キックボクシング
レポート

【GLORY】バダ・ハリが試合直前に欠場を発表、モロッコ地震が影響。引退試合スーストが鮮やかハイキックKOで有終の美、初参戦ラテスクが初陣を勝利で飾る

2023/09/10 05:09
GLORY 88 x LSFC 22023年9月9日(日・現地時間)フランス・パリ※U-NEXTにて見逃し配信 第8試合のGLORY女子スーパーバンタム級チャンピオンシップの前に、第9試合に出場するバダ・ハリ(モロッコ)がリングイン。メインイベントを欠場することを発表した。  ハリは「皆さま、欠場をお許しください。心から感謝をしています。神様が皆様を守ってくださいますように。私たちはまだ地下に埋もれている人々を探し続けています。私たちは彼らを救出して皆様と共に喜びを分かち合うことが出来ていません。しかし今日、私たちが感じている痛み、モロッコの人々が直面している困難を考えると私たちは同じモロッコ人として一緒なんだということを感じています。私たちは兄弟なんです。今日は戦えません。モロッコの人々が直面している困難に対して神様が彼らを助けてくれますようにと心から願っています。我々は彼らのために祈り、彼らと共に立ち向かうべきです。心から感謝をしています。モロッコの人々と共に私たちはひとつの国、ひとつの王国として団結をしています。神様が亡くなった人たちの魂を安らかにしてくださいますように」と挨拶。  続いて対戦相手のジェームズ・マクスウィーニー(イギリス)もリングに上がり、「彼の見解を尊重する。近いうちに戻って来る」とコメント。  その後、放送席にてハリのコーチが、バダ・ハリはモロッコで8日に発生したマグニチュード6.8の大地震による被害に心を痛め、試合が出来る精神状態ではないことを説明。「モロッコでの地震があってバダ・ハリが住んでいるところと非常に近い。家族も友だちもいてこんな状況では試合が出来ない。彼はいい決断をした」と話した。  GLORYのチェアマンであるスコット・ロッドマン氏は「近々パリでまたビッグマッチを開催します。モロッコのことを考えて今回バダ・ハリは試合をしません」と、次のビッグマッチに期待して欲しいと語った。 [nextpage] ▼第8試合 GLORY女子スーパーバンタム級チャンピオンシップ 3分5R〇ティファニー・ヴァン・スースト(アメリカ/王者)=54.7kgKO 2R 1分47秒 ※左ハイキック×サラ・モサダック(フランス/挑戦者)=54.8kg※スーストが4度目の防衛に成功。  ティファニーは少林流空手を幼い頃から学び、アマチュアでキックボクシングとMMAの試合を経験後、2011年10月にプロムエタイに転向。2013年7月にLION FIGHT女子フェザー級王座を初回TKO勝ちで獲得。11月には初防衛に成功したが、2014年2月に判定2-1で敗れて王座を失うと共に10戦目にしてプロ初黒星を喫した。2015年5月に王座に返り咲くと、2016年1月にはスーパーバンタム級王座も手にして2階級制覇を達成。  5月からGLORYに戦いの場を移し、トーナメントを制してGLORY女子スーパーバンタム級王座に就いた。同王座は初防衛に成功するも、2017年12月にアニッサ・メクセンに敗れて失い、2019年11月にメクセンにリベンジして王座奪還。2021年1月に初防衛に成功すると、2022年3月にはRISE QUEENフライ級王者・小林愛三の挑戦も5R TKOに退けて2度目の防衛に成功。  10月には今回対戦するモサダックと3度目の防衛戦を行い判定勝利したが、場内はブーイングの嵐で勝利者インタビューになかなか喋り出すことが出来なかったほど微妙な判定だった。戦績は25勝(9KO)6敗2分。今回の試合を最後に引退することを表明している。  挑戦者モサダックは2019年3月にGLORY初参戦を果たすと、2連勝のあとスプリット判定で2連敗。その後、2年間のブランクを経て2021年10月『ファイティングエディション3』にて、プロ初のタイトルとなるISKAヨーロッパ-57kg王座を獲得。続く2022年5月にはWAKO世界-56kg級王座にも就き、2冠王となってGLORYに戻ってくるとティファニーの王座に挑戦したが惜敗。その後、ムサダックはGLORY 86でジュリアナ・コスナールに圧勝し、すぐにティファニーとの再戦を望んでいた。そして今、2人はパリでついに決着をつける。戦績は8勝(1KO)3敗。  1R、スーストはいつも通りステップワークを使って前後左右に動き、飛び込んでの左フックをヒットさせる。モサダックは圧をかけて右ストレート、右ロングフックで前へ出る。スーストは出入りをして前蹴りで攻めていく。  2Rも前に出るのはモサダック。スーストは左ミドル、右ロー、右ストレートからサウスポーにスイッチしてのヒザ。モサダックが大きな右フックを振って来るとジャブを突き刺す。動き回りながら蹴りを繰り出していくスーストは、ジャブを一発出すとノーモーションで速い左ハイキック。  この一発が見事に決まり、モサダックはもんどりうってダウン。立ち上がろうとするも身体が言うことを聞かず、10カウントが数えられた。4度目の防衛をKOで果たし、文字通り有終の美を飾ったスーストは勝利の雄叫びを上げると涙を流す。  スーストは「とても感情的な気持ちですがまずはモロッコの安全を祈りたい。神のご加護がありますように。引退後は女性として成長したいです。サポートしてくれたチームのみんなに感謝したい」と引退の挨拶。グローブを揃えてリングに置くと現役に別れを告げた。  一方、敗れたムサダックは「ガッカリしています。全ての準備をしてきましたが、こんな結果になってしまいました。ただ私はまだ23歳。これがスタート地点だから、これからより強くなってこの舞台に戻って来たいです」と再起を誓った。 [nextpage] ▼第7試合 ヘビー級 3分3R〇ノルディン・マヒディンヌ(アルジェリア/同級4位)=106.9kgKO 3R 2分19秒 ※右ハイキック×アブデラマン・クーリバリ(フランス)=100.4kg  マヒディンヌはフランスでキャリアを積み、ローカルヘビー級トーナメントで2度優勝した後、2017年4月にWAKOヨーロッパヘビー級王座を獲得。その2週間後にはピーター・アーツとの対戦に臨んだが、判定で敗れている。GLORYには2016年11月から参戦を果たし、2019年6月にはアントニオ・プラチバットと対戦して判定負けしたが、2020年12月の再戦では延長戦の末に判定2-1で雪辱を晴らした。2023年3月にはライトヘビー級に階級を下げるも、フェリペ・ミケレッティに判定で敗れている。戦績は27勝(12KO)15敗でGLORYでは4勝4敗。  クーリバリはアマチュアで2008年IFMA世界ムエタイ選手権銅メダル、2013年WAKO世界選手権+91kg(K-1ルール)金メダルを獲得。プロではWPMF欧州-91kg王座、WAKO PROローキックルール世界ヘビー級王座、VVWS世界ヘビー級王座などを獲得。2011年11月にはネイサン・コーベットと対戦(判定負け)したこともある。近年は5連敗のあと2連勝、4連敗のあと2連勝という戦績となっており、かなりムラがあるタイプのようだ。GLORYは2017年10月に一度だけ参戦しており、フレディ・ケマイヨに判定2-1で勝利した。戦績は58勝(25KO)20敗1分。  1R、右ボディストレートを打つマヒディンヌにクーリバリは首相撲に捕まえてのヒザ蹴り連打。ボディを含めたパンチを回転させるマヒディンヌにクーリバリは左ミドルで応戦する。ヒザ蹴りとアッパーでマヒディンヌをコーナーへ詰めていくクーリバリだが、マヒディンヌはすぐに右フックで前へ出る。  2Rはクーリバリもパンチを多く出して打ち合いに行く。マヒディンヌも左右フックを繰り出すがワンツーに押され、首相撲からのヒザに捕まってしまう。マヒディンヌはワンツー、左フックをヒットさせるとクーリバリも前へ出て首ヒザに持ち込む。ならばとマヒディンヌは左ローを蹴っていく。パンチを当てるのはマヒディンヌだが、クーリバリはヒザを突き刺していく。  3R、左フックと右ボディのマヒディンヌにクーリバリは左ミドル。この左ミドルを何度も蹴って当てていクーリバリだったが、疲労からか動きが雑になり、組んでのヒザを蹴った直後にマヒディンヌが意表を突く右ハイキック。これが見事に決まり、クーリバリは真後ろにダウン。そのままマヒディンヌのKO勝ちとなった。 [nextpage] ▼第6試合 フェザー級 3分3R〇デニス・ウォシク(ドイツ/同級6位)=64.9kg判定3-2 ※29-28×2、28-29×2、30-27×ベルジャン・ペポシ(アルバニア/同級8位)=64.9kg  ウォシクは2022年8月にRISEライト級王者・直樹からダウンを奪って勝利し、11月にはモハメド・エル・メスバヒにも勝利するなど7連勝していたが、2023年1月にマルコス・リオスに判定2-1で敗れた。戦績は37勝(9KO)8敗1分。  ペポシは2019年4月にプロデビューして9連勝(6KO)と波に乗っていたが、10戦目にして初黒星。その後は再び連勝街道を突っ走り、ISKA欧州-63.5kg王座、WKN世界-65kg王座を獲得するなど13連勝を飾った。GLORYには2023年2月に初参戦し、アフマド・チク・ムーサに判定で敗れ13連勝をストップされている。戦績は27勝(16KO)3敗。  1R、前に出るウォシクにペポシは左右ボディと左ローで応戦。前に出て圧をかけるウォシクだが、手数はペポシが多い。ウォシクもワンツー・スリーを繰り出し、ペポシの連打に左フックを返した。  2Rも前に出るのはウォシクで左右フック、ペポシはヒザを突き上げる。ロープを背負ったペポシにウォシクの左ストレートが突き刺さる。ウォシクの左ボディにペポシはワンツー。手数を多く出すペポシは右アッパーをヒットさせるが、すぐにウォシクが前蹴りからパンチを当てに行く。ウォシクは飛びヒザ蹴りを放ち、すぐに右ストレート。ガードの隙間を縫うようなワンツーもヒットさせてウォシクが優勢に。  3Rも前蹴りからパンチにつなぐウォシクにペポシは動き回りながら左ミドル、ワンツー。ウォシクは左フックからの右フックを当てる。このラウンドも手数を多く出すペポシは、攻撃でウォシクにガードを固めさせて優勢を印象付ける。ウォシクは前蹴り、飛びヒザだ。さらにウォシクは右ボディストレートからの飛びヒザをクリーンヒットさせる。前蹴りから入るウォシク、近付いてきたところでヒザを突き上げるペポシ。最後にウォシクが距離を詰めて左右フックを当てて終えた。判定は3-2と割れ、ウォシクの勝利となった。 [nextpage] ▼第5試合 ライトヘビー級 3分3R×パスカル・トゥーレ(フランス)=95kg判定0-5 ※30-27×5〇ステファン・ラテスク(ルーマニア)=93.8kg  トゥーレはフランスを主戦場にし、2021年12月にはフランスで行われたK-1ルールの-95kgトーナメントで準優勝。2023年2月の前戦では『ムエタイ・ファクトリー』で元GLORYライトヘビー級王者アルテム・ヴァキトフと対戦して判定で敗れている。GLORYには今回が初参戦。  ラテスクはジュニア時代にISKA世界クルーザー級王座に就き、プロではまだ無冠だが14勝(7KO)2敗の戦績を誇る。2022年12月に初来日を果たすと、マハムード・サッタリを強烈な左フックでKOして初黒星を付け、大きなインパクトを残した。2023年3月の2戦目では谷川聖哉にローキックでダウン寸前まで追い込まれるも右フックで逆転KO勝ち。7月17日に両国国技館で開催される『K-1 WORLD GP 2023』でK-Jeeとの対戦が決まっている。同じくGLORYには今回が初参戦。  1R、ラテスクは左ジャブと左フックを出しながら前へ行く。トゥーレは左ミドルを蹴って右カーフ。ステップを踏みながら左右に構えをスイッチするトゥーレにラテスクはグイグイと近付いていき、左ボディ、左右フックを繰り出す。トゥーレはハイキックでけん制。オープンスコアはラテスクの10-9×5。  2R、組み付いてきたトゥーレにラテスクは左フックを連打する。さらにトゥーレのヒザにも左フックを合わせた。ガードを固めてワンツーを放つラテスクにトゥーレは前蹴りで距離をとる。すぐに組み付いてくるトゥーレにラテスクはストレスが溜まる展開。距離を詰めて左フックを当ててもトゥーレの組み付きで止められてしまう。ラテスクは左インローを蹴っていく。オープンスコアはまたもラテスクの10-9×5。  3Rも詰めるラテスクだが、トゥーレの組み付きで連打を止められてしまう。ラテスクの左フックで大きく後退するトゥーレ。左フックの連打で大きくバランスを崩したトゥーレに、ラテスクはノーガードでのしのしと歩いて近寄って行く。最後まで左右フックで攻めていったラテスクだったが、トゥーレのステップと組み付きに手を焼き決め手がないまま試合終了。  判定はフルマークの判定3-0でラテスクの勝利となった。 [nextpage] ▼第4試合 ウェルター級 3分3R×カリム・ガージ(フランス)=76.9kg判定0-5 ※28-29×2、27-30×3〇ニコラ・トドロビッチ(セルビア)=76.7kg ▼第3試合 ライト級 3分3Rジョナサン・マエゾ(フランス)=69.9kg判定0-5 ※28-29×2、27-30×3ジェームズ・コンデ(フランス)=69kg ▼第2試合 ミドル級 3分3R〇イリアス・ハムーチェ(モロッコ)=84.8kg判定5-0 ※29-28×3、30-27×2×フロリアン・クローガー(ドイツ)=85kg ▼第1試合 ウェルター級 3分3R〇ディアグリー・カマラ(フランス/同級10位)=76.7kg判定5-0 ※30-25×5×イリアス・チャキル(モロッコ)=77kg
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