アグレッシブに攻め続け、ビッグヒットもあった秋元はなぜ負けたのか(C)ONE Championship
2024年5月4日(土)タイ・ルンピニースタジアム『ONE Fight Night 22:Sundell vs. Diachkova』(U-NEXT配信)の第7試合で行われた、バンタム級キックボクシング3分3Rのウェイ・ルイ(中国/初代K-1 WORLD GPライト級王者)vs.秋元皓貴(日本/元ONEバンタム級キックボクシング世界王者)の判定結果がファンや関係者の間で物議を醸している。
試合後、その判定結果のジャッジペーパーが公開された。それを元に試合を振り返ってみよう。
【写真】公開されたジャッジペーパー
1R、前に出るのは秋元。ルイは右へポジショニングしての右フックからの左ミドル。ローとミドルの蹴り合いが随所で見られ、序盤は秋元が蹴り返していたが中盤からはルイの蹴りで終わることが増える。ルイは左ミドルを多用し、秋元はこれを腕で受けることが多い。
終盤、前に出た秋元が右ストレートをヒットさせてルイを仰け反らす。前に出て多く攻撃を繰り出していった秋元をとるか、ステップ、ジャブ、左ミドルで距離を作っていたルイをとるかで分かれるところ。ただし、蹴りが当たった(腕を蹴ったのも含めて)数はルイの方が多かった。
1Rはジャッジ3名とも10-9でルイ。
2Rは開始直後から秋元が距離を詰めてパンチを打って行き、ルイはこれをかわす。秋元が右フックを空振りしたところで右フックをヒット。秋元のパンチをかわしてガードの上からでも右フック、左ストレートを打つルイ。手数を出して前に出るのは圧倒的に秋元だが、ルイのディフェンスで空振りが手数が多い分目立ち、逆にルイはパンチをガードの上からでも当てて空振りは少ない。かわして打つ、を徹底している様子のルイ。
2Rは秋元のアグレッシブが評価されジャッジ2名が10-9で秋元。このラウンドもルイに10-9を付けたジャッジは秋元のアグレッシブさよりも、ルイのディフェンスと空振りの少なさ(ガードの上からでも当てた攻撃を含む)を取ったのか。
この時点でジャッジ2名が19-19、ジャッジ1名が20-18でルイを支持。勝負は最終ラウンドとなった。
3R、前に出る秋元がこのラウンドは左右ミドル、パンチも当てていき、右ストレートで仰け反らす場面、左ミドルが効いたと思われる場面もあった。この印象が強いが、他では秋元の攻撃に対して基本的にはかわして打つ、もらったら返すを徹底して繰り返していたルイ。
アグレッシブに攻めて手数も出し、強打も当てていた秋元。完全に勝負のラウンドと踏んでポイントを取りに来た動きだ。それに対してルイは大きなミスをしない、僅差で勝とうという戦い方をしたと思われる。
3Rの判定はジャッジ3名とも10-9でルイ。
全体的に見てアグレッシブに攻めていたのは秋元で、攻撃の手数も多く、強い打撃は間違いなく秋元の方が多く当てていた。一方、ルイはディフェンスの上手さでその秋元の攻撃を空振りさせて自分は当てる、もらっても返して自分の攻撃で終わる、秋元がインファイトを仕掛けたのをジャブ、左ミドル、フットワークで防いで自分の距離を作った。
アグレッシブさとビッグヒットよりも、1Rを通して相手を上回った(相手の攻撃をかわして打つ、攻防が自分の攻めで終わる)ことで試合を支配していたというムエタイに近いジャッジが行われたとも考えられる。
日本のジャッジならほぼ間違いなく秋元を支持したであろう。秋元のセコンドに就いたK-1の江川優生が驚いた表情を浮かべたのも無理はない。ONEがタイで開催するようになって、回を重ねる毎にジャッジの判定基準がムエタイ寄りになってきていることを指摘する声もあり、この試合はそれがより分かりやすく出たと言えるのではないか。