2024年3月9日(土)10時から、タイ・バンコクのルンピニースタジアムにて『ONE Fight Night 20』(U-NEXT配信)が「国際女性デー」を祝してオール女子ファイターの大会として開催されている。
▼第9試合 ONE世界アトム級キックボクシング王座統一戦 3分5R×ジャネット・トッド(米国/正規王者)[判定0-3]〇ペッディージャー(タイ/暫定王者)※ペッディージャーが王座統一、初防衛に成功。
“JT”の愛称で呼ばれるトッドは母親が日本人。流ちょうな日本語も話し、日本でも出稽古で江幡兄弟との練習経験を持つ。宇宙工学のエンジニアの仕事もこなす才女でもある。2017年IFMA世界選手権で銅メダルを獲得したのを筆頭に、アマチュアムエタイで数多くのメダルを獲得。2019年2月からONEに初参戦すると、いきなりスタンプ・フェアテックスのアトム級ムエタイ世界タイトルに挑戦したが判定負け。
その後は3勝(2KO)の戦績をあげ、2020年2月にスタンプと今度はキックボクシングルールで再戦。判定2-1でスタンプを破り、ONEアトム級キックボクシング世界王座を奪取した。2022年7月にはララ・フェルナンデスに勝利してアトム級ムエタイ暫定世界王座にも就いたが、2023年3月の王座統一戦で正規王者アリシア・ヘレン・ロドリゲスに敗れた。
暫定王者のペッディージャーは7歳でムエタイを始め、「男の子を打ち負かす少女」として有名となり、10歳で100戦以上を戦い、そのうち70回以上は男子選手との戦いであった。有名になりすぎてテレビで試合が放送されるようになると、タイの法律によって男子選手との試合は禁止に。2016年2月には『ムエタイオープン』に初来日し、小林愛三と対戦して判定負け。2017年11月にはシュートボクシングに再来日するとMIOに判定負けを喫している。
ムエタイで順調に勝ち星を重ねる中、アマチュアボクシングのタイ代表として選ばれ2018年AIBA女子ユース世界選手権48kg級銀メダルになるなど活躍。2022年8月にはプロボクシングデビューも飾っている。ムエタイでの獲得タイトルは、WPMF世界ミニフライ級王座、WMC世界-45kg級王座、2021THAI FIGHTクイーンズカップ-51kg級優勝など。ONEには2023年3月から参戦し、4連続TKO勝ちを収めると2023年12月には“世界最強女子”として知られるアニッサ・メクセンを判定3-0で破り暫定王座に就いた。
トッドはこの試合を最後に引退することを表明している。
1R、ジャブを突くトッドに対し、ペッディージャーは右ミドルを蹴っていく。トッドのジャブの引き際に右ストレートを入れるペッディージャー。ジャブから右フック、すぐに前蹴りとつなぐペッディージャーにトッドはジャブから左ロー。ペッディージャーの右に対してトッドも右を合わせに来るが、ペッディージャーはヘッドスリップして自分だけ当てる。ペッディージャーは右ミドル、ワンツーから左ミドルとつなげた。
2R、右の打ち合いとなるが、ペッディージャーは左右ミドル、左ヒザも織り交ぜる。ムエタイのベタ足ではなく前後のステップを踏むペッディージャーは、入る時は左足を上げて踏み込む。トッドはペッディージャーが前へ出てくると左フックを打って左側へ回り込み、ペッディージャーを右フックからの左フックで迎え撃つ。ペッディージャーはワンツーを打ち込み、左ハイも放つ。
3R、ペッディージャーは左右ミドル、左ボディからの右ミドル、前蹴りと縦横無尽に多彩な攻撃で前へ出て行く。トッドもジャブやヒザで対抗するが、ギアを上げたペッディージャーが圧を強めてパンチと蹴りを織り交ぜる。テンカオも鋭く突き刺す。下がりながらもワンツーを打つトッドにペッディージャーは右ミドル。終盤には右ストレートを3発立て続けに当てる。完全にペッディージャーのラウンドに。
4R、トッドのパンチを左ミドルで迎え撃ったペッディージャーはパンチで前へ出る。ワンツーからの左ミドル、トッドの蹴りはかわして右ストレート。ヒザでボディを攻めておいての左ボディも打つペッディージャー。右ストレートをヒットさせて距離を作るとすかさず左ミドルも当てる。ペッディージャーが前へ出てヒザ、すぐに右ストレート。
5R、ペッディージャーが左ミドル、ワンツーから右ミドル、ワンツーで迎え撃つトッドにペッディージャーは前蹴り、左右ミドル、ヒザで前に出て右ストレートを放つ。残り半分を過ぎると、ペッディージャーは左ヒザを連発、左ボディも打つ。トッドが左ミドルを空振りして半回転したところにペッディージャーが右ストレートを打ち、トッドが転倒してこれがダウンになる。最後は打ち合いを見せたトッドにペッディージャーも応じた。
判定3-0でペッディージャーが勝利。王座統一と世代交代に成功し、22歳の新女王が誕生した。「国際女性デーの日にこういった結果を残せたことが嬉しいです。もちろんキックボクシング王座も防衛したいし、ムエタイのタイトルも獲りに行きたい」と2種目王者になりたいと宣言した。
トッドは爽やかな笑顔で「素晴らしい才能のある選手と戦えたことに感謝します。若いタレント性のある選手と戦えたことを誇りに思います。泣きそうな気持です。みんなありがとうございます。私の人生を支えてくれた皆さんに感謝します」と泣きながらメッセージを送ったトッド。「ここで私の夢が叶ったことは最高のことでした」とチャトリ代表への贈り物をリングアナウンサーに渡すと、両手のグローブを外してリングの上に重ね置き、現役生活に別れを告げた。
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▼第8試合 ONE世界アトム級ムエタイ選手権試合 3分5R〇アリシア・ヘレン・ロドリゲス(ブラジル/王者)[判定3-0]×クリスティーナ・モラレス(スペイン/挑戦者)※ロドリゲスが2度目の防衛に成功。
まだあどけなさが残る面影で“ベビーフェイス”のニックネームを持つロドリゲスは25歳。ブラジルで初期のキャリアを積んだ後、タイへ渡り試合経験を重ねてきた。2019年7月にはプーケットのバングラスタジアムでタイトルを獲得している。
オープンフィンガーグローブ着用のムエタイ大会『ムエ・ハードコア』で2試合を行った後、2020年8月からONEに参戦。いきなりスタンプのONEアトム級ムエタイ世界王座に挑戦すると、判定勝ちで王座を奪取した。
その後はコロナの影響で試合から離れていたが、2023年3月に暫定王者となっていたジャネット・トッドを判定で破り王座を統一。同時2階級制覇を狙って9月にスミラ・サンデルに挑戦したが、TKO負けでONEでの初黒星を喫した。
モラレスはISKA世界K-1ルールアトム級王座、Enfusion -52kg世界選手権を獲得。2019年12月にはK-1に来日し、「初代女子フライ級王座決定トーナメント」に出場。1回戦でKANAに判定負けを喫した。
2011年6月に神村エリカとRISEで対戦した、シルビア・ラノッテにも2019年5月に黒星を付けられている。2021年9月に“世界最強女子”と目されるアニッサ・メクセンにKO負けを喫してしばらく試合から離れていたが、2023年11月に復帰してスーパーガールに初回TKO勝ち。戦績は50勝(10KO)8敗。
1R、モラレスは気合いの声を発しながらパンチを顔面とボディへ放ち、距離が近付くと組んでのヒザ蹴り。ロドリゲスはまず左ミドル、モラレスの連打には右ヒジを繰り出す。首相撲になるとしっかりヒザを突き刺す。ロドリゲスはムエタイスタイルでどっしりと構え、ゆったりとしたリズムで左ミドルを的確に決めていく。手数はモラレス。
2Rも気合いを発しながら左フック、ボディからの左右フック連打と攻め込むモラレスをロドリゲスは首相撲に捕まえると鋭いヒザ蹴りを突き刺す。モラレスの右ストレートには左ミドルを合わせる。ガードを固めて前に出始めるロドリゲスにモラレスは後退しながらパンチを出すように。追い詰めるとロドリゲスは首相撲から鋭いヒザを連続で突き刺し、「ティー!」(いいぞ)というムエタイ会場独特の掛け声があがった。
3R、完全に首相撲でイニシアチブを握ったロドリゲスはモラエスを何度も捕まえると鋭い角度のヒザを突き刺す。ヤッサイ(ヒザを押し付けて押し込むようにして蹴る技)も織り交ぜる。組まれたくないモラエスは後退を繰り返すが、ロドリゲスは簡単に捕まえて首相撲からのヒザを一方的に決めていく。明らかにヒザを嫌がるモラレス。
4R、ロドリゲスは左右ミドル、前蹴りを決め、モラレスがワンツー連打で前へ出てくると“待っていました”とばかりにロドリゲスが首相撲に捕まえてヒザを蹴る。モラレスの左腕をミドルで蹴り、左ボディも打つロドリゲス。
離れれば左右ミドル、接近すれば首相撲と左ボディでロドリゲスが圧倒。ボディを嫌がるモラエスが大きく後退。ロドリゲスは左ミドル、前蹴り、左ボディと猛攻を仕掛けていき、離れても近付いても完全にロドリゲスが主導権を握る。ラウンド終了間際には、前へ出てきたモラレスに下がっての右ミドルを直撃し、モラレスは効いた表情。
5Rもモラレスはワンツー、左右フックで前へ出る。それを左ミドルで迎え撃つロドリゲス。モラレスが組んでくるとロドリゲスは両足を広げてモラレスの両足外側から抑えつけてヒザを蹴らせない。ロドリゲスの鋭い前蹴りが3発連続で入る。
前へ出てくるモラレスには下がって距離を作っての右ミドル、自分からも前へ出て右ミドル。顔面から出血が見られるモラレスは最後まで諦めずにパンチで前へ出たが、ロドリゲスは自分の距離を保ってミドルを当ててパーフェクトな内容で試合を終えた。
判定は3-0でロドリゲスの勝利。2度目の防衛に成功した。「全ての女性を代表してこの日に、ここで戦えたことが嬉しいです。息子の前で戦えたこと、自分が成し遂げたことを誇りにも思います」と喜びを語ったロドリゲスは愛する我が子をリングの上で抱きあげた。そして、リングサイドにいたスタンプへ「ムエタイに戻ってきてください」と挑発した。
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▼第7試合 キャッチウェイト(58.97kg)ムエタイ 3分3R〇ジャッキー・ブンタン(米国)[判定3-0]×マルティーヌ・ミキエレット(イタリア)
ブンタンは2021年2月にONE初参戦。ワンダーガール、エカテリーナ・ヴァンダリーバらに3連勝し、4戦目で現ストロー級ムエタイ世界王者スミラ・サンデルに挑戦したが判定で敗れた。その後は再び2連勝。
ミキエレットはアマチュアムエタイで数々の金メダルを獲得。2015年6月にISKA世界K-1フェザー級王座、2016年1月にWKUフルコンタクト世界フェザー級王座を奪取し、それぞれ防衛にも成功している。ONEには2023年6月に初参戦し、アンバー・キッチンから勝利を収めている。
1R、サウスポーのミキエレットに対し、ブンタンは左へ回り込んでいく。左フックからの右ストレート、右ストレートからの左フックと攻めていき、ミキエレットは左ミドルと左ストレートで迎え撃つ。ブンタンは左右フックを空振りしても前へ出て最後の一発をヒットさせる。ブンタンの右フックにはミキエレットが左ヒジを合わせに行く。ブンタンのペースでヒットも多かった。
2R、ミキエレットは左ミドルを当て、ブンタンのパンチに対して頭を振ってかわす。このラウンドは自分も前へ出て左ストレートを打つミキエレットはそのままヒジ打ち。ブンタンが左右フックで迎え撃つ形に。ミキエレットはワンツーをヒットさせれば、ブンタンもすぐに右フックでヒットを奪う。両者譲らずの展開。
3R、さらに圧を強めるブンタンが左右フック、右ストレートからの左フックで前へ出るが、リーチで優るミキエレットもワンツーで前へ出る。前へ出てくるミキエレットを前蹴りで止めると、すかさず左右フックのブンタン。ミキエレットは左ハイを繰り出し、ブンタンは左右フックを打ち続ける。甲乙はつけがたい展開だったが、手数でブンタンが上回ったか。
判定3-0でブンタンが勝利。同門のジャネット・トッドへ勝利のバトンを渡した。「相手の下がる動きに少し戸惑ったけれど、後半は修正することが出来て良かったです」と語った。
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▼120ポンド キャッチウェイト 5分3R×ジヒン・ラズワン(マレーシア)[判定0-3]〇澤田千優(日本)
澤田は、MMA6勝1分の無敗。兄・澤田龍人と同じレスリングベースで、2018年東日本学生選手権フリースタイル50kg級優勝、全日本社会人選手権優勝、全日本選手権5位などの実績を持つ。2021年5月に修斗でプロMMAデビュー。リーグ戦で優勝するなど3勝1分で初代女子アトム級王者に輝いた。
2023年2月にタイで行われた『ONE Friday Fights 5』では、イランのサナーズ・ファイアズマネシュを相手に2R アメリカーナで一本勝ちすると、チーム・オーヤマでの北米修行も経て、5月に米国フロリダ州マイアミ開催の『Combat Global』でアナ・パラシオス(メキシコ)にテイクダウン&パウンドで判定勝ち。
12月2日の前戦『プロ修斗公式戦 COLORS Vol.2』で中村未来に1R 腕十字で一本勝ちし、修斗世界女子アトム級王座の初防衛に成功していた。
対するラズワンは、6歳でシラットを習い、韓国のリアリティショーで女子格闘家の特集を見たことでファイターを目指すことを決意。3カ月のトレーニング後、ムエタイの試合に出場。ウーシューやブラジリアン柔術、キックボクシング、ボクシングの試合にも出場し、ウーシューでは世界王者にまで上り詰めた。
MMAに転向してからは、アマチュア8勝2敗の戦績でマレーシアのアマチュアMMA「MIMMA」の王者に。2017年のプロMMA初戦で1R KO勝ちを挙げ、ONEと契約。ONEで8勝3敗の戦績をあげている。2023年9月の前戦『ONE Friday Fights 35』では、ジェネリン・オルシムを3R 腕十字に極めている。勝利の内訳は1KO・TKO、3SUB、5つの判定勝ちと、組み技よりで競り勝つ試合が多い。
日本の山口芽生(V.V Mei)、平田樹と対戦し、ともに接戦ながら判定勝ち。これまで、ジナ・イニオン、デニス・ザンボアンガ、スタンプ・フェアテックスの強豪に黒星も判定で敗れたのみ。いまだフィニッシュ負けはない粘り強いファイターだ。
オーソドックス構えのラズワンに対し、レスリングベースの澤田はサウスポー構え。ラズワンはスタンプ相手に近い距離でジャブ&ローでしっかり立ちあう打撃を持ち、組みの平田相手にテイクダウン&コントロールで上回っている。平田やMeiの投げに下になるも、三角絞めや腕十字の仕掛けを得意とするため、澤田にとっては打撃で遅れを取らず、テイクダウン後の押さえ込み、パウンドでのダメージから極めまで向かえるか。
AACCからTEAM AKATSUKIに移籍し、ONE本戦初出場の澤田にとっては、抜擢のラズワン戦となる。
なお、今大会前の計量では、ジヒン・ラズワン(マレーシア)が120ポンド(54.43kg)、ハイドレーション 1.0148で体重大幅超過。
澤田は、一時ハイドレーションテストをパスできず計量し、115.25ポンド(52.27kg)を計測。最終的にハイドレーションで1.0222、116.25ポンド(52.73kg)の超過で計量を終えている。結果、試合はラズワンの体重に合わせて120ポンドのキャッチウェイト契約試合となった。
松嶋こよみ、良太郎がセコンドの澤田。ラズワンはいつもの猫耳ヘッドフォンで登場。向き合うと一回り大きなラズワン。
1R、ともにサウスポー構え。出張の澤田は左右の前蹴りからダブルレッグテイクダウン。ラズワンは後方に回すが体を戻して上になる澤田にラズワンは、スイープ。バック、両足をフックも腰をずらす澤田。そこにマウントを合わせるラズワンが澤田の起き上がりに三角絞め。
座って胸を張って肩を回して外した澤田! スタンドに戻し、右で差して押し込み。左ヒザを突く。ステップを踏んでジャブの刺し合い。右前蹴り、右ジャブ。ラズワンの左をかわして、左ジャブ、左ヒジで入り。左ローは蹴り足を掴んでストレートを突いたラズワンがテイクダウン。そこにガードの澤田。ラズワンは自ら体を離す。
2R、ワンツー、スリーフォーと詰めてロープを背にさせて組みも切るラズワン。澤田の右ジャブに左をかぶせていく。澤田のローシングルをがぶってギロチンチョーク狙いも、それをかけさせない澤田に、下のラズワンは腰を切って腕十字狙い。顔に足をかけたラズワンだが、ヒザを落とす澤田にラズワンは十字狙いを解き正対。
そこにパウンドを入れながらパスする澤田はサイドを奪うと腕hがらみへ。しかし亀になってふせぐラズワンがヒジを戻すと澤田は引き出してバックテイク。
サイドバックからヒザ! 左手首をコントロールして鉄槌! しかし、引きつけたところにラズワンは後転スイープ! 上を取り返す。
3R、ワンツーの澤田。ラズワンも左ジャブの相打ち。右も。そこにダブルレッグの澤田。がぶりのラズワンにドライブし両者離れる。
ラズワンのジャブに若干顔が上がる澤田。ジャブから右の蹴りに繋ぐラズワン。左ストレートはラズワン。澤田は左を振ってダブルレッグテイクダウン! ここも後方に回してスイープ狙いのラズワンに後ろ袈裟から正対しバックを奪う澤田!
亀になるラズワンの右腕を腹固めでパウンド! ここも後転スイープを狙うラズワンだが、腕がロックされているため澤田が上。右腕を抜いたラズワンをバックコントロールする澤田はヒザ。
立ち上がる澤田は、背後からヒザ。さらに右で差して押し込み、左ヒジもかちあげる。さらにダブルレッグでテイクダウン! 残り20秒をバックコントロールして、背後からヒザも細かく尽きてゴング。
判定は3-0で澤田が勝利。初回のバック、三角絞めのピンチを冷静に防いで、打撃で向き合いテイクダウン。2、3Rをテイクダウンからパウンドしコントロールした澤田が、日本人として初めてラズワンに勝利した。これで澤田はアトム級のランキング入りか。
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▼第5試合 ONEストロー級 ムエタイ 3分3R〇エカテリーナ・ヴァンダリーバ(ベラルーシ)[判定3-0]×マルティナ・キエルチェンスカ(ポーランド)
ヴァンダリーバは、2010年と2011年のWKN女子54kg級世界王者。WMF、IFMAでも王座を獲得しており、2011年11月には、WKNワールドGPでムエタイ時代のヨアナ・イェンジェチックに判定勝利している。身長は170cmだが、リーチは180cmと長い手足を誇り、オーソドックス構えから繰り出されるワンツーの右ストレートが伸び、左ミドル・ヒザ蹴りと繋ぐコンビネーションは対戦相手を苦しませている。また、ファッションモデルとしても活躍しており、“世界で最も美しい女子キックボクサー”の異名を持ち、ニックネームは「バービー」。2019年10月にONE初参戦を果たすも、ジャネット・トッド、ジャッキー・ブンタン、アンナ・ジャルーンサック、イマン・バーロウに4連敗。
キエルチェンスカはジュニア時代からキックボクシング&ムエタイで優秀な成績を収め、アマチュア戦績はなんと102勝7敗。2022年にIFMAムエタイ世界選手権で金メダル、2023年ヨーロッパ選手権で金メダル、ワールドコンバットゲームズ・ムエタイ部門で金メダルを獲得。2023年にはプロ4戦目にして無敗のままWMC世界-54kg王者となった。2024年7月のONE初参戦ではワンダーガールを2RでTKOに降している。
1R、軽快なステップを踏み右へ回り込むヴァンダリーバに、キエルチェンスカが前へ出て圧をかけていくとヴァンダリーバは右フックで迎え撃つ。そして首相撲。キエルチェンスカが連打を繰り出すとヴァンダリーバも連打で応える。右ミドルをキャッチされたキエルチェンスカはすかさずヒジを連打。首相撲で抑え込もうとするヴァンダリーバへ、キエルチェンスカは右ヒジの連打から右フックと攻撃の手を休めない。ヴァンダリーバは首相撲もキエルチェンスカがヒジやフックを繰り出すためヴァンダリーバは背を向けてしまう。
2R、踏み込んで来るキエルチェンスカを右フックか右ヒジで迎え撃つヴァンダリーバだがヒットはない。待ちの姿勢のヴァンダリーバはワンツーで踏み込むキエルチェンスカに首相撲を繰り返す。しかし、ワンツーの右フックがヒットしてダウンを奪うヴァンダリーバ。さらに攻め込もうとしたヴァンダリーバはキエルチェンスカの顔面前蹴りを喰らい、これで警戒したか詰めることが出来なかった。
3Rもキエルチェンスカが来るところを右フックで迎え撃つヴァンダリーバ。キエルチェンスカは右ローを連発してからの右フック、右ミドルからの連打と攻撃の姿勢を継続する。キエルチェンスカが入り込むところへ右フック、近距離でバックスピンエルボーを繰り出すヴァンダリーバだが目立ったヒットはない。前へ出てくるキエルチェンスカに一発放っては首相撲に持ち込むヴァンダリーバ。
流し気味にして消極的に3Rを終えたヴァンダリーバが判定3-0で嬉しいONE初勝利を収めた。
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▼第4試合 ONEキャッチウェイト(53.75kg)ムエタイ 3分3R×ララ・フェルナンデス(スペイン)[判定0-3]〇ユー・ヨウ・プイ(中国/香港)
フェルナンデスは2021年アマチュアムエタイIFMA世界選手権で銅メダルを獲得。プロデビューは2011年11月でデビュー戦から5連敗を喫し、2018年には『Enfusion』に参戦するも2連敗。しかし、その後は連勝して2019年11月にはISKAオリエンタルルール世界スーパーフェザー級王座を獲得。2020年3月にはWBCムエタイ世界フライ級王座も獲得した。
ONEには2022年7月から参戦し、いきなりONE女子アトム級ムエタイ世界王座決定戦をジャネット・トッドと争ったが判定負け。2戦目は12月にダンコンファーに判定勝ちも、2023年7月のペッティージャー・オーミークン戦では1Rわずか26秒でTKO負け、8月にはスーパーガールにも判定負けで連敗中。戦績は41勝16敗3分。 プイは壽美に判定勝ちしたことがあり、2023年4月からONEに参戦。初戦でNJKFに来日経験があり、元WPMF世界アトム級&S1レディース世界スーパーフライ級王者のザ・スターをKOで破ると、一気に『Friday Fights』で5連勝(3KO)。前戦は2023年11月にゼフラ・ドアンに2RでTKO勝ちしている。今回が本戦初出場。戦績は27勝2敗。前日計量で体重超過し、当初のアトム級からキャッチウェイトに変更されている。
1R開始と同時に前蹴りからワンツーと一気に前へ出るプイ。フェルナンデスは右ストレート、右ミドルで迎え撃つが、プイは左右の連打。フェルナンデスは首相撲に捕まえると右ヒジを見舞う。プイの連打の途中にも右ヒジを打ち込む。プイは手数を出すが、フェルナンデスはしっかり頭を振り、アームブロックで防御しながら自分は右ヒジ、右フックを当てていく。勢いには押された感のあるフェルナンデスだが、被弾は少なく攻撃をしっかり当てていった。
2Rも突進するプイがフェルナンデスを追い回す。その左右の連打に右フックや右ミドルを合わせるフェルナンデス。プイは左目尻から出血が見られる。攻撃を続けるプイに転倒を繰り返すフェルナンデス。プイの右フックをもらうなど被弾も増えてきたフェルナンデスは表情が1Rとは明らかに違う。プイは額に大きなたんこぶが出来る。
3Rもパンチを繰り出して突進するプイにフェルナンデスは下がる一方。左右フック、ヒジを被弾する。首相撲の展開になってもプイがヒザを突き刺す。コーナーに積めての連打を見舞うプイにフェルナンデスは右ヒジを繰り出すが、首相撲でコカされる。さらなる連打でコーナーに詰め、首相撲からヒザ・ヒジの連打。フェルナンデスは転倒すると立つのも遅れだした。バックキック、ハイキックで展開を変えようとするフェルナンデスだが、プイの突進は止まらない。左ボディの連打、左右ヒジと最後まで攻撃の手を休めず突進を続けた。
判定は3-0でプイが勝利。「1Rは距離が合わなかったけれど、2Rの前にセコンドからもっと前に出ろと言われて勝利することが出来ました」と勝利者インタビューに答えた。
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▼ONEアトム級(※52.2kg)5分3R×ビクトリア・ソウザ(ブラジル)[判定0-3]〇ノエル・グランジャン(タイ/フランス)
ソウザは、MMA7勝1敗。ブラジルのGladiator CFで5連勝後、2021年9月のONEでヴィクトリア・リーに2R TKO負け。しかし、以降は地元で1R TKO勝ちで再起を果たすと、2023年2月のONE前戦でインドネシアのリンダ・ダローに判定勝ち。26歳。
グランジャンは、4勝1敗。2022年10月にONE Fight Nightでリー・ビヴィンスに1R TKO勝ちも2023年4月の前戦で韓国のキム・ソユルに三角絞めで一本負け。27歳。
1R、ともにオーソドックス構え。ワンツーのソウザ。右で入るとグランジャンが右のカウンター。右を被弾し、グラついたソウザ。組むグランジャンは首投げテイクダウン&パウンド! 立ち上がるソウザを詰めて左右ラッシュでダウンを奪うと鉄槌、パウンド連打! グランジャンはソウザのクローズドガードの中からヒザを入れてパスを狙う。
2R、左右で前進のソウザを首投げで投げたグランジャンだが、差して立ち上がるソウザが押し込み、突き放し離れるグランジャン。ソウザは右回りで右ローをこつこつヒット。足が流れ始めたグランジャンだが、回るソウザを追って右を当てる。
右ローのソウザに右を合わせに行くグランジャン。ダブルレッグに行くソウザに払い腰テイクダウンも押さえ込めず、すぐに立ち上がるソウザ。
3R、右を当てるソウザに、グランジャンも右を返し、近距離に。そこに右ローを混ぜるソウザ。左右のオーバーハンドを届かせるが、グランジャンも肩でブロック。オーソから左ミドルを当てるグランジャン。ソウザも右から左インロー。左ミドル。グランジャンはソウザの入りに右のカウンター。 左ミドルのグランジャン。ソウザは左ジャブのダブルで前に出るが、そこにグランジャンは右、さらに首を掴んで大外刈テイクダウン!
すぐに立とうするソウザを再び投げるもここもスクランブルするソウザがスタンドバックについてゴング。判定は3-0でダウンを奪ったグランジャンが勝利。ONEで再起を果たした。
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▼ONEアトム級(※52.2kg)サブミッショングラップリング 10分1R〇マイッサ・バストス(ブラジル)[判定3-0]×山田海南江(日本)
山田は、幼少から柔道とレスリングに取り組み、レスリングの強豪校・安部学院高校を経て自衛隊体育学校レスリング班に入校。2014年クリッパン女子国際大会フリースタイル48kg級3位、2016年天皇杯全日本選手権同級3位、全日本社会人オープン選手権優勝2回、全日本オープン選手権(シニア)優勝などの実績を残すも、肩の怪我の回復が東京五輪予選に間に合わず。
ブラジリアン柔術転向後は、2019年にJBJJF青帯で全日本を制すると、2021年と2022年に紫帯で全日本連覇。2022年IBJJF世界柔術選手権では紫帯ルースター級3位となっている。2022年には、グラップリングでUWW世界グラップリング選手権53kg級優勝。
対戦相手のバストスは、グラップリング界の超強豪。2019、2021、2022年IBJJF世界選手権48.5kg優勝。2023年はルースター級で優勝。ノーギでも世界選手権で46.5kg級と51.5kg級で優勝している。2024年は、1月のアブダビ・グランドスラム東京のルースター級で優勝。1月27日にはIBJJF欧州選手権のライトフェザー級で銀メダルとなっており、山田と同じく今回がONE初参戦となる。
山田は、2023年11月のADCCアジア&オセアニアオープン55kg以下で準優勝。5月11日にタイで行われるADCC予選第2弾を経て、世界大会を目指すなか、ONEでのアトム級サブミッショングラップリングでのバストス戦をいかに戦うか。
ケージグラップリングは2023年12月の修斗で経験済みだが、今回はリンググラップリング。それでもコーナーやロープもあるリングでのレスリング出身の山田の戦いにも注目だ。
1R、組み手争いから。引き込んだバストスにかつぎパスで後転させる山田。正対しシッティングガードのバストスに側転パスを狙う山田だが、バストスはスピーディーなベリンボロからバックテイク! すぐさま両足フック。
亀にまでなる山田だが首を守るバストスのネックロックを横に落とした山田。トップからニースライスパス狙い。そこにバストスは潜り、デラヒーバから足関狙い、ベリンボロバック狙いも試合の間に対応力が上がりバックにつかせず正対する山田! 右足をヒザで押さえてパス狙い。
中央に戻る両者。ニーカットパスでアタックも、下のバストスは足首を掴むも、山田は跳ね上げて上に。互いにダブルガードに。尻を上げ、上からアタックする山田。
ヒザ裏を合わせようとするバストスだが、ストレートフットロック狙いもキャッチは入らず。足を抜き上から攻める山田は、左足を脇下に狙うバストス。マトリックスから足関節も組ませず抜いていく山田。ゴング。
判定は3-0でアタックを続けバック奪取のバストスが勝利も笑顔は無かった。
試合後、山田は「結果は負けてしまったけど、楽しい10分間でした。 書きたいことは沢山ありますが、また腐らずコツコツやっていきます! 絶対に強くなります!」と世界との戦いを記している。
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▼第1試合 ONEアトム級ムエタイ 3分3R〇シール・コーエン(イスラエル)[2R 2分27秒 TKO] ※レフェリーストップ]×テオドラ・キルオバ(ブルガリア)
キルオバはテコンドー黒帯で、アマチュアキックボクシングで59戦して54勝の好成績を残し2014年プにロデビュー。14戦全勝(6KO)と無敗のサウスポー。
コーエンはキックボクシングを15歳から始めてWAKOワールドゲームズで優勝。ムエタイの名門フェアテックスで練習を積み、Road to ONEから本戦出場の切符をつかんだ。7勝(2KO)1敗。イスラエル人ではONE初の契約選手となる
1R、長身のキルオバは前蹴り、右ロー、ワンツーから前へ出る。序盤は見ていたコーエンはワンツーの連打から前へ出ると右ストレートでキルオバを下がらせる。右ローから右フックのコーエンにキルオバもワンツーで応戦するが、回転力でコーエンが優る。出入りして連打を決めていくコーエンは右フックでキルオバをグラつかせ、組むとすかさず右ヒジの連打。さらに右の連打でキルオバをダウン寸前に追い込む。
2Rが始まると同時にラッシュをかけるコーエン。前に出ながら右ストレート、右フックを次々と当てていき、キルオバを下がらせる。接近するとヒジ、首相撲からのヒザ。前蹴りで止めるキルオバだが、スピードに優るコーエンはキルオバが前蹴りを出す前に踏み込んで連打を見舞う。左側の額から流血も見られるが、ボディにもパンチを振り分けるコーエン。右ボディ、右ヒジ、右フックと一方的に攻めるコーエン。キルオバを圧倒し、レフェリーがストップした。