2023年4月1日、丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)にて『RIZIN.41』が開催された。
第8試合では、ともにUFC・Bellatorの2大メジャーマットに参戦経験を持つ、中村K太郎(K太郎道場)とストラッサー起一(総合格闘技道場コブラ会)による、国内ウェルター級トップファイター対決が行われた。
組みの強い両者の試合は、消耗する組み技はエサに、互いに隠れた打撃スキルを発揮させる試合となった。
オーソから右ミドルを当てるストラッサーに対し、UFCでアレックス・モロノを左ミドルで下し、RIZINでもマルキーニョスを左右のパンチでTKOしているK太郎は、今回のストラッサー戦でもサウスポー構えから右ジャブ、さらにテイクダウンに固執しすぎないニータップも混ぜてスタンド勝負。
2Rにストラッサーの右ストレートに、K太郎が左クロスをかぶせてダウンを奪うと、すかさずサッカーキックを顔面に当ててパウンド! レフェリーを呼び込んだ。
夫の勝利に妻・杉山しずかも子供を抱いてリングに上がると、マイクを握ったK太郎は、10秒ほど長い沈黙。
感極まったかと思いきや、「ありがとうございました!」と一言で締め、地上波では放送事故級のマイクでリングを降りていた。
試合後、その沈黙について問われたK太郎は、「奇人を隠さずに、本来の自分を出していこうかなっていうところで、ちょっとふざけてみたという感じです」と、堂々、煙に巻いたことを告白。
ニータップは見せながらもテイクダウンに固執せず、“裸絞め十段”の寝技を見せなかったことについては、「組みの消耗がちょっと怖かったので、自分からテイクダウンは行かないで、テイクダウンに来てくれれば、下からでもいいから寝技してやろうかなくらいの感じでした」と、トップから攻めるつもりはなかったことを明かしている。
一方、地元で敗れたストラッサーは、最後のカウンターの左クロスを「見えなかったからこそ効かされた」と振り返り、「まだまだ諦めないです」と巻き返しを誓っている。
試合後の両者との一問一答全文は以下の通りだ。
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中村K太郎「試合後のマイクは、ふざけてました」
━━3年ぶりの参戦でKO勝利、試合後の率直な感想をお聞かせください。
「いや、ホッとしましたね。やっぱりだいぶ久々だったんで。まあ緊張はいつもするんで、いつも通りだと思うのですけど、“久々”というフィルターが自分にかかって、より緊張しているような気持ちでした」
━━勝利後のマイクは何かこみあげていたのでしょうか? あるいは何かを考えていたのでしょうか。
「そうですね、いやなんかちょっと多分おかしい……実際おかしいのも、少し……、少しっていうか普通ではないと思われているし、普通ではないと思うので、自分の人格が。ちょっと、奇人を隠さずに、奇人キャラというか、本来の自分を出していこうかなっていうところで、ちょっとふざけてみたという感じです」
━━あっ、ふざていたのですか。
「ふざけてました!」
━━ダメージがあったのかと思いましたが、そういうことでもないのですね。
「そうですね、はい」
━━勝利後、息子さんは何に泣いていたのか分かりましたか。
「そんなにメンタルが強いわけじゃないというか。なんか、結構学校でもすぐ泣いちゃうみたいで。そう、感情が昂ると多分、嬉しくても悲しくても泣いちゃうみたいですね。それで泣いたみたいです。だから、大阪行って自分がいない時も泣いたりしていたみたいで……かわいい(笑)」
━━対戦を終えて、ストラッサー選手は戦う前の印象と違うところがありましたか。
「(以前)練習はしてたんで。そうですね、全部……、UFCも出てたんで強いのは知ってたし。でもボクシングスパーとかもやってたんで、ガチで。思ったより本当の試合になったら、パンチも当たってたけど、帰ってからセコンドに聞いたら普通に僕も『当てられてたよ』って言われて、“強かったんだな”という、そのまま戦前と同じ印象でした」
━━国内ウェルター級トップ対決に勝利したところで、今後の展望を教えてください。
「もっとウェルター級が盛り上がるように、今日の勝利もそんなにまあ、パンチはヒットはされてるので圧勝というイメージはないかもしれないけど、フィニッシュして勝てたので、そこらへんの日本人には負けない実力は見せられたので、まあそういう、同じレベルで戦える選手と戦っていけたらと思います」
━━打撃勝負というのは、事前からそう決めていたのですか。
「そうですね、自分からテイクダウンは行かないで、組みの消耗がちょっと怖かったっていうのもあって、そんなに。粘り強い選手なので、ケージとかの技術もあるので、そこで粘られて消耗しちゃうのは怖くて打撃でいった……まあテイクダウン来てくれれば、下になったらというか、下になっても寝技の部分ではちょっと差があるっていうか、勝てるかなっていう、むしろ自信があって。まあテイクダウンにきたら寝技しようかなっていう感じでしたね。下からでもいいから寝技してやろうかなくらいの感じでした」
━━自分から組みに行こうとは考えていなかったということでしょうか。
「トップで攻めるより、もうなんか下になってテイクダウンしても“攻めづらいな”っていう印象つけさせたりとか、もう全然あわよくば極めてやろうかなという自信がそこはあったという感じです」
━━久しぶりの試合になりましたが、コンスタントに試合をしたいですか? それともまた何年か空けながら?
「いやあ(笑)、何年か空けたら40歳になっちゃうんでアレですけど、まあコンスタントにできれば。需要があれば、はい(笑)やりたいかと」
━━今日の勝ち方であれば充分需要がありそうかと。
「ありがとうございます!」
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ストラッサー起一「見えなかったからこそ効かされた。まだまだ諦めないです」
━━試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。
「うーん……、まあ“もらってしまったな。見えなかったな”っていう、それがまあ、大きかったですね、はい」
━━試合を止められて不満気な表情をしているようでしたが、ストップが早かった、と感じていたのでしょうか。
「あの瞬間はもらったという記憶はないのですけど、今振り返ってみると、パンチもらって見えてなかったなというのがありますね、はい。それが一番大きかったですね」
━━対戦相手のK太郎選手と実際拳を交えて、試合前のイメージと違うところがありましたか。
「1Rは自分のペースでそれなりにできたかなというのはあって、2R入ったときにまさかああいうパンチもらう感覚はなかったのですけど、1発の怖さという部分で、見えなかったですね。見えなかったからこそあそこまで効かされた。あの瞬間、K太郎選手の1発の上手さ、強さはあったと思いますね。僕もあれはもらうつもりもなかったんですけど、見えてなかったということですね」
━━両者とも国内外で活躍されてきました。試合を終えて思うことはありますか?
「K太郎選手、強いですし、本当に紙一重の勝負だったかとは思います。その紙一重の中で、K太郎選手の左ストレートですかね、そのパンチがクリーンヒットを、僕の見えない状態でもらってしまった。彼の強さですよね、そこは」
━━試合を終えたばかりですが、今後の展望を教えてください。
「負けたことに対しては悔しさしかないのですけど、自分の中で1R、自分のやりたい動きは100パーセントできたわけではないですけど、自分の中である程度できたかなという部分あるんで、まあでも、まだまだ諦めないです」