MMA
インタビュー

【RIZIN】いかに金原正徳はクレベル・コイケに勝利したのか「相手を選んで勝ちたい試合をするわけじゃない」=一問一答・全文

2023/09/25 14:09
 2023年9月24日(日)さいたまスーパーアリーナにて『RIZIN.44』が開催され、メインイベントのフェザー級(5分3R)戦で、金原正徳(リバーサルジム立川ALPHA)がクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)に判定3-0で勝利。RIZINで対日本人無敗のクレベルに黒星をつけた。  四十路のMMA集大成ともいえる大一番で勝利した金原は、試合後、息子から「パパ、朝倉未来に勝ったクレベルに勝ったんだね」と祝されたことを明かし、クレベル撃破の要因を語った。  最大のポイントはビビらず打撃で先手を取ること。 「一番大きいのはクレベルにビビらないこと。入場してからリングに上がるまでずっと自分に言い聞かせていました。“絶対に自分から手を出す”と。それが右ボディ、左フックでした。僕はフェイスオフしている時に基本的に目を合わせないのですが、昨日クレベルとのフェイスオフではクレベルの目をずっと見ていた。“この顎に当てるぞ”とずっと念じてて。で、始まった時に、自分の右ボディの左フックが当たったのは、その念じたのが通じたというか。最初の打撃がポイントになるところで自分から手を出せたのは大きい」 “柔術の鬼神”クレベルの動きで警戒していたのは寝技ではなく、立ち技だったという。 「一番警戒していたのは、(クレベルの)打撃とレスリングだった。不器用な打撃と勢いのある投げ、1回(首投げで)投げられたけど、そこに一番警戒していて、三角絞めやバックチョークより警戒していた。そこで自分が削られてしまうとクレベルのペースになっちゃうので、そこだけは(阻止する)。だから『打撃で主導権を握りたい』『先に自分から手を出す』というのはそういうことだった」  クレベルに不規則な打撃をさせず、先手を取り、テイクダウンで下にならないこと。  序盤の首投げで一瞬マウントになりかけた金原だが、すぐに足を戻し、下からシングルレッグで立ち上がりに。そこにクレベルは定石通りギロチンチョークを合わせに来たが、「クレベルはギロチンはそんなに得意じゃない」と想定して対処し、首を抜いた。 「組みの展開になったときに“これトップゲームで勝負できるな”と1R目のときに思って。1Rの組みでのイメージで、“よし行ける”と。2R、3Rは自信を持って自分の強いところで勝負しようと、テイクダウンにこだわった。クレベルが突っ込んできたものにテイクダウンあわせようと意識して、2R目3R目は勇気を持って勝負することができた」  現役生活のラストスパートで勝負する試合は限られている。そのひとつはタイトルマッチだ。 「自分がベルトを獲って何か人に勇気を与えたり、周りのみんなが喜んでくれるのがベルトであるなら、もう1回、もう2回頑張りたいっていう、気持ちだけはあります」  11月には41歳になるが、簡単に「辞められない理由」もある。  金原は、「所英男さんだったり、そういう人たちがまだ頑張っているなら、僕もまだ辞められないという理由の1つにはなる。(10月1日の『RIZIN LANDMARK.6』で)所さんにも勝ってもらって祝勝会をやる予定なので、まだ僕のRIZINは終わっていないです。来週も含めてRIZINなので。本当にあの人に勝ってもらって、一緒に酒を飲みたい」と語っている。  試合後の金原との一問一答・全文は以下の通りだ。 [nextpage] 目の前にケラモフ戦が決まっている鈴木千裕君がいて、頑張ってくれよというエールも込めて「やろうな、待っている」と ──試合後の率直な感想を。 「ああ、やっと終わったなっていうのが第一の感想です。まあ、良かったです。はい」 ──勝利してリング上から見た観客席はどんな印象だったでしょうか。 「メインイベントでやらせてもらったというのもあるし、試合中もすごくみんなが楽しんでくれて盛り上がってくれたのと、寝技の攻防をみんなが理解してくれたのが嬉しいです」 ──対戦相手の印象は試合前にイメージしていたものと戦った後では違うところはありましたか? 「うーん、難しいです。組んでみなきゃ正直分からないところがあったので、その“答え合わせ”という意味での、ちょっと大きくイメージしすぎたってのがちょっとあったのかもしれないですけど、一回組んだ時の感触としては寝技でもグラップリングでも勝負できると、1Rに思ったので、2R目3R目は勇気を持って勝負することができました」 ──試合後、解説席の鈴木千裕選手に呼びかけていた(「千裕、勝って来いよ。やろうな。頼むぞ。待ってるぞ」)のはどういう考えからですか。 「何も決まってないですけど、目の前に鈴木千裕君がいて、彼は(アゼルバイジャン大会でヴガール)ケラモフ戦が決まっているので“頑張ってくれよ”というエールも込めて──全然仲良くないし友達でもなんでもないけど──日本人が海外で戦うのは忖度なしで応援できるし、頑張ってほしいのが素直な気持ちです」 ──試合を終えたばかりですが、今後の目標・展望を教えていただけますか。 「なるようになって、やりたいときにやって……というわけにもいかなくなってきたので。クレベルとのこの試合に向けて、しんどい、つらい思いして、いろんな人に迷惑かけなかがらやってきたので、少しずつたまっているものを消化しながら、大きな怪我はなかったのですぐに運動を始めて、とりあえず来週、所(英男)さんの試合があるので一生懸命そこをサポートしながら、終わったらちょっと考えたいと思います」 ──日本人がクレベル選手に勝利できたことの一番のポイントを教えてください。 「クレベルと寝技で対抗できるフェザー級は僕しかいない、と。それがそのままこの試合になった。良かったです、口だけにならないで」 ──長い年月をかけて寝技を習得していったことで、なのでしょうか。 「『〇〇と決まったから××を練習します、〇〇と決まったから寝技を強化します・打撃を強化します』っていうことではなくて、MMAというものをずっと積み重ねてコツコツやってきた、本当にそれがこの試合に出たと思うし、寝技だけじゃなくてレスリングにしてもそうだし、打撃でしっかり1R当てられたことが、組みで自分が有利に進めたと思っているので、寝技だけじゃないです、この試合は」 [nextpage] ベルトを獲って人に勇気を与えたり、周りが喜んでくれるのなら、もう1、2回頑張りたい ──オープニングセレモニーで登場した時から一番くらいの歓声でした。 「そうですか」 ──試合中も金原コールが起きていました。 「試合中はめちゃめちゃ感じてました。ま、嬉しいですね(笑)。盛り上がってくれてるのが嬉しいです、それがいいです。楽しんでくれたならそれが一番いいと思っているので」 ──日本格闘技界を背負ってきた自負があるのですか。 「全くないです。背負うつもりもないし自分が中心にいたいとも思わないし。なんだろうな、それでも40代の人たちが僕に重ね合わせて夢を託してくれたりとか、少しでもそういう人たちの希望になればいい。僕の役目じゃないですね、本当に魅力のある選手はたくさんいますので。うん。そういう人たちが、寝技は難しいですけど格闘技において僕には僕の役割がある、格闘技の奥深さというか、自分が頑張ることで、何か誰かの助けになったり、本当にそれだけで格闘技やってきた意味があると思っているので。この試合についても全く同じです」 ──お子さんも会場に。ご家族とは試合後に話をしましたか? 「『パパ、朝倉未来に勝ったクレベルに勝ったんだね』って。僕は息子からしたら一番下です(笑)。本当にずっと最近子供が熱出したり、体調崩していてずっと会えていなかったのでもう大丈夫です、風邪を引いても。いや来週までちょっと我慢しなくちゃいけないけど。家族サービスじゃないですけど、子供と遊ぶ時間は増やしていきたいです」 ──フェザー級の中心に出たことで大晦日なども浮上するかもしれませんが。 「完全にオーバーワークです。でも求められるならもちろんやりますし、無ければありがたいですし(笑)。本当になるようにしかならない。とりあえず11月にアゼルバイジャン大会が終わらないと何も始まらないと思うし。フェザー級は改めて面白いなと思いました。毎大会、主役がゴロゴロ変わって、こうジャンケンポンみたいで、見ている人も面白いんじゃないかなと思っています」 ──ベルトへの意欲は? 「あんまり正直そこを目指してやってきたわけじゃなかったので、RIZINフェザー級参戦したときは。でも現実的に、榊原(CEO)さんも『勝った相手が次期挑戦者になるんじゃないか』と言ってくれていたので、もちろんいただけるものならいただきたいし、そう簡単にいただけるものでもないし。目に見えてきたもので自分が獲って何か人に勇気を与えたり、周りが、自分のみんなが喜んでくれるのがベルトであるなら、もう1回、もう2回頑張りたいっていう、気持ちだけはあります」 ──試合後のマイクで語っていた「辛い日々」とはどういう日々ですか。 「いやもう本当にタイに行ってひとりで1日、2回・3回練習して体がボロボロになるまで練習したのも10年ぶりくらいだと思うし、“あそこが痛い、ここが痛い”って言いながら、その日々が辛くて。でもこれはクレベルに勝つためだと自分に言い聞かせて。やっぱりこう、試合前から言ってましたけど、自分の優先順位は今まで怪我しないで自分のパフォーマンスを100%により近づけるためにリングに上がることを優先していましたが、今回100%じゃ絶対クレベルに勝てないと思っていたので。120%、130%、自分の限界を超えて、怪我してもいいという覚悟を持ってできたので、そういう意味では本当に辛いっちゃ辛かったです。そういう意味では勝ったので、そういう部分も報われる」 ──「パスガードしたところで観客が沸く」というのはいかがでしたか。 「みんなRIZINファンもクレベルが寝技が最強だとみんな知っているし、クレベルと寝技で対抗できたことを沸いてくれるのはグラップラーとか、寝技やってきた競技者としてすごく嬉しいことだし、それだけで盛り上がってくれるのが何より嬉しいですよね。“打撃だけじゃないんだよ、MMAは”というところです」 [nextpage] 1Rに組みの展開になったときに、これトップゲームで勝負できるなと ──「クレベル選手を大きくイメージしすぎていた」ということでしたが、組んでどんなところで、行けると思いましたか。 「自分は全く覚えていないですけど、1Rに1回ダウンしたっぽいんですよ、ヒザで。セコンドが言っていたのですけど。自分も1回ガクッとなったのは覚えているのですけど、セコンドが言うにはヒザをもらったと。その時に自分がクリンチというか組みに行った時にクレベルがギロチンか何かで、あんまり覚えていないのですが、組みの展開になったときに“これトップゲームで勝負できるな”とは1R目のときに自分思って。  2R、3Rは自信を持って自分の強いところで勝負しようと、テイクダウンにこだわった。クレベルが突っ込んできたものにテイクダウンあわせようと意識して、1Rはテイクダウンはそんなに頭になかったですけど、1回組んだことでクレベルとの差をあまり感じなかったことで2R目にクレベルが、絶対に突っ込んでくると思ったんですよ、不利になると。突っ込んでくるものに対してテイクダウンを合わせたことが1Rの組みでのイメージで、“よし行ける”と思ったので大丈夫でした」 ──攻略法を言葉にするなら? 「『皆さん、柔術をやりましょう』と。そんな急に、何カ月頑張りました、でどうにもなるような話じゃない。やっぱ本当にコツコツやっているやつのほうが強いし、じゃあどうすればいいですかの話ではなく、柔術やグラップリングをたくさんやってください、MMAをたくさんやってください、そういうアドバイスしかできないです」 ──「燃え尽きたい」と言っていましたが、燃え尽きましたか? 「完全、燃え尽きてます。これが燃え尽き症候群です。朝倉さんもそうですよね!」 ──「スタンド」と「先手を取ること」がキーになると言っていた通りの試合でした。スタンドの部分で先手を取れた理由はなんだったと考えていますか。 「一番大きいのはクレベルにビビらないこと。向かい合った時にクレベルにビビらないことを入場してからリングに上がるまでずっと自分に言い聞かせていました。“絶対に自分から手を出す”と。それが右ボディ、左フックでした。ずっと言い聞かせてて結構、気づいている人が意外と多かったのですが、僕はフェイスオフしている時に基本的に目を合わせないのです。昨日クレベルとのフェイスオフではクレベルの目をずっと見ていた。“この顎に当てるぞ”とずっと念じてて。  それで、始まった時に、自分の右ボディの左フックが当たったのは、その念じたのが通じたというか。セコンドにも『自分が右ボディから入らなかったらビビっているからちょっと動かして』と。自分から手を出せたのは大きい。言った通り、最初の打撃がポイントになるところで自分から手を出せたのは大きいです」 ──距離が近くなったところで、相手のギロチンは中腰で首を抜きましたが、あれは大丈夫でしたか。 「ギロチンは全く大丈夫でした。クレベルはギロチンはそんなに得意じゃないと思います、正直。それはもうパッとはまったときに気づくし、分かったし。それよりも右手で抱えられていたので右手の手首を持たれて三角絞めに移行されることを気をつけていました。最初ギロチンにわざと入らせて、絞めて力使って弱ってきているのは分かったので、すぐ三角絞めの対処法だけちゃんとやって、っていうのは、自分のなかで絞められながら、二の手、三の手を考えていたので大丈夫でした」 ──後半で強いクレベル選手に際のスクランブルで上を取らせなかったのは、練習で走り込んできた成果ですか。 「そうですね。本当に、自分が下にはなりたくなかったので、そこは譲れない部分であったので、3Rは最初に下になっちゃった展開があったので、(クレベルが)足関にきて逆にラッキーでした。足関逃げちゃうとバック取られたりの攻防になると思うのですけど、わざとヒザ十字に入らせて、アンクルも取らせて、その方が自分はトップに入りやすい。で、トップ取れたので、組みをやりながらも先手を取れたので、こうしようと余裕を持てたのが大きかったです。パニックにならなかったです」 ──脇差しパス一本でクレベルをほぼニアマウントにまで持って行きました。寝技の強さを見せました。肩固めは……。 「あれはちょっと場所が悪かったですね。一番下のロープに頭がはまっちゃって場所が悪くなかったら肩固め、入っていました。あと(ハーフガードの足が)二重絡みだったというのもあったので。あれは場所です。真ん中だったら多分抜けていたと思う」 [nextpage] この試合で燃え尽きてもいいと本当に思っていた。強さを求めて格闘技やってて実際に強い人とやって、負けました。じゃあなんで格闘技続けているの? と自分ではなってしまう ──この試合の前から「あと2つ」と言っていたのは、次は誰なのでしょうか。当初、対戦を望んでいたケラモフ選手なのか、それを鈴木千裕選手が越えてきたらそれでも? 「負けたら次でお終いにしようと思っていたし、勝ったらどうせもう1回やらなきゃいけない。勝ったらやるしかない、この試合で燃え尽きてもいいと本当に思っていたので、この試合で終わって、もう1回、最後引退試合でいいと自分の中で思っていました。強さを求めて格闘技やってて実際に強い人とやって、負けました。じゃあなんで格闘技続けているの? と自分ではなってしまう。相手を選んで勝ちたい試合をするわけじゃない。クレベルという最強の相手と戦えたことは自分のなかで本当に大きい。クレベルには本当に感謝しかない。本当に感謝しかないですね、クレベルには」 ──勝ったからにはあと1つですね。 「そうっすね。勝ったらも1回、もう2回やらなきゃいけなくなるんですけど、必要とされている間は頑張りたい、というのがあります」 ──長いキャリアのなかで、戦極や山本KID戦であるとか、今回の戦いの意味がそれらと比べてどういう意味を持つのか。ベテランで、ジョン・チャンソンも引退しているなか、自分がRIZINのトップとやっていることの意味をどう考えますか。 「一概には言えないですよね。その時の年齢で相手に思うことが違うし、やっぱ20代は成り上がりたいので一生懸命やっていたし、30代はUFC行きたくて一生懸命やっていたし、40代になったら、格闘技界の終活で、っていうことで今、本当に楽しく格闘技やらせてもらっているし、誰かと比べてっていうのは表現が難しいけれど、今格闘技がすごく楽しいし、今じゃなきゃ経験できない気持ちというのもあるし。  やっぱり持って行き方が全然違うし。でも本当にジョン・チャンソン(※コリアンゾンビ。2009年5月の戦極で金原と対戦、UFCシンガポール大会でグローブを置く)もこの間、引退して、この業界で長くやっていると僕より後にデビューした人が先に引退したり、逆に僕より先にデビューしてまだやっている人もたくさんいて、セコンドについてもらっている所英男さんだったりとか。そういう人たちがまだ頑張っているなら、僕もまだ辞められないという理由の1つにはなるので。そこは所さんの存在が自分のなかで大きいです」 ──その時々の時代の人たちを意識して、横に並んでいる印象が強いのでしょうか。 「所さんに限っては追いつけ追い越せじゃないですけど、僕が前に行って追われることもあるし、逆に所さんが前を走って僕が追いかけることもあるし、お互い、仲間意識でありライバルであり、お互いに背中押し合ったりケツ叩きあったりとか。僕らは二足歩行ができないですから、入場で。四足歩行なのでいつも。本当に歳をとったらお互いの肩を借りながら一緒に入場していて、お互い入場する時は足が震えていますからね。本当にありがたい存在です、あの人に限っては」 ──よくMMAは「打撃の選手には寝技で、寝技の選手には打撃で」と言われるのですが、相手の得意なところでも勝負しないと勝てないよという感じなのでしょうか。 「別に相手の強いところで勝負しないに越したことはない。自分の強いところで勝負できれば、僕に限って言えば、自分の強いところで勝負して勝てない奴は、向かないですよね。相手が打撃が強かろうが寝技が強かろうが、自分の強いところは何だと問いただしたときに、じゃあ打撃ですってなったら、じゃあ打撃が相手が強いから寝技でいきましょうという選択肢に僕はならないです。  自分が強いところはどこだと自信を持って言えることがありますし、実際に組んでみて勝つパターンは試合中に現場合わせでやることもあるし、今回はクレベルが寝技が強いから寝技で勝負しないという考えは全くないし、最初は立ちから始まるものだからうまく流れをつかめていれば、グラップリングでもいいように行けると思うし、今回はそんなにクレベルの寝技に付き合わないというほどの作戦ではないです」 [nextpage] 一番警戒していたのは、クレベルの不器用な打撃と勢いのある投げ・レスリングだった ──いろいろな人に、クレベル攻略の秘訣やポイントを聞かれると思いますが。 「僕の肌感覚なので誰にも分からない。組みが強いなとかサブミッション強そうだと思ったらやらないと思いますし、でも対応できると思ったからやったし。今回クレベルが思ったより1Rに疲れてくれていて、今だから終わったから言えるけれど一番警戒していたのは、(クレベルの)打撃とレスリングだったのですよね。不器用な打撃と勢いのある投げ、1回(首投げで)投げられていますけど、そこに一番警戒していて、三角絞めやバックチョークより一番警戒していたのはそこだったので、そこで自分が削られてしまうとクレベルのペースになっちゃうので、そこだけは(阻止する)。だから『打撃で主導権を握りたい』『先に自分から手を出す』というのはそういうことだったと思います」 ──40代でトップ戦線に。同世代にどんな勇気、気持ちを伝えたいですか。 「なかなか偉そうなこと言えるほど社会人やってないので、会社員やサラリーマンの気持ち全く分からないですけど、そういう人からメッセージで『勇気もらっています』と言われると実際嬉しいし。まあ分からないですけど、“生きていればいいことあるよ”という、それくらいですかね。長くやっているといいこともあれば嫌なこともあるけど、1ついいことがあれば、嫌なことが帳消しにできる。特に格闘技はそうで、辛い時代たくさんあったけれど、今日メインイベントやらせもらって勝てたことで、今まで辛かったことは報われるし、タイでやったことも報われるけれど、負けてしまったらそれは悲しいことになってしまうけど、次、頑張ればいいやとポジティブに生きています」 ──以前、試合前に「試合は不安だ」と仰っていました。試合始まってみたら楽しかったですか?苦しかったですか? 「今回の試合に限ってはいつもとちょっと気分が違ったというか。負けられない試合と……言い方がよく分かりませんが、今までは若い子たちとやって負けられない試合が続いたけれど、今回は挑戦者だと思ったので、気負う感じがなかったので。楽しくはなかったですけれども、3Rでテイクダウンした時は心の中でカウントダウンしていました。“あと3分、あと3分……”って。(押さえ込んで)みんなには申し訳ないですけど、本当にどうしても勝ちたかった。こんなこと言っていいのか分からないけれど、本当に勝ちたかったので、最後3R目の心のカウントダウンはありました」 ──それで実際に勝ててホッとしましたか? 「素直に嬉しいですね。まだ祝勝会やっていないので、お祝いされてから、この1、2週間くらいは余韻に浸りたいと思っています」 ──1回現役を辞めて戻ったという経緯がありますが、あらためて格闘技に戻ってきてよかったなという思いはありますか? 「今だから言いますけど、こんな状況で“戻らなきゃ良かったな”とはさすがに言えないと思いますけど、やっぱり良かったと思います。人生充実しているし、格闘技やってると、こんなことばかりやっているから辞められなくなるし、他に楽しいこと見つけられなくなっちゃうからね。良くないですけどね。今回も格闘技しかやってなくて、自分の仕事だったり家族を全く疎かにしてしまったので、これを40歳でやってるのどうかなって、ダメ人間だと思ったのですが、勝ったので周りは許してくれると思います。所さんにも勝ってもらって祝勝会をやる予定なので、あの人に勝ってもらって。まだ僕のRIZINは終わっていないです。来週も含めてRIZINなので。『RIZIN秋のツアー』みたいな。本当にあの人に勝ってもらって、一緒に酒を飲みたいですね」
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