2024年6月23日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館で開催されるKNOCK OUTのビッグマッチ『KNOCK OUT CARNIVAL 2024 SUPER BOUT“BLAZE”』(U-NEXT配信)にて、『ONE Friday Fights』で活躍するデーングリアングライ・シンマーウィン(タイ)と対戦するKNOCK OUT-REDフェザー級王者・小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)のインタビューが主催者を通じて届いた。
小笠原はジュニアキックで活躍後、2011年7月にプロデビュー。2013年5月にプロ9戦目でREBELS-MUAYTHAIフライ級王座を獲得したのを皮切りに、REBELS52.5kg級王座、ISKA K-1ルール世界バンタム級王座、KNOCK OUT-REDスーパーバンタム級王座、同フェザー級王座を次々と獲得。2023年3月には2022年ムエタイMVPでルンピニースタジアム3階級制覇を達成しているロンナチャイをダウン寸前まで追い込む完勝を収めた。
8月に『ONE Friday Fights』に初参戦するとヨッドウィッタヤに31秒でKO勝ちしたが、11月のOFGマッチでウィンに延長戦で敗れ、12月のONEでもチョーファーにKO負けと連敗。しかし2024年4月にソーンスックノーイを判定で破り、ONEで2勝目をあげた。サウスポーから放たれる左ストレート、左ミドルキックが得意。戦績は44勝(22KO)8敗1分。
デーングリアングライはタイラット・ミニフライ級王者のサウスポーで、戦績は85勝(22KO)19敗1分。『ONE Friday Fights』には2023年2月から出場し、ソンチャナとアピワットに連勝も、その後はアピワット、サミンダム、モンコルゲーウに3連敗してONEでの戦績は2勝3敗。
『生徒会長としてやってください』って言われても「やりません!』
──昨年の3月に引き続いて、同じ代々木第二体育館大会に出場ということになりましたが、小笠原選手の立ち位置も、おそらくご自身が大会に臨む感じも、昨年とはだいぶ違って来ているのでは?
「そうですね。去年の代々木大会は、やっぱりホーム『KNOCK OUT』を盛り上げて、もっと大きくするぞ!みたいなところで、自分が目指すのも日本の頂点みたいなところもあったんですよね。でもそこからどんどん、自分の思いが……タイの先生にずっと教わってきて、クロスポイント吉祥寺というのは山口会長が数々の名トレーナーをタイからよんでくれているので、その中でずっと育てられて強くなってきて、ムエタイというものへの思い入れもすごく強いし、そこを『KNOCK OUT』でもブレずにやってきたつもりです。
そこからONEに挑戦するようになって、今、ONEには世界のトップが集まってきているし、その中でタイ人のトップがベルトを持ってて。そこのベルトを獲らなくちゃいけないし、日本人で獲れるのは俺しかいないんじゃないかなというのを改めて思って。ただ、その中でもやっぱりホームリングの『KNOCK OUT』というのは自分の中で大切にしたいし、日本のお客さん、ファンの皆さんにも、こんな小笠原瑛作を応援してください、という部分ではありますよね」
──昨年の代々木はみんなが頑張ってたどり着いたという感じがすごくあったし、小笠原選手には、それをもっと引っ張っていこうという気持ちもあったと思います。そこから、より大きな目標が見つかったというところですかね。
「はい。言い方は悪いかもしれないけど、わがままというか……『みんなのために引っ張るぞ』じゃなくて、自分のために、俺のやりたいことをやるぞという感じはありますね。それに、自分のやりたいことをやって自分の目指すところへ行けば、それが本当に『KNOCK OUT』への恩返しになるという気持ちもあります。去年だとやっぱりジムでも自分がトップになって、所属の後輩のために、自分のために引っ張らなくちゃとか、『KNOCK OUT』のことも自分が引っ張らなくちゃという気持ちが強かったんですよ」
──まさに「生徒会長」というイメージでしたからね(笑)。
「優等生ですよね(笑)。そういう位置づけにされてましたけど、それがバッと変わって、『もう俺のやりたいようにやるぞ!』『やらせてくれよ!』という気持ちが、2連敗したことによって、出てきたんですよね」
──2連敗がきっかけだったんですか。
「それもあるかもしれないです。でもやっぱりこのキャリアになってきて、先輩たちがいなくなったので俺もトップになってきて、『後輩たちのために』とか考えてたんですけど、『いや、まだ俺は若いだろう』みたいな。すごい先輩ヅラしてるけど、言うても世界のキックボクサーを見回してみたら、もっと年上でバリバリやってる人がいるじゃないですか。『俺もまだまだ負けてらんねえな』と思ったし、『お前たちの面倒なんて見ーない』っていうか、もう俺、自由にやるよ! みたいな(笑)。『KNOCK OUT』から『生徒会長としてやってください』って言われても「やりません!』『俺もやりたいことやります!』みたいな感じです」
──生徒会長が、グレたんですね(笑)。
「はい、グレました!(笑)」
──そこで、今回ホームの『KNOCK OUT』出るというのはどういう感覚ですか?
「やっぱり自由にわがままにやらせてもらう中でも、日本のファンに小笠原瑛作は見せたいし、『KNOCK OUT』はホームリングだし、たまには出させてねじゃないけど(笑)」
──わがままですね(笑)。
「実際、ONEの次は『KNOCK OUT』に出させてもらうことで、ONEに挑戦している俺という姿を知ってもらえるんじゃないかなというのはありますね」
──それだけONEへの挑戦がやりがいもあるし、手応えもあるという感じなんですね。
「そうですね。やっぱりムエタイというところで見て、世界のトップどころ、どこのベルトを獲ったら一番なのかって言ったら、やっぱり今はONEのベルトですよね。日本人が今、何人か挑戦してますけど、それこそ思い出作りに1回出てるだけなのかなとか、そういう選手も多いじゃないですか。ちょっと、そういうところとは同じにされたくないという部分もあって。武尊選手とか野杁正明選手とかは本戦契約でやってるけど、それはやっぱりキックボクシングルールじゃないですか。俺はムエタイルールとは競技が違うと思ってるので、このムエタイルールでONEのベルトを獲ればタイでも有名になるだろうし、俺が先頭を切って、これまで日本人ができていない道筋を作れるんじゃないかなというのもありますね」
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自分が作る試合という作品を見てもらって
──では今回の相手、デーングリアングライに関しては、その道の中での意味もあるし、その戦いを日本で見せられるという点でもいい相手ということですね。改めて、デーングリアングライの印象というと?
「まだそんなにガッツリとは見てないんですけど……ただ首相撲の選手で、体の強さは気になりますね」
──今回はどういう試合を見せたいですか?
「やっぱり倒すところは見せたいですけど、まずはしっかり勝つこと。そこは絶対落としちゃいけないなと思ってるので、ムエタイをしっかりやって、その中で勝つ。その先にKOがあるので、どうやってKOを狙いにいくかなというところなんですけど、そこを狙いにいきすぎて、過去2戦を落としてる部分もあるので、そこらへんのバランスが難しいなとは思ってます」
──小笠原選手の場合、相手を追い込んでからの逆転負けも……。
「その問題があるんですよね。僕は本当にお客さんに対して、また主催者に対してもそうですけど、やっぱり面白い試合を提供したいし、普段の生活でも、どちらかというと面白くして、人を笑わせたいとか、求められてることをやってあげたいということがすごく強くて。それが過去2戦でも、少しでも見合ってる時間があったら、『お客さんが楽しんでないんじゃないか?』と思って前に出てやられる、みたいな。それが、過去の試合で負けてる原因の一つでもあるなというのは、自分の中でも思ってます。
ただ、そこに気づいた中で最終的には勝たないといけないし、お客様目線で求められてることはKOかもかもしれないですけど、自分の作品というか、『俺の試合はこれなんだ!』という意識でやっていればKOは絶対生まれるし。そういうところは今、思ってますね。自分が作る、試合という作品を見てもらって……たぶん、ありのままに、わがままにやっても面白いことはできるんだなと思ってるので。
──周りの目ばっかり気にするんじゃなくて、と。
「はい。だからありのままの俺でも、たぶんお客さんが喜ぶ試合ができるだろうなと思ってますね」
──やっぱり、一つ進化した感じですね。
「そうですね。もちろんエンターテイメントの世界なので、勝負しなくちゃいけないのは確かだし、相手もいれば、オーディエンスの声もあるとは思うんですけど、そこまでに作り上げて試合に出て、『これが俺の作品だ!』って見せて、それを受け取るのはお客さんなんだという部分の考え方みたいなのが、ちょっと変わったかなって感じますね」
──あと一つ、会見で並んでいる姿を見て思ったんですが、重森陽太選手が正式にジムの一員になりましたよね。ムエタイで実績も技術もある重森選手が入ったことって、刺激とか影響とかありますよね?
「重森君は同い年なんですよ。小さい頃か、ジュニアから活躍してきて、同じムエタイを極めようとしているし、そんな彼がジムに加入したのは大きいですよね。去年2連敗して、ガーッと落ち込んでるときに重森くんから連絡もらって、『ごはん行きましょう!』と。それで2人でごはん食べたんですけど、僕は『もうやめようかな』ぐらいの気持ちだったんですね。でも重森君と話して、救われた部分がすごくあって。彼からの刺激はメチャメチャ大きいですね。今このタイミングで、同い年でムエタイを極めてる重森君がクロスポイントの仲間になったことで、俺が引っ張っていかなくちゃいけないと思ってたクロスポイントに対しても、『あ、重森君もいるじゃん。よし、俺1人じゃないから俺もわがままにやって、重森君に任せるとこは任せます』みたいな、その心の余裕は彼が来たことによって、ちょっとできたかなと思います」
──生徒会長がグレた要因の一つでしたか(笑)。
「重森君は真面目なので(笑)。1人でジムや『KNOCK OUT』を背負わなくちゃいけないとか、どちらかというと、俺はそういうタイプじゃないなというのも思ったんですよね。キラキラした瑛ちゃんは見せられないんですよ、それだと」
──なるほど。
「いろんなものを背負ってる瑛作、追い込まれてる瑛作を見て、お客さんは『あ、いつもの瑛作じゃないな』って思うと思うんですよ。いつもキラキラしてて、吉祥寺という暖かい温室で育てられたんだけど、でも勝っちゃうという、たぶんそんな瑛作の方が、見てるみんなもハッピーなんじゃないかなと。いわゆる、『格闘技では飯食えなくて、オンボロアパートに住んで不屈の精神でやってきて……』じゃないんで、僕は。みんなに愛されてきたし、吉祥寺が大好きで、吉祥寺の街に愛されて、クロスポイントのみんなにも愛されて育ってきた僕が、勝負の世界でも愛で勝てるよっていう、そのキラキラが、過去2戦にはなかったなと思ったんですよ。
鈴木千裕みたいなタイプもいるし、重森君みたいなタイプもいるけど、俺は彼らにはなれないし、逆に言ったら彼らも俺にはなれないじゃないですか。千裕はKOが正義だと言うかもしれないし、他にもいろんな考えがあると思うんですけど、小笠原瑛作スタイルを好んでくれる人は絶対いるわけで。そこでみんなに好かれようとしなくていいんだなという、そこに気づきました。そんな試合になればいいかなって思ってます」
──今の小笠原瑛作選手の立ち位置がよく分かりました。では最後に、今回、特にここに注目してくれというポイントはどこでしょう?
「毎回言ってるんですけど、コツコツコツコツ積み重ねてきて、その中で負けて、階段1段落ちる時とかもあるんですけど、そのアップグレードした小笠原瑛作がいて、たぶん今が最高レベルなんですよ。負けて強くなってきて、たぶん今が一番いい状態に仕上がった小笠原瑛作だと思うので、そこを見てほしいなと思ってます」