MMAファイターになり、収入が減ってとてもしんどかった
──ご自身のバックボーンとしては、柔道ですよね? そして先ほどコーチ陣の名前に挙がった柔術のクリストフ・サヴォカコーチや、ATTでマルコス”パルンパ”ダマッタコーチとも練習しています。11月のマット・フレボラ戦では、テイクダウンされながらもフックガードから右でアンダーフックして見事なスイープを決めていましたね。強いベースに加え、下からもリカバリー出来るのは、彼らとのトレーニングの成果でしょうか。
「子どもの頃からずっと柔道をやってきて黒帯だ。週1ペースの練習だったからどっぷりではないかもしれないけれど、競技としては向いていたと思っている、自分は精神的にタフだから。まあ自分自身としては楽しんでやっていた感じだ、幼いときは。そう、柔道経験がより早くBJJやレスリングを上達するのに役に立ったと思う。全てを組み合わせるからこそ、自分の選手としての上達は早かったのだと思う。
うまく行っていない試合の流れの中でサバイブするためにも、あるいは素早く相手を極めたりスイープするにもバックを取ることはすごく重要だ。ATTのコーチのパルンパの名前を今挙げてくれたね、実は面白いことに、自分の師のクリストフ・サヴォカはネウソン・ソラリの黒帯なんだけれど、カーウソン・グレイシー門下として根っこでパルンパと繋がっている。ネウソンは二人とも指導していたらしくて、ハイレベルな素晴らしいコーチたちが同じ先生のもとにあるというのはすごいことだ。
──たしかに。話は変わるのですが、軍隊を辞めて格闘家になるという時に収入で苦しむというようなことはなかったのでしょうか。
「その通りで、すごく難しかった。2年ほどは低賃金に悩んだ。英語で何て言うか知らないのだけど、フランス語で“chomage”=失業したわけだから。月2000ユーロから900ユーロまで収入が減った。だからとてもしんどかった。でもやっぱり挑戦だったから。自分に言い聞かせたんだ、2年かけてUFCにたどり着くと。9カ月後にプロデビューしてすぐ、Brave Combat Federationに所属してファイトマネーをもらえるようになって2年半で給料が上がっていって、UFCと契約してからは暮らしに足るだけの稼ぎが入るようになった。それから、今では自分の価値も上がってスポンサーもついてくれるようになったから妻と子どもを支えられるところまでにはなった」
──今回ダスティン・ポイエーとの試合はどのようなものになると考えていますか。
「あらゆる局面で、お互いを試す試合になるだろうと思っている。グラウンドでも強くてレスリングが上手いし、それでいて打撃も強力だ。だからこそ彼は長年にわたって活躍できているし、ライト級で暫定王者にもなりベルトに近いコンテンダーでいられるのだ。だから彼と対峙できることを嬉しく思う。精神的な意味で、この試合は“戦争”になるだろう」
──サウスポー同士の対決となります。いつものブノワ選手はレバーキックを得意としていますが、この試合、何がカギになりますか。
「多くの人がサウスポー同士になると蹴れない(蹴りに行けない)だろうと言うけれど、そんなことはなかろう、蹴れるとも。別にサウスポー同士じゃ蹴っちゃいけないって規定じゃないんだから(笑)。当然、自分の武器のひとつというのはしっかり活かしたいとは思うものだ。とはいえ、自分にはちゃんとたくさんの選択肢がある。さっと切り替えられるようなものが。別にオープンガードのオーソドックスの相手とやる時でも当然、いつだってさまざまな選択肢を持って戦っているわけだから、相手がサウスポーであっても同じこと。自分としてのカギは、しっかり体をつくって、自分のやるべきことをこなすだけの準備をして、気持ちをクリアーな状態に保ち、試合に集中すること。そうすることで、今年一番の、最高のバイオレンス・ファイトが生まれるというわけだ」
──ブノワ選手はナポレオン信奉者だそうですね。ナポレオンの言葉を引用しているインタビューを拝見しました。「この世には二つの力しかない。剣の力と精神の力だ。そして必ず、最後には剣は精神に打ち負かされる」というものです。この名言を好む理由とは?
「精神が剣に勝るという言葉通り(MMAや試合を戦う上で)メンタル面はすごく大きい部分を占めているから。やっぱりそもそもスケジューリングをはじめとして、いい練習を積むためにも頭には知性を備えていないといけないという意味もあるし、メンタルの強さはめちゃくちゃ大事だ、とりわけ試合をやっているなかでは良くない時間が訪れたりもするものだから。そういう時に乗り越えられるだけのメンタルが求められる。毎日ハードに練習した上で、本当の戦士としての規律がすごく重要になってくる。日本人諸君には『侍魂』ってやつがあるだろう? そういう日本の人からナポレオンの名前が挙がるというのは面白いよ!ナポレオンは最も偉大なフランスの象徴だ。彼がフランスを強大な国に押し上げたフランスの唯一無二の皇帝だ。彼はフランスにおいて、ヒューマニストとは程遠いが、一方でとてもロマンティックな存在なんだ」
──今、日本のサムライ・スピリッツにも触れていましたが、それも踏まえて是非日本のファンにメッセージをお願いします。
「日本の皆さんこんにちは。皆さんの国の歴史はとても面白く興味深いですね。我々の国の“シュバリエ”騎士道に似ていますから。自分は試合をするのが好きで、ワイルド・スピリッツがあると思っているから、どうか試合を楽しんでほしいです」