“サンボの怪物君”こと萩原幸之助さんが2023年4月3日、肝不全により亡くなった。8日、親族のみで葬儀が行われた。55歳だった。
萩原さんは、1968年3月生まれ。日本傳講道館柔道五段で、1991年から1993年に行われた全日本サンボ選手権大会の82kg級で3連覇を達成。サンボ世界選手権大会(英・米・仏で開催)5位入賞などの実績を持ち、スポーツ会館においてコマンドサンボスクールコーチも務めた。
カール・ゴッチから「グットネック」と呼ばれた首回りが特徴で、ヴォルク・ハンから技術も習得。全国各地で出張サンボ教室「萩原サンボスクール」も開催。打撃や古武術にも精通し、特に護身術に造詣が深く、ロシア白兵戦術コマンドサンボを基盤に各種武道・格闘技を統合した「靭術」を創始した。
【写真】護身として、肋間筋、肋骨など筋肉の薄い部分に、親指の指先を差しこむ萩原さん。
『ゴング格闘技』本誌でも格闘技解説を務めた萩原さんは、2009年10月号の特集「武の世界」で植松直哉氏と対談を行っている。
そこでは、競技スポーツである格闘技と、護身術や武術の違いについて、以下のように語っている。
「この5m四方だとか、円形とかに安全なマットが敷いてあって、戦う時間が決まっている。怪我をした時は医者が診てくれる。ようは擬似の戦いで、『格闘技』というのは『技』をつくして『闘』い、『格』=“ランク”を決めるということなんですよ。
だいたい、格闘技には『何でも有り』という考え方がありますが、その発想自体がルールに縛られているんです。本来は『何にも無し』なはずです。路上や実生活のなかで、どれだけ危険で非人道的な出来事が起きているのか。警察が来てくれても、死体になっていると手遅れだから、最低限かかる火の粉は払う力を身につけようと。ただ、力をセーブし精神をコントロールすることが必要になる。そこで心の部分を指導するものなんですよ。靭術って何だろうと、それは“心構え”なんです」
サンボ、靭術、格闘技などを広めた萩原さんのご逝去に、謹んでお悔やみ申し上げます。