MMA
インタビュー

【ONE】4年ぶり日本大会に向け、チャトリCEO「年に2回開催は“やりたい”ではなく“やる”」「日本人選手にチャンスがあるがレベルアップが必須」「ONEルールは北米で続々認可されている」「日本の団体と共催は無いけど──」

2023/12/18 12:12
 2024年1月28日(日)、東京・有明アリーナにて『ONE 165: Rodtang vs.Takeru』が開催される。ONE Championshipの日本大会は、2019年10月の両国国技館大会以来、約4年3カ月ぶり。  リングで行われる同大会のメインイベントでは、「ONEフライ級(※61.2kg)キックボクシングマッチ」(3分5R)として、K-1三階級制覇の武尊(team VASILEUS)と、ONEフライ級ムエタイ世界王者のロッタン・ジットムアンノン(タイ)が激突。  さらに、元ONE世界ライト級王者の青木真也(日本)も出場し、元UFCのセージ・ノースカット(米国)と5分3Rで戦う。  12月18日(月)の17時から同大会の第2弾会見を控えるONE Championshipのチャトリ・シットヨートン会長兼CEOに、日本大会や今後のONEについて聞いた。 リングでのロッタン戦は武尊がリクエストした ――2019年10月の両国大会以来、3度目の日本大会となります。前回は、海外放送も考慮し、2部構成で前半は午前中からの開始でした。1月28日の大会は何時頃からになりそうですか。 「日本のゴールデンタイムになる予定です。米国でも放送しますが朝の時間帯になります。日本のプライムタイムに合わせました」 ──それは日本のファンにとっては朗報ですね。約4年3カ月ぶりの日本大会となりますが、開催を決断しましたね。 「久々の日本大会が正式に決まって、とても興奮しています。私は日本人の母と一緒に住んでいて、普段は日本語で会話していますし、こうしていまもインタビューに日本語で答えています。2019年に日本で初めて大会を開催したとき、私は母に『必ず日本に世界レベルで戦える舞台を作る』と話していて、それを実現することが出来たました。  同じ年に両国国技館でONE100回目の大会となるビッグイベント『ONE: CENTURY』を成功させることも出来たし、その後も日本で大会を行うことは計画していました。しかし新型コロナウイルスによって、その計画が困難になって日本大会の流れが止まってしまったんです」 ――それを4年3カ月ぶりに復活させる。でも日本のマーケットは特殊でリスキーなところもあります。なのに日本でもう1回やろうと決めたのはなぜですか。 「4年前のONE Championshipの日本大会は、自分たちだけのチャレンジでした。今回はONE Championship、ABEMA、楽天チケット、NSNという三つの企業のパートナーシップがあることで、一緒に一生懸命やろうと日本大会開催に至ったわけです」 ――その座組があって、日本大会が実現したと。会見では「日本で年に2回やりたい」という言葉もありました。 「2回は“やりたい”ではなく“やる”です。できれば年4回大会をやっていきたいという希望があります」 ──それほど日本大会を継続開催する意向なんですね。さて、今回の有明大会は「リング」になりました。それは、武尊vs.ロッタン・ジットムアンノンの影響が大きいでしょうか。 「やっぱりMMAにとってはケージがいいと思いますし、私は個人的にもケージが好きです。でもロッタンと武尊の試合はメインイベントだから、両者がベストの力をリングで発揮してもらいたいという考えです。特にリングで、ということに関しては、武尊がリクエストしました。武尊はケージで戦ったことがありませんし、当然でしょう。だからリングになります。でもそうですね。MMAはケージだともっと楽しい。キックでもムエタイでもケージでの試合になることに、違和感はありません。でもいまはONE Championは両方使っていますね、リングとケージを」 ――たしかに毎週金曜日のタイのルンピニースタジアムでの試合は、MMAでもリングで行われていますね。そして、ギャンブラーたちが占めるいつもの光景とは違うファンたちの歓声を感じます。 「今年のONEはムエタイが多かったんです。だから必然的にリングでの大会も多かった。それはタイ政府からの基金の提供を受けたこともあります。1年半ほど前にタイ政府から『今のムエタイはギャンブルの影響でムエタイを嫌う人間が増えている。だからルンピニースタジアムでONEの大会を開催して、ムエタイを再建してほしい』と相談を受けました。私にはタイ人の血も入っていますし、ギャンブラー以外の人たちが見てもエキサイティングなムエタイを見せたかった。ONEによってムエタイを大きく変えることが出来て、タイで新たな層にムエタイの人気が出ていることは嬉しいことです。  でも、来年はMMAが増える予定です。ルンピニーでも『ONE Friday Fights』でもっとMMAをやります。同時にスタジアムイベントも増えていきます」 [nextpage] どうすれば日本人選手が強くなれるのか、それが日本の格闘技の現状 ――ONEの日本人選手で試合間隔が空いた選手も少なくありません。今後はそういった選手にも試合機会が与えられそうでしょうか。 「そうですね、日本の選手にとっても試合は増えると思います。でもONE ChampionshipとABEMAで話すときにも一番大きな問題になるのは、いまONEで日本人選手が勝てなくなっていること。選手はたくさんいて、日本のベストだが、ONEで勝てないからトップを目指すことが難しい。世界レベルじゃない選手が多い。どうすれば日本人選手が強くなれるのか。それが日本の格闘技の現状だと思います。でも、今回の武尊はやっぱりすごく大きなチャンス。彼が日本の選手に扉を開くかもしれない。でもみんなレベルアップしないといけないですね。この12年間、いくら日本の選手がタイトル戦線に向かっても大体みんな負けてる」 ──そんななか、ONEのタイトル戦線を長く引っ張った青木真也選手が、今大会でセージ・ノースカット選手と対戦します。40歳になった青木選手が「ベストパフォーマンスを世界最高峰とされる相手とできるのは本当に最後」と言うなか、ラストチャンスを日本大会に持ってきました。 「そうですね。これは絶対ラストチャンス。私はいま青木選手と話していました。『もう世界クラスを相手にピークパフォーマンスのファイトはできないかもしれない』という考えね。だから、このトレーニングキャンプでは一生懸命練習して、100パーセントやりたいと。そして、もし負けても試合がすごくギリギリの接戦だったらOK。でもすごい大変な試合だから、簡単に負けたらこれが最後になる。真也にとって、もう40歳だから最後でしょう。この最後の試合はファンにとっても意味がある。レジェンドの最後の試合かもしれない。でも今回の試合は“レジェンドファイト”じゃない。27歳のノースカットと真也は戦うのだから」 ──ところで、青木選手が前戦で敗れたサイード・イザガクマエフ選手は、ONEを離れたのでしょうか。 「そうです」 ――それは彼が望んだ? 「いや、ONE Championshipに、彼と同意できない部分がありました」 ──なるほど。ほかにライト級では、クリスチャン・リーが、2022年11月のウェルター級王座戦でキャムラン・アバソフにTKO勝ちして2階級制覇を成し遂げて以来、試合をしていませんが、その後は……。 「また戻りますね。先週話しました。トレーニングもしています。来年早々に復帰予定です」 ――おお、それは安心しました。ヴィクトリア・リーが亡くなったことで、アンジェラ・リーのみならずクリスチャンも試合から遠ざかっていたので、心配していました。ただアンジェラは正式に引退しましたね。決意は固かった。 「そうですね……。練習の気持ちが出てこないから。妹が同じチームだったから、練習するとすべてを思い出してしまう。でも練習する気持ちが出なかったら、絶対ファイトの気持ちは作れない。いま『ファイトストーリー』(※非営利のメンタルヘルス組織)を起ち上げたし、いいことだと思う。ただ、格闘技から離れていることは永遠かは分からない。ここ1、2年で戻る話じゃないけど、いつかまた格闘技をしたいと思うときも来るかもしれない。そのときが来れば、また話したいと思います。そして、リーファミリーには新たな出来事もあります」 ──ビクトリア・リーの弟のエイドリアン・リーが、ONE Chamlpionshipと契約したことですね。 「そうです。20224年にクリスチャンが復帰し、エイドリアンがデビューします。これはとても喜ばしいことです」 [nextpage] 平田樹、三浦彩佳、若松佑弥、そして山北渓人への期待 ――アンジェラがいた女子アトム級には、日本では平田樹選手がいます。彼女は日本大会出場の可能性はいかがでしょうか。 「イツキ・ヒラタは才能がある、いい選手でチャンスを持っているけど、世界トップレベルでは勝てない。いつも負けている。だからレベルアップが必要だ。スキルが十分じゃない。そこでどうレベルアップするか。練習環境を整えて、いいコーチのもと、いい練習相手と練習してレベルアップすれば、イツキはチャンピオンになれる可能性だってある」 ──女子ストロー級では三浦彩佳選手が11月にメン・ボーを1R“あやかロック”で極めました。同じくTRIBEの若松佑弥選手が7月にシェ・ウェイに1R TKO勝ち。10月に手塚裕之選手がジン・テホに1R一本勝ち、3月に和田竜光選手、山北渓人選手も勝利しています。立ち技では秋元皓貴選手、内藤大樹選手の日本大会での動向も気になります。 「もう少し待っていてほしい(笑)。怪我などの確認もあるから調整して。たしかに軽い階級にはチャンスがある。いま名前が出たユウヤ・ワカマツにはずっと期待しているし、ONEデビューしたケイト・ヤマキタもすごく良い選手だ」 ――第2弾の発表を待つことにします。ところで、5月にONEのグローバル・ルールセットが米国コロラド州で適用されて、大会が開催されました。その後、ジョージア州でも認められたという報道を見ました。いわゆるユニファイドルールがある米国のなかで、ONEのグローバル・ルールセットの認可も拡大しているのでしょうか。 「その通りで、実はコロラド、ジョージアのみならず、ほかの州でもONEのグローバル・ルールセットは認可されています。ある程度まとまってきたら、発表するつもりです。そういったこともあり、2024年には年間最低でも61大会を開催する予定です。アジア、米国のみならず、欧州、カタールでも大会(3月1日)が決定しており、スケジュールはこれから発表していきます」 ――そんな中で、1月28日の日本の大会に期待することはどんなことでしょうか。 「ロッタンと武尊が戦う。世界トップのスキルを持つ2人が、KOを目指してガンガンいく、そんなONEの戦いを見てほしい。絶対に完売するよ。だってビッグファイトだから。日本のファンは日本の選手を見たいと願うけど、日本人選手がONEで勝てない状況があるなか、武尊には大きなチャンスだ。武尊と青木の試合以外にも、ONEらしい魅力的なカードを組む予定だから、第2弾のカード発表にも期待していてほしい」 ――「日本の選手を見たがる」というなかで、かつて修斗とPANCRASEが対抗戦をしたように、日本のプロモーションとクロスプロモーションをすることもありうるでしょうか。 「共催は無いです。そういうビジネスモデルじゃないから。ONE Championshipは自分たちの大会だからね。でも4年前のイベントで選手たちは、修斗とPANCRASEの王者同士が戦った。いい試合になるなら、それはMMA、立ち技含め、そういう形はまだオープンですね」
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