄にしたくないということも言いたい。試合があれば準備はできている。体重はいつもいい状態だから、いつでも準備はできているよ」
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タイ・ルオトロ「ジョセフ・チャンは思っていたより少し強いかもしれない」
▼キャッチウェイト サブミッショングラップリング (186 lbs)10分1R〇タイ・ルオトロ(米国) 177.50 lbs, 1.0187[判定3-0]×ジョセフ・チャン(南アフリカ) 185.25 lbs, 1.0053
──チャン戦のパフォーマンスについて。
「もっといいパフォーマンスができたはずだ。とても誇れるようなパフォーマンスではなかった。最高のキャンプができたわけでもなく、最高の気分で戦えたわけでもない。戦えたことは幸せなことだ。でも、特にルンピニーのような場所では、そういうパフォーマンスはしたくない。僕は観客やスタジアムの人たちをとても尊敬しているので、いつもいいショーができるようにベストを尽くしているんだ」
──ジョセフ・チェンとの試合をどう感じましたか。ガードを越えられずもトップから攻めて判定勝ちでした。
「彼は僕が予想していた通りの選手で、とてもテクニックがある。タフな子だ。思っていたより少し強いかもしれない。正直に言うと、彼はネット上ではオタクに見えるんだ。でも、実際に会ってみると少し強い。でも、ジョセフには敬意を表したい。彼は本当に素晴らしいテクニックを持っているし、本当に良い子だ。彼と試合ができて本当に感謝している」
──サブミッションで一本勝ちできなかったことについては?
「本当にここに座って言い訳ばかりしている。でも、キャンプ中はずっと体調が悪かった。試合前も、ちょっと調子が悪かったんだ。ちょっと首の調子が悪くてね。迷走神経に少し影響が出ていたんだ。試合に臨むにあたって、本当に調子が悪かった。でも、たとえ最悪の日であっても、僕はただ立ち向かって、やり遂げなければならない。次の試合では、もっといい動きをしたい。家に帰って、次の試合で素晴らしいパフォーマンスをするのを邪魔するものすべてに立ち向かおうと思う。自分がやるべきパフォーマンスをするよ」
──いまの打撃技術については?
「100パーセントだ。ケイドよりは少しマシだと思う。でもね、MMAをやるのが待ち切れないよ。弟の最後の試合を見て、すごく興奮したんだ。彼の試合を見て、すごく興奮したよ。僕らはいつもMMAの試合を見て育ってきたし、いつか自分たちもMMAファイターになりたいと思っていた。だから柔術で勝てて嬉しいよ。レガシーにもう一つ加わる。僕のレガシーは終わっていない。僕は柔術の世界で一番になりたい。文句無し、何があってもね。僕は自分の道を歩んでいると分かっている。今、僕と弟はベストだと思われていると思う。でも、僕はパウンド・フォー・パウンドで世界一になりたいんだ。だから、そうなるまで辞めるつもりはない。でも、MMAの試合は僕にとってとても大きなことだから、そこでランクを上げることにも興奮しているよ」
──次の対戦相手をどう考えている?
「ニコラス・メレガリをずっと狙っていた。彼はとてもやりにくいと思うし、よく分からないけど、正直に言うと、あまり戦いたくないんだと思う。前回戦った時は、ヒザの靭帯が何本も切れていたんだ。彼は以前は50ポンドも体重があったのに、僕はそれでも彼をア動作確認したんだ。だから、どうしても取り戻したい一戦なんだ。メレガリでなくても、ONEが次に僕の前に立ちはだかりたいと思う相手なら誰でも構わない。何でも準備はできているよ」
──『ONE 168: Denver』米国大会に参加する予定は?
「ああ、母国で試合ができるのが待ちきれないよ。とてもいい機会になる。アトランタのカードには、すでに壮絶な試合が組まれているよね。だから、もしそのカードに出られたら、それは素晴らしいことだよ。他の選手たちに時差ボケを解消できるかもしれない。でも、そうだね、健康でいられることに超感謝しているし、これからの1年に感謝している。たくさんのビッグイベントがあると思うし、それに参加するのが楽しみだよ」
──コスタリカのジムの状況はいかがですか。
「素晴らしいものになるだろう。僕たち兄弟にとって、あそこは地上の楽園で、小さい頃からずっと行きたかった場所だし、あそこに住んで、ようやく自分たちの望む生活を築くことができる。夢が叶ったんだ。サーフィンをしたり、トレーニングをしたり、僕らが大好きなことを分かち合ったりするために、たくさんの人たちが来てくれるのが待ちきれないよ」