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日本時間2023年9月17日(日)午前8時より米国ネバダ州ラスベガスのT-Mobileアリーナで開催予定の『UFC Fight Night: Grasso vs. Shevchenko 2』にて、女子ストロー級マッチにて、オクタゴンデビュー戦を迎えるヨセフィン・ノットソンの公式コメントが、同大会を配信するU-NEXTから届いた。
ムエタイベースのノットソンは、2018年11月のK-1デビュー戦以降KANAと3戦しており、初戦に判定負けを喫すると、2019年3月の『K'FESTA.2』では判定3-0で勝利。同年12月の初代女子フライ級王座決定トーナメント決勝ではKANAに延長スプリット判定で惜しくも敗れた。また同年8月には『Krush』にも参戦し、壽美に判定勝ちしているストライカーだ。
アレクサンダー・グスタフソン、ハムザト・チマエフを始め、スウェーデンを代表する有名ファイターが数多く所属する名門ジム、オールスターズ・トレーニング・センターに所属するノットソンは、K-1後はコロナ禍の影響も受け、MMAへ転向。『ROAD TO UFC』や、『デイナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ』(DWCS)での勝利を経て、現在プロMMA戦績は6戦全勝となっている。
今回スクランブル参戦でのデビューを予定していたが、さらに対戦相手が欠場し、マーニック・マン(6勝1敗)とストロー級で対戦するノットソンにインタビューした。
ノットソン「日本の皆が格闘技にリスペクトを持っていて、この競技に情熱があるところが好きでした」
━━K-1でのKANA選手との熱闘が日本のファンの記憶にも残るヨセフィン・ノットソン選手です。プロMMAデビューから6戦無敗でいよいよUFCデビュー戦を迎える、現在の心境は?
「気分はとてもいいし、とても集中できています。この瞬間の為に長い時間をかけて準備をしてきたから。この試合はショートノーティスで決まったけど、準備はできています」
━━ショートノーティスとの事ですが、いつこの試合が決まりましたか?
「コンテンダーシリーズに3週間前に参戦したのだけど、その時はUFCとの契約が叶わなくて。本当にショックで。でもその1週間後にチームと帰ったところで知らせが来て、新しい対戦相手が必要だからって、今度の土曜のUFCの対戦カードに出場って。それはUFCとの契約を意味していた。コンテンダーシリーズの結果(※2014年11月のシュートボクシングでRENAに判定0-2で敗れているイシス・ヴァービックに、ノットソンが判定勝ち)にはとても自信を持っていたけれど、こんなにも早く結果がついてくるとは思っていなくて。
でもここはUFCだから全ては急に決まっていきますね。だからこの競技をやるのであれば常に準備ができているという事がとても重要です。常にハードにトレーニングを重ねて、“今あるか・永遠にないか”(のチャンス)だと思っています」
━━MMA6勝1敗のマーニック・マン選手との試合では、どのような動きを見せたいですか?
「出場する機会が来てすぐに対戦相手が変わったりしたので、マーニックの事は実はあまり知らなくて。知っていたのはマーニック選手もDWCS出身であることですね。私が出場する前に試合をして(※現UFCのブルナ・ブラジルの右ハイで2R KO負け)。正直、誰が対戦相手でもチームときちんと戦略を練らなければいけないし、自分にとっては試合から何を得るかというゴールは変わらないので、あまり気にしていません」
━━ノットソン選手は、2019年まで日本のK-1を舞台に活躍し、3度対戦したKANA選手は現在もフライ級王者です。またKANA選手はKOする力を持った貴重な女子ファイターです。KANA選手との試合を振り返っていかがですか?
「はっきり言ってKANA選手は私がムエタイ、K-1の両方を通してこれまで戦ってきた対戦相手の中で確実に、一番強い選手です。ただ対戦結果には納得していないし自分が勝ったと思っていて……まあそれはまた別の話ですね(苦笑)。彼女はまさしくKOファイターで、そのことを尊敬しています。間違いなく女子のこの階級で世界でも最も優れたストライカーのひとりであることは断言できます」
━━KANA選手の最近の試合はご覧になっていますか?
「KANA選手が今でもまだ数々の選手をKOしているのを試合で見ていますが、彼女がKOパワーを持っていることは分かっているから、そこは私にとっては驚くことではないですね。そんな力を持った女子選手は立ち技競技で、しかもこの階級ではあまりいません。女子の試合でKOって本当に難しいですし、珍しいことですね。あれだけのパワーを持っている女子選手ならそれも決して大変ではないということですが」
━━またいつか、拳を交えたいと思いますか?
「私はもうMMAに転向してしまったから、もし再戦するとしたら、彼女がMMAに転向したらになるんじゃないかしら。それで彼女がまだ私と戦いたいと思ってくれるなら、私もまた彼女と戦う機会については歓迎だし、面白いでしょうね」
━━やはりK-1で対戦経験(※2019年8月にノットソンが判定勝ち)のある壽美選手が、練習中の怪我による脳のダメージの影響で今年8月に引退を発表されたのですが、そのことはご存じでしたか?
「そんな……知りませんでした、とても驚きました。彼女も本当にタフな強い選手でした。彼女と戦った経験で言うと、いい蹴りを持っていて、少しムエタイのスタイルで、自分とは違うけれども、ちょっと近い戦い方をする部分もありましたね。今その話を聞いて、とても残念です」
━━そういったリスクを背負った仕事であるという点でどのような思いがありますか。
「常に何事にも二面性があると思っています。この競技はとても残酷で、それはムエタイやK-1のようなストライキングでもMMAでも同じです。小さなグローブで殴り合っていきなり何かが変わってしまう危険がある。これはこの競技への情熱や愛と引き換えにつきまとうリスクです。何が起きてもおかしくありません。そういうリスクを承知の上で勝ち上がっていかなくてはいけません。
だから常に何よりも気をつけなくてはいけないのは健康ですし、ファイターとして自分の身体を理解して管理するという事は個人に課せられた責任ですね。試合後もそうだしトレーニングの時でも。そして運営する側も責任を持って毎試合の後にメディカルチェックをしてくれて、そういうサポートがあることで自分の試合に集中し、自分の好きなことに専念できる、それが大事です」
━━ご自身とKANA選手/壽美選手との試合、あるいはK-1の興行全体を通して、日本の女子格闘技には、どのような印象を持っていますか?
「まず第一に日本がとても大好きです。日本の全てが好き。日本の人たちもカルチャーも、あと皆が格闘技にリスペクトを持っていて、この競技に情熱があるところも。K-1は特にそうでした。海外に出たらK-1は大きい団体か? って言ったら正直そんな事はないのだけれど、皆が情熱を持って向き合っていて、ああいう観客がいるというのは、出場する選手のモチベーションにもなります。
それはいざ試合をする側にとってはすごく大きな意味があることなんですよ。あと、K-1には非常にレベルの高い選手が揃っていると思います。試合に対してのマインドセットやテクニック、タフネス、なかなか感じられる事ではないと思う。どの国にもいいストライカー達はいると思うけど、K-1の日本人選手たちは飛び抜けていると思います」
━━今回のUFCで同じ大会に出場する、メインのアレクサ・グラッソvs.ヴァレンティーナ・シェフチェンコ戦は、ノットソン選手と同じフライ級のタイトルマッチです。ここで同階級の自分の試合でインパクトを残したいですか、またこの試合はどう予想されますか?
「正直な気持ちとしてはシェフチェンコ選手の試合かな、と。MMAなのでたとえばテイクダウンされて一本取られてしまうなんてことも起き得ますし、何があってもおかしくない世界です。でもシェフチェンコ選手はこの試合にかなり集中して準備をしていると思います。彼女はとても冷静なファイターだし、前回の試合までずっと勝ってきました。どんな人も仕事をしている中でツイてない日というのはあると思いますが、前回の敗戦を受けて彼女はこれまでにないほど勝利に飢えていると思います。
それに私、ファイターとしてのシェフチェンコ選手の性格がとても好きなんですよね。何ていうか、ファイターとして持っているべき敬意や謙虚さを持ち合わせているのに、それでいてケージに入ると別人になるでしょう」
━━同じムエタイをバックボーンとするシェフチェンコ選手とご自身のスタイル的に似ていると感じる部分はありますか?
「あると思います。彼女の事を尊敬しているし、私と同じムエタイスタイルをとてもうまくMMAに活かしています。試合を見ているとそのことがはっきり分かりますよね。そして、それを彼女はずっと何年もやり続けてきている。私自身が最初はムエタイでしたから、その後K-1には行きましたけど、有効であるという証拠だと思っていて。ただ結局のところ、自分自身、そして自分が毎日やってきていること、日々のハードワーク、そうやって積み重ねている全てを信じるしかないですよね」
━━あなたの練習仲間には日本でも有名な選手がたくさんいます。あなたのチームについても教えてください。
「私が所属するジム、オールスターズ・トレーニングセンターは他のジムに比べても、図抜けていると思います。テクニカルトレーニングをして、フィジカルトレーニングをして、量も質もとても良いです。世界中のジムに行った事がある訳じゃないけど、色々行ってみて、私のいるチームというのは“全てにおいて強くなりたい”という意識を共通で持っているし、ファイターとして自分には何が一番合っているかを知る事ができます。
厳しいトレーニングをするのはもちろんだけど、自分に合った方法を見つけて、自分を信じてくれるコーチが大事で、私はそれに恵まれていると思う。私のチームは本当に大きくてオールスターが揃っています。グラップラーもストライキングも、ボクシングでもムエタイでもK-1でもそれぞれに適したトレーナーがいますし、トレーナーがファイターでもありますから。それが私のジムの際立っている所だと思います。オールスターで練習し、ここを代表して戦えることは本当に恵まれています。全てがそこにあるので。それでも私は今後も世界中からよりベストなスパーリングパートナーを見つけたいと思っています、そうやって常に向上していきたいんです」
━━レジェンドの中でも、UFCで活躍するハムザット・チマエフ選手は日本のMMAファンにもすごく人気があります。チマエフ選手と練習で顔を合わせることもありますか?
「ああ、えっと(笑)。チマエフね(笑)。彼と一緒にトレーニングする事はないですけど、というのも彼には彼のハイレベルな練習やスパーリングが必要で、彼自身のトレーニングを大事にするべきだから。彼はいつも自分の試合に集中しています。ただ隣りのマットでトレー二ングしたりはしているから、彼のトレーニングを見るだけでも尊敬してしまうし、すごくたくさん勉強させてもらっていますよ。そういう意味では一緒にやっていると言えますね」
━━彼は普段どんな人なのですか?
「すごく謙虚な人ですよ、ハムザットは。だけど同時に、“殺し屋の本能” を持っています。中にはそんなのフェイクだって言う人もいるけど、実際に対面したらそんな風に言えないと思う。彼に元から備わっているものだから。そういったものを本能的に。生まれつき、持っている人がいるでしょ? 彼は本当にそういう人で“キラー”としての本能があって、それって少し練習したり、少しケージやリングで試合を経験したりしても身につくものではないから、彼はやっぱり他の人とは違う何かを持ち併せています。彼をSNSとか動画を通して見て知っている人が実際に会ったら、彼が謙虚で敬意のある人だと分かりますし、でもやっぱり本当に、どこか常人とは違う人なのだと分かると思います」
━━日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。
「日本の皆さんには是非メッセージを送りたいです! というのも私がMMAに転向してからも変わらず応援してくださる方達がいます。それは私にとって本当にすごく意味がある事です。さっきも言ったように、K-1に戻る事はないけれど、日本人やアジア人の選手とMMAの試合で戦いたいとは思っています。この競技はもっとアジア人のファイターがいるべきよね。皆さんに愛を、そして私の旅路を応援してくれて本当にありがとうございます!」