2024年1月28日(日)東京・有明アリーナで開催が決まった『ONE Championship』の日本大会『ONE 165』にて、ONEムエタイ世界フライ級王者ロッタン・ジットムアンノン(タイ)と対戦するK-1三階級制覇の武尊(team VASILEUS)がインタビューに答えた。
この試合はフライ級(-61.2kg)ONEキックボクシングルール3分5Rで行われ、ケージではなくリングが使用される。
武尊は2011年9月にKrushでプロデビュー。2013年の「Krushフェザー級初代王座決定トーナメント」で優勝して王座に就くと、2015年にK-1初代スーパー・バンタム級王座、2016年にK-1初代フェザー級王座、2018年にK-1第4代スーパー・フェザー級王座をそれぞれトーナメントで優勝してK-1史上初の3階級制覇を達成した。2022年6月、那須川天心に判定負けも2023年6月にベイリー・サグデンをKOしISKA K-1ルール世界ライト級王座を獲得して復活。戦績は41勝(25KO)2敗。
結局、殴り合うんだろうなって
――ついにロッタン戦が決定し、記者会見が終わりました。今どのような心境ですか?
「ひとつやっとホッとしたところがあるのと、いよいよだなって気合いが入る心境ですね」
――フェイスオフではバチバチのにらみ合いを展開しました。
「やっぱり向かい合うと早く試合がやりたくなりましたね。ロッタン選手は凄くいいオーラを持っているし、コイツと殴り合ったら楽しいだろうなって気持ちでした(笑)」
――目を合わせてスイッチが入りましたか?
「抑えていましたけれど、楽しみな気持ちが増えましたね」
――ロッタンと戦うと決めてからは、ロッタンに集中して練習や対策をしてきたんですか?
「そうですね。6月の試合が終わってからはずっとロッタン選手のことを考えてやってきました。実際にはその前から、『THE MATCH 2022』で負けて辞めようと思って、その後にもう一度やろうとなったのはロッタン選手と戦いたいとの気持ちが出てきたからなので、あの試合後の1週間後くらいにはロッタン選手のことを考えてやっていましたね」
――では、対策はもう完璧に出来ている?
「対策と言っても相手も人間なので変わるし、作戦を立てたりとかは今までもあまりやっていなくて。自分の中の感覚でこれがいいんじゃないかと考えながら練習をやっていて。それって日々変わって行くし、リングに上がった時もまた変わるかなと思うので、いろいろなパターンを想定しつつ、結局、殴り合うんだろうなって考えながら練習しています(笑)」
――もうすでに、かなりシェイプされているように見えます。
「今までで一番いい練習が出来ているんじゃないかなと思うし、その分、身体の消費は凄く大きくなるので、1月28日の試合が終わったら身体が壊れるんじゃないかなってくらい練習しています。それでもいいというつもりでやっていますね」
――ハイドレーションテストも気になりますか?
「そうですね。だから普段の体重をだいぶ下げるようにはしています。脂肪で落とせるところは限界があるので、水抜きが出来ないとなると筋肉量も少しずつ落とさないといけないだろうなっていうのがあります」
――実際に試してみましたか?
「それはまだやっていませんが、ハイドレーションテストの検査キットを購入して、検査だけは定期的にやっています。練習後で汗を出した状態だと基準値を超えてしまうので、水抜きはほぼ出来ないような感じにはなると思いますね」
――ハイドレーションテストに引っかかる選手は多く、初めてとなると一番の大敵となりそうですね。
「大変ですね。正直、けっこうハードルは高いと思いますけれど、試合をやるためにはやるしかないです」
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絶対にどちらかが倒れますよね
――先にロッタン選手のインタビューを行ってきたんですが、『ゴング格闘技』本誌のインタビューでも武尊選手は「うるさいよ」と一喝していましたが今回も「武尊はガードが甘い」と指摘していました。
「そう思ってくれていた方が、僕は都合がいいですね。計算しているわけではないけれど、そのガードの甘さだったり、攻撃をもらうのは僕の戦い方のひとつでもあるので。その強味はやってみたら分かるんじゃないですかね」
――ただガードが甘いわけじゃないよ、ということですね。
「そうですね。避けようと思えば避けられるんです。あえて避けていない部分はあるし…まあ、そこはやったら分かるよって感じですね」
――たしかにレオナ・ペタス選手との試合でも、一発もらってすぐに返して倒していました。ああいうカウンターは武尊選手の持ち味だと思います。
「相手の攻撃をもらう距離は自分が当てられる距離でもあるので。もらうリスクを背負ってでも攻撃を当てに行った方が、僕は倒せる攻撃が当てられると思うんですよ。避けて当てるのも技術だと思いますけれど、それだと倒れにくいので。特に軽量級は。どこかで自分も効くけれど、そういう攻撃を当てないと人間はなかなか倒れない。僕はそういう戦いでこれだけKOしてきたので。それをロッタン選手にやる人はいなかっただろうし、ロッタン選手は初めての経験になると思います」
――足を止めての打ち合いになったら自分の方が有利だ、倒れるのは相手の方だとも言っていました。
「それは全く同じことを僕も思っているので、当日が楽しみじゃないですか」
――実際、打ち合ってくると思いますか?
「打ち合うと思いますね。もちろんテクニックはあるし、使って来ると思うんですけれど、今までの試合を見てもそうだし、今日の目を見てもそうだし、何か真っ向から小細工なしの打ち合いをしたがっている目をしていました。だから、そういう試合になると思います」
――少し懸念されるのがムエタイ選手ということで、ミドルキックや前蹴りを駆使して距離をとって戦ってくるということも考えられなくはないと思うんですが。
「もしロッタン選手がそういう戦い方をしてきたら、それがウィークポイントになってしまうと思いますね。ロッタン選手の強さって、あの戦い方だからこそこれまで勝ってきているので。だからロッタン選手はそういう選択はしないと思います」
――ロッタン選手は打ち合いでの強さや乱戦での強さに目が行きがちですが、随所にムエタイのテクニックの上手さを持っていますね。
「その上手さがあることは分かっていますが、僕はそういうムエタイ選手は得意なんですよ。今までの試合もそうですけれど、ムエタイ寄りの戦いをすればするほど僕はやりやすくなります」
――それと3分5Rになったことで、これは自分にとって有利だとも言っていました。
「経験値で言ったらそうなのかもしれないですけれど、僕もフランスで3分5Rをやってみて合っているなって自分でも思ったんですよ」
――確かに。
「今までK-1でムエタイのチャンピオンと3人戦いましたが全員KOしています。だからvs.ムエタイに対する自信は凄くあって。ロッタン選手はムエタイ選手の中でもちょっとタイプが違う選手だからこそ警戒する部分があるんですけれど、ムエタイファイターという意味では自信があるし、噛み合うという意味ではどっちかが倒れるような戦いになると思うし、そういう戦いをすることが僕の格闘家をやっているうえでの一番幸せな戦いというか。だから、いろいろな意味で本当に楽しみです」
――3分5Rに関してはどのように考えて臨むつもりですか? 3分3Rのつもりで早い段階から倒しに行くか、それとも5Rを通じてのゲームメイクを考えてやるのか。
「前回の試合が3分5Rだったから、僕も最初は5R用の戦い方をしないといけないなって考えていたんですよ。でも結局、3分3Rのペースで戦っていました。それでも5Rまで動けましたし、ロッタン選手とだったら5R用の戦いで流していくみたいな展開にはならないと思うので、そこはあまり考えていないですね。なるようになるかなって。もし5Rまでもつれたとしても、5Rフルに動けるスタミナは付けて練習しています」
――おそらく3分5Rになったのは、この両者に完全決着をつけてもらいたいとの意向があるからではないかと思います。
「あると思います。僕からすればありがたいですね」
――ロッタン選手も確実にKOで決まる試合になるだろうと言っていました。
「この2人で3分5R打ち合ったら、絶対にどちらかが倒れますよね。僕も同じ思いです」
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レオナ戦を全然超えるんじゃないですか
――KOするビジョンはもう見えていますか?
「けっこうイメージして練習はしています。トレーナーやチームメイトは僕に勝って欲しいから勝つための作戦とか練習を考えてくれるんですけれど、僕はやっぱりどこかで結局打ち合ってしまうんだろうなっていう考えもあるんですよね。だからその技術の練習もしますけれど、結局打ち合った時の練習をメインにやっています」
――試合中に武尊選手が笑うのが先か、ロッタン選手がカモンゼスチャーをするのが先かもこの試合の見どころのひとつだと思います。
「なるほど…同時くらいじゃないですか(笑)。それが何ラウンドに来るかによって試合の盛り上がりも変わって来るでしょうね。僕は…1Rで笑っているかもしれません。それくらい噛み合う試合です。もしかしたら、試合開始のゴングが鳴った瞬間に笑っているかもしれませんよ。そのスイッチが入ったら僕の勝ちです」
――武尊選手が相手だったら、ロッタンはあのカモンゼスチャーをする必要もないかもしれません。
「そうですね。僕が逆にやってやりますよ(笑)」
――ロッタンがどう出てくるか、いろいろな想定はしていますか?
「けっこう考えてはいます。でも、今までの試合を見ていても攻撃パターンだったり、試合の癖は絶対に変わらないと思うので、こう来たらこれ、というのは考えて練習していますね」
――この試合が日本で行われることについてはどうお考えですか?
「ロッタン選手にもONEにも感謝しかないです。コンディション面でもそうなんですけれど、ONEと契約したらもう日本のファンの人たちの前で試合が出来る事はないのかなって思っていたので。日本での最後の試合が負けた試合なので、その最終履歴を今回で勝ちにするチャンスをもらえたのが凄くありがたいです」
――そう考えると、これがもしかしたら武尊選手の日本での最後の試合になる可能性もあるわけですね。
「その可能性はあるかもしれません。チャトリさんからは『次はアメリカだ』とも言われていますし」
――武尊選手は那須川天心戦後、一時は引退も考えたそうですが、今は以前よりも燃えていますか?
「これは本当に、ロッタン選手のおかげで僕はモチベーションを保ててまた現役をやろうと思えて、手術に踏み切るきっかけになったのもロッタン選手でした。目標がなかったら怪我を治そうともしなかっただろうし、手術をしてからのリハビリが一番大変で元の身体に戻すまでが一番キツかったんですが、それを乗り越えられたのもロッタン選手という存在があったからです。その感謝を持ちながら戦おうと思っています」
――武尊選手の最高傑作と言うとレオナ・ペタス戦をあげる人が多いと思いますが、ロッタン戦はあの試合を超えますか?
「全然超えるんじゃないですか(笑)。やってみないと分かりませんが、この2人で面白くない試合になるわけがない。僕が客観的に見てもそう思うし、僕もお客さんとしてこの試合を見たいです」
――先ほどチャトリ代表から「次はアメリカで」と言われたとのお話しがありましたが、ロッタン戦が最後とは決めていないんですよね?
「最後とは決めていませんが、最後のつもりで追い込みをやっています」
――それはいつもと変わらない、この試合で死ぬかもしれないとの心構えですね。
「いや、いつも以上ですね。それこそレオナ戦の時はその先の天心戦があったから、この試合で身体を壊すわけにはいかないっていう気持ちがどこかにあったと思います。天心戦の時もそれくらいの気持ちでしたけれど、あの時は減量のことやコンディションのことなどいろいろ考えることがあったので。でも今回は、全神経を勝つことだけに集中できるというか、これを最後だと思って、1月28日が終わったら次の日はぶっ倒れるくらいの気持ちでやり切ります」