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【ONE】青木真也「トップレベルの舞台でやれるのは最後」発言の真意とは?「文脈の読めなさに絶望する。騙されておけばいい」「俺になにを期待するかは、てめぇで見つけろ」=1月28日(日)有明

2024/01/22 18:01
 2024年1月28日(日)、東京・有明アリーナにて開催されるONE Championshipの日本大会『ONE 165』(ABEMA PPV ONLINE LIVE配信)ライト級戦でセージ・ノースカットと対戦する青木真也が「ベストパフォーマンスを世界最高峰の舞台で、世界最高峰の相手にできるのは今回が最後の機会だと思う」という発言の真意をABEMAに語った。 青木真也、誇りと意地の全て「俺の孤独と絶望、わかる?」  これまでの戦績を振り返った青木は「今の格闘技は“発表会”“競技会”であり、プロ格闘技ではない」と言い、「客と作り手の質の低下。つまらなくて意味のない、スクラップのようなコンテンツが量産されるようになった。それを否定しないし、好きにすればいいと思う一方で、俺は自分が求めるクオリティのプロ格闘技をどこまでやれるのだろう? という想いがある」と語り始めた。 『これが最後の試合になる』と発言が切り取られていることについても青木は、「文脈の読めなさに絶望するよね」と一蹴。「俺にとっては、“全然分かってねぇんだ”“これは言葉が通じていないな”というリトマス紙になった。すごく孤独ですよ。騙されときゃいいんじゃないですか?」と苦笑した。 「この試合、勝てますか?」との問いには、「勝てたらいいね」と応じ、断言はせず。その理由を「『勝ってやる!』という欲求が衰えてくるんです。俺を突き動かす原動力は『自分を認めさせたい』という気持ちだった。だけど、それってどこかのタイミングで無くなりますよね。この気持ちが無くなった俺が、どこに向かっていくのか。すごく興味深い」と自己分析。  さらに、「相対的な評価から降りた。負けて、相対的な順位が落ちていくことに耐えられない。それに加えて、ほとんどの試合展開が読めるようになり、将棋における“投了”のような『参りました』という状況になることが増えた」と胸の内を吐露するが、「ただ、これは将棋ではなく、格闘技。理屈だけではなく、諦めずに頑張る。これを最後の課題としてやりたい」と語った。 「ファンは何に期待すればいい?」と問いかけられと、青木「“テメェで見つけろ”と思う」と伝えた上で、「あのさ、今の社会問題って全部これなの。すがるものがなくて、“推し”という文化にしてる。『推しは青木真也』というヤツがいたら、『辞めろ、くたばれ』って言うね。ファンには心の底から感謝してるけど、あくまで“青木真也は青木真也で、お前じゃねぇんだよ”と。いつまでも戦いを求め続けられても、俺はお前らに付き合わねぇ」と、突き放した。 「俺が1月にこの試合終わってからどうなるのか。すげぇ楽しみなんだよな」という青木。 [nextpage] 「変態」「バカサバイバー」「孤高」──青木を知り尽くした男たちが語る  そんななか、青木真也とともに時間を過ごしたファイターたちは、いまの青木をどう見ているのか。  第5代修斗環太平洋ライト級王者で、現在はRIZINを主戦場とする矢地祐介。日頃から青木と練習をともにする矢地は、青木の“世界のトップクラスで試合ができるのは最後”発言について、「尊敬しかないですね。いまだに試合でも魅せるし、何より若手と一緒に練習をガシガシやって、格闘技が大好きなのは分かる。だからこそそういう言葉を聞くとちょっと寂しいですよね」と、まだまだ第一線としてやっていけると選手であるという。 「僕も年齢を重ねてきて、『その段階はこういうことが変わってくるよ』とか色々なアドバイスをくれるのですごく好きです。ただ……スパーリング中の青木選手は嫌いです(笑)。小技やちょっとしたことなど、相手の嫌なことをしてきますよね。すごく試合には生きる技術。でも『練習でそれやらないでください』って最近よく言っているので、嫌いですかね(笑)」と、スパーリングで苦しめられていることを語った。  今回の“最後の戦い”についての勝敗予想は、「僕は勝つと信じてますからね。あの人の型にハマった時って、世界のどの選手も太刀打ちできない技術を持っているので。ただそれがハマらなかった時はあっさり負けてしまうと思う」とコメント。「青木真也とは?」の問いには、「変態ですね(笑)。40歳を過ぎて人と取っ組み合いをして……変態です」と、敬意を込めて、青木を評した。  一方、第4代修斗世界ウェルター級王者の宇野薫は、かつての対戦相手(2008年・DREAMライト級GP準決勝)であり、練習仲間、セコンドでもある青木について、「“バカサバイバー”。プロレスの試合に出てみたり、RIZINの試合についての記事を書いたり、たまにバカなこともしますよね。だからバカサバイバーかな」という。 青木が対戦するノースカットについては、「打撃の速さが持ち味」と評価した上で、青木の勝算を問われると、「僕はいつも青木くんが勝つことを期待しています。『右向け左』と彼がいつも言うように、みんなの期待している方向から、逆方向に行ったりするのが好きだと思うんですよ。だからみんなが思いつかない、意表を突かれる方向に行くんじゃないかなと思います」と、予想外の展開もありながら勝利するとした。  そして、第8代DEEPライト級王者の北岡悟。かねてより練習名仲間で、2011年には青木とも対戦(元気ですか!! 大晦日!! 2011)している北岡は、青木を「格闘技を頑張っているからこそ賢くなり過ぎてしまった孤高の男」と形容する。 “最後の闘い”発言については、「強い青木真也を見たいと思って見れる試合。彼の本質は健気なので、それが曝け出される試合になる」という。  ノースカットとの試合展開については、「彼が最近表現しているけど、特攻するんじゃないですかね? 立ち合いでのつば迫り合いはすると思うけど、基本的には特攻するんだと思うんですけどね」と、立ち合い、組むなかで“特攻”して自身の試合にするのでは、と語った。「スーパーレックvs.武尊よりインパクトを作ってしまうんじゃないかと予測しています」という北岡。果たして、「青木vs.ノースカット」は、『ONE 165』最大のハイライトとなるか。 [nextpage] 青木が「嫌い」「一周回って嫌い」「アイツはクソ」と言いつつも──  青木のことを「嫌い」という“破拳王子”こと廣田瑞人、“コスプレファイター”長島☆自演乙☆雄一郎、“野生のカリスマ”こと桜井“マッハ”速人の3人は、青木の決意の試合をどう見ているか。  2009年大晦日の『Dynamite!!~勇気のチカラ2009~』の「DREAM vs. SRC 対抗戦」で廣田は、青木のハンマーロックで右上腕を骨折し、一本負けを喫した。 「俺の中では2009年で止まってるんで、申し訳ないけど嫌いなまま。やっぱり一周回って嫌いなところに来てますね」と、廣田は言う。  青木とは再戦の話があるも実現しなかったことを明かす廣田は、「アイツにとってメリットは何もないからしょうがない」としつつも、「アイツが受けなかったのがやっぱ男らしくないなと。人として出来てない、どうしようもないヤツだな」と一刀両断する。  今回、青木と対戦するノースカットの印象を「マッチョで身体能力が高くて、主催者から推されてる選手」とという廣田は、青木の勝つ道は「一本しかない」と断言する。 「極めに行って極め切れなかったとき、アイツ諦めるじゃないですか。極め切れなかったときに諦めてやられる。最後だったらKO負けしてほしいですね。勝ったら『またやる』とか言い出しそう」と、負けるときは“諦めたとき”と語っている。  廣田が対戦した翌年、2010年の『Dynamite!!~勇気のチカラ2010~』で、青木を跳び膝蹴りで失神KOに下した長島☆自演乙☆雄一郎もまた、青木に複雑な思いを持っている。  ミックスルールで行われた試合について、「当時、K-1で優勝して日本トーナメントで優勝して、ひとつ人生が変わったんですよ。それからの青木真也の一戦やったんで、“超えるものあったわ”みたいな」と振り返ると、「分かりやすい意味でヒールになってくれた(1Rのキックルールで青木がロープ掴み)んで、それを倒した僕は世間から“やったな”って言われましたよ。一回、青木真也と椅子に座ってあの時の試合について話してみたい、何を思ってたん? って」と、かつての試合の答え合わせをしたいと語る。  また、「ほんま強いなと思うんですけど、好きか嫌いかで言うと、やっぱり嫌いですよ。誰が腕折って薬指立てるやつ好きやねんっていう。武道をちゃんと習おうとしてる人間からしたら、間違いなくその武道精神に反してないですか」と、当時27歳の青木の直情的な行動を好きになれないという。  今回の日本での試合については、「勝つんやったら嫌われて勝って、負けるんやったら世間が両手挙げるような負け方をしてほしい。今までの青木真也を貫くじゃないですけど」とし、「“青木ざまあ”って言いたい人間がいる、きっと僕はそっち側です」と青木への想いを語った。  一方、2009年4月の「DREAMウェルター級GP開幕戦」で青木に1R KO勝ちし、『格闘代理戦争』でも丁々発止を繰り広げた桜井“マッハ”速人は、青木に発破をかける。 「(青木が)試合をすること自体、特にそんなに意識してないんで、“そうなんですか”って感じです」と、無関心を装う桜井は、青木について、「同じ時代を生きた仲間意識はない、はっきり言って興味ない」と言い放つ。 「強くたってチケット売れないじゃん、それはやっぱり人間性だよ。“ただ僕は強いです”ってそんなやつ価値ないでしょ。もう(40歳の青木は)“おじいちゃん”でしょ。おじさんじゃなくて、“おじいちゃん狩り”されてるんですよ。俺とよく戦ってた頃が最強じゃない? 俺は付き合ってやってたけど」と、34歳で7歳下の青木とウェルター級で対戦したことを振り返りながら、いまは逆の立場になっているとした。  青木vs.ノースカット戦は、「相当(青木に)分が悪い」と言い、「彼はテイクダウンがすごく強いけど、それだけ。寝技ももちろん強いけど、攻略されちゃうともうダメだと思います。彼は、特に打たれ弱いんで、パワーのある選手に打たれちゃうと効いちゃう。テイクダウン出来なかった終わり」と察した。  最後に青木へのエールとして、長島は「いつも通りやりや」、廣田は「諦めるなよ」、桜井“マッハ”速人は「頑張ってねって握手(する)」と、「青木真也が嫌い」と言いながらも愛のある言葉でエールを送った3人。  多くのファイターたちが青木を語るなか、40歳になった青木が“いまなお格闘技の最前線で戦い続けている”ことはたしかだ。今後の進退にも注目が集まる青木の「トップレベルの舞台でやれる最後の試合」は、1月28日、『ONE 165』にて行われる。 <発表済み対戦カード> スーパーレックvs.武尊(フライ級キックボクシング 世界タイトルマッチ/3分5R)青木真也vs.セージ・ノースカット(ライト級MMA/5分3R)ダニー・キンガットvs.若松佑弥(フライ級MMA/5分3R)平田樹vs.三浦彩佳(アトム級MMA/5分3R)ボカン・マスンヤネvs.山北渓人(ストロー級MMA/5分3R)箕輪ひろばvs.グスタボ・バラート(ストロー級MMA/5分3R)ゲイリー・トノンvs.マーティン・ニューイェン(フェザー級MMA/5分3R)ケイド・ルオトロ vs. トミー・ランガカー(ライト級サブミッショングラップリング 世界タイトルマッチ/10分1R)秋山成勲vs.ニキー・ホルツケン(キャッチウエイト 特別ルール/3分3R)
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