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【RIZIN】朝倉海、必然の戴冠を語る「相手セコンドの声を聞いた」「ドクターがアーチュレッタの身体構造を分析、ヒザ蹴りは狙っていた」──エリーに加え、ビリーも今春、JTTコーチ入り

2024/01/06 16:01
 大晦日『RIZIN.45』さいたまスーパーアリーナ大会で、元Bellatorバンタム級王者のフアン・アーチュレッタ(米国)を2R 3分20秒、TKOに下して、RIZINバンタム級王座を3年4カ月ぶりに奪還した朝倉海(ジャパントップチーム)が、タイトルマッチに向けた万全の事前分析を明かし、エリー・ケーリッシュ・ヘッドコーチに加え、今回、来日したビリー・ビゲロウ・レスリングコーチが3月からJTTの専属コーチになることを、自身のYouTubeで発表した。  当初、2023年7月30日の『超RIZIN.2』でフアン・アーチュレッタとRIZINバンタム級王座決定戦を行う予定だった朝倉海だが、練習で左膝内側側副靱帯損傷。今回は事前インタビューの通り、5カ月の延期の時間を、怪我の回復と戦闘能力アップ、そしてさらなるアーチュレッタ研究に費やした。  その一つが、試合中の英語ヒアリング力を上げることだった。  朝倉は、「エリーコーチや通訳のタリックさんが、『相手のセコンドの声が理解できるように勉強しよう』って言っていて、アーチュレッタの全試合を見て、ずっと勉強していた。俺はアーチュレッタのセコンドの声を全部理解できるようにしていた。今回、もちろん兄貴(未来)とかエリーとか(自陣の)みんなの声も聞いていたけど、相手のセコンドの声も聞いていた。だから最後の『ワンツーから入れ』みたいなことを言ったのに“絶対、合わせる”と思って」と、フィニッシュとなったヒザ蹴りのタイミングも読めていたという。  細かい連打からロープに詰めて組んでくるアーチュレッタ。そのボディにヒザ蹴りを合わせることも狙っていたポイントだった。 「マジでほんとうに細かいところまで分析していたから。相手のアーチュレッタの身体の構造とかも専門家に調べてもらって、お腹の長さが何センチあるからボディが狙いやすいとか。足の構造とか全部調べた。とにかく万全で臨んだ」と海が言う通り、フランス人トレーナーのエリーコーチは、母国でアーチュレッタの身体構造をドクターに分析してもらっていた。 「海の試合は最高のパフォーマンスだった。しっかり動き続けていたし、ビリーと自分が教えたテクニックを再現できていてとてもスマートだった。我々が望んでいたプラン通りの動きだった。タイミングも距離感もすべてが良くてスムーズだった」と、王座戦の朝倉の動きを高く評価するエリーコーチは、対戦相手の分析の成果を明かす。 「今までYouTubeでアーチュレッタを分析してきたけど、今回はフランスのマチューというドクターとアーチュレッタについて分析を行った。彼はファイターの身体と動きを分析しているドクターで、私たちは膨大なデータをもとに分析した結果、アーチュレッタは胴体と腹部が長いという特徴が分かり、露出したボディへの攻撃が有効と考えた。その動きも常に腹部が空いている状態なんだ(右ストレートを打つときに脇が空くポーズを見せ)。これは狙いやすいターゲットだと思った」(エリー)  そのドクターの名はマチュー・トゥルザ。Sport Posture Conseilを運営するトゥルザは、自身も空手家だった経験を活かし、医学の道へと進み、スポーツ健康に特化した専門知識を身につけた。特に筋骨格系と神経系の相互作用に焦点を当てた研究でこの分野では初となる遠隔身体・運動分析などの革新的な方法を開発している。 [nextpage] 影の人たち全員にとって、巨大な仕事だった  マチューは、「エリーの要求は明確だった。彼のアスリートであるカイがどのように動くか。いかに情報を掴み、場所を取るか、カイの身体の使い方、強み、ディフェンスを洗練させるかを理解したい」と。 「そこで私は、フアン・アーチュレッタ特有のテクニックパターン、ターゲットにする身体領域のプレイリストをハイライトで示し、構造的にお互いがどのように動くか、戦うかを分析した。エリーが私の構造分析に示してくれた信頼と関心にありがとう。この勝利はカイのみならず、ヘッドコーチのエリー、スパーリングパートナーのブライアン・ブーランド、レスリングコーチのビリー・ビゲロウら、影の人たち全員にとって巨大な仕事でした」と、試合後にSNSに記している。  そのビリーも、朝倉のアーチュレッタ戦の動きを賞賛する。  米国ラスベガスのシンジケートMMAで、今回、元谷友貴を下したビンス・モラレスをはじめ、UFCのアルジャメイン・スターリングやメラブ・ドヴァリシビリらトップファイターを指導するビリーは、朝倉がアーチュレッタにマットに背中を着かされることなくテイクダウンを防いだことが、KOに繋がったと語る。 「カイが良かったのは、レスリングのディフェンスに多く取り組んだこと。そのおかげで自信を持って打ち合ってゲームプラン通りに試合を進められた。海のテイクダウンディフェンスとテイクダウンを読む力がほんとうに信じられないほど凄かった。グラップリングの応酬になったときの海の忍耐強さはほんとうに凄い。だからアーチュレッタのテイクダウンの先の作戦を潰すことが出来て、今回のKOを掴み取ることが出来た」(ビリー)  朝倉も今回のJTTの陣容と分析、試合への取り組みに大きな自信を得ていたことを明かす。 「物理的に相手の弱点はどこかを分析する。エリーとアーチュレッタの弱点はボディにあると分析して、ヒザとボディへのパンチは狙っていました。ほんとうに自信があった。ファイトキャンプ中ずっとビリーのレスリング技術の引き出しというか、初めて知る技術がたくさんあって、海外のトップコーチはやっぱりこれだけ知っているんだなと思い知らされた感じ。だからめちゃめちゃ自信があって、アーチュレッタがタックルに来るなら来ていいよと。逆に疲れるだけだからと。全然、レスリングは警戒してなかった」と、エリー&ビリーの盤石の体制を語る。  その上で朝倉は、この充実したJTTの環境を継続・発展させていくことを明かした。 [nextpage] 日本でも強くなる、ジャパントップチームの名のもとに── 「正直、反省点はいくつかあって直さなければいけないことも分かっているので、ここからこの2人に学んで、もっと成長できるように。ほんとうにこの2人がいればマジで世界でも強くなれると思っているので、いろいろ吸収してもっと成長できればと思っている。 いますでにエリーは専属のヘッドコーチとして日本に家を借りて住んでいるけど、このビリーもなんと日本に来てくれることになりました。いったん(米国に)帰って、3月中旬に来てくれることになりました。JTTの専属レスリングコーチとして。UFCチャンピオンからのコーチオファーを通り越して、JTTに来てくれた。世界のトップ選手にしか教えていない動き、普通の選手では見てもらえないような人が日本に来てくれる」(海)  日本でJTTのコーチになることを決めたビリーは、「日本に来ることが出来てほんとうに嬉しいよ。日本のMMAにはとても豊かな歴史があると感じた。今こそ世界と日本の橋渡しをして、国際的なチャンピオンをもっと多く作ることに専念したい。RIZINだろうとそうでなかろうと。ここに来られてとても幸せだし、今回の旅と経験に満足している」と、北米のMMA最前線の動きを日本に伝えたいとした。  朝倉は、「今年も気合を入れてどんどん突き進んでいくので、いいチームで上を目指していきます。この(オクタゴンの)マットやポストにロゴがある多くのスポンサーのおかげで2人が日本に来てくれています。これからJTTを世界一のジムにしたいので、応援、よろしくお願いします」と、ジャパントップチームの名を世界で示したいと語った。  YouTubeで資金を得て、米国ラスベガスでの海外修行に投資し、そこで世界のトップファイターを体感。コーチの指導も受けて、肌感覚で自身に必要なものを理解し、日本に招聘した。  これまでの日本のファイターが出来なかったことを、朝倉兄弟とチームは東京で実現しようとしている。RIZINバンタム級のベルトを巻いた朝倉海は、新体制でこれからどこに向かうのか、注目だ。  YouTubeでは、リリー&ビリーが試合で感じた相手の体重超過の問題点や、朝倉の課題などについても語られており、必見の内容となっている。
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