2019年8月18日(日)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催される『RIZIN.18』メインイベントにて、61.0kg契約で堀口恭司(アメリカン・トップ・チーム)と対戦する朝倉海(トライフォース赤坂)が8月8日、所属ジムにて一般公開練習を行った。
駆け付けた20人ほどのファンの前で1Rのミット打ちを行った朝倉海は、ワイドスタンスのオーソドックス構えから飛び込んでのヒザ蹴り、さらに長い手のジャブで距離を測りながら、ワンツーフック、アッパーなど、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志から習ったという重いパンチを次々とミットに打ち込み、好調ぶりをアピール。
RIZIN参戦前は堀口同様にフライ級で戦っていた海は、61.0kg契約のコンディションについて「完璧に仕上がりました。調子はすごくいいです。減量もないし、食べたいものを食べています」と笑顔を見せた。
前日の公開練習で対戦相手の堀口は、「格闘技は一発当たれば終わりなので、打撃でも寝技でも将棋みたいに詰めていって決める」と、詰め将棋のように隙なくフィニッシュすることを語っていたが、そこに対抗する駒を持っているか? と問われた海は、「(駒は)ありますよ。対戦相手が想像しているよりも、上のレベルに自分はいると思うので、そこで相手が予想外の展開、パニックになるような展開を作っていきたいと思います」と、自身の進化を語った。
海は、2018年12月31日のムン・ジェフン戦の判定勝利以来、8カ月半ぶりの試合。当初、4月の『RIZIN.15』で佐々木憂流迦との対戦が決まっていたが、佐々木が内臓疾患によるドクターストップで欠場。代わってジャスティン・スコッギンスが海と対戦することが発表されたが、今度はスコッギンスが練習中の怪我で欠場し、試合が中止となっていた。その後、6月の『RIZIN.16』に出場予定だった海だが、練習中に負傷し「眼窩底骨折」と診断されたため、ブランクを余儀なくされていた。
しかし、その期間が朝倉海を成長させたという。
「怪我している時期に、基本・基礎を強化してきて、あらたにボクシングジムに通い始めたり、寝技の専門の人に習ったりとか、一つひとつのテクニックが強くなって、全体的にレベルアップできたかなと思います。半年間くらい試合をしていない分、(周囲に)試合を見せていないところで成長している部分がたくさんあります。半年前とは全然違います。半年前の(自分の)映像を見て、“ああ、弱いな”と感じるくらい変わりました。相手は(自分の動きが)計算できないと思うので、そこで予想外のことが起こるんじゃないかなと思います」とサプライズを予告する。
そのひとつがボクシングジムへの出稽古だ。
「内山高志さんのジム(KOD LAB)でボクシングを習い、すごく参考になりました。最初に行ったときに『全然ダメだ。よくそれで強いパンチが打てたな』と言われて(苦笑)。それまでボクシング技術を専門の人に教えてもらったことがなかったので、自分なりに考えていた部分を内山さんに教えてもらって、そこをしっかり習得できたのが、一番成長した部分ですね。MMAで使えない技もあるんですけど、総合で使える技術を習っています」とボクシング技術の向上に手ごたえを感じている。
さらに内山高志には堀口恭司の映像も見てもらって、「『こういう技が有効じゃないか』とアドバイスをもらっています」と語る。
RIZIN&Bellator二冠王の堀口について、「全部ができる、間違いなく強い選手でほんとうに世界で一番か二番と言われていると思うんですけど、それだけの技術を持った選手だと思うので、その強さをすごく僕も認めています。どういう戦いになるのか、自分自身でも楽しみです」と語る海だが、堀口のことは実は、RIZIN参戦当初から「研究してきた」という。
「RIZINに出始めた頃から堀口選手を倒さないといけないなと思っていたので、その頃からずっと目標にして“倒す”という目線で見て研究していたんで、堀口選手の動きを真似している部分もあったりするし、すごく研究できています」と、準備万端であることを語る。
さらに、兄の未来が本誌『ゴング格闘技』の企画でスパーリング対談を行った、わずか1Rの対峙も未来からアドバイスを得たという。「そのスパーリングの中でも『弱点を見つけた』と言って教えてくれたり、(堀口の)いい部分も聞いたので、それも分析の材料になっています」と、堀口分析に抜かりはない。
分析材料には、海と堀口がともに対戦したマネル・ケイプ戦も含まれる。
「マネル・ケイプは結構、ビビらずにどんどんガツガツに攻めるタイプで、ああいう選手が苦手なんだろうな、とは感じましたね。やっぱり怖がっちゃってる選手は目を瞑ったりして振ったパンチに(堀口のカウンターを)もらってみんな倒されているんですけど、最悪、避けれなくても見ながらもらうパンチは効かないので、まあ、大丈夫かなと思います。(堀口はケイプに)なかなか苦戦していて、僕もああいうタイプに近いと思うのでチャンスはあるのかなと思います。僕も(堀口に)ビビることはない。そこが今回の勝負の鍵になるかと思います」と、堀口の癖を把握した上で、等身大の堀口恭司を前にビビらないことが、勝負の鍵になることを語った。
ポイントは、“絶対王者”の距離を作らせないこと。それぞれの細かい局面で細かい距離の設定が必要となる。その場面ごとの距離設定について、海は「そうですね、言えないですけど(笑)。立てた作戦をどこまでできるか。(近距離に出来て)殴り合いになったら自信があります。そこは絶対僕の方が有利だと思います」。
さらに最近、進境著しい組み技についても「テイクダウンの形になったら? たぶん組んだら僕の方が強いと思います」と、ボクシング特訓とともに強化してきたレスリングにも自信を見せた。極めに課題はあるものの、際の打撃が許されるのがRIZINルールだ。どちらがその際を制するか。
朝倉陣営同様に堀口陣営もアメリカントップチームのマイク・ブラウンコーチを筆頭に海研究は行っている。
海は「研究してくるのは分かっているので、自分の試合の研究もして、どういう場面で(打撃を)もらっているのか。自分の分析もしてそこを修整する練習をしてきました」と、未来が矢地祐介戦前に行った自己分析を兄同様に行ってきたことを明かした。
それでも、修羅場を潜り抜けてきた経験の差は王者と比べれば、見劣りはする。周囲の「時期尚早」の声に海は、「周りはそういう声も多いかもしれないですけど、僕自身は今年中に堀口選手と対戦したいという目標があったので、いつきてもおかしくないと思っていたし、RIZINは日本の団体なので、日本人同士が戦うのが盛り上がると思うし、ほかのバンタム級の強い選手はみな堀口選手に負けているので、やるとしたら俺しかないなと。試合を積み重ねて実績のある選手を倒していって認められたらできるんじゃないかなと思っていました」と、現実的な目標として堀口戦を見据えていたことを語る。
そして、地元でのビツグネーム相手の大一番にビビらないだけの準備と覚悟ができているという。
「東京やさいたまでの試合だと来たくても来れない地元の友達がいたけど、今回は地元(愛知県・豊橋)でいつもよりたくさんの友達が来てくれるんで、そういう声援のなかで戦うので負けられないし、何が何でも勝ちたいという気持ちがいつもより強い」と、ホーム凱旋に気合十分の海。
「正直、先のことは考えないくらい、今回の試合に賭けています。この試合が最後になってもいいという覚悟を決めて試合に臨もうと思っていますし、そういうつもりで準備をしてきました。身体が壊れてもどうなっても絶対に勝ちを取りにいきたい。先のことは考えていないです。デカく言ったら死んでもいいという覚悟を決めているんで、ビビることはない」と、アップセットを現実のものとするつもりだ。
「勝ちにいきたいと思っています。でも僕のスタイル的にどういう展開でもつまらなくはならないと思っています。堀口選手と僕のスタイルは噛み合うと思うので、どう考えても面白い試合にはなると思います」──堀口は“噛み合う”ことなく、触らせずに一方的に試合を進めにくるだろう。それとも朝倉が試合を噛み合わせるか。勝負は8月18日、『RIZIN.18』名古屋大会のメインイベントで行われる。