2023年7月15日(土)にタイ・バンコクのルンピニースタジアムで開催される『ONE Fight Night 12』のフライ級マッチで、シェ・ウェイ(中国)と対戦する、若松佑弥(TRIBE TOKYO MMA)が試合前インタビューに答えた。
若松は、2022年3月に当時のONEフライ級(※61.2kg)王者アドリアーノ・モラエス(ブラジル)に挑戦し、3R ギロチンチョークで一本負けで戴冠ならず。同年11月の『ONE163』ではハイドレーションに失敗してキャッチウェイト戦でウ・ソンフン(韓国)に1R KO負けし2連敗中。
対するウェイは、MMA17勝(12KO)5敗のハードパンチャー。2018年11月のWLFでTSUNEに判定負け後、ONEの中国登竜門大会「ONE Hero Series」で4連勝。ONE Warrior Seriesを経て、2020年1月から本戦に出場。ダニー・キンガッドに判定負け後、チャン・ロタナ、カンテラー・シャンカー・アガサ、キム・デファンにいずれもKO・TKO勝ちで3連勝をマーク。
しかし、2022年6月の前戦では、かつて若松が判定勝ちしているリース・マクラーレンにリアネイキドチョークを極められており、過去5敗のうち連敗は一度もないキャリアをキープして再起を図りたいところだろう。
基本はオードドックス構えで、回転の速い強打と右カーフキックを得意とするシェ・ウェイは、相手のテイクダウンにはがぶって潰して削るが、マクラーレンには大振りをかわされ、テイクダウン&バックテイクを許してチョークを極められている。
打撃でも立ち会える若松は、近年、武器となっているテイクダウンを混ぜてシェ・ウェイに完勝し、再び王座戦線に名乗りをあげるか。
臼井さんのミットに、安藤達也さん、中村倫也選手と練習。メンタルトレーニングでは「考え方」を教えてくれる
──減量に入っているでしょうけど、普段から食生活にも気を使っているそうですね。
「グルテンフリーにして、あとは一度に多く食べないとか、バランスよく、肉野菜、炭水化物をとっています。グルテンフリーにしたのは2020年からなので、3年目です。オフの時は週1回と月1回とか試合終わりとか、多く食べてしまいますね。“毒”も入れようとか(笑)」
──そういう時は何を食べますか。
「ラーメン、パスタ、ピザ、イタリアン、あとはパンとかも。試合終わりは食べちゃいますね」
──さて、現在のコンディションは?
「変わらず、いつも通りバッチリです。怪我も特になく順調です。普通にやっています」
──練習環境はいかがでしたか。
「出稽古は変わらずロータス(世田谷)に行ったり、オフの時は柔術をやっている時もあったけど、今は追い込みに入っているので、いつも通りTRIBEでやったり、たまに出稽古でCUTEジムに行ったりとかですかね」
──CUTEジムではどういった練習をしてますか。
「MMAのスパーリングと中村倫也くん(UFC参戦)とか、安藤(達也)さんもいるので、その人たちと練習しているのと、昔、TRIBEでボクシングミットを持ってくれた臼井(知史)さんもミットを持ってくれるので、それが目的で行っています。強い人と触れていきたいという感じですね」
──UFCデビューを控える中村倫也選手との練習はいかがですか。
「もちろん、強いです。これからどこまで行くのか楽しみな選手です。刺激だし、学ことが多いです」
──対戦相手のシェ・ウェイ選手の印象は?
「あんまり多くは語りたくはないですけど、“打撃の選手”だという印象。戦略については言いたくはないですが、何でも用意はしています。当日は楽しみにしてもらえればと思います」
──「多くを語りたくない」理由に、戦略を明かしたくない以外にもありますか。
「シンプルに倒すことだけを考えています。色々と考えすぎないで。考えすぎちゃうと自分の良さが出ない。みんなが見たいのは圧倒的に強い自分だと思う。そこに戦略だとか、どうのこうのとコミットしちゃうと自分で自分の首を絞めちゃう。そうならないようにシンプルにただ倒すみたいな、どんな状況でも倒すし極めるし、相手を上回る──そこを目指しています」
──シェ・ウェイの打撃をどう評価していますか。
「正直、普通にやったら勝てる相手。ただ試合なので、何があるか分からないし、気を抜けないので。そこは自分が気を抜いたら、やっぱりやられるだろうし。勝負できるし。(ONEの選手は)みんながみんな、強い選手達なので、そこでやりやすいと思っていたとしても、自分は念入りに準備する。そこに対してはいけるとか、あんま思わないように、自分を信じている感じです」
──自身の打撃について、過去1年間で成長した点があったら教えてください。
「どうなんですかね……伸びている部分は、とりあえず攻撃面以外は全て昔よりかは伸びていると思います。ディフェンスやコンビネーションだったり。ずっと仕事としてやっているので、更新している、磨いているのは確かなんですけど、ただそれが試合で出るかは、試合でしか分からない。正直、まだ分からないです」
──その間は練習を変えたりしたのでしょうか。それとも伸びているのは積み重ねですか。
「今、メンタルトレーナーをつけているのですが、そのトレーニングの影響もあって、コンビネーションだったり、ディフェンスとかが、前は攻撃主体の戦いでしたが、ディフェンス面の意識が上がりました」
──メンタルトレーニングは最近ですか。
「そうです。今年に入ってからです。中村倫也選手の紹介です。精神科的な類のメンタルケアではなく、“考え方”を教えてくれる感じです。本能的な部分とは違った姿勢というか、脳を鍛えてくれる内容です。いわゆるメンタルを強く鍛えるとは違くて、知らない考え方を養ってくれる。(自分は)これはこうだ、と頑固に考える気質があるので、メンタルトレーナーのセッションで気づかせてくれます。普段の悩みなどもアドバイス頂いたりするので、ストレスが無くなりました」
──セッションを受ける頻度は?
「2週間に1回の頻度、Zoomなどでやります。そこでイメージトレーニングや、相手との戦いをイメージしたものや、試合でここが怖いとか的確にイメージして、ただ闇雲に練習するのではなく、考えながら練習するようになりました」
──なるほど。その上で昨年11月の前戦を振り返っていただくと……。
「まず、計量の時点で一気に崩れたというか。ただ今までやってきたことは間違いないし、ただ結果が負けというだけで、全部を反省する訳ではない。でも負けるべくして負けた。そこから得たものが大きいので、次の試合で証明したいです。敗因はなんでしょうか、ちょっとの気の緩みじゃないですが、あれが運命だと思います。やるべきことはやったと思います」
──若松選手が計量ミス(&ハイドレーションテストチェック)とは、意外でしたが……。
「そうですね…難しいですよね。今まで尿比重が引っかかることはなかったので、それが急に数値を超えたので、自分はそれまでずっと常に準備していたので、正直ここに関してはどうしょうもないというか。本当に『えっ!』というか、交通事故にあったような感じでした。その時の衝撃は、“こんだけやってきて、前回も全然問題なかったのに”と、その時は思いました。でも、それならばさらに頑張れば良いだけです」
──今回の試合はその過去をぶつける気持ちもありますか。
「それは正直ないです。“過去には囚われない”と決めているので。別に次もわからないじゃないですか、相手も勝ちたいし、とりあえず、全力を出すだけ。過去は、後ろは見ないようにしています」
──去年、タイトル挑戦も敗れ、そして再起戦でも敗戦。しかし、意味のある年にするために、2023年はどのようなイメージをしていますか。
「去年、色々とすごい辛い思いもしたし、正直、“これはもうキツい”と思うことが沢山あリましたが、人として成長できたり、人として丸くなったり、人間として色々と考えて、結果として、俺は俺だしと。自分が目標とする人がいても、それでも自分は自分。シンプルに行きたいと思っています。勝つだけ。昔に戻ってじゃないですが、がむしゃらに。人がどう受け止めるかわからないですが、がむしゃらに戦いだけのことを考えていきたいです。まぁ、今までもやってきたんですが、変わらず全力でやっていきたいです。それだけです。そこで勝っても負けても。全力を出せれば、それでいいやと」
──まさに初心に帰るといった胸中でしょうか。
「一周回ってきたなという感じはします。悩んできたのではなく、自分自身と向き合ってきたというか、自分と向き合うことに逃げないで、ずっと戦ってきたというのはあります。どうせ、誰でもいつか死ぬ運命だし、だから考えても仕方がない。なるようにしかならないと思うようになりました」
──コロナのフェーズが変わるなか、ONEと国内大手のプロモーションでの選手の行き来も出てくる中、若松選手はどうでしょうか。
「ONEのベルトが欲しいというのは、そこはブレずに自分のストーリーを作っていきたいです。自分には自分しかできないことがあると思います。僕はONEを信じている。ONEでチャンピオンになる、ONEで自分を磨くと決めたので。チャンピオンになってあとはまだわからないですが」
──ONEが初の米国大会を開催し大盛況でした。ロッタンやスタンプなどアジア選手の注目がありましたが、どう感じましたか。
「夢があると感じます。自分もチャンピオンになって、そういう存在になりたいです」
──武尊選手のONE参戦をどう思いますか。
「まずは見てくれる人が増えるのはプラスだと思います。やはり刺激になります。(日本代表として)一緒に戦ってみたいです」
──プライベートも充実しているようですね。
「家庭はめちゃめちゃ幸せです。子供もかわいいし、家帰ったら最高な気分です。変わらず、ご飯を作ったり家族サービスもしています。3歳の子供がいますが、自分が自分用に塩おにぎりを作ったら、それを全部取るんですよ。自分が食べているのを見て美味しそうと感じるのか。成長としてはいいんですが、食べられちゃうんです(笑)。将来、格闘技にむいていたら、レスリングとかやらせてみたいです」
──最後に日本のファンにメッセージを。「皆さんに勝つとことを見せたいだけです。楽しみにしてください!」