試合直後、快挙達成を振り返った吉成名高
2023年7月9日(日)東京・Spotify O-EASTで開催された『Shimizu presents BOM 42』にて、ラジャダムナンスタジアム認定フライ級(50.80kg)タイトルマッチ3分5Rに挑んだ名高・エイワスポーツジム(=吉成名高/エイワスポーツジム)は、王者ウェウワー・ウォークリンパトゥム(タイ)を判定に破り(49-46、49-48、50-47)王座を奪取した。
名高は2018年12月にラジャダムナンスタジアム認定ミニフライ級王座(47.63kg)を獲得しており、これで2階級制覇を達成。1941年に開設されたムエタイの2大殿堂のひとつラジャダムナンスタジアムで、タイ人以外の外国人選手が2階級制覇を達成したのは史上初の快挙となる。
試合後、名高に喜びの声を聞いた。
――おめでとうございます。脚が腫れていますが、痛みはどうですか?
「スネの上の部分はカットで痛めて、下の部分は自分が蹴った時にカットされて痛めたんですけれど、上手かったですね」
「正直、試合前は上手い選手っていうのは分かっていたんですが、もっと入れるかと思っていて。攻撃もどんどん仕掛けてパンチも当てて上下に散らして…というのがもっと出来ると思っていたんですが、それをさせてもらえなかったですね。なので単発のスピード、一発の攻撃のスピードで何とか競り勝ったとは思っているんですけれど、避け方や崩しのタイミングは負けていたなと正直自分の中では思っています」
――見た感じでは名高選手の方が攻撃を当てている、向こうの攻めを上回っていたように見えました。
「多分、対峙してみないと分からないものがあるんだろうなとはずっと思っていて、本当にそうでした。攻めづらいというか。いつもならもっと技がつながるんですけれど、当たるし。蹴りの空振りが多かったのと、僕も何回か崩されたので。その崩しがあって、これは前のめりになるとすくわれて転んでしまうとかいろいろ考えてしまって、思うようには攻められなかったですね。ちょっとモヤモヤがありました。要所要所で僕の攻撃は当たっていたんですが、相手にカットされていて。今回は正直、日本での試合だったから僕有利に働いたけれど、タイでの試合で賭け率もある中でやったらちょっと、うーん…今の内容で勝てるかと言ったらちょっと自信がないです」
「やはり攻撃のスピードです。スピードは僕も自信があるので、そこだけは試合前から僕の方が長けていることは分かっていたので、それを活かしてやろうと思っていて。そこは活きたかなと思います。あとは僕も反応が出来ていたのでそこは良かったと思います。ただ、上手く攻めさせてもらえなかったという印象です」
「そうですね。4Rに1回綺麗にコカしてそれが良かったのと、あとは相手の攻撃がちょっとずつ当たらなくなったというか。2R目はミドルをもらったり、足を崩されたりとかしたんですけれど。あと、最後が自分の攻撃に終われたのは良かったポイントですね。キャッチされて蹴られた後も返したりとか。絶対に自分の攻撃で(攻防を)終えるってことは試合前から決めていました。そうすると印象が違うんです。…でも、楽しかったですね」
「はい。僕が行ったら絶対に攻撃を出してくるので、それをどう避けてどう当てようとか、そういうのを考えるのが凄く楽しいんです。でも、戦前に自分が面白い試合にはならないかもしれないって言った通りの展開になっているなって試合中に思いましたね(笑)。やっぱり、見ている人はアグレッシブな展開を見たいと思うので。そこは反省ですね。でも本当に、あのレベルには難しいなと思います」
「ストレートはいいのが当たって良かったなと思いましたし、三日月蹴りも嫌がっていましたけれど、そこまでダウンするようなダメージは与えられなかったですね。ちょうど1週間前くらいにRISEで田丸辰選手がペッシラーという凄く上手い、僕の相手と似たようなタイプの上手い選手とやって三日月蹴りで倒したのを見ていたので、タイ人選手には三日月が当たるなと思っていたんですけれど、僕はちょっと精度が足りなかったですね(笑)」
「それは本当に嬉しいです」
――次はさらなる前人未到の3階級制覇を目指すと宣言していました。
「そうですね。スーパーフライ級はクマンドーイが王者だったんですけれど、今は変わってペオパーウというサウスポーで。全然スタイルが違ってヒジの選手なんです。顔が凄く怖い顔をしていて。そことやるためにはまたラジャで試合をして勝たないといけないので楽しみです」
「そうですね。多分、タイになるんじゃないかなって気がしています。ミニフライ級とフライ級を日本で獲ったので、タイで防衛するかスーパーフライ級を獲るかすれば誰も何も言えないと思うので挑戦したいです。でも、ムエタイは本当に楽しいです! 今日の試合は楽しかったですね。上手くてモヤモヤすることもありましたけれど、蹴りが当たらないとかあったんですけれど、本当に楽しかったです!」
――ムエタイの攻防は難しいので、名高選手がYouTubeで解説すればその凄さが分かると思いますよ。
「ああ、そうですね(笑)。そうすればまだ、なんでコイツ行かないんだよって思われないかもしれないです。いろいろとトラップをかけられている感じがするんですよ。フェイントをかけたらミドルを蹴ろうとしていたので。お互いミドルをスカして攻撃を返したいというのがちょっと似ていたのかなと思いました」
――研究されていたというよりも、相手が持っているテクニックでやりづらかったということですか?
「そうですね。どの試合を見てもあの展開になるんですよ、絶対に。ちょっと攻めてきたのかなと思ったら急に攻めてこなくなったりとか。前に来たから、セコンドも来たからやりやすいと言っていて、僕もその方がやりやすいので来てくれたから合わせようと思ったら、急にプレッシャーをかけている状態で何もしなくなったりとか。それで僕の出方を待ったりしていたのが凄く嫌でした」
「いや~、でも見ていた人は絶対に面白くなかっただろうな…」
――面白かったですよ。緊張感がありましたし、場内も沸いていました。
「会場で見ていた方にはちょっとは分かったと思うんですけれど、画面で見ている人はどうかな…と心配です(笑)。ありがとうございました。これからも頑張ります」