2023年6月10日(日本時間11日8時から)にカナダ・バンクーバーで開催される『UFC289』(U-NEXT配信)メインイベントのUFC世界女子バンタム級選手権試合で、同級王者のアマンダ・ヌネス(ブラジル)に挑戦する、同級5位のアイリーン・アルダナ(メキシコ)が7日、本誌のインタビューに応じた。
初防衛戦に臨むヌネスは、UFCで女子バンタム級&フェザー級の二階級を制した最強女王。2022年7月にジュリアナ・ペーニャとのダイレクトリマッチに判定勝利しバンタム級のベルトを奪還している。その後、ペーニャの怪我で3度目対決が流れるなか、ここ5試合で4勝1敗・2連勝中のアルダナに白羽の矢が立った。
挑戦者アルダナは、14勝(8KO・3一本)というフィニッシャー。ヤナ・クニツカヤ、メイシー・チアソンを相手に連続KO勝利中のストライカーだが、盟友アレクサ・グロッソとの練習のなかでレスリング・柔術にも磨きをかけている。
9日(日本時間10日)には前日計量をヌネスが135ポンド(61.24kg)、アルダナが135ポンド(61.24kg)でパス。
UFC世界フライ級王者ブランドン・モレノ、フェザー級暫定王者ヤイール・ロドリゲス、女子フライ級王者アレクサ・グラッソに続く、4本目のベルトをメキシコにもたらすべく、アルダナは「メキシカン・ハート(メキシコ魂)を見てほしい」と語った。
アレクサ・グロッソと練習で語ったこと
(C)irene.aldana
──今回のアマンダ・ヌネス選手との試合に向けて、トレーニングはいつものロボジムのみで行ってきたのでしょうか。
「はい、いつも。いまでもロボジムでトレーニングしているんです。ロボジムは自分にとってホームジムで例外はありませんでした。全てのトレーニングはロボジム(Guadalajara)でやりました」
──あなたは格闘技経験が無く、趣味でジムに通っていて、アレクサの父であるフランシスコ・グラッソのクラスに参加したのですよね。2012年にプロデビューしたときロボジムは当時何名くらいのプロMMAファイターがいたのですか。
「2、3人です。私とアレクサ、そしてもう一人のチームメイトがいました。ロボジムでMMAを最初に始めたファイターが私たちでした。小さいジムでしたから」
──アレクサと柔術大会に出場してともに1位になって、アレクサは「その感覚が本当に素晴らしくて、もう一度表彰台に上がってその感触を味わいたいって思って」本格的にMMAを始めたと言っていました。アルダナ選手も柔術がきっかけだったのでしょうか。
「たしかに柔術大会からスタートしましたが、いずれにしろ遅かれ早かれ、MMAに挑戦するというゴールがありました。あの柔術大会はたまたま開催されていて、アレクサとともに挑戦することにして、そのあとグアダラハラでも出場して、そしてMMAビューをしました」
──ということは、ほぼアマチュアMMAの試合をせずにプロになった?
「はい。アマチュアでは試合をしていなくて、たしかプロデビュー戦まで1年くらいしかトレーニングしていませんでした」
(C)irene.aldana
──たった2人の女子ファイターから始まった、ロボジムのMMAが、いまでは何人のプロフェッショナルファイターがいるのでしょうか。
「だいたい10人くらいです。そのうちUFCファイターは5人。もちろんたくさんのアマチュアMMAファイターもいます」
──半分がUFCファイターとは……。メキシコでのMMAの発展にあなた方の活躍の影響も大きいですね。UFCパフォーマンス・インスティテュート(PI)が2023年中にメキシコに出来るとも聞きました。
「UFCがメキシコにUFCパフォーマンス・インスティテュートを作ることについては、メキシコにとって大きなことです。メキシコには、数多のタレントがいて、特にボクシングなどの多くのスポーツが一般的にプレーされています。その中でこのような動きがあり、MMAでも若い才能を開花させられるサポートが受けられることはとても素晴らしいことです」
──その才能を開花させたアレクサが“絶対王者”ヴァレンティーナ・シェフチェンコを最後にリアネイキッドチョークを極めた瞬間は、あなたにとっても刺激になりましたか。
「もちろん。彼女がチョークを練習しているのをたくさん見てきました。彼女自身がその技にうんざりし始めるくらいに練習しています。だから私は彼女に言ったんです。『このチョークで勝った際には、この(トレーニングした)日々を思い出すよ』って。そしてそれが現実になりました。私たちはとても仲が良く、サポートしあっています。私も練習でやってきたことを現実のものにしたいと思います」
[nextpage]
これまでのテイクダウンの攻防とは異なるものになる
──アルダナ選手はストライカーとして見られることが多いですが、寝技も見逃せません。2022年9月の前戦でメイシー・チアソンを破った下からのレバーへの蹴り上げ、ヒールキックにも驚かされましたが、チアソンのダブルレッグに、カウンターの腕十字を仕掛けた動きは狙っていたように見えました。あなたはチアソンの組みに右手でオーバーフックしてまたいで……。
「ああ! あれはたくさん積み重ねてきた動きです。あの試合のためだけではなく。確かにもう少しで十字固めで仕留められたと思いますが、対戦相手が少しタップしたので、放してしまったんです。それは間違いでしたが。でも本当にもう少しで、あの技でフィニッシュできるところでした」
──しかし、アルダナ選手は柔術が出来るがゆえに、下を選択することもあります。ヌネス選手のジュリアナ・ペーニャとの再戦でのテイクダウンゲームを見る限り、いまのヌネス選手を相手にボトムになることはかなりリスキーに感じますが、その点についてはどう考えていますか。
「アマンダとはどのように戦っても危険です。でも、どのような試合運びになってもどのポジションになっても戦えるように準備してきました。
テイクダウンとそのディフェンスについては、素晴らしいコーチやチームメイトがいて、レスリング、柔術のコーチたちにたくさん助けてもらっています。テイクダウンディフェンスの質を高めなくてはいけませんでしたし、私自身はテイクダウンディフェンスのパーセンテージがあまり高くありませんでしたが、この試合に関しては例外になると思います。私は彼女のテイクダウンを止めることができると思いますし、もしできなくても何をすべきかは分かっています。たとえバックを取られても、グラウンドに行っても。また、上を取る・取られる可能性もありますが、どのようなポジショニングになっても、対応できるように準備しています」
──なるほど。ヌネス選手に勝った数少ない選手は、自ら打撃でプレッシャーをかけることに成功しています。
「そこも全方位で準備しています。特にストライキングに関しては、特に改善しようとしてきましたし、ボクシングはよりテクニカルになっていると思います。アマンダに対して打撃を当てることができると思っています。 クラシックなメキシコのボクシングをMMAに融合させた打撃を見せたいと思います。そして、メキシカン・ハート(メキシコ魂)というのが自分が(この世界にもたらせたもの)=持ち味なのでそれを見てほしいです」
──おおっ、それは楽しみです。ところで、あなたは大学でグラフィックデザインで学位を持ち、プロの写真家でもありました。ヌネスの動きを写真で撮るとしたら、特徴はつかめていますか?
「“ライオネス(ヌネスの愛称)”のように撮るでしょうね。そして私は、メキシカン・ジャガーとして、彼女の隣で。UFCのカードにとてもいいと思いますよ。私たちはそういったものがなかったので、作ってみます(笑)」
──さて、いよいよ試合です。23歳という決して早くない年齢から格闘技を始めたあなたにとって、このチャンピオンシップはどいういう意味を持ちますか。
「自分にとって素晴らしい業績だと思っています。メキシコ人にベルトを渡せる存在になれることにエキサイトしていますし、メキシコ人としての誇りを持っています。
メキシコに4本目のベルト(フライ級王者ブランドン・モレノ、フェザー級暫定王者ヤイール・ロドリゲス、女子フライ級王者アレクサ・グラッソ)をもたらせること、メキシコ人であることを誇りに思います。私はただ、この喜びを分かち合いたいです。私のキャリアを通じてずっと応援してくれるみんな、それはメキシコ人だけでなくて、全世界の人々に対してそう思っています」
──最後に日本のU-NEXTやUFCでの配信で試合を見るファンにメッセージを。
「たくさんのMMAを見る中で、私はアジアンファイターの戦いも見ています。特に日本人選手のハードに戦う姿に尊敬の念を抱いています。今回、日本でも配信される私の試合にもぜひ、注目してみてください!」
──ファイトウィーク中のインタビュー、ありがとうございました。Les deseo buena suerte!
「グラシアス!」
[nextpage]
UFC 289: Nunes vs. Aldana
現地時間2023年6月10日(土)、日本時間11日(日)カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー /ロジャーズ・アリーナ
▼UFC女子世界バンタム級選手権試合 5分5Rアマンダ・ヌネス(ブラジル)22勝5敗(UFC15勝2敗)アイリーン・アルダナ(メキシコ)14勝6敗(UFC7勝4敗)
▼ライト級 5分3Rシャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)33勝9敗(UFC21勝9敗) ※UFCフィニッシュ数19(歴代1位)ベニール・ダリウシュ(米国)22勝4敗(UFC16勝4敗)※UFC8連勝中
▼ウェルター級 5分3Rマイク・マロット(カナダ)9勝1敗(UFC2勝0敗)アダム・フューギット(米国)9勝3敗(UFC1勝1敗)
▼フェザー級 5分3Rダン・イゲ(米国)16勝6敗(UFC8勝5敗)ネイト・ランドワー(米国)17勝4敗(UFC4勝2敗)
▼ミドル級 5分3Rマルク・アンドレ・バリオー(カナダ)15勝6敗(UFC4勝5敗)エリク・アンダース(米国)15勝7敗(UFC7勝7敗)
【プレリミナリー】
▼ミドル級 5分3Rナッソーディン・イマボフ(フランス)12勝4敗(UFC4勝2敗)クリス・カーティス(米国)30勝10敗(UFC4勝2敗)
▼女子フライ級 5分3Rミランダ・マーベリック(米国)11勝4敗(UFC4勝2敗)ジャスミン・ジャスタビシアス(カナダ)8勝2敗(UFC2勝1敗)
▼バンタム級 5分3Rアイマン・ザハビ(カナダ)9勝2敗(UFC3勝2敗)アオリ・チロン(中国)24勝9敗(UFC2勝2敗)
▼フェザー級 5分3Rカイル・ネルソン(カナダ)13勝5敗(UFC1勝4敗)ブレイク・ビルダー(米国)8勝0敗(UFC1勝0敗)
▼フライ級 5分3Rダビッド・ドボジャーク(チェコ)20勝5敗(UFC3勝2敗)スティーブ・エルセグ(豪州)9勝1敗(UFC0勝0敗)
▼女子ストロー級マッチ 5分×3Rディアナ・ベルビタ(ルーマニア)14勝7敗(UFC1勝3敗)マリア・オリベイラ(ブラジル)13勝6敗(UFC1勝2敗)