2024年5月18日(土)と19日(日)、中国・上海のUFCパフォーマンス・インスティチュート(UFC PI)にて、『ROAD TO UFC:Season 3』(U-NEXT配信)が開催される。
今回のRTUは、フライ級、バンタム級、フェザー級、女子ストロー級の4階級でトーナメント戦が行われ、各階級の優勝者は、UFCとの契約が決まる。
日本からはフライ級に松井斗輝。バンタム級に野瀬翔平、小崎連、透暉鷹。フェザー級に原口伸、安藤達也、河名マスト。女子ストロー級に本野美樹が出場し、ワンマッチに雑賀“ヤン坊”達也が参戦する。
▼第4試合 フェザー級 5分3R原口 伸(日本)Shin Haraguchi 7-1ホン・ジュニョン(韓国)Jun Young Hong 13-7-1
初日の18日のエピソード1では、前回のRTUから階級を下げて、対世界の適正階級であるフェザー級で、原口伸が参戦。韓国DGFCフェザー級王者で、2022年のRTUで松嶋こよみと接戦の末、スプリット判定で敗れたたものの、その後、AFCで2連勝中の韓国のホン・ジュニョンと対戦する。
レスリングベースでGRACHAN王者の原口は、MMA7勝1敗。2023年2月に元UFCの小谷直之を1R パウンドアウトすると、RTUにライト級で参戦。
2023年5月の1回戦でウィンドリ・パティリマを2R TKOに下すと、準決勝で体重超過のバテボラティ・バハテボラの代役として参戦したAFC王者パク・ジェヒョンと急遽、対戦。体格差、リーチでも10cm差があるジェヒョンを相手に、15分にわたるMMAレスリングを挑み、判定3-0(30-27, 29-28×2)で勝利した。2024年2月3日の決勝では、元UFCファイターのロン・チューと対戦。初回からテイクダウンゲームを挑むも、一回り大きなロン・チューを寝かせるために前半で疲弊し、後半で失速。3R リアネイキドチョークを極められている。25歳。
今回、対するジュニョンは33歳。原口同様にライト級でも戦うため骨格は大きめで、身長で6cm原口を上回る。オーソから右の蹴りとストレート、さらに返しのフックも強烈なジュニョンは、6KO・TKOをマーク。組んでもテイクダウンに簡単には背中を着かず、最後まで“頑張る”ファイターだ。
果たして原口は、RTUにフェザー級でリベンジを果たして、UFCとの契約を獲得するか。
怖いもの知らずで行けたけど、MMA全然知らなかったんだなと
──RTU参戦が決まった瞬間の感想を教えてください。
「ギリギリ1カ月前とかに決まったのですが、朝起きたらマネージャーから連絡が入っていて。すぐ“よし、やるぞ”という気持ちになりました」
──昨年の「RTUシーズン2」では1階級上のライト級で、準優勝の結果に終わりました。準優勝での契約の可能性もあるなか、そこから今回また約1年かけてのトーナメントにすぐ“よし、やるぞ”と思えた心境は?
「僕としても(適正階級の)フェザー級でもう1回やり直して、そこでしっかり“自分で契約を勝ち取ろう”という気持ちが一番強かったです」
──今回、決定したのがギリギリということですが、2月に決勝戦を終えて、ダメージを抜いてからはどのように過ごしていましたか?
「直さなきゃいけないことが山積みでいっぱいあったので、それをずっと直す取り組みをしていました」
──昨年RTUで戦った3試合の経験をどう総括されたのでしょうか。
「1年間走り抜けて、精神的に落ちる部分もありました。でもそれは自分を強くしてくれたので、去年のミスで修正しきれなかったものを今回修正していきたいというのはあるので、そういう意味でいい経験だったと思います」
──どのようにフェザー級で作り直してきたのかも伺いたいのですが、まず減量のなかったライト級と比べて、そもそも体重を作ることだったり、コンディションの面ではいかがでしょうか。
「まず、減量がちゃんとあるほうが精神も研ぎ澄まされて、感覚もピリッとして“あ、試合だ”って感じがあったのですけれど、ライト級の時にはこれがなかったんだなって。“戻ってきた”という感じです。減量していると勝手に試合のことを考えるようになりますし、減量する分、体の疲れも溜まるからケアもしっかり気を遣えている。逆にライト級のときは減量がない分、そういうところが雑になっていたのかな、ということも感じます。気持ちを整えて試合に臨めそうです」
──「RTU3」に向けた練習環境や取り組みとして、新たに始めたり加えたりしていることはありますか?
「現在も協栄ジムに行って大橋忠幸さんのもとでMMAで使えるボクシング技術と足の運び、タケダイグウジさんにムーブメントを教わり始めていて、まだ関わり始めて日が浅いからその成果が今回どれだけ出るかは分からないのですが、戦略を立てていただいている面はとても心強いです。そういう方々から教わったことを、対戦相手と体型が近い選手にひたすら試してやっているという感じです」
──その取り組みのなかで感じていることは?
「“MMAぜんぜん知らなかったんだな”と痛感しています。これまで『怖いもの知らず』で行けたのも、それはそれで強さではあったとは思います。でも今はちゃんとイチから戦略を立てて試合に臨むことに対して、すごく楽しみに感じています。ちょうどアジャストしていく期間で、下手クソでも立ててもらった戦略通りの動きをしようとしているところですけれど、現地に入ったらそれを自分なりに落とし込んで、機械的にならないように動こうと思っています」
──大橋さんとタケさんから教わっていることがだんだん自分のなかでしっくり来ている段階なのですね。
「協栄には、最初はやっぱりボクシングをやりに行くんだと思って、バン! バン! みたいにやるのかと思っていたところもあったのですが、組むまでの距離の潰し方とかを教えていただいています。最初の頃は“倒すパンチを教えてもらえるわけではないのだな……”なんて思ったりもしたのですけど、今になって大橋さんの言っていることが全部、タケさんの言っていることとも近づいてきて腑に落ちるものがあって。大橋さんに教えていただいたことを取り入れてはいたのですが、頑張って覚えていただけだったようなことを、タケさんから(別の)言い方で、こういう風に動いてみて、と指示を出されたときに、“これ大橋さんに教わったやつじゃない?”と思ってみる。そうすると『できているよ!』と言われて『おお、できた』と、より理解できてきました。
あと、JTTでの出稽古でちょっと傷めたときも、大橋さんからテーピングの巻き方とかも教わったりしました。JTTには、月1回くらいで、たまに違う人とやって“どれくらいできるようになっているか”を試すという意味で行くようにしています」
──かなり細かく戦略や相手選手への対策を立ててきたということでしょうか?
「タケさん達が相手のクセなどを色々分析してくれて、こっちに動いたらヤバいとか、こっちに動くと当たりづらい、そういうものを細かく教えていただいて意識できるようになってきたので、そこに対しては自信につながっています。振り返ってみるとこれまでは対策はざっくりしながらも、自分のやることは曲げずに行けば勝てるという感覚でした。今は相手が何してくるかを細かく見て、そのなかで自分がやることをぶつけて行こうという感じなので、自分になかったことをできるようになっていますね」
──そんななか、RTUフェザー級での再出陣が決まり、転向初戦で「負けたら終わり」のRTUです。その点では不安はなかったですか?
「僕的には正直なくて、普段の体重が小さいのもありますし、いま減量していて72kgのときが一番動きが良く、絶対に適正はフェザーだなと感じたりしているので、そこに対しては全然ないです。レスリングでは当日計量の70kgでしたし」
[nextpage]
1個のテイクダウンにいくらでも時間を使おうというくらいの気持ち
──1回戦の対戦相手は韓国のホン・ジュニョン選手となりました。相手の印象はいかがですか?
「韓国人の選手で、韓国人特有の体の強さとタフさを持った“THE・韓国のファイター”という感じのイメージの選手です。去年、準決勝で戦ったのも韓国の選手(パク・ジェヒョン)でそういう感じだったのですが、立つのがすごい上手かったんです。彼らが同じジムで練習しているというのもあるので、同じイメージを持っています。頑張るタイプですよね、きっと。
絶対立ってくるとは思っていて。僕も改良してきて、倒してすぐに固めようとして次の動作へと行って、際で立たれるというようなことが多いのですが、1個のテイクダウンにいくらでも時間を使おうとくらいの気持ちでいます。もし立たれたら立たれたで、もう1回、そのクラッチを外さず倒して、1分くらいかけて背中を着けさせるというくらいの感覚で。そこをちゃんとできればしっかり勝てると思っています」
──コントロールしつつ、最終的に寝かせると。打撃のほうはどんな印象ですか? 踏み込むワンツーの右が要注意でしょうか。松嶋こよみ選手も被弾していました。
「右が強いというのはあるけれど、本当は右からの左の返しに一番警戒しています。蹴りもローと腹を打ってくるけれど、そこは良くも悪くも我慢というか、蹴りが入る位置じゃないと自分もタックルに入れないので。インローも、めんどくさいと思います。ただやっぱりそれよりも、先ほど挙がったツーフックがややこしいと思っています。そこだけはもらわずにという形で作っています」
──フェザー級トーナメント出場選手で、ほかに注目している選手や戦ってみたい選手はいますか? この階級は日本人選手が3名出場しますが、その点も含めて教えてください。
「僕としても日本人が多ければ多いほどバチバチになって、そのほうがヒリヒリして面白いのかなと思っていて。全員レスラーでそれなりに意地もあると思うので、楽しみです。河名(マスト)選手の相手が6戦無敗で底が見えない未知数な感じは気になっています。他の選手も含めてざっくり戦績を見た程度で。あとは安藤(達也)選手がフェザー級でどういうコンディションを作ってくるのかに注目しています」
──準決勝がどういうブラケットになるのか分かりませんが、皆が勝ち上がってきたらどこかしらで日本人対決を経験することになりますね……。
「そうですね、それで盛り上げていきたいです。周りのひとにもマイナスな言い方で『日本人が多いね……』と言われるのですが、僕としては、日本人対決も面白いじゃないか! と思えています」
──安藤選手もそうなのですが、今回原口選手が対戦するホン・ジュニョン選手も、33歳で21戦を経験しています。ベテランと戦うことについては?
「そういう部分も、前回決勝のロン・チュー戦で経験できたことだと思っています。あの試合でやらなければいけなかったことをちゃんとやれば、今回の相手との試合は大丈夫だと思っています」
──この舞台でどんな試合をしたいと思っていますか?
「タックルに入るタイミングだったり、僕としてはいつもは、レスリングで寝かせて、パウンドだったり、立たせたらもう1回倒して、という試合運びだったところが、今回は1回倒してから、そこから柔術的な動きなどを合わせる練習もしてきたので、そういうところを見てほしいです」
──実際どんな展開になっていくと予想していますか。
「相手選手の過去の試合を見た感じではフィニッシュがすごくあるかというとそんなことはないので、ドロドロな試合になりそうな気もしています。前回レスリングを飛ばして使い過ぎた、というのがあって、5分3Rの15分間のなかでやらなければいけないことを5分間で全部やってしまった反省点があります。今回はそこを我慢してしっかり15分レスリング使うことができれば、コントロールできるという考えではいます」
──UFCにつながる舞台に出場するにあたって、どんな選手として、世界の人にこの試合に注目してもらいたいですか?
「去年負けて言うのも何ですが、自分では勝手に『自分はUFCに行くべき存在だ』と自分を信じて、そう思い込んでいるんです。その思いは去年より強くなっていて。フェザー級で、自分としては適正なのだからもう言い訳ができないですし、自分が望んでいた階級でできることで『行きたい』のではなく『行かなくてはダメな存在だ』と思っています」
──話が飛んでしまうのですが、同門の武田光司選手も同タイミングでフェザー級に落としました。先輩から何か言葉をかけられたりはしましたか?
「『早く(UFCに)行ってくれ』って一言かけてくれましたね」
──UFCのフェザー級ランカーを見て、感じることは?
「(モフサル)エフロエフ選手は注目しています。上に行くんだろうなと思って。今は、チャンピンクラスの選手たちは全然まだ見えないところにいて、やっていることのレベルも違うと、正直感じています。ただ、みんなのデビュー戦とかを最近見ているんです、コリアンゾンビvs.ポワリエの試合とか。この人たちも今はあんな試合をしているけど、こういう風だったんだなと感じることで、今後自分もああいう、洗練された戦い方になっていけるという期待をしています。ブライス・ミッチェルはタイプが近いので一番やりたいですよね」
──そのためにも、RTUでの進化した姿を期待しています! 最後に、U-NEXTのライブ配信を通して応援する皆さんに、メッセージをお願いします。
「僕自身、2回目の挑戦となりますが、フェザー級で、自分の力でしっかり契約を勝ち取りたいと思うので、応援よろしくお願いします」