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インタビュー

【UFC】ローブローのストップを制して“石の拳”を打ち抜いた“ポアタン”アレックス・ペレイラ「作戦がハマる距離を掴んだから流れを止めたくなかった」。フィニッシュ後の仕草は「彼に“学ばせ”たかった」

2024/04/15 14:04
 2024年4月13日(日本時間14日)、米国ネバダ州ラスベガスのT-Mobileアリーナにて、UFCナンバーシリーズの300回記念大会である『UFC 300: Pereira vs. Hill』(U-NEXT見逃し配信)が開催され、メインイベントで「UFC世界ライトヘビー級タイトルマッチ」(5分5R)として、王者アレックス・ペレイラ(ブラジル)と挑戦者ジャマール・ヒル(米国)が対戦。  UFC2階級制覇王者のアレックス・ペレイラにとって初防衛戦で、元ミドル級王者のペレイラは2023年11月に、怪我から復帰のイリー・プロハースカとのライトヘビー級王座決定戦で2R KO勝ちで2本目のベルトを巻いた。  対するヒルは、プロハースカが怪我で返上した王座を、ペレイラの師匠グローバー・テイシェイラに判定勝ちして獲得。しかし怪我により王座を返上し、今回が1年3カ月ぶりの復帰戦だった。  試合は、入場時から白熱した。花道から自身のルーツであるブラジルのパタソ族の弓矢をオクタゴンに向けて射るポーズで咆哮したペレイラ。オクタゴンで待ち構えるヒルはその放たれた矢を右手で掴み、ヒザで叩き折る仕草を見せた。  試合は、オーソのペレイラに、サウスポー構えのヒル。ともに前手のフックをフィニッシュブローとするなか、ヒルは左の上下の蹴り、顔からボディストレート。ペレイラは左カーフ、左ボディジャブを打っていく。  喧嘩四つの前手争いでペレイラはヒルの前手を包むように制しながら、距離を詰めると、ヒルの左の蹴りが「ボコッ」とファールカップに当たりローブローとなる。 「タイム」の声とともにハーブ・ディーンレフェリーが間に入ろうとするが、右手でレフェリーを制して続行するペレイラは、じりじりと間合いを詰めて、右を打つフェイント。そこに左ストレートを狙って来たヒル。しかし、ペレイラはその左を頭を右にずらしてかわして、カウンターの必殺の左フック! ヒルの目が飛び、後方に倒れ込んだ。  このインパクトの瞬間、実際、ペレイラはヒルの前足を踏んで前手の左フックをアッパー気味に打ち込んでいる。  ダウンしたヒルが半身になったところでレッグドラッグのような形からパウンド、鉄槌を連打したペレイラ。ここで再びヒルの意識が飛び、レフェリーが間に入った。  ペレイラは両手を上にして“ザッツ・オール”(この通り)といった仕草を見せて、1R 3分14秒、KO勝ち。初防衛に成功した。  試合後、かつてヒルに敗れている師匠のグローバー・テイシェイラから黒帯を巻かれたペレイラは、ケージの中で、「相手の左をもらったけど、自分は蹴りで距離とタイミングを計っていた。ヒルは強敵だったけど計画通りに当てることが出来た。自分は正直なところ、ケージの中ではチャンピオンだと思って戦っていない。ケージの内外でいつも挑戦という気持ちでいないといけない。ベルトのせいで傲慢になることはできない。このベルトを防衛し続けて、出来ればブラジルで防衛もしたい。次はヘビー級で戦いたい」と語っている。  また、試合後、各国のメディアの囲み取材に応じたペレイラは、あらためてフィニッシュ直前のローブローを流したことについて、「ローブローが起きたところで自分の作戦がハマるような距離を掴み、その流れを止めたくなくて」続行したことを明かし、決め手となった左クロスのフックを「ヒルのパンチをたくさん外させて、距離感を探っていた」と語っている。  そして、KO直後の“ザッツ・オール”のポーズの意味を、試合前のヒルの行動に強い怒りを持っていたとし、「いつもなら駆け寄って称えて挨拶をするけど、彼に対しては違うやり方にしたかった。彼に“学ばせ”たかった」と語った。  会見で流血し壊れたモアイ像でペレイラを揶揄するなど、トラッシュトークを見せたヒルだが、相手を間違えた形になったようだ。 この日の大会では、元ライトヘビー級王者であるイリー・プロハースカもアレクサンダル・ラキッチを2R TKOに下しており、ペレイラとの再戦を望んでいるが、UFC史上9人目の二階級制覇王者である“ポーアタン(石の拳)”は、ミドル級、ライトヘビー級に続き、「ヘビー級でも戦ってみたい」と三階級制覇も視野に入れている。  試合後の囲み取材での一問一答は以下の通りだ。 [nextpage] ペレイラ「俺は自分に言い聞かせた。『この男は自分に敬意など持っていない』と」 ──『UFC300』のメインイベントを終えた率直な感想を。 「自分の試合に集中していたけど、みんなが『UFC300はすごいイベントだ』と言ってるよね? たくさんの期待を集めてもいたと思うし、その(メインイベントとしての)価値はあったんじゃないかな」 ──1R、3分14秒のKO勝利。特に怪我などもなく終えましたか。 「小指がちょっと痛い。何ががあったかちょっと分からないけど、多分なんでもないと思うからすぐに戻ってきたい」 ──今回の試合前に、グローバー・テイシェイラがキャンプを早めに切り上げたと言っていたのですが、どうしてですか? 「献身的に頑張ったから。練習を落とすことはしないし、責任感と、規律をもって取り組んでいる。そういう心持ちが全てを変えるっていうことが分かると思う。常に勝利を思い描いてる。常に、自分がタイトルを持っていたいと思っているし、そのための献身性と自分自身の知性を高めることでより良いファイターになれると信じている」 ──試合後のコメントで「正直なところ、ケージの中ではチャンピオンだと思って戦っていない」と言ったのは? 「ベルトを初めて獲るのと防衛に違いはない。オクタゴンに入ったらチャンピオンであることなど忘れているから。自分はチャンピオンで防衛しなくては、と思う人もいるだろうけど、それはやりすぎないようにするだとか、戦い方が変わる。俺は勝ってベルトを獲るためにやるのであって、『防衛する』という意識で臨んだら、戦いが別のものになってしまうんだ。長期戦になったりするかもしれないし、もちろん自分は常に5R、戦えるようにしているけど、もしノックアウトだったり、フィニュシュの場面になったら、5Rの前にそうなったらなったで嬉しいし」 ──フィニュシュの場面を振り返っていただけますか? 「自分は距離を探っていて、ジャマールへの蹴りがうまく行ってなくて、やっぱり彼は強いのとチームも一流だから、自分が蹴りで作戦を組み立てていることを分かっていて、でも自分は蹴りにこだわるつもりはなく、いつも拳で決める機会はうかがっていて、実際そうなったわけだけど」 ──ローブローを受けながら、レフェリーのストップを制したことについては? 「あの通り、ローブローが起きたところで自分の作戦がハマるような距離を掴み、そこは彼が警戒していたはずで、彼は少し下がって蹴りを出した。自分はそこで行けると思ったから、この作戦が通じる流れを止めたくなくて、彼に考える時間を与えたくなかったんだ」──(U-NEXT格闘技アカウントに寄せられた日本の視聴者からの質問で)あのフィニッシュブローはスマッシュ(アッパー)気味のフックでした。当てるコツがあった? 「どうだろう。クロスになったのは、とにかくパンチで仕留めたいというのがあって、キックをしながら、もちろん自分はオーソドックス構えだから、オーソ同士で戦うなら当然、前足(を蹴る)がいいけど、(サウスポー構えのヒルの)蹴りはちょっと警戒しつつ、彼の拳は重くてやっぱり彼はすごく強いから、慎重に(ヒルの)パンチをたくさん外させて、距離感を探っていた。そのときのクロスだから、ということかな」 ──KO後に両手の掌を上にして見せたポーズの意味は? 「そうだな……(試合前に)ヒール的に彼がやったことっていうのは、ファイトウィークの間、彼を見ているといつもすごく馬鹿げていて、からかったりして彼流のジョークで、そういう自分を嫌がらせるジョークをいっぱいしていただろう? 試合がどうなるかっていうより、自分が蹴って様子で彼が作ったビデオとかを見て、自分が(試合で)当てたことで彼が倒れたのを見て、同じことをしたまでだと。“ザッツ・オール”つまり“以上”っていう感じだ。  彼は自分を『リスペクトしている』と言っていたが、結局のところ敬意など持っていない。公開会見のときに彼がやったこと(※ヒルは会見でボロボロで鼻血も出ているモアイ像を持参し、ペレイラの敗北を揶揄)だったり、みんなが見ているなかでああいうこと(フェイスオフで顔を近づけて挑発)をした。だから俺は自分に言い聞かせた。“この男は自分に敬意など持っていない”と。みんなには分かってもらえていると思うけど、自分は皆に敬意を持っている。そういう人間だ。試合が終わったら駆け寄って称えて挨拶をして──彼に対しては違うやり方にしたかった。彼に“学ばせ”たかったんだ」 ──試合後にヘビー級転向も示唆していたが? 「ヘビー級に転向とは言っていない。でもヘビー級の選手と戦いたいと言った。自分はライトヘビー級王者だ。誰と戦うかは気にしていない。ただ、試合がしたい。俺はファイターでいつなん時、誰とでも戦うんだ」 ──この日、イリー・プロハースカもアレクサンダル・ラキッチをKOしました。プロハースカとの再戦も? 「答えは繰り返しになるけど、オレが決めることじゃないよ。ただ用意された人と戦うだけだ。ただイリーとの試合はそんなに自分にとって意味というか、妥当性はないんだ。みんながみんな、自分とやりたいと言っていることが当たり前のような状況だから、そういうなかで、一度戦っている相手とやるのは、あんまり自分はしっくりこない」
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