MMA
インタビュー

【RIZIN】横山武司「寝技対決は落ち着いて出来る」「佐藤将光先生から対策も」「自分にどんだけの素質があるのか分かる」「クレベルvs.金原さんの試合は──」

2023/09/24 13:09
 2023年9月24日(日)さいたまスーパーアリーナで開催される『RIZIN.44』にて、フェザー級(66kg)で、摩嶋一整(毛利道場)と対戦する横山武司(teamセラヴィー/スウェルズ柔術ジム)が本誌の単独インタビューに応じた。 ――同じ大会に出る牛久絢太郎選手と交流があったのは講道館の春日柔道クラブのことでしょうか。 「そうです。小5のときに春日に出稽古に行くってなって、僕と兄2人で行ってたんですけど、牛久先輩も春日に練習しに来ていて、兄と牛久先輩が仲良かったんですよ」 ――牛久選手から当時、直に教わったことも? 「当時はあんまり無いです。講道館にはもうすごい人数がいるので。2個上の人とかとは別に組んだりしないから。当時は兄貴と仲良くて、なんか強そうな人がいるな、くらいの感じだったんですけど。2022年の7月くらいから牛久先輩とは一緒になって、そこからはいろいろ教わったりしてます」 ――今年の4月の朝倉未来戦の前に牛久選手に寝技を授けていたのは横山選手だった。あの“牛久の引き込み”がかからなかったことは横山選手にとっても悔しくなかったのではないですか? 「めちゃくちゃ悔しかったです。何とも言えない気持ちになりました。テレビで見てたんですけど。怒りじゃないけど、悔し涙が出そうになるというか……すごい複雑な気持ちでしたね」 ――いい形で引き込むことが前提としても、引き込んで上の朝倉選手が中央にステイして極めることができなかった。横山選手としてはどう思っていましたか。 「あれは本当に朝倉未来選手のディフェンスがけっこう上手かったですね。牛久先輩、ほんとうに練習では調子良かったし、僕からも取ったりしてたんですよ。だから、マジで朝倉選手に行けると思ったけど、やっぱ本番は練習通りに行かない。朝倉選手のディフェンスが本当に上手かった、の一言なんですよね。朝倉選手は自分でも、“俺は戦いの天才だ”みたいなことを言ってるんですけど、それって土壇場で何ができるかという精神状況の話だと思うんですよ。その点で、朝倉選手は本当に戦いの天才だと思います」 ――あそこでいきなり引き込まれて対処した。 「あのディフェンス、大したディフェンスはしてないんですけど、“何もしない”というディフェンスをしてるんですよ。でも、それって本当、試合だと一番難しいディフェンスなんですよね。大会場のなか、絶対空気読んでちょっと動いて、何かやるんだけど、本当に集中して“何もしないということをしていた”朝倉選手は、ああこの人、本当才能あるなと思いました」 ――横山選手だったらあそこから煽れたでしょうか。 「牛久先輩よりはもちろん寝技でいろいろできたけど、まあ、やってみないとそこはなんとも言えないですね。ただすごい悔しかった。堀口(恭司)選手も、『牛久くん、引き込んじゃ駄目だよ』みたいなことを言ってて、俺はその1週間後の試合で“絶対引き込んで技を極めてやろう”と思って。“こういうことがあるから見せてやろう”という気がすごいありました。めっちゃモチベーションになりましたね。実際、相手の計量オーバーもあって下から腕十字を極めて“よっしゃあ”と」 ――前回の対戦相手の山本琢也選手の体重超過を受けての試合は、全然躊躇しなかった? 「まったく躊躇はしなかったですね。“勝った”と思いました。対戦相手が『計量オーバーです』って言われたときに、“ああ、じゃあ、もう俺勝ったんだ”って」 ――勝負としてその時点で勝ったと感じたと。 「たぶんまで本当にキャリアが少ないし、プレッシャーがあんまりない。もし今僕が負けても、ヤバいというより、“ああ、なんかこいつあんまり強くなかったんじゃん”くらいな感じだと思うので、積み上げてきたものが崩れるとかっていうのがないから、“やれるだけやってみよう”みたいな感じなので、そこが僕の一つの強みだと思っています」 ――スウェルズ柔術ジムでの柔術、レスリング、MMAは佐藤将光選手に指導を受けているのですか。 「将光先生のところとK-Clannですね」 ――K-Clannにも続けて行っているんですね。 「そうです。ただ、今回は牛久先輩がこの3カ月間いないから、K-Clannの他の人たちとやってて、牛久先輩とは出来ていないのが、かなり大きな不安要素です」 ――佐藤将光選手はこの間のパク・シウ選手のセコンドワークも的確でした。 「将光先生は素晴らしいですよね。強いし本当に的確で。MMAを学んでいます。ひたすら技の対策をやってくれています。多少厳しいのは分かっていても、やりようはある。頑張ろうと」 ――セコンドは? 「セコンドは毎回父と兄でやってもらっています。今回は追加で弟も。柔術ファミリーですが、まったく気を遣わないのがいいです。試合会場行くときから、控室いるときから、ほんとうにリラックすできます。もし4人目がいるんだったら、母ちゃんか嫁を入れようと(笑)」 ――さて、今回の試合が摩嶋一整選手が相手です。ともに寝技を軸としながら、摩嶋選手はMMAの経験も横山選手より多く、上からの寝技になります。この試合が決まったときの正直な感想は? 「ぶっちゃけ……ちょっと早くね? と(笑)。ネットの声とかでも、“もうちょっと後で見たいな”というのもあったし。僕自身、総合デビューしたのが去年の2月だから、まだ1年半くらいなんですよ。だから、1年半で6戦目で摩嶋選手……いや、ちょっと強いだろと(苦笑)。もうちょっと正直弱い人とやって、勝率の高い試合したかったわって、思ったんですけど、そう思ってても仕方ないし、“これはRIZINがくれたチャンスだ”と言ってくれる人も何人かいて、そう思うと“もうやってやろう”という気持ちに切り替わるから、格上の相手、キャリアとかも全然上の相手なんですけど、一矢報いてやろうという気に変わりました」 ――MMAはスタンドから始まるときに、横山選手の空手はどれだけ生きるでしょう。 「『意外と打撃できる』みたいなことをネットに書かれてるんですけど、それに関しては、え、みんな何を見て言ってんの? という感じで(笑)。僕、たしかにリズミカルにフットワークでこうやってやってるけど、そんなストライカーではないので」 ――そういいながらハイキックも打ってます。 「でもあれ、ちょっとリズム良くこうやってやってるだけなんで、勝手に期待されて大変だなとか思ってます(笑)。ただ、対戦相手が打撃の選手じゃないから打撃が怖いという感覚はとりあえずあんまりなくて、だから、相手がどうやってくるかわからないけど、相手が得意なものと僕が得意なものが一緒だから、そういう意味でもより緊張感がない。ストライカーでパンチが怖かったらゴング鳴った瞬間から怖いですけど、相手が得意と自分が得意が同じなのでより怖いがそれほどないですね。ゴング鳴った瞬間から相手のすごいパンチがあるという相手ではないからちょっと落ち着いて試合が始められるなとは思っています」 [nextpage] クレベルが一本を取れないのが、想像つかない ――しかし相手には組みの圧力もあります。強い四つ組みからのテイクダウン、下へのタックルも。あの押さえ込み、そして肩固めに行ったりする動きをどう感じていますか? 「寝技の展開は、ずっと寝技を練習してきてるので、肩固めとかも僕もずっと練習してきたところの中の一部なので、あんまり何か研究するということはなく、こういう技が得意なんだなと思って、そういう技を警戒して戦おうくらいな感じですね。あんまり本当緊張感というのはそんなにないです」 ――そんなにバリエーションが多いわけではないけど、強さがある。 「はい、その分そこだけ強いんですよね。やることが決まってる選手って本当に強くて。金原正徳選手と摩嶋選手が戦ったときの摩嶋選手のタックルのタイミングとか、全部同じタックルなのに、タイミングがちょっと違うだけで全部かかるというか。本当厄介というか、強い相手だと思います」 ――でも金原選手は後半で攻略しました。あれをどう見ましたか? 「金原選手ってちょっと格上だと思うんですよね。“よし、5分3ラウンドやるぞ”みたいに言って試合して、“このタックル切ったら勝てる”みたいに言って、タックル切って、本当に摩嶋選手が動けなくなるみたいな。全部、金原選手が言った通りになってるんですよ。もちろんキャリアは摩嶋選手より全然上だし。金原選手は日本人本当トップだと思います。たぶんMMA脳みそ・IQに関してはマジ確実にトップです。フィジカルとかスピードで若い選手に勝てないことももちろんあるとは思うけど、経験値と格闘IQは、もう金原選手、間違いなく一番だと思います」 ――あそこで金原さんをけっこう苦しめた摩嶋選手と戦う、その準備は頭の中でシミュレーションはずっとできていますか。 「いや、けっこうしてますね。摩嶋選手もそのトップ級の選手の一人で、これまでは山本空良戦も、これ勝てなきゃ俺の人生はもうクズだくらいの感じで、すごいプレッシャーだったんですけど。今回は言うても、デビューして1年半で摩嶋選手とやれるということ自体、普通じゃないから、やるべきことは一旦やったから、あとはこれはもう本当思い切ってやるだけ。自分にどんだけの素質があるのか分かる。だから楽しみですね」 ――組みの修羅場になることも想定はしていますか。ドロドロの展開も。 「そうですね。ドロドロの展開になるのは、摩嶋選手がマジで動かなかったら。摩嶋選手がどういうつもりで来るんだろうなというのがすごいあります。“絶対取られたくない”みたいな、“若いやつには絶対取られるわけにはいかない”と思えば、つまんない試合になると思います。向こうが“ボコボコにしてやろう”と思ってくれれば、やっぱり動きのある試合になるし。僕は正直、勝つときも、もし仮に負けるときも、派手な盛り上がる試合をしたいですね。じゃないと見に来ている人たちに申し訳ない。  一番いいのは向こうの寝技もきて自分の寝技の攻防があって、それで見ている人を楽しませた上で、僕が最後の最後で勝つのが一番いい。みんな瞬殺で終わるのは見たくないだろうし、どろどろの寝技の攻防を見せられる試合だとも思っています。この2人がどう寝技で攻防するのか見たいって言ってくれる人も多いので、そこは一番見せたいところですね。もちろん隙があれば、可能な限り早く一本とって、怪我なく終わりたいですけど、いい攻防を見せられる試合だとも思っていて、そこが一番見せたい。つまらない試合にはしたくない」 ――5分3ラウンドを動きのある試合に、と。摩嶋選手は、黒帯柔術家の森戸新士選手のところへ出稽古に行っていますよね。 「それ嫌なんですよ(笑)。森戸さんと練習しないでよっていう。意外と僕と似ていると思うんですよね。もっと全然違う柔術家だったらいいんですけど、森戸さんは意外と僕と近い。勘弁してほしいです(苦笑)。まあ、でも僕もいい練習環境なんで、自信はあります。  摩嶋選手もテクニックを持っていて、僕もたくさんテクニックを持っている。MMAだからパウンドとかタックルはあるけど、純粋な寝技だけのテクニックで、僕が知らないのは存在しない動きは100パーセント無いです」 ──パウンドがあるなかで、パスガードをさせない自信も? 「自信は……ありますよ、そこには自信あります。そこに自信が無かったら勝ち目はないですね」 ――摩嶋選手を超えたら、本当にフェザーのトップ戦線と絡むことになります。 「摩嶋選手はすでに上位ですよ。でも、そこも1人倒さないとそこには入れない。その人と戦うことは自分が上位なわけではないから。本当今回倒したらけっこういろいろ気持ち変わるんじゃないかなと思ってます。そういう試合。上位への“デビュー戦”という感じです」 ――ついにMMAファイターとして、そういう勝負の試合が来たかという。 「そうですね。マジでわからない。本当、勝ち負けは50パーという感じで思っています、僕は。長い年月負けなしでってなると負けたくないってなると思うけど、1年半のなかで負けがないだけ。今回の試合はどう転んでも僕にとってプラスになることしかないと思っています」 ――さっき公開練習で名前を出していた相手だったら? 「99パーですね(笑)。自分と同じくらいのキャリアだし。摩嶋選手とは違います。今回は、牛久先輩も、試合が決まる前から、『いや、俺個人的に一番見たいのは横山と摩嶋選手の試合を見たい』って言ってくれていて。他のけっこう強い練習仲間も、一格闘技ファンとしては『やっぱ武司くんと摩嶋選手の試合を見たいよね』というのはみんな言ってくれるので。ちゃんと格闘技好きな人たちからすると、今回のカードはマジいい試合だと思うし、僕もそう思っています。僕的には『超RIZIN』より全然こっちのほうがいいですね(笑)」 ――ところで、柔術の試合でクレベル・コイケ選手を直に感じている横山選手にとって、クレベルの寝技の強さと、それが対金原選手となった場合、どう考えますか。 「まず、自分とクレベルの試合に関してはちょっといろいろ言いたいことがあって、無差別級というのと、僕、黒帯になってすぐ出た試合なんです。だから、本当にめちゃくちゃ弱い僕なんですよ、あれは。だから、あの時点ではもう圧倒的にクレベルのほうが強かったけど、もう圧倒的すぎて何も分かってない。だから、クレベルがめちゃくちゃ強いのはあのときやられたから知ってるわけじゃなくて、もとから知ってるんです。あの試合も、全然敵わなかったなという感じなんですけど、もう1回クレベルとはそういう意味ではやってみたいです。組んでみたい」 ――当時とは違う展開になると。 「当時とは絶対違う。クレベルと今柔術の試合をしたら。でもクレベルはやっぱり強いですよね。気持ちも強いし。MMAの試合を見ていても、やっぱスタミナもいろいろ余裕があるから、強いです。クレベル対金原さんは……クレベルが一本を取れないのが、想像つかないんですよね」 ――そうなんですか。 「だから、普通にどこかで、どこかしらのタイミングでクレベルが一本取ると思っています。下から三角か。意外とクレベル、ダースチョーク系やギロチンとかそのへんも持っていて、腕も長いから。そのへんのチョーク、ポジションを取ってからの極めだけじゃなくて、際でサッとクレベルが取る気がしています」 ――ノーギの攻防が金原選手だったらできるという評価もあります。 「金原さんがマジで付き合わないみたいな意味で、パパパッとスクランブルして逃げることができると言っているんだったら、できると思います。だけど、本当に金原さんがパスするとか、もしかしたら金原さんが一本取るような仕掛けをするんだったら難しい。それが出来たら、金原さん強すぎる。それができる人、世界的にもなかなかいないと思います。UFCのフェザー級の人でさえほぼ無理じゃないかな。クレベルの寝技の攻防に関してはそう感じています」 ――分かりました。最後に摩嶋戦でどんな試合をしたいですか。 「寝技の攻防が多いと思うけど、意外とそうならない確率もあるのかな、なんてちょっと思ったりもしていて。総合格闘技って本当に何が起こるか分からないから面白いので、僕もいろんな作戦を考えているし、どうなるか分からないですね。  ただいまは、もう本当減量と練習がすごいキツくて、もう試合終わったら本当遊びたい、食べたい。怪我なく勝って。もうそれです。試合の日、超ハードでハアハアってなってもいいけど、その後に遊べないとかは嫌なんで。そのご褒美のためにも頑張ります。まあ、実際試合始まっちゃえば、どんな怪我でもなんだっていい感じですけど。試合後の焼肉のために、やります!」 ――大晦日大会への憧れは? 「いやまあ、さいたまスーパーアリーナがまずすごい憧れだったんで、それでひとつ夢は叶えたんですけど、大晦日はさらに夢。ずっと見てたので。アゼルバイジャンでも、大晦日でも、いい勝ち方して、出られるなら出たいなって気持ちは今あります。試合に対するやる気はあるので。でも負けたら試合したいという権利もないから、とりあえず今回いい勝ち方して試合していきたいです」 ※摩嶋が66kgの体重を作ることが難しく、計量中の両陣営の話し合いの中で、キャッチウェイトで合意し、66.2kgでの試合となった。公開計量後、横山は本誌の取材に「このまえもそうだった(対戦相手が規定体重守れず)んで“持ってる”。“勝利のジンクス”が来たんで行きます!」と前向きに語っている。
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