RIZINに“挑戦”している梅野源治
2023年6月24日(土)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ『RIZIN.43』にて、鈴木千裕の兄・鈴木宙樹(クロスポイント吉祥寺)とRIZINキックボクシングルール(62.5kg契約)3分3Rのヒジ打ちありルール(首相撲などのつかみからの攻撃は無制限)で対戦する梅野源治(PHOENIX)。
日本人として6人目のラジャダムナンスタジアム王者となり、日本人初のWBCムエタイ世界王者になるなど日本ムエタイ界で確固たる地位を築いた梅野だが、RIZINに参戦して大きく“キャラ変”。以前の梅野を知るファンからすれば“どうしたのだろう”と思うところだが、そこには競技を愛する梅野の信念があった。
目立っていけば興味を持つ層が増えていく
――今回梅野選手にお聞きしたいのは、キックボクサーのMMA転向が続いているじゃないですか。この現象についてどう思われていますか?
「2つのパターンがあると思いますね。まずMMAだったら自分はどんなものなのか、どれくらい行けるのか知りたいという夢への挑戦のパターン。もうひとつはやってきた競技での自分の限界を知っているからMMAに行って注目度を上げるしかない追い込まれた挑戦のパターン。大体この2パターンが多いと思います。挑戦なのか、限界を知って賞味期限を伸ばしているのか」
――ある程度上に行くと、目指すものがなくなってくることもあるのかと思います。上位概念というか。
「MMAの方が単純に分かりやすいとは思います。MMAは国内にも大きい舞台があるし、国内を抜けても海外に凄く大きな舞台がある。分かりやすい目標がありますね。一方、立ち技は凄く分かりやすい舞台があるかって言われたらどうしても少ない。そうなるとMMAに挑戦する方がいいじゃん、となるのは自然な流れだと思います」
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――そこで、梅野選手は立ち技のそういう舞台を作りたいからRIZINでやっているわけではないのですか?
「僕はムエタイの知名度を上げて目指す選手たちの裾野を広げていって、今ムエタイのトップを目指している選手たちのより自己肯定感を上げたいという言い方はおかしいかもしれませんが、やっていることは凄いことなんだよって思ってもらえるようにしたいので、その土台作りをしたいですね。いま僕がいくらムエタイ、ムエタイと言ったところで立ち技にすら興味がない人たちに、たくさんある立ち技の中のひとつであるムエタイにフォーカスしてくれというのは難しい。
それは昔から分かっているので2019年のRISEのWORLD SERIESに挑戦しましたし、今はRIZINに挑戦していく中で基本的に僕が目立てば、ムエタイ、ムエタイって言っているうるさいヤツが何かやっているなって興味を示すわけじゃないですか。そうやってどんな形であれ、目立っていけば興味を持つ層が増えていく。例えばRIZINで10試合組まれる中で僕が1試合組まれれば、その中に立ち技が10%は入っているわけです。これで僕がいなければまたジモキックとか言われてアンダーカードで組まれてMMAファンから文句を言われてしまう。多分、いまRIZINで僕の試合が1試合組まれて文句を言うファンは少ないと思います。
そういうふうにやって、僕が目立っておけば結果、立ち技に何となく興味を持って来る人が付いてくると思うんですよね。もう1試合くらい立ち技があってもいいかなってなって、その選手が面白い試合をすれば『おっ、こいつはいいな』となってまた使われる。そういうのをどんどん増やしていければいいのかなって思っています」
「まだそこまで考えられないです。そこまで先のことは。難しいか難しくないかで言ったら難しいと思いますね。じゃあ、誰かヒジありで強い選手がいるの? 誰が分かりやすい試合をするの? 誰が試合前から興味を持たれているの? と言ったらぶっちゃけ一人もいないじゃないですか。そんな中でいきなりRIZINに連れてきてヒジありの試合をさせました、とやっても沸かないと思います。だから今は一個一個、MMAが母体のRIZINという場所でまず立ち技の試合を増やしていきたいなと。もちろんMMAの団体なのでそこはちゃんとリスペクトしつつ、興味を持ってもらえる層を少しずつ増やしていければいいかなと思っています」