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コラム

【超RIZIN】朝倉未来はなぜ平本蓮と戦うのか──「負けたら引退」のマネーファイト実現の真相とは?

2024/03/17 08:03
 2024年7月28日(日)さいたまスーパーアリーナで開催される『超RIZIN.3』の対戦カード発表会見が16日、都内にて行われ、朝倉未来(ジャパントップチーム)vs.平本蓮(剛毅會)のフェザー級(66kg)戦が発表された。  朝倉はMMA17勝4敗1NC。2021年6月にクレベル・コイケに一本負け後、萩原京平、斎藤裕、牛久絢太郎を相手に3連勝。しかし、2023年7月の『超RIZIN.2』でヴガール・ケラモフにリアネイキドチョークで一本負け。11月にはYA-MANにオープンフィンガーグローブマッチのキックルールで1R KO負けとなり、試合後は一時、引退を示唆していた。  対する平本は、MMA3勝3敗。K-1でゲーオ・ウィラサクレックをKOに下すなど活躍後、2020年の大晦日にMMAデビュー。RIZINで萩原京平、鈴木千裕相手に連敗スタートも、鈴木博昭、弥益ドミネーター聡志に判定勝ち。元王者の斎藤裕にはスプリット判定で敗れるも進化を見せ、2023年大晦日のYA-MANとのMMA戦で判定勝ち、再起を果たしている。  平本のRIZIN参戦時から長く舌戦を繰り広げてきた両者による一戦。  MMAのキャリアだけを見れば、4倍近い試合数をこなしている朝倉がフェイバリットだが、ジュニアキック、ジュニアボクシングからK-1で活躍し、MMA転向後は剛毅會に所属し、さらなる空間把握と大塚隆史とのレスリング、テイクダウンディフェンスがその構えに融合している平本は急速に進化を遂げている。  SNSを活用し、いずれも時代の寵児といえる人気を得ている両者はいかに、このさいたまスーパーアリーナ「スタジアムバージョン」の『超RIZIN.3』でメインイベントとして相見えることになったのか。 年末に弟から刺激をもらった(未来)  会見後の榊原信行CEOは、朝倉未来の復活への思いが、平本戦に繋がったという。ケラモフに一本負けし、他流試合でYA-MANにKOされ、引退まで口にした未来を、鼓舞したのは弟の朝倉海だった。  大晦日、体重超過の元Bellator王者フアン・アーチュレッタを2R TKOに下した海は、試合後、マイクを持って1歩引いてセコンドについていた未来に、「僕ら兄弟は世界のトップに立てると思います。だから兄貴にも来年、チャンピオンを獲ってもらいたいです」とファイターとしての復活を呼び掛けていた。  今回の会見の冒頭で朝倉は「去年の年末に弟から刺激をもらって、まあ、俺がね、このRIZINのフェザー級盛り上げてきたっていう自負があるので、年末にトップ戦線の方に食い込みたいなと」と、再起戦に臨むきっかけを語った。  会見後の本誌の取材に、榊原信行CEOは、「未来が言った言葉がそのままそう(今回の試合に臨む理由)なんじゃないかなと。リング上でああいった形で、『来年、兄貴にはベルトを巻いてほしいです』と言われちゃったことも、やっぱり兄弟のなかで──それぞれ目指す方向性は違うのかもしれないですけど──1歳差で兄弟でありながらもライバルとして弟がいろんな夢に向かって目標を実現させていくことに併せて、弟からああいう言葉を受けて、まだこのままでは終わりたくないし、終われないという、弟へのライバル心も含めて、ああいうモチベーションになったんだろうなとは思っています」と1年ぶりのMMA復帰を決めた朝倉の心情を代弁した。  海は、RIZINバンタムのベルトを奪還し、UFC挑戦を表明。年内には海を渡り、オクタゴンで戦うべく調整中で、RIZINも海をいかに送り出すかの最終協議に入っている。  そんな中、31歳になった未来は、すでに事業で成功を収め、自ら戦わなくてもいい環境下で、再びリングに戻る決意をした。 「負けたら引退」の言葉は、RIZINフェザー級をけん引した「自負」と、MMAファイターとしての自信、そして7戦目の平本を相手に後れを取るようでは、トップ戦線では戦えないという覚悟の現れだろう。  榊原CEOは、「未来は全然、イージーな相手だと、ある部分思いながらも、連敗しているからしっかり準備はしてくると思います。その意味では両選手に4カ月間が与えられているから、最高のタイミングでこのカードが見られる。油断して(急な)流れのなかでやる試合ではないので、未来にとっても、『この試合で負けたら引退する』という、蓮の『引退』は売り言葉に買い言葉かもしれないけど、まあでも、未来からするとこのタイミングで平本蓮に負けたら引退をするっていうのはなんとなくこう、僕は腹落ちがする」と語る。 [nextpage] 大晦日まで溜められるカードでもない──スタジアムバージョン復活のキーに  斎藤裕に接戦で敗れた平本は、ランク的には、王者・鈴木千裕、ヴガール・ケラモフ、金原正徳、クレベル・コイケらの下に位置する。クレベル、ケラモフに敗れたものの、萩原京平、斎藤裕、牛久絢太郎を3タテした朝倉とは、戦績だけを見れば、若干の不釣り合いなカードだ。  1年前の段階では、平本との戦いに「メリットがない」と言っていた朝倉が、この試合を受ける気持ちに傾いていったのは、敗戦からの復活の相手として、打って付けだったからだろう。  会見で朝倉は、その理由を「直近の試合で負けたりとかもあって、まあこう、RIZINで俺、たぶん……」と言いかけたところで、平本を口を挟み、「簡単に言えば“YA-MANにぶっ飛ばされたからこの試合が決まりました”。そんなのいちいち聞かなくても分かるじゃないですか(笑)」と、潮目が変わったと断言。ムッとした朝倉だが、「いやまあ、だから、何でしたっけ、質問?“楽な相手”だからですよ。でも俺が狙っているのは今年の大晦日にトップに絡んでる奴と戦って復活するってことです」と、その先を見据えての試合だとした。  見据えるのは、「鈴木千裕とか金原さんとかクレベル、ケラモフ、そのへんと試合したいなというふうに思っています」と、平本の首を手土産に、大晦日に上位戦線に挑戦していくことが目標だという。  人気者同士の初対決実現に、榊原CEOは、「『夏にビッグマッチをやろう』ということは、未来もすんなり(腑に)落ちたし、蓮も“待ってました”ということで、そんなにすごいハードネゴシエーションではなかった」という。  そして、平本が手繰り寄せたとも言えるこのカードをシーズンピークの大晦日を待たずに投入したことについて、「そこまで“溜められる”カードでもないと僕は思っているので。実力的に、戦績的にどうなんだ? と。直近に誰を倒しているの? とか、いろいろなことを紐解き出すとどうなの? っていう。  平本蓮のMMAファイターとしての器量とか力量というか、そこはこの前のYA-MAN戦だけではちょっと判断し切れないところがありますけど、間違いなく進化はしてると思います。でも、言っても朝倉未来は、この直近はケラモフに負けたあと、YA-MANに不覚はとっているけど、YA-MANとの試合は当然キックの試合ではあるし、MMAというスポーツの中でいうと、“ちょっとレベル的には違うのかな”と思いつつも、平本蓮がどこまで上積みできてるのか、期待ができるところまでは来てると思います」と、格差カードの要素は認めつつも、それを覆す可能性も平本にあると語る。 「やっぱり強さだけじゃなくて、漢と漢、それぞれ“この2人が戦ったらどっちが勝つんだ? 見たい”というものっていうのは、強さを競うだけじゃない、それぞれの存在意義とか、生き様とかを賭けた戦いになるので、ほかの選手には負けてもいいけど、“コイツだけには負けたくない”っていう戦いになると思う。だから2人は競技者としてアスリートとしてというよりは、それぞれ『引退をする』というのは、“コイツに負けたらもう引退するしかないんじゃないの?”これだけボロクソに言っておいて、ソイツに負けちゃうっていうことは──その意味で存在意義や生き様を賭けた珠玉のカードになるんだと思います。戦績うんぬんよりも、いまの瞬間のマッチメークとして、この2人が戦うに値する状況だろうと判断した感じです」と、単なるランキング戦とは異なる意味合いを持つとした。 [nextpage] 「切り札」投入をバブルにしないために──総力戦で繋ぐ  格闘技では、魔裟斗引退試合が行われた2009年大晦日の「Dynamite!!」以来となる、4万人を動員するスタジアムバージョンで「記録を塗り替える」という榊原CEOは、今回の“金のなる試合”に、ファイトマネーとは別に、両者にインセンティブを与えることを明言している。 「(ファイトマネーも破格に)なるでしょうね。まあPPVボーナスとかもミックスしながらになるでしょうけど、それだけの経済効果が生まれて、UFCみたいに訴えられても困る(独占禁止法訴訟)ので、UFCが一番いいときで13パーセントしか選手に還元していなくて、選手たちから集団訴訟を起こされていて、負けたら300億近いです。当然、そんなことにはRIZINはならないと思いますが、やっぱり適正な利益の配分はちゃんと選手に行かないと健全な発展はないと思うので、2人に、それぞれの選手に届くようにしたいと思います」と、“真夏のマネーファイト”を語った。  これまでさいたまスーパーアリーナでの最多動員は、2005年大晦日に開催された『PRIDE男祭り』の4万9801人。メインイベントでは、元柔道五輪メダリストの吉田秀彦と小川直也がヘビー級で戦い、吉田が因縁の小川を腕十字に極めている。そのとき、ヴァンダレイ・シウバとヒカルド・アローナによるPRIDEミドル級王座戦は、セミファイナルに置かれていた。  今回もタイトルマッチではない朝倉vs.平本をメインイベントとする、RIZINならでの「切り札」カードを投入し、「やっぱり4万人以上集めようと思うと普通のハードコアなファンたちに、通常の流れのものだけを届けていてもそのムーブメントというかその人達の動員は難しいと思うから、やっぱりこうカジュアルなファンまで届くような祭りを作り出せたら」と語る榊原CEOは、今回の『超RIZIN.3』が“バブル”にはならないという。 「いま動員力はすごく増している。コロナ前よりも増しているんじゃないですかね。ただ、熱は一瞬で冷めるもの。安定はないので。『THE MATCH』後のようなロスみたいなものもあるなかで、『THE MATCH』はスペシャルなものだから、そのまま引き継がれてはダメ。キック界はあれは忘れた方がいい。『THE MATCH』という別タイトルをつけて、武尊と那須川天心というスーパースターがいたから、その1カードじゃないですか。  今回は“総力戦”で行きますから。アンダーカードも期待していただいて、RIZINの10年目を目指す、この9年間の戦いの歴史のなかで生み出された熱をここでひとつ集約する。また将来に向けて1年後、2年後にこういうものが見られるかもしれない、というものが生み出されるような、そんな通過点のひとつの大きな山、という風に考えてもらえればなと思います」と、RIZINの世界観を凝縮した「総力戦」で点を線に繋ぐとした。 [nextpage] 「リングラスト」を払拭するのは──  世間の注目を集めるカリスマ同士の一戦。勝者には“ピープルズチャンピオン”的なベルトも用意される案も浮上している。  そんな大一番に向け、朝倉は平本を「やっぱりMMAの選手としてはまだまだだなと思いましたね。組みとかスクランブルとか。打撃は上手いけど別にあの、威力もないじゃないですか? 1回もKO勝ちもしてないし。まず普通にやって俺が勝つなという感じですね」と、トータルファイターとして自身が上回っているいう。  対する平本は「(朝倉が)ケラモフに負けてイジケて、YA-MANに伸ばされて、あのすごいイジケてるんで、僕が最後のトドメを刺そうと思います。ボコボコにします。YA-MAN以上の失神させますよ」と、BreakingDown級の1分間KOをすると宣言した。  この試合に向け、未来は、タイ合宿を示唆。さらに、海が海外から呼び寄せたエリー&ビリーコーチを含む、新たなJTTチームもバックアップするだろう。そこでは、最大の武器である打撃と、萩原戦、斎藤戦でも見せた自ら組んで倒す動きの融合が図られるはずだ。  一方、空手と組みをミックスさせてテイクダウンディフェンスを向上し、遠近両間合いで戦える平本は、MMA初KOを朝倉相手にマークするという。  会見後のXでは、「実はみなさんに隠してたことがあります…この試合のためにあえて初KO勝利を温存しておきました。朝倉未来を相手に初めてKOの快感を味わいたかったからです。遂にこの試合でKO解禁します。負けた方が引退。いやいや俺が負けるわけないでしょ。これはただの朝倉君の引退試合です」と、MMAではKOを「温存」していたと嘯いた。  これまでプロMMAの公式戦でKO負けが無い朝倉だが、本職以外の試合でマットにダウンしている。フロイド・メイウェザー戦とYA-MAN戦。やらなくてもよかった他流試合で受けたダメージは抜けても、身体がそれを記憶している。KO負け後の身体は、その後の打撃で、前回より早くダウンを脳がうながすようになるとも言われている。そして、1年ぶりとなるリングラスト(RING RUST・錆)は取れるか。  この試合で相手を見誤っているのは、平本蓮か、朝倉未来か。答えは、7月28日、スタジアムバージョンのさいたまスーパーアリーナのリング上で明らかになる。 [nextpage] 「記録を塗り替えたい」(榊原CEO) ──このマッチアップはスムーズに決まったのでしょうか。 「YA-MANに(平本蓮が)判定で勝ちました。その流れの中で未来は多くを語らなかったけど、『今年の夏にデカいことをやりたいですよね』と、発言のなかにもあった。BreakingDownも含めて、彼のなかにはプロモーター目線もあるので、当初、東京ドームで、という話もしていたんだけど、イベントということで考えたなかで、東京ドームでは5月6日に井上尚弥選手が試合(vs.ルイス・ネリ)をする。そこにかぶせてもしょうがないし、ほかの人がやっていないことをやろうということで、夏にビッグマッチをやろうということは、未来もすんなり(腑に)落ちたし、蓮も“待ってました”ということで、そんなにすごいハードネゴシエーションではなかったです」 ──朝倉未来選手本人は「楽な相手だから」と言ってましたが、連敗中のこのタイミングで、みたいな事は本人は意識していたのでしょうか。 「未来はそう思っているんじゃないですか。全然、イージーな相手だと、ある部分思いながらも、連敗しているからしっかり準備はしてくると思います。その意味では両選手に4カ月間が与えられていますから、最高のタイミングでこのカードが見られる。油断して(急な)流れのなかでやる試合ではないので、未来にとっても、『この試合で負けたら引退する』という、蓮の引退は売り言葉に買い言葉かもしれないけど、まあでも、未来からするとこのタイミングで平本蓮に負けたら引退をするっていうのはなんとなくこう、僕は腹落ちがするって感じはします」 ──以前は、平本選手が「実力不足」だと言われていましたが、今は拮抗していますか。 「どうなんですかね? 平本蓮のMMAファイターとしての器量とか力量というか、そこはこの前のYA-MAN戦だけではちょっと判断し切れないところがありますけど、間違いなく進化はしてると思いますけど。言っても朝倉未来は、この直近はケラモフに負けたあと、YA-MANに不覚はとっているけど、YA-MANとの試合は当然キックの試合ではあるし、MMAというスポーツの中でいうと、ちょっとレベル的には違うのかなと思いつつも、平本蓮がどこまで上積みできてるのか、期待ができるところまでは来てると思います。(勝負論があると?)あると思いますね」 ──MMAで22戦以上の朝倉未来選手と、6戦3勝3敗の平本蓮選手とでは、戦績だけ見たら実現しないカードのようですが、それを実現させた平本選手をどう評価しますか。 「ほんとうにいまカリスマ性も求心力もあるし、ファッシヨンリーダー的なところもある。ほかのプロアスリートも含めて、ライフスタイルを真似したいというところも含めて、そういう求心力は平本蓮はすごいので、RIZINのなかでもすごく存在感のある選手には成長していて、そこにだんだん実力が追い付いてきている。そもそもキックのなかで素晴らしい戦績を持っているファイターではあるんだけど、MMAファイターとしても十分、アジャストできつつあるんだろうなと。そこは戦績うんぬんよりも、いまの瞬間のマッチメークとして、この2人が戦うに値する状況だろうと判断した感じです」 ──最初に平本選手が朝倉選手に噛みついた時はここまでくると思っていましたか。 「いいことだとは思っています。目標を掲げて実現にこぎつけていくのは容易いことではないので。まあ、なるか・ならないかって、その時点では全く考えてなかったですけど」 ──引退まで考えてた朝倉選手が、戦いたい相手選手の名前を出すほどモチベーションを上げてきたことについて、どのような心境の変化を感じていましたか。 「冒頭に未来が言った言葉がそうなんじゃないかなと。リング上でああいった形で、『来年、兄貴にはベルトを巻いてほしいです』と言われちゃったことも、やっぱり兄弟のなかで──それぞれ目指す方向性は違うのかもしれないですけど──1歳差で兄弟でありながらもライバルとして弟がいろんな夢に向かって目標を実現させていくことに併せて、弟からああいう言葉を受けて、まだこのままでは終わりたくないし、終われないという、弟へのライバル心も含めて、ああいうモチベーションになったんだろうなとは思っています」 ──ファンの熱が冷めやすいなかで、大晦日まで溜めずにここでやってしまおうと? 「そう、そこまで溜められるカードでもないと僕は思っているので。実力的に、戦績的にどうなんだ? と。直近に誰を倒しているの? とか、いろいろなことを紐解き出すとどうなの? っていう。  でもやっぱり強さだけじゃなくて、漢と漢、それぞれ“この2人が戦ったらどっちが勝つんだ? 見たい”というものっていうのは、強さを競うだけじゃない、それぞれの存在意義とか、生き様とかを賭けた戦いになるので、ほかの選手には負けてもいいけど、コイツだけには負けたくないっていう戦いになると思う。だから2人は競技者としてアスリートとしてというよりは、それぞれ『引退をする』というのは、“コイツに負けたらもう引退するしかないんじゃないの?”これだけボロクソに言っておいて、ソイツに負けちゃうっていうことは──その意味で存在意義や生き様を賭けた珠玉のカードになるんだと思います」 ──ファイトマネーも破格に? 「なるでしょうね。まあPPVボーナスとかもミックスしながらになるでしょうけど、それだけの経済効果が生まれて、UFCみたいに訴えられても困る(独占禁止法訴訟)ので、UFCが一番いいときで13パーセントしか選手に還元していなくて、選手たちが集団訴訟を起こされていて、負けたら300億近いです。当然、そんなことにはRIZINはならないと思いますが、やっぱり適正な利益の配分はちゃんと選手に行かないと健全な発展はないと思うので、2人に、それぞれの選手に届くようにしたいと思います」 [nextpage] 4月のあと6月に大会を挟んで、7月28日のさいたまへ ──「負けたらベルト」はともかく、タイトルを作るという言葉もありましたが……。 「それはあってもいいと思ってます。UFCの、BMFベルト『Baddest Mother Fucker』そのままの言葉だと、最高にイケてるクールな奴っていう風にアメリカでは分かるんだけど、日本で“マザーファッカー”とかっていうと、またその言葉だけが独り歩きしてよくないんで(笑)。かといって“ミスターRIZINベルト”というとだいぶダサいんで。何か考えて、そういうものを賭けて戦う。2人が──まあ引退させたくないだけど、引退を賭けて戦うと宣言しちゃっているので、まあ何かか考えます」 ──7月28日の『超RIZIN.3』がさいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョンということで、券売でPRIDEを超える事は可能な席数になるんでしょうか。 「そこはさいたま(スーパーアリーナ)さんとも相談して、記録はとにかく塗り替えたいと思っています。プロモーターとして、10年、来年10周年ですけど、RIZINをやってきた中でPRIDEの時代でまだやれてないことは塗り替えていきたいし、そんなこと言ったら国立競技場でやらなきゃいけないというような事にもなるんだけど、それも僕らの視野の中ではイメージはある。  まずはさいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョン、PRIDEの時代は2カ月に1回やってたんですけどね。そこがこんなにやっぱり“エイヤッ”てやるのにプロモーターとして高いハードルだったんだなという。このカードをもってタイミングを合わせてアンダーカードしっかり準備して、やっぱり4万人以上集めようと思うと、普通のハードコアなファンたちに、通常の流れのものだけを届けていても、そのムーブメントというかその人達(一般層)の動員は難しいと思うから、やっぱりカジュアルなファンまで届くような“祭り”を作り出せたらいいなと思ってますので、アンダーカードもちょっと期待していただいて」 ──券売ゲート収入、PPV、全部さいたまスーパーアリーナ新記録を目指すと。 「そうですね、そういう全てのものを数字的にも越えていけるように。『THE MATCH』はほんとうにキック界の総力で乗り越えたというか作り出したムーブメントだと思うし、その中に我々も参画して作らせてもらった感じですけど、今回はRIZINの中のこの9年間の歴史の一つの集大成だと思いますので、その中でどこまで数字的に日本の今まで叩き出してる数字の記録を塗り替えられるか、それもまあチャレンジだなと思ってます」 ──『超RIZIN.3』は、何試合ぐらいでカジュアルとコアなカードのバランスは? 「あんまりまだイメージはないですね。全10試合から12、13試合だと思いますけど、それが全部MMAで並ぶって事でもなく、色んな──リングでやろうって言ってるのはそういう意味も含めて、リングの良いところってキックボクシングも、それこそRIZINスタンディングバウトルール、ボクシングに準ずるような打撃だけのルールの試合も見やすいし実施しやすい場所でもあるんで、そういう場所としてリングというものの良さを活かせるようなルールの中で、色んなマッチアップをテーマを持って、勝負論のあるものを。ダラダラたくさんやってもしょうがないんで、10数試合並べばいいかなと思います」 ──集大成ということですが、RIZIN初期に出ていた選手を呼び戻すのか、未来に繋がるカードを思い描いているのか。 「いろんな話題を全部突っ込む感じですね。過去も現在も未来に向けても含めて、ここが一つの起点になって、ここで何か集大成として終わっていくものもあれば、ここから始まるものもあれば、RIZINが理念に掲げるものを、その中に全て取り揃えることができたらいいなと思ってます」 ──海外向け配信をやらないとのことでしたが、去年プランにあった「メイウェザーvs.パッキャオ」などの隠し玉も? 「はい、いいところ突いてると思います。そういうのも含めてもう、今出せるカードは全部切るっていうつもりでいます」 ──パッキャオはボクシングに舵を切る路線で行こうとしてますが、それ以降は格闘技路線に? 「今パッキャオともメイウェザーとも、当然2人が戦うって事もそうだし、それぞれバラバラでまたRIZINの中でチャレンジをするということも含めて、どれも実現の可能性はあるだろうなと思ってます」 ──マッチメイクにトップ選手を揃えるために前後の大会は間が空いたりするのでしょうか。 「あまりそれも考えてなくて、6月にはこのイベントの前に一つ大会を挟みたいと思ってます。4月のあと6月に大会を挟んで、7月の28日。その後は9月の末ぐらいに例年通りまたさいたまに戻って来れるといいなという今イメージではいます」 ──今の格闘技ファンの熱は、コロナ前を越えて、さいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョンを埋められるほど復活してると感じていますか。 「動員力はすごく増している。コロナ前よりも増しているんじゃないですかね。ただ、熱は一瞬で冷める。安定はないので。『THE MATCH』の後のようなロスみたいなものもあるなかで、『THE MATCH』はスペシャルなものだから、そのまま引き継がれてはダメ。キック界はあれは忘れた方がいい。『THE MATCH』という別タイトルをつけて、武尊と那須川天心というスーパースターがいたから、その1カードじゃないですか。  今回は“総力戦”で行きますから。RIZINの10年目を目指す、この9年間の戦いの歴史のなかで生み出された熱をここでひとつ集約する。また将来に向けて1年後、2年後にこういうものが見られるかもしれない、というものが生み出されるような、そんな通過点のひとつの大きな山──という風に考えてもらえればなと思います」 ──様々な配信会社が格闘技を手掛けるなかで、PPVはどこで? 「これからですね。当然、ABEMAさんとかU-NEXTさんとか、既存のお付き合いのある配信プラットフォームさんとも相談もして、いまはNetflixも(マイク)タイソンの試合(ジェイク・ポール)を配信するなど、スポーツコンテンツにいよいよ本格的に乗り出してきたじゃないですか。Amazon PRIMEもDAZNもあって、こことしか組まないという契約も無いので、各社、このコンテンツが欲しいというプラットフォームで、一番情熱を持って宣伝プロモーションを全力でやってくれるところと、ベストな環境が整うように向き合っていきたいと思います」
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