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インタビュー

【RIZIN】山本アーセン、2年9カ月ぶり復帰戦で「正直、フライ級で自分は怪物になれる」「勝ちを狙わず、殺しにいく」=5月6日(土)有明

2023/04/18 11:04
 2023年5月6日(土)、東京・有明アリーナで開催される『RIZIN.42』でフライ級の57kgで、伊藤裕樹(ネックス)と対戦する、山本アーセン(KRAZY BEE/SPIKE22)が4月17日、所属ジムで公開練習を行なった。 【写真】オーソからスーパーマンパンチを見せたアーセン(C)RIZIN FF  山本美憂の長男のアーセンは、レスリング時代に2013年世界カデット選手権グレコローマン69kg級で金メダルを獲得後、2015年大晦日のクロン・グレイシー戦でプロデビュー。以降、MMA3勝5敗で、今回、2020年の加藤ケンジ戦での1R KO負け以来、2年9カ月ぶりの試合に臨む。  復帰戦の相手はMMA13勝4敗の伊藤裕樹(ネックス)。2022年8月から開幕したDEEPフライ級GPで準決勝まで勝ち上がるも、本田良介に判定負けで決勝進出ならず。RIZINでは杉山廣平、中村優作、宮城友一をいずれもKOに下している3戦無敗のストライカーだ。  サウスポーの難敵・伊藤との試合を前にアーセンは公開練習で本来の右利きのオーソドックス構えを披露。かつて所英男をスイッチからダウンさせた武器の右ストレートをより活かす形にしていることを明かし、『K-1 AWARDS 2022』ベストトレーナー賞受賞の秋元僚平氏との打撃練習、現UFCファイターで幼馴染の中村倫也との練習、そして今大会を欠場ながらメインコーチとして見守る母・美憂を含むKRAZY BEE勢とのプロ練習が生きているとした。  公開練習の最後は、反り投げのスープレックスを5連発。パワフルな動きで締めたアーセンは、今回初のフライ級(57kg)戦に向けて、「57kgは小学生以来。1回、どんなものなのか近くまで落としてみて、力は全然出てました。正直、自分は怪物になれると思いました」と、自信の表情。  試合から遠ざかっていた時間も「身体で覚えるんじゃなくて脳みそで──“格闘IQ”を上げられた。いまはもう勝つための材料、気持ちを揃える材料、すべて答えを知っているから、それが試合でどう出るか、楽しみ」と目を輝かせた。  カード発表の会見後には、榊原信行CEOが「今回の試合がアーセンが覚醒するラストチャンスになる」と発言しているが、「そうなんですか、なら、そうだと思います。パカーンと(負けたら)もうチャンスはない。でも、俺はそれを考えてしまうと動きが悪くなるし、それを意識してしまうと、クソつまんない試合になりそうだから、悔いのないように自分の好きなように自由に戦う」と、状況や相手にとらわれずに戦うという。  今回の試合のテーマを「絶対勝つ。勝ちしか狙っていない。でも勝ちにいくと負けるかもしれないから、殺しにいきます」と、相手を仕留めに行くとし、勝負のポイントを、「根性じゃないですか。ほんとうに今回の相手は気持ちの強い選手で、どっちの気持ちが先に折れるのか、あるいはどっちの骨が折れるか、どっちの意識が断たれるかの勝負」と、完全決着になるというアーセンは、2年9カ月ぶりのリングでどんな姿を見せるか。  アーセンとの一問一答の全文は以下の通りだ。 [nextpage] ジムがあるおかげで格闘技から離れずに済んだし、格闘IQを上げられた ──現在のコンディションは? 「ばっちしです。ほかにどう言えばいいか分からないけど(笑)。不安? コンディションに不安は全然無いですね。やっぱ久しぶりの試合だから、ある程度イメトレはしていますけど、どうなるのかな、全部楽しもう、という感じです」 ──試合のテーマは? 「テーマ? 絶対勝つ。勝ちしか狙っていない。でも勝ちにいくと負けるかもしれないから、殺しにいきます」 ──久しぶりの試合で初めて見るファンもいます。どんな試合を観てもらいたいですか。 「『サーセン』って言わないように頑張ります(笑)。『アーセン』とやっと言えるような内容に、カッコよくしたいと思います」 ──練習内容は? 「もちろん全部やっています。いまの練習メニューを組んでいるメインコーチが母親(とセコンドのカイル・アグォン)なので、母ちゃんから“これやれ”と言われたらやるだけで」 ──ここまでの練習をやれるようになるまではどう調整してきましたか。 「うーん、2年間くらい、自分はちょっと腰を怪我していて動けてなかったんですけど、だから格闘技から一歩退いて、違う道があるのかなと最初のほうは考えた時期もありましたけど、でもやっぱりこのKRAZY BEEがあるおかげで格闘技から離れずに済んだし、このジムがあったからこそ、身体で覚えるんじゃなくて脳みそで──格闘IQを上げられたんで、これがどう試合に出るか、楽しみですね」 ──今回の試合に向けての練習は? 「去年の10月、11月くらいまでは身体を作り直す、感覚を戻す系の練習から始めて、今年に入ってから体力をぐっと上げる形でした。あと2週間は基礎体力とか失った筋肉とか取り戻して、最後の1週間は体重落としかなと」 ──現在の体重は? 「いままだ体重を落としていなくて、どっちかと言うとある程度、食べながらどれくらい落とせるかのデータを取りながら、まだコンディション整えながら、水抜きはしていないので、64kgとかですね。格闘技に復帰する前もそのくらいでしたが、練習に復帰してまた筋肉が戻ってきて体重がバッと上がって、そこから正しい生活をしてまた落として64kgという感じです。ここからあとギアを2つ、3つ上げるくらいですね」 ──前回の会見で伊藤選手から挑発的な……。 「『女のケツばかり追いかけてんじゃねーよ』って? いやー、そればっかりはごもっともすぎちゃって、腹も立たないし、頑張りますって感じでしたね」 ──榊原信行代表は、「覚醒してもらうラストチャンス」と発言していますが。 「そう言ってたんですか。なら、そうなんじゃないですか。パカーンと行っちゃったらもうチャンスないから。でも、俺はそれを考えてしまうと逆に動きが悪くなるし、それを意識してしまうと、クソつまんない試合になりそうだから、とりあえず自分は復帰戦だし、だいぶ空いたし、もう自分の好きなようにやってみようかなと。いままでは相手の動きを研究しておこう、“ココ、ココ”とか、なってましたけど、やるんなら自由に、悔いのないように試合をしたいんですよ。毎回、悔いばかり残っていたんで」 [nextpage] 楽しんで殺気入れて、どっちの気持ちが先に折れるか ──試合から離れている期間、誰かに相談したのですか。 「うーん、ほんとうに自分の周りにいる人は自分のことを愛してくれているし、言わなくても分かるから、逆に聞かれる。そこで正直に自分から話すという感じで、相談というより周りにずっと支えられてきました。でも、少し相談したのは、やっぱり母親でしたね。山本美憂選手は、母親というポジションもあるけど、ほんとうに自分がアスリートとして尊敬している人で、そういう人にメンタルケアをしてもらっていました」 ──その山本美憂選手は怪我で欠場となりました。 「俺は一緒に試合をしたかったですね。久しぶりの試合で、母親と同じ大会に出られるというのは“一緒に頑張るぞ”となって。でも一人になって“エー、一人か”とちょっと不安になったんですけど、やることは変わんないし、母ちゃんは年末に試合が移っただけだから。しかも周囲の選手たちもいい流れにあるので、(中村)倫也とか、大切な仲間に繋げたいと思っているので、自分を見せて自分らしく勝って、みんなとパーティーをしようかなと思ってます」 ──美憂選手からはどんなアドバイスを? 「自分の母親は“今回にかかっているから、ラストチャンスだから”とは言わず、“アーセンらしくやりなさい。まずは楽しみなさい”と。“持っているものは絶対勝てるから、あとはあなたの気持ち次第だから”と言ってくれていて“押忍”と。  だから楽しんで殺気入れて。相手もほんとうに気持ち強い選手だから、そこに負けないように──だから、そこなんじゃないですかね、今回の試合は。テクニックとか、グラウンドがどうのこうのじゃなくて、お互いの気持ちがどっちが先に折れるか、じゃないですかね。それか2人とも気持ちが折れないまんま、俺が倒れているのか、相手が倒れているのか、俺の骨が折れているのか、相手の骨が折れているのか、じゃないですか」 カメラの前に出ていいほどの結果も出していないから、ほんとうにこのままでいいのかと自問自答した ──さきほどの「格闘技から一歩退いて、違う道があるのかなと最初のほうは考えた」というのは? 「違う道、と言っても、“ほかの職業をやりたい”ではなくて、やっぱり格闘技が好きでやっていても楽しいし、ただ今までの歴史を見たら、そんなに輝かしいものじゃないし、こうやってカメラの前に出ていいほどの結果も出していないから、“ほんとうにこのままでいいのか”という考えですね。“これであっているのかな”と」 ──今日の公開練習は相手にサウスポーに構えてもらい、アーセン自身はオーソドックス構えでした。これまで対サウスポーのときにはサウスポー構えで戦っていましたが、さきほどのはナチュラルな構えでしたか。 「そうですね……まあ自分は右利きなんで、やっぱ山本家は右利き(サウスポー構え)で前手が必殺技が流派じゃないですけど──でも自分がやっていてやっぱりしっくりくるのはオーソドックス構えなんで、ちょっとオーソでやろうかなって。  今まで分かっていなかった打撃の原理が、すごく分かってきているんです。ポジションも大事だし、どこを見たらいいかとか、距離感とか、いろいろあるじゃないですか、打撃の法則が。それをやっと学べたんで、それを学んだうえで、自分はオーソの方が調子がいいのかなって感じましたね」 ──それは秋元モッサ(僚平)先生(K-1ジム五反田チームキングストレーナー。玖村将史らを指導。『K-1 AWARDS 2022』「ベストトレーナー賞」受賞)の影響もありますか。 「もちろん。もうモッサ先生が自分の打撃に対する考え方だったり、すべて変えてくれました。恩人です」 ──自分の戦い方が見つかりつつある? 「まだ全然、未完成だし、自分のスタイルを決めたら負けだと思っていて、そのときそのときで、“いまの動きが自分に合っている”“この動きが前は合っていなかったけど、この動きを付け足したら合うんじゃないか”とか、常に変化をさせていきたい。止まっちゃったら絶対、研究もされるし、格闘技で勝っている人たちは全員、頭がいいんで、そんな生ぬるい──“これが絶対”となっちゃうと通用しなくなっちゃうなと」 ──練習環境では、UFC入りが決まった中村倫也選手がいることで、どんな力になっていますか。 「やっぱり幼馴染だし、一緒にレスリングを始めた仲間なんで、一緒にいると楽しいし、倫也はすごいストイックな選手なんで、すごく細かいところまでアドバイスをくれて“なるほどな”と感じることも多いです。お互いのケツをひっぱたき合っているじゃないですけど、すごくいい刺激になっています。倫也だけじゃなくて、倫也の弟、大宮の家族…手全員ですね」 ──今回の試合に向けて倫也選手とも対策を練ることも? 「全然あります。タックルに入ったときに、相手がヒザとかアッパーとか合わせてくるよね、とかそういう当たり前の話とかもしていて、まあ、どう転んでもいいようにしています」 [nextpage] 試合はどう転んでもいいようにしている。いまは勝つための材料、気持ちを揃える材料──すべて答えを知っている ──伊藤選手の試合動画はかなり見ることが出来ますが、どんな印象を持っていますか。 「正直……あまり見ていないですね。見てしまうと、やっと自分が復帰して、今まで汗水かいてつぎ込んだ技が、“あっ、この選手はこれが得意だから、これは出来ないかな”とか、変なバッドマインドが入ってきちゃったら、今まで俺がやってきたことの意味が無いじゃないですか。これが試合に超慣れてきいて、“よし、自分はどんなときでも相手に合わせて自分の動きができる”となったら、全然、相手の研究を自分でして穴を突くとか──もちろん相手の穴は見つけてますよ。自分が見ていないだけで、周りが見てくれているので──しますけど、今回自分は相手のビデオはあんまり見ていないですね」 ──得意の組みは、いかに被弾せずにアプローチして、たとえばボディロックでのテイクダウン、押さえ込んで削ることが出来る、という手応えは得ている? 「やっぱりレスラーなんで“見える”っスよね、そのタイミングが。スパーリングも火曜日のプロ練習にトップクラスの人たちが集まってくれているので、そこで試しているのはすごくデカいですよね。ただ単に自分たちの若手たちに試しているんじゃなくて、トップクラスの選手に試して、それが通用する。それが自信になんなきゃおかしいよね、という話です。そのメンバーはinstagramで見てもらえれば(笑)」 ──今回の復帰戦が、周囲の評価に対しての意地の参戦なのかと思っていましたが……。 「(遮って)いや、全部あるんじゃないですか。だって、格闘技をやっていない間も、みんなにサポートしてもらって、“これで試合に出なかったら、俺なんのためにみんなにサポートしてもらっているんだ”っていう意地はあります。でも正直言って、怪我して試合が出来なかった期間に脳みそを成長させることが出来たから、その武器を持ったうえで、試合でどういう気持ちになるんだろうという──なんて言うんだろうな“気になる”じゃないですけど、前までは自分の武器が少なかったり、いろいろ知識が無くて、どうしたらいい? とちょっと焦りの方に近かったけど、いまはもう勝つための材料、気持ちを揃える材料、すべて答えを知っているんで、その答えを知った上で、自分が試合でどういう動きをするのか、本気で楽しみなんですよね」 ──これまでセコンドにつく時間が長かった。違う視点から格闘技を見たことが気付きにもなった? 「そうですね。でもセコンド側から見る景色と、選手側から見る景色とではだいぶ違うから、選手がセコンドの言うことを聞いたり聞かなかったりするんだろうと思います。いくら外から“あれ出来る”と言っても、対峙すると“チゲーんだよ、相手はこれ狙ってるから行けねぇんだよ”ということはある。格闘技の勉強はできましたけど、セコンドをやったからというだけではないですね。また別モノだから」 ──その景色を再びリング上で見ることになります。 「でも、すごい試合に近いスパーをやったりしているので、感覚は掴めているはずです。あとはもうやるだけ、です。自分のすべてを信じて」 ──理想の勝ち方は? 「立ちでもありますし、グラウンドでもあります」 ──この試合で勝敗を分けるポイントはどこになると考えていますか。 「根性じゃないですか。ほんとうに今回の相手は気持ちの強い選手で、自分はすごくリスペクトしている選手で、だからこそ、面白い試合をみんなに届けられるんじゃないかなと。そこを見てもらえる。どっちの気持ちが折れるのか」 【写真】年末のRIZIN×Bellator対抗戦前にKRAZY BEEでともに練習した「アーチュレッタさんも一緒に」とポスターを入れ込んだアーセン。同日にアーチュレッタは井上直樹と対戦する。 ──最後に、もうひとつうかがいます。レスリング時代の2013年の世界カデット選手権のグレコローマンレスリング金メダルのときは69kg級。RIZINでは66kgからバンタム級の61kgで戦ってきました。57kgに落としたことはいつ以来になりますか? 「57は……小学生以来ですね。でも、だいぶ最初の方は1回、どんなものなのか近くまで落としています。力? 全然出てました。それでフライ級の選手と組む機会があって、こんなものかと。正直、自分は怪物になれると思いましたね」
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