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レポート

【RWS】城戸康裕がバッティングで大流血、ブアカーオ戦はノーコンテストに。吉成名高がヒジ打ちで激勝、3階級制覇へ向けて好発進。劣勢を一発で引っ繰り返した石井一成が戦慄の失神KO勝ち、チームジャパンの先鋒・伊藤紗弥が完敗

2023/09/09 21:09
RWS:Ratchadamnoen World Series2023年9月9日(土)タイ・ラジャダムナンスタジアム ▼70kg契約 キックボクシングルール 3分3R―ブアカーオ・バンチャメーク(タイ/K-1 WORLD MAX世界トーナメント2004・2006優勝)ノーコンテスト 3R ※偶発的なバッティングによる―城戸康裕(TEAM ONE/K-1 WORLD MAX2008日本代表決定トーナメント優勝)  ブアカーオは2002年12月にルンピニースタジアムで行われた「TOYOTAタイランド・ムエマラソン 140ポンド・トーナメント」の決勝戦で小林聡を破って優勝し、その名が日本にも知られるようになった。2004年7月からはK-1 WORLD MAXに参戦し、トーナメント決勝で魔裟斗を破って初出場初優勝。2006年6月には決勝でアンディ・サワーを破り、MAX史上初の2度目の優勝を飾った。2010年11月にはシュートボクシングの世界トーナメント『S-cup』にも出場し、優勝している。  K-1の活動休止後も世界中で活躍し、高い勝率を誇った。コロナ禍のためリングから離れていた時期もあったが、2022年7月に約3年ぶりに復帰。32勝10敗の戦績を持つドミトリー・ヴァラッツに完勝して240勝目をあげると、2022年8月には三浦孝太とエキシビションマッチを行い、続く9月には素手ボクシングの『BFKC』に初出場して110秒でKO勝ち。10月にも佐藤嘉洋とエキシビションマッチを行っている。2023年5月のRIZINでは10年ぶりに日本で試合を行い、安保瑠輝也と引き分けた。41歳。  城戸はK-1 WORLD MAXで魔裟斗、佐藤嘉洋らと日本の主力選手の一人として活躍し、2008年の日本代表決定トーナメントでは優勝。その後もKrush、K-1で活躍し、2019年3月のK-1ウェルター級タイトルマッチでは敗れたが、元々の階級であるスーパー・ウェルター級に復帰すると連続KO勝ち。2022年12月にK-1との契約満了を発表すると、2023年1月には皇治がプロデュースする『NARIAGARI』に出場し、高橋幸光とドローに。2023年5月のRIZINに初出場するもRISEランカーの木村“ケルベロス”颯太に判定で敗れた。戦績は55勝(26KO) 25敗1分。40歳。  2人は同じ時期にK-1 WORLD MAXで活躍していたが、意外にも対戦経験がない。ブアカーオ41歳、城戸40歳にして初対決となる。この試合はエキシビションマッチではなく、キックボクシングルール3分3Rの公式戦として行われる。なお、ブアカーオ側の申し出により、城戸も了承したため試合前日に70kg契約から73kg契約に変更された。  ブアカーオが入場すると場内は大歓声。まさにスーパースターの登場という雰囲気で時間をたっぷりと使う。場内のボルテージは最高潮に達した。城戸のセコンドには皇治が就く。  1R、城戸はオーソドックスに構えて右カーフ、ブアカーオが圧をかけてコーナーまで追い詰めると城戸は待っていましたとばかりにバックハンドブローを繰り出すがブアカーオはダッキングでかわす。城戸の前蹴りがローブローとなって中断。再開後、城戸はサウスポーに変わって左ローを狙い撃ち。ブアカーオは頭を振りながら前進していき、左右フックを繰り出す。城戸が組み付くとブアカーオはクリンチアッパーを繰り出し、離れ際に左ハイ。さらに左ハイを蹴ると頭部をかすめ、ブアカーオは一瞬腰を落とす。さらに左ハイを蹴る城戸。ブアカーオは前へ出て右ボディ、右ストレートから左アッパー、右フックと城戸をコーナーへ釘付けにして強打を見舞う。ダウン寸前となる城戸だが、このラウンドは耐えた。  2R、城戸はオーソドックスになりジャブを打つ、ブアカーオは右フック。ジャブと右カーフで下がりながら戦う城戸は、組んだところでローブローをもらって悶絶。再開後、再びジャブと右カーフの城戸にブアカーオは思い切り右フックを振って行き、ステップで回り込む城戸にノーガードでのしのしと歩いて近付いていく。右カーフをしつこく蹴る城戸。ブアカーオは左足を上げ始め、かなり気になる様子。城戸はローのフェイントから左ハイを蹴るがこれは浅かったか。ブアカーオは組んでのヒザ蹴り、離れるとテンカオとヒザ狙い。城戸が右カーフを蹴ってワンツーを当てていき、ブアカーオが組んでくるとカカトでブアカーオのカーフを蹴る。  3R、日本人応援団の城戸コールが起きる中、城戸は右ハイキック。ブアカーオはカーフを蹴られないように左足を上げながら前へ入って来るが、ブアカーオが潜り込んで右ボディを打ったところで両者バッティングとなり、城戸は額から大流血。ドクターチェックでレフェリーがストップをかけた。裁定はノーコンテストとなった。  城戸はインタビューを受け、「頭がパッカーンですね。圧力がめちゃくちゃありましたね。でもそれは想像通りで。ちょっとここパックリでハゲちゃうと思うのでブアカーオ、カツラのお金ください。(再戦は)めちゃくちゃやりたいです。また呼んでください。ちょっと、もう1回やろうよ」とブアカーオの肩を叩いた。 [nextpage] ▼スーパーフライ級 ムエタイルール 3分3R(インターバル2分)〇名高エイワスポーツ(=吉成名高/エイワスポーツジム)KO 1R 1分22秒 ※右ヒジ打ち×スーウィチャイ(ラオス)  名高は2018年12月にラジャダムナンスタジアム認定ミニフライ級王座を獲得、2019年4月にはルンピニーの同級タイトルも獲得し、日本人初のラジャダムナン・ルンピニー統一王者に輝いた。今年7月にはラジャダムナンスタジアム認定フライ級王座も獲得し、外国人として史上初のラジャダムナンスタジアム2階級制覇王者に。その後も快進撃を続け、8月12日には、タイ・ラジャダムナンスタジアムにて開催されたRWSのメインイベントで同スタジアム認定フライ級タイトル初防衛戦を行い4RKO勝ち、現在23連勝を誇る。  その名高はラオスのスーウィチャイとスーパーフライ級契約で激突。3階級制覇を目指して階級を上げての第一戦となる。スーウィチャイはオープンフィンガーグローブのムエタイ大会『MXムエエクストリーム』などに出場し、パンチを得意とする選手だという。  1R、前に出るのはスーウィチャイ。名高は左ローを狙い撃ちにしていく。左ハイ2発、左ボディストレートと攻撃を打ち分ける名高は、右ボディの4連打から左縦ヒジを打ち込んでダウンを奪う。そして、スーウィチャイが立ち上がったところへ飛びヒザ蹴り。両腕ブロックしたスーウィチャイのガードの隙間を突く右ヒジを打ち込み、スーウィチャイはダウン。レフェリーが即座にストップし、名高の圧勝となった。いずれのヒジも相手のガードの隙間を突く攻撃だった。 [nextpage] ▼53.0kg契約 ムエタイルール 3分3R(インターバル2分)〇イッセイ・ウォーワンチャイ(=石井一成/ウォーワンチャイプロモーション)KO 2R ※右フック×ジェイジェイ・オーピモンシー(タイ)  日本軽量級のトップ選手として君臨するイッセイは、昨年9月のBOMでWBCムエタイ世界スーパーフライ級王座をKO勝ちで獲得するなど、これまでに8本のタイトルを保持。BOMのリングだけでなく、昨年からはK-1にも参戦し、ヒジあり・なしの“二刀流”で最強を目指す。  K-1を主戦場にしながらムエタイルールにも挑戦し続ける二刀流、イッセイは7月のRWSでエークタワンを左ボディで初回TKO勝ちしたのに続いての参戦。今回はジェイジェイ・オーピモンシー(タイ)と対戦。元WBCムエタイ王者のペッデートにも勝利している強豪選手を相手に、イッセイはRWSでの二連勝なるか。  1R、強い右ミドルを蹴るジェイジェイ。イッセイは右カーフと左三日月を蹴る。ジェイジェイの左フックをダッキングでかわして逆に左フックを入れるイッセイ。ジェイジェイは前へ出ての右ストレート。イッセイが入り込もうとしたところで右ミドルを何度もクリーンヒット、さらに左ミドルをなんと8連打。左右のミドルを蹴られるイッセイだが飛び込んでの左フックをヒット。ジェイジェイのミドルはカットせずに受けてしまうが、前へ出てパンチを当てに行く肉を切らせて骨を断つ戦法のようだ。ロープを背負うジェイジェイだが、イッセイのヒジをかわして逆にヒジを打つ。イッセイは“やるな”という表情。オープンスコアはジェイジェイの10-9×3。  2R、左右ローからいきなり縦ヒジを打つジェイジェイ。イッセイはこのラウンドも前へ出て左カーフ。イッセイは左フックを空振りすると、その左手を戻さずジェイジェイの顔に押し付けるようにして距離を測り、右ストレートをしっかり肩を回して伸ばして打つ。ロープを背負っていたジェイジェイはよけきれずにクリーンヒット。倒れかかるジェイジェイへダメ押しの右フックを打ち込み、ジェイジェイは目を見開いて失神。イッセイが戦慄のKO勝ちを飾った。 [nextpage] ▼ピン級契約 ムエタイルール 3分3R(インターバル2分)×伊藤紗弥(尚武会)判定0-3〇モンクッペット・カオラックムエタイジム(タイ)  伊藤はジュニアキックで数々のタイトルを獲得。2012年12月には中学2年生にしてタイでWPMF女子世界ピン級暫定王座に就いた。2014年4月に国内で正式にプロデビューを果たすと、国内外の強敵を相手に快進撃を続けWPMF・WMC・WBCムエタイと女子世界王座の三冠を制覇。2021年4月にBOM女子ピン級(-45.53kg)初代王座、11月にBOM女子ライトフライ級(-48.98kg)王者になると、2022年5月にはナムワンを破りIPCC世界女子アトム級王者となって世界四冠王に。  2022年10月にはさらに上の階級である-50kgで『MUAYTHAI SUPER CHAMP』のトーナメントに参戦も決勝で涙を飲んだ。2023年3月にはタイ・パタヤで勝利し、IMSAという団体のベルトを新たに獲得したが、5月のWBCムエタイ世界ライトフライ級ダイアモンドベルト王座決定戦では、KANAと対戦経験があるキム・タウンセンドに敗れた。7月のBOMではサネガンに勝利して再起を飾っている。  RWS初出場の伊藤の相手ははモンクッペット。これまでにKAREN、田中“暴君”藍、藤原乃愛といった日本人選手と対戦経験を持つ。  1R、まずは右ミドルと前蹴りで距離を測り合う両者。伊藤は右ローの返しを多用する。伊藤は前に出るフェイントを使ってモンクッペットに蹴りを出させ、ジャブや返しの蹴り。モンクッペットの右ミドルが綺麗に決まり、これがポイントとなったかオープンスコアはモンクッペットの10-9×3に。  2Rも右ミドルの蹴り合い。伊藤は右ローを織り交ぜる。伊藤が入り込もうとしたところにモンクッペットが右フックで伊藤を仰け反らせる。左ミドルをもらった伊藤はすぐに右ミドルを蹴り返すが、モンクッペットはそこに左右の連打。伊藤はモンクッペットの右ミドルをバックステップでかわして右ローを返す。蹴りの射程距離の長さで優るモンクッペットが、蹴り合いでは有利に。このラウンドもオープンスコアは10-9×3でモンクッペット。  3R、もう後がない伊藤は前へ出て右ロー、右ストレートを打つ。伊藤が入ろうとするところへ右ミドルを合わせ、さらに右ストレートもヒットさせるモンクッペット。伊藤は下がらず前へ出てコーナーへ詰めたモンクッペットに右をヒットさせる。さらに前へ出て行く伊藤だが右フックをもらい、前蹴りで突き放される。モンクッペットの長い手足になかなかパンチも蹴りもヒットを奪えず、蹴り合いもモンクッペットが蹴って終わる。ミドルの相打ちでも伊藤がバランスを崩す場面があり、判定3-0でモンクッペットの完勝となった。
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