MMA
インタビュー

【RIZIN】川尻達也「見ている人に随分悲しい思いをさせた。このラストチャンスで結果を出して、みんなの笑顔が見たい」

2019/07/24 19:07
2019年7月28日(日)さいたまスーパーアリーナで開催される「RIZIN.17」で、ロシアのアリ・アブドゥルカリコフと71kg契約で対戦する川尻達也(T-BLOOD)が24日、都内JB SPORTSジムにて公開練習を行った。 修斗、PRIDE、DREAMで活躍した川尻は2014年1月から2016年8月までUFCに参戦し3勝3敗で自ら契約を解除。2016年大晦日にRIZINに初参戦し、現在まで1勝3敗と黒星が先行している。前戦は2018年の大晦日に北岡悟に判定負けで、今回は7カ月ぶりの再起戦となる。 公開練習では、山田武士トレーナーが持つミットに、ワイドスタンスで左で胸を押し込んでからの右ストレート、右のオーバーハンドフック、左右の蹴りの動きから歩くようにパンチ、バックステップする相手との間合いを詰めて連打など「いつもやっているミット打ち」を披露。アブドゥルカリコフが得意とする回転技も見せる山田トレーナーのミットををかいくぐり、パンチを打ち込んでいった。 修斗で2004年に世界ウェルター級(-70kg)王座を獲得後、2005年のPRIDE 武士道では27歳でライト級(-73kg)トーナメント1回戦で五味隆典にリアネイキドチョークで一本負け。DREAMでは30歳で2008年ライト級(-70kg)GP準決勝でエディ・アルバレスに1R TKO負けという各年代での「ライト級」の戦績を持つ川尻は、練習後の囲み取材で、「40代の最後の挑戦としてRIZINライトGPに出たいという気持ちは誰よりも強い。今まで散々取りこぼしてきたし、いい所で負けてきたので、そんな弱い自分を変えたい。1日2回(試合をする)というのがプロになって経験した事がないから、チャレンジしたい」と、10月12日にエディオンアリーナ大阪にて開幕が予定されている「RIZINライト級GP」出場を目指すことをあらためて宣言した。 今回対戦するアリはウーシュー散打の世界的名手。2013年9月にロシア『REAL STEEL 2013』でプロデビューを果たすと、プロ2戦目となる15年4月の『M-1 Challenge』では、後にUFCファイターとなるスペインのヨエル・アルバレスを相手に1R34秒スピニング・ヒール・キック(上段後ろ廻し蹴り)でKO勝利。その後もロシアを中心にカザフスタンなどのMMAプロモーションに参戦し、現在、プロ戦績は7戦7勝(3KO)と連勝街道を走り続けている。川尻の身長171cmに対し、176cmと5cm上回る。 遠い間合いから飛び込むパンチ、蹴りは左右どちらでも構え、右で小手に巻いての投げ、四つから大内刈などのテイクダウンも積極的に奪いに行くアリ。グラウンドでもパウンド、ヒジを打ち込んでいくパウンダーでキープ力もあり手ごわい相手となりそうだ。 そんなアリとの試合に向け、川尻は「回転系の蹴りが怖いので注意かなと。ただ、ビックリ技で、どんなに気をつけていても貰っちゃう時はあるので、ディフェンスをするより、それを出させない距離で戦いたい」と語った。 川尻「扇久保が『あの頃(バンタム級挑戦)、川尻さんヤバかったですよね』と言っていて、確かにそうだったなと。ただ、馬鹿な事をしたとは思っているけど、後悔はしていない」 ──コンディションはいかがですか? 「コンディションはすごく良いです。今までは試合前に悪くても、常にポジティブに「良いよ」って言ってきたけど、今回は正真正銘に、5年ぶりくらいに良いです」 ──特に不安はない? 「いや、不安はあります。不安とは常に隣り合わせだから。消し去ることは出来ないけど、不安を隣に置いておいて、自分自身を高める事に集中してきました」 ──試合間隔が空いた事については? 「大晦日から7カ月くらいなので、ちょうどいいですね。本当は6月に出たかったんですけど色々あって出られなかったんで。1、2月は体づくりで、3月から新しいスケジュールで5カ月間、がっちりプロ練で仕上げてきたので。6月でも行けたし、ここで勝って10月(ライト級GP)も今のコンディションならいける。40代なりの仕上げ方でバッチリ仕上げたいなと」 ──今年に入ってからトレーニングを変えて具体的な変化は? 「ケツですかね? やっぱり下半身、ケツとハム(腿の裏側)を中心に、僕に足りないところと格闘技に必要なところがケツとハムなんで、デカくなってないですか? スクワットをしっかりやってきました。下半身と胸も。2012年にヘルニアを右手やってから、ベンチプレスでも100kgで10回出来なかったんですけど、それもしっかり教えてもらいながらやったら120kgが5回とか上がるようになったので。だいぶ戻りました。ヘルニアでもとに戻ると思ってなかったんですけど、ちゃんとトレーナーについてもらって、正しいトレーニングと栄養と休息をとったら、どんどん伸びているのでちょっと驚きですよね。あぁ、胸もこんなにパワー出るんだなって感じで」 ──食事面はどうですか? 「よりクリーンな感じで。フェザー級の時は過食症気味で、常に1年中75、6kgに抑えてたので。『解放日』という言い訳で毎週日曜日に爆食いして、毎週朝から食いまくって夜になったら7kgくらい増えたりしていたので。今回は1回も解放日は無くなって減量もスムーズで胃腸の荒れも重さも無いですし、過食症が無くなりました。食べる量もすごい減りました。フェザー級の時は三人前くらい食べないと腹一杯にならなかったんですけど、今は定食一人前を食えば満足します。おじさんになったからなのか、歳のせいなのか分からないんですけど(笑)」 ──メンタル面もクリーンになった? 「そうですね。やっぱりメンタルは体が整ってからこそだなとすごく感じました。大晦日はコンディション悪くてメンタルも中々整わなかったんですけど、まずは心技体の体を整えて、体が整うと技がそろってきて技術が使えるようになって、そうするとメンタルも晴れてポジティブに考えられるようになって。体が悪いとメンタルもポジティブになれないので、身体が第一だなと思ってます。本当に今年に入ってコンディション第一にやってきましたね」 ──PRIDE、DREAMに続いてRIZINのライト級GPが最終目標と聞きましたが、特別な思いが? 「いやー、そうですね。20代でPRIDEライト級GPに出て、1回戦で五味隆典にブッとばされて、30代でDREAMライト級GPに出て、準決勝でエディアルバレスにブッとばされて。40代の最後の挑戦としてRIZINライトGPに出たいという気持ちは誰よりも強いと思う。今まで散々取りこぼしてきたし、いい所で負けてきたんで、そんな弱い自分を変えたいと思うし、一歩踏み外したら崖だけど、そこを乗り越えたいなって思って、ハイ、必死にやってきました。僕、トーナメントで1日2回(試合をする)というのがプロになって経験した事がないんですよ。最初の試合で負けちゃってるんで。バンタム級挑戦もそうだけど、なんでも自分で経験しないと気が済まない性格なんで、1日2回というのをぜひチャレンジしたいなと思います」 ──対戦相手のアリについての印象は? 「いやー、恐ろしいですね。7戦無敗で、MMA以外でも散打の世界王者だったりズバ抜けているんで。試合を見る限りだと打撃も寝技も高いレベル。メジャー団体に上がっている選手で穴がある選手はいないので、そのへん誰とやっても一緒というのはあるんですけど、未知の強豪、未知の怖さがありますね。普通にベストの川尻達也を出せればいけるという自信はいま作れているので、それをいかに、自分を100%信じられるかだと思う。 岡見(勇信)君がMMAPLANETのインタビューで負けが続いて自分を信じられなくなったと言っていて、俺もそれと一緒で。北岡戦、その前のバンタムでの試合も負けてるし、自分を信じ辛い状況で戦ってきて、結果も出ないなかで、今年に入って練習スケジュールもメニューも、ウェイトも一からトレーナーに教えてもらって身体作りから始めて、コンディショニングもスケジュールもガラッと変えて、身体が順応してきて動けているので、99%の川尻達也を用意してリング上がるんで、残り1%はお客さんの力で僕を震い立たせて欲しいなって思ってます」 ──今日の公開練習は、綺麗なボクシングというより、プッシュしたり追い足で連打したり、蹴り足から歩いて打ったりと色々やっていましたが、あれはいつもと同じミットですか? 「そうです。全くいつもと変りなく。まぁタイムはちょっと短かったんですけど、やってること自体は全くいつもと一緒です。アリ対策というよりも、まだ25歳で伸び盛りで前回の試合データもどこまで信用できるか、若い子はすぐ成長するので。相手どうこうよりも自分を高める事と、足りない事を山田さんとコミュニケーションをとって、T-BLOODでやるスパーも送って全部見てもらって、自分がどういう状況で動けているか、それに対する答え合わせをミットでやってもらっていますね。いつも通り、包み隠さず全部出しました。アリに見られたら……それはしょうがない(笑)。でもミットと同じ動きは僕はしないので。ミットはあくまで課題なんで、100やってきたミットが(試合で)1を出せればいいと思っているので」 ──山田トレーナーはアリの回転系の技も少し出していました。 「そうですね。やっぱり右フック、右のバックハンドブローと、ヒールキックって言うんですか、回転系の蹴り、あれが怖いのでそのへんが注意かなと思います。ただ、ビックリ技なんで、どんなに気をつけていても貰っちゃう時は貰っちゃうので、それをディフェンスをするというより、それを出させない距離で戦いたいなと」 ──トレーニングを変えたというのはどんな部分を? 「全部、自己流で20年間やってきたんですけど、ネットで調べたり仲間に聞いたりして。そうじゃなくて格闘技をやってきて自分も柔道整復師の資格も持っていて、パワーリフティングやってる人に、体の治療もしてもらっているヴィスポ整体院の伊藤(秀樹)先生にマンツーマンでスクワットから何から教えてもらっています。 自分一人でやっていると、物差しが重さになってしまうんです。重い物を挙げるために、体調が悪い時でも重さに拘ってフォームを崩したりとか。たとえばスクワットだったらしゃがみが浅くなったり、自分が得たい効果を得られなかったり、怪我のリスクもすごい高かったんですけど、フォームを1からチェックしてもらって、コンディションが悪い時は違うメニューにしてもらったり、休んだりストップしてもらえるので。 練習メニューも前は週6でガッツリやって、体調崩したら1、2日休んで見たいな感じだったんですけど。疲労が溜まるようになってから、1、2日休んでも、この歳になると疲れが抜け切らない。もう思い切って3週間練習したら1週間休んだり、ガラッと練習スケジュールも変えて、凄い手応えがあります。コンディションも、前は疲れていても無理やり頑張ることが正しいし、強くなる近道だと思ってたけど、今は疲れたら休むし。 だから嫁がビックリしてました。俺がSNSで『調子良い』と言っているのを見て、『本当なの? 自分に暗示をかけて、そう思い込んでるんじゃないの?』って言うから、『なんで? 本当に調子いいよ』って言ったら『だって、全然練習してないじゃん』って。今までは狂ったように練習してたから。スケジュールが今日はこれ、今日はこれと決められていて、どんなに体調悪くても疲れていても、意地でもそれをこなしていて。毎日這いつくばりながらやってて、家で体調崩して寝込んだときもあったけど、今は常に元気なので。3週間やったら1週間は家で休んで家にいて、身体を休めていたので。『本当に調子いいの?』と嫁が疑心暗鬼になっていました(笑)」 ──それを証明したいですね 「そうですね。それを証明してライト級GPに出たいと思います。20代でPRIDE、30代でDREAM、40代でRIZINなんで。50代は流石に無理だと思うので、GPに出たいですね。(PRIDE、DREAM、RIZINと3つの団体のGPに出場するファイターは)他にいるのかな? いないですよね、多分」 ──ライト級に戻ってきましたが、71kgの体重についてはどうですか? 「いやー、調子いいっスね。何を馬鹿なことやってたんだろうって(苦笑)。日曜日に鶴屋(浩)さんのジム(パラエストラ松戸)で扇久保(博正)とも会って話したんですけど、バンタム級に挑戦した時も、いつも扇久保に練習してもらってて『あの頃、川尻さんヤバかったですよね、病んでましたよね』と言っていて、確かにそうだったなと。(バンタム級挑戦は)馬鹿な事をしたとは思っているけど、後悔はしていないんで。あの経験があったから人としてもファイターとしてもいろいろ考え方も変わったし、成長できたと思っているので、それも含めてこのラストチャンスで結果出して、みんなの笑顔が見たいなと思ってますね、ファンの。見ている人に随分悲しい思いをさせちゃったので」 【写真】素手の鉄槌でスイカ割りに挑戦した川尻。「割れなかったらどうしよう」と言いながらも見事、真っ二つに。「できたどー! これでアリの頭を砕きます!」。
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