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インタビュー

【Bellator】7年ぶり北米挑戦のISAOの『天城越え』「気持ちを切らさず練習し続けて、常に試合の準備をしていた」=11月18日(土)早朝出陣

2023/11/16 21:11
 2023年11月17日(日本時間18日)の『Bellator 301: Amosov vs. Jackso』シカゴ・ウィントラスト・アリーナ大会(U-NEXT配信)に、第8代フェザー級キング・オブ・パンクラシストのISAO(NEVER QUIT)が出場。フランスのイブ・ランドゥーとの試合で、7年ぶりにBellator復帰を果たす。  ISAOは、MMA27勝5敗2分。2017年12月からPANCRASEで6連勝中。2017年12月に元UFCの粕谷優介に判定勝ちすると、2018年4月の松嶋こよみ戦で反則のヒザ蹴りを受けてフェザー級暫定王座を獲得。2019年5月に正規王者のナザレノ・マレガリエに判定勝ちで王座統一を果たすと、2019年10月にカイル・アグォンとの再戦にして2度目の王座防衛戦で判定勝ち。2020年7月にアキラに判定勝ち後、2021年5月の前戦で中島太一に判定勝ちで、3度目の王座防衛に成功していた。  ISAOのBellator参戦は2度目。1度目は2015年10月にゴイチ・ヤマウチを相手に3R 一本負け後、2016年6月のジャスティン・ローレンス戦で2R TKO負けでリリース。当時は北米の壁に跳ね返されたが、勝ち星を積み上げ、35歳での再挑戦となる。  一方、RIZINにも参戦したイブは、MMA19勝9敗(5KO・TKO/5SUB)で現在Bellator欧州で3連勝中。2004年にブレイクダンスのフランス大会で優勝し、世界大会で2位入賞。さらに05、06年には欧州チャンピオンシップで2連覇を達成後、09年にキックボクシングのフランス王者になると、10年4月にフランスの100% FightでプロMMAデビューし7連勝。13年には散打でフランス王者にも輝いている。  16年5月に100%Fightライト級王者に。17年3月にロシアProFC 62でRIZINアゼルバイジャン大会に参戦するアリ・アブドゥルカリコフに判定負けも、その後も4連勝。2019年8月にRIZIN初参戦で上迫博仁と対戦し、左ハイでグラつかせるもシングルレッグに右ヒザを合わされバックマウントからのパウンドでTKO負け。その後、Bellator欧州大会で4勝1敗と大きく勝ち越している。  2021年10月に、Bellator4勝1敗1分で唯一の黒星がブレント・プリムス戦というティム・ワイルドに判定負けしたランドゥーだが、その後、現在まで3連勝中で、なかでも2022年10月に現在UAE Warriors2連勝中のウォルター・コグリアンドロに判定勝ちした試合では、力強いダブルレッグテイクダウンから得意のキムラを狙うなど、組み技・グラウンドでも極めを狙う強さを見せている。  身体能力の高さが際立ち、2020年10月のテリー・ブレイザー戦では、スイッチを繰り返すなかで右スーパーマンパンチからの左ハイという大技でブレイザーを金網に詰まらせると、ブレイザーの組みに右から左の二段跳びヒザを合わせてKO。マット上の勝利のブレイクダンスを見せている。  RIZIN参戦時は捨て身となる跳び技が多かったが、現在ではスイッチヒッターで左右の二段蹴りや左ハイなど遠い間合い、近距離でも打撃を持ち、ケージレスリングも厭わないランドゥーは、初来日から4年が経った37歳にして円熟の進化を見せている手ごわい相手だ。  現在、Bellatorには堀口恭司(ATT)、渡辺華奈(FIGHTER'S FLOW)、菊入正行(NEVER QUIT)が参戦中で、ISAOは4人目の日本人選手となる。  世界へのリベンジをかけて、日本フェザー級の雄が、再びサークルケージへ乗り込む注目の試合は、日本時間の18日(土)早朝6時30分から、U-NEXTにて配信予定だ。本誌では、ISAOにBellator参戦の経緯、意気込みを聞いた。 網膜剥離の手術から作り直してきた ──いよいよ『Bellator 301』試合間近となりました。まずは、現在の心境をお聞かせください。 「久しぶりの試合なんですけど、いよいよ近づいてきて、ワクワクしている気持ちが大きいです。しっかり変わらず、冷静に試合ができればと思っています」 ──久しぶりというお言葉通り、じつに2年半ぶりの試合というなかで、ワクワク感に気持ちを持って行けているのは、試合間隔が開いてしまった不安よりも、それだけの準備をしてきたことへの自信が大きいということでしょうか。 「はい、しっかりいい練習もして来れましたし、格闘技と向き合って“いい生活”を送ることができて充実していました」 ──試合間隔が開くなかでも切らさずに練習を続け、現在はどういった部分に自信を持っていますか。 「打倒極、全体的にレベルアップを図って取り組んできたので、どれが一番いいかっていうのは試合してみないと分からないのですが、ずっと練習をしてきた成果を、試合のなかで出せればいいと思っています」 ──Bellatorには7年越しに再デビューということで、今回どんな気持ちで新たに挑戦していきますか? 「自分の中では、すごく“縁がある”と感じていますし、ストーリー性も高いな、と勝手に思ってます。一度目の挑戦で負けて、それから日本のPANCRASEでやり直して勝ち続けて、そしてまた同じBellatorへ。借りを返しに行くというわけではないですけど、とにかく勝ちを取りにいく気持ちで思っています。  リベンジしたい気持ちが強いですね。最初に行った時と今の自分では違うっていうことは自分自身も感じているし、成長した姿を見せられればと思っています」 ──ここまでどのような練習環境でしたか。 「所属するNEVER QUITと、KRAZY BEEさん、あとは寝技でCARPE DIEM 青山さん、あとは中村大介さんの夕月堂本舗などにも練習に行かせていただき、皆さんにお世話になりました」 ──挙げていただいたジムのなかでもCARPE DIEMに行かれているというのは、組み技や寝技の課題などをご自身で感じていたのでしょうか。 「どこを強化しようとかっていうわけではなかったんですけども、CARPE DIEMさんはご縁があって行かせてもらってから、まあいろいろ組み技と寝技の強化にも繋がりました。今年の春ぐらいとかからちょっと行かせていただいているのですが、知人が通っていて、世羅(智茂)先生からも『こういう練習会をやってるから、もしよければ』と聞きまして、アマ・プロ、グラップラー、色んな方々が来られたりしているので、凄いハイレベルな練習ができました。組んで倒して極める──自分のレベルアップに繋がっています」 ──以前のように海外のジムに行って、外国での試合のイメージを掴もうというようなことはなく? 「今回は、日本の環境でしっかり調整して、試合に挑もうと思いました……というのも、中島戦後に網膜剥離になって手術をしたこともあって、1年くらいの長い休養期間があって、そこからまた身体作りとかをしたので、ちょっとどうしても時間がかかってしまいました。それもあって、このまま怪我を治ししつつ待ってれば、多分契約が決まるだろうなって思っていました」 [nextpage] RIZINはルールセットが全く違う。目指している世界と異なる ──そんな怪我があったのですね……。PANCRASEでの国際戦では、ナザレノ・マレガリエ、カイル・アグォンに判定勝ちと2連勝。その後も、2020年7月にアキラ選手に判定勝ち、直近では中島太一選手との防衛戦が2021年5月で判定勝ちで、その中島選手は現在バンタム級王者、アキラ選手はライト級王者です。 「やっぱり両者ともにすごい強い選手でしたので、チャンピオンにふさわしい選手だなっていうのは肌で感じましたね」 ──両者に勝っているISAO選手には5年間、黒星はついていません。自分がいる以上、フェザー級の王者にはさせないぞという思いも? 「もちろん、自分の階級で戦うのであれば(笑)、そうです」 ──PANCRASEフェザー級は活況だと思いますが、どのように見ていましたか。 「PANCRASEも選手がものすごく増えてきていて、どんどんレベルアップしてきている中で、やっぱり自分がずっとチャンピオンでいたので、もっと1ランク、2ランク上のレベルでやっていきたいなっていう思いがずっとあって。だから“高見の見物”じゃないけど、そういう感じで見ていました。自分は海外との契約を進めたかったし、国内で試合をするという想定ではいませんでしたから」 ──『フェザー級 日本人トップ』の一人と謳われるISAO選手は、Bellatorとの契約が発表されるまで、よくRIZIN参戦が噂されていましたね。朝倉未来選手の対戦相手として榊原信行CEOが名前を挙げたこともありました。ご自身としては世界に挑戦する前にRIZINに参戦して、国内で名を上げるという選択肢は考えなかったでしょうか。 「やっぱりそこはやっぱりブレずに、自分の目標とするところ(海外進出)に向かって進むことだけを考えていました。RIZINについては“違う競技”とは言わないまでも、ルールセットが全く違ってしまうので、戦い方がいろいろ変わってくるだろうなというのもあって、自分が目指している世界は、ケージでやっていてユニファイドルールなので、そこで戦えるように準備を続けていたかったです」 ──なるほど。Bellatorに7年ぶりに参戦するにあたり、練習の取り組みなど、当時とはどういう部分が変わっていますか。 「うーん、細かいテクニックだったり、練習に対する気持ちとか、以前はただこう決まった練習をこなしていることもあったんですけど、今はしっかりやることを決めて、終わった後は反省して、インプットとアウトプットをしっかりできるようにしてこれたかなっていうのは思います」 ──インプットとアウトプットを繰り返す。そうした目的がより明確な練習の間、目指すべきBellatorと契約を果たすも、なかなか試合が組まれず、その間に団体経営に関わる噂も出始めていました。不安になったり、契約自体を見直そうと思ったりしませんでしたか。 「マネージャーとかと話して、『早く試合を決めてほしい』とずっと言い続けて、それでもなかなか決まらなくて、『試合させてくれ』と。そんななかで準備はしていました。先方からも『準備していてくれ』と言われていたので、ずっと休みなくというか。こう、気持ちの休みなく続けていた感じです」 ──……それは心身ともにキツいですね。常に身体を絞って、気持ちも切らすことが出来ない。なのに、試合が決まらなかった。 「『ショートノーティスでも(オファーが)来るかもしれないから、可能な限り準備してくれ』って言われていて。気持ちも切らさずずっと続けてましたね、体重も、食事の方とかも気にしながら」 ──それが先ほどの「選手としていい生活が送れた」という言葉の意味だったのですね。 「そうですね、常に試合の準備をしていたので、厳しくも、自身を律したいい生活でした」 [nextpage] ドロドロになっても最後は取り切って勝つ ──日本のRIZINにも参戦したことがある、対戦相手のイヴ・ランドゥー選手の印象をお聞かせください。 「独特のリズム感と、黒人の選手特有のすごいバネのあるような戦い方で、結構やりづらさはあるのかなという印象ですね」 ──再デビュー戦の相手としてはいかがですか。 「誰とやってもきつい試合にはなるだろうなっていう覚悟はあったので、全然申し分ないです」 ──ブレイクダンスがバックボーンの選手というのは経験上、他には……。 「うーん、多分いなかったです(笑)。映像があったので、いくつか見てどういった動きやどういったパターンがあるか、何個かちょっと自分なりには分析とかはしたりしてますが、やっぱり(試合を)見ているとリズミカルというか、跳ねたりしてくるような攻撃もあるので、まあ、びっくりしないようにしておきます(笑)。何をやってくるのかはある程度でしか予測がつかないので、しっかり見極めてっていう感じですかね。バネとか組んでみてのブリッジ力みたいなものは、ちょっとやってみないと力量が分からないところですね」 ──ランドゥー選手、現在3連勝中。RIZIN参戦時と比べると経験値も増して強くなっているように感じます。 「そうですね、勝ち進めている選手なので、まあ警戒はしないとなっていうのはあります」 ──スイッチヒッターで身体能力が高く、以前はそれゆえに捨て身になってしまう動きもありましたが、現在では組み技も厭わないですね。 「打撃で仕留めてるイメージはあるんですけど、割と自分から組みついたりとか、寝かしてコントロールしてとかもやってるところもあるので、まあ“全部できる”だろうなってのは思ってます」 ──それを受けに回ると相手のペースで時間が過ぎてしまう可能性も。 「そうですね、自分自身も削れてしまってポイントも取られっていうのはあると思うので、そういうのはやらしたくないです、そうさせないように、心技体で上回ります」 ──8年前のBellatorではゴイチ・ヤマウチと戦い、2016年にはジャスティン・ローレンスと対戦しました。当時の2戦をどうとらえていますか。 「2人ともものすごく強い選手だったので、まあ逆にそれを経験できたのは自分の中では大きいかなっていうのは思います。あのときは、先手を取られてペースを握られてしまった。どんな時でも後手には回りたくないですし、ラウンドも取られてしまうので、自分のペースで進めていければ一番いいです」 ──そのペースを握るだけの引き出しがある。ティキ・ゴーセンとポール・ヘレイラが来日したときも動きのディテールを大事にされていました。MMAの精度としても高まっているのではないでしょうか。 「はい。教えてもらったことを反復して実践練習とかでも出せるようにチャレンジしてきたので、細かなところで、技術的なものもあるんですけども、そういうところも出したいし、あとはしっかり極め切れるような戦いをしてみたいなっていうのはあります」 ──35歳という年齢の中で、今でもご自身の成長や強さを感じているのですね。 「年齢のことはそこまで気にしてなくて、同年代の選手も活躍してるし、むしろまだまだ伸びている選手とかもいたりするので、自分自身も練習でも成長している手ごたえはあるので、そういったところをしっかり試合で出したいなっていうのはあります」 ──試合勘においても不安は無いですか。 「不安は無いないので、もう試合が始まったら集中してやり切るだけです」 ──先ほど「ストーリー性がある」という言葉がありましった。それはつまりBellatorでのリベンジストーリーということになると思いますが、まずこの1戦を勝って、そこからどんな物語を自分では思い描いていますか。 「着実に一個一個勝っていって、ゆくゆくはやっぱりランキングにも入る。それで、ちゃんと狙えるところまで行ったらタイトルを賭けて勝ち、チャンピオンになる──そういう気持ちです」 ──ところで、ISAO選手の練習仲間である佐藤将光選手のRIZINでの太田忍戦はご覧になりましたか。 「急遽決まっての試合でしたが、佐藤さんももう長年の経験値と、すごくいろんな打倒極を研究してレベルアップもしているので、そういう動きが色々見られましたね。とても刺激になりました、KRAZY BEEとかでよく練習させてもらったりしていますし、練習仲間の試合はやっぱり感じるものがあります」 ──同門の菊入正行選手も同じBellatorと契約し、デビュー戦で見事な初勝利をあげましたね。 「はい、同じNEVER QUIT所属の後輩がしっかりKO勝ちして結果を出したことはすごく刺激になりました。自分もやっぱりKOか一本、フィニッシュを狙いたいです。でもまあやっぱり勝ちは欲しいので、判定でもしっかり勝とうとは思っていますが」 ──今回参戦する『Bellator 301』はバンタム級王座統一戦(いずれも堀口恭司を倒したセルジオ・ペティスvs.パッチー・ミックス)や、AJ・マッキーの復帰戦をはじめとして人気選手の名前も数多く並び、日本でも注目の高い試合が並んでいます。 「そうですね、ビッグマッチの並んだ大会に出させてもらえて、すごい光栄に思ってます」 ──そういうなかで、現在発表されている試合順では第1試合の可能性が高いですが、長い間メインを張ってきたISAO選手がプレリミナリー・カードのトップバッターで試合をするというのは新鮮です。そもそも経験したことはありますか? 「経験はありますが、多分、PANCRASEに出て最初の頃とかだと思うので、本当にかなり久しぶりですね。逆にフレッシュな気持ちで“初心に帰れる”と思っています」 ──入場曲はやはり、それでも越えたい『天城越え』ですか。 「はい。そこは変わらずですし、世界に向けて、日本男児ということで。シカゴのお客さんたちにジャパニーズソングを聞かせてきたいと思います!」 ──今大会はフェザー級の試合は少ないですが、Bellatorの上位ランカーたちについてはどんな印象を持っていますか? 「本当にハイレベルな選手ばっかりなんですけど、かといって、やり合えない相手たちではないかなっていうのは思っていて、全然。しっかり作り上げればやりあえるなっていう思いはあります」 ──あらためて、どんな試合をしたいと思っていますか。 「やっぱり“勝ちたい!”って気持ちが一番大きいので、もう泥臭くてもいいから。最終的には勝ちをもぎとりたいです。もう、ドロドロの、お互いスタミナ切れでドロドロになっても最後は取り切って勝つっていう気持ちです」 (※1)ISAOのPANCRASEでの過去の対戦をU-NEXTで配信中 【PANCRASE 321】第13試合 ISAO VS. 中島太一 【PANCRASE 316】第20試合 ISAO VS. アキラ (*2)対戦相手の過去試合も配信中 BELLATOR 280 第4試合 イーブス・ランドゥー VS. ギャビン・ヒューズ BELLATOR 287 第6試合 ウォルター・コグリアンドロ VS. イーブ・ランジュ(イーブス・ランドゥー) BELLATOR 296 第7試合 イーブス・ランドゥー VS. ピョートル・ニジルスキ
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