2023年4月1日、丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)にて『RIZIN.41』が開催された。
MMAルールでのメインイベントといえる第9試合のフェザー級戦では、アゼルバイジャンのヴガール・ケラモフ(ORION FIGHT CLUB)が、堀江圭功(ALLIANCE)を、2R 3分21秒 リアネイキドチョークで極めて堀江からタップを奪い一本勝ち。群雄割拠のフェザー級王座戦線にあらためて名乗りを挙げた。
堀江は、RIZINで関鉄矢、佐々木憂流迦、中田大貴を相手に3連勝中。右拳の怪我を完治させ、今回が約1年4カ月ぶりの復帰戦となる。
今回の試合に向け、所属のアライアンスに加え、青木真也や中島太一らがいるロータス世田谷、TRIBE TOKYO MMAでも練習し、組み技のディフェンスを強化してきた。
対するケラモフは、Bellatorでの1R KO勝ち後、2020年2月にRIZINに初参戦し、カイル・アグォンに勝利。2戦目で斎藤裕にスプリット判定負けも、2022年4月に中島太一にマウントからの三角絞めで一本勝ち。7月の前戦でも山本空良に判定勝ちしており、フェザー級のトップ戦線に位置している。
試合は、ケラモフの圧力に堀江が待ちの展開に。ケラモフは得意の力強い組みのなかに巧みに打撃を折り混ぜて、序盤から堀江に“際(きわ)”の打撃でダメージを負わせた。
初回に、堀江の右ローを掴んで右ストレートをアゴに当てると、倒れた堀江にパウンド。被弾した堀江はゴングに救われる形に。
2Rは、ケラモフのシングルレッグ(片足タックル)を切った堀江が、ワンツーの右をヒット。しかし驚異の打たれ強さを見せるケラモフは、この試合で何度も見せたシングルレッグを回して堀江に尻を着かせると、ロープに這う堀江の立ち上がりに右足をかけて、シングルバック(相手の片足に両足をかけて)で両足を組んでリアネイキドチョークへ!
中腰に立ち、横に落とそうとする堀江だが、ケラモフの右腕は喉下に入っており、堀江は中腰のまま後ろ手をはがそうとするが、右手は頭後ろに隠れて剥がせず。堀江は背後のケラモフの腰を横にずらして落とそうとするが、ケラモフは片足のみのロックで怪力で絞め上げ、タップを奪った。
堀江にとって、アマチュア時代を含め、初めての一本負け。
1Rに堀江のローキックに合わせてのニータップ気味に右を効かせてのダウンにより、得意の打撃で自ら入りにくくなった堀江。さらに、この試合で何度も見せたケラモフの胸まで持ち上げて、あるいはフィニッシュのように回してのシングルレッグのテイクダウン狙いに、堀江は後ろを向いて片足を抜いてはいるが、スタンドバックを許している。
試合後、この攻防について堀江は、「片足タックル入って、それを持ち上げたりっていう動きは想定内だったけど、そこでのフィジカルの強さだったり、際の殴りの上手さだったりがあって、1発効かされたので、そこが想定外でした」と振り返っている。
また、勝者は「全ての動きやホリエの戦いのスタイルは想定範囲内だった。自分がこれから目指すことは、やはりこの階級でベルトを獲ることが自分の目標であり最終的な目的」と、堀江の動きを研究していたこと、さらに今後の目標をフェザー級のベルトと明言している。
混沌としてきたフェザー級戦線。この日は、萩原京平がカイル・アグォンの組みを切って判定勝ち。4月29日の『RIZIN LANDMARK 5 in YOYOGI』では、牛久絢太郎vs.朝倉未来、斎藤裕vs.平本蓮の試合が組まれ、6月24日の『RIZIN.43』北海道大会では、鈴木千裕が王者クレベル・コイケに挑戦することも発表されている。
果たして、ゴールデンウイーク決戦を経てフェザー級の順位つけはどう変わるか。
それらの勝者たちと、王座戦線に加わることになるケラモフと、敗者の堀江との試合後の一問一答全文は以下の通りだ。
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ケラモフ「ホリエの戦いのスタイルは想定内だった」
━━試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。
「とても幸せな気持ちです。計画通りに全て実行しました。対戦相手の堀江選手はスタンディングが非常に強いということが分かっていたので、自分自身も打撃を得意としているので、打撃戦で行くかなと計画していました。結果はちょっと違う形で終わりましたけれど、いずれにしても勝利を収められて良かったです」
━━当初は打撃のみで行く予定だったのですか?
「自分はどんな試合に向かう時も、ただひとつだけの計画を練るということはありません。打撃の強い選手だとしてもどんな展開が起こるか分からないので、当然オールラウンドで、打撃でもグラウンドでも、レスリングなどあらゆる状況を想定して準備してきました。
今回の対戦相手は非常に打撃が強いということで、構える体勢や足の動き、身体の動きなどから、非常に打撃が強い選手だと感じました。だから最初は打撃でやりあいましたが、試合展開が少しずつ変わり、今回のような結果になりました」
━━対戦を終えて、堀江選手のイメージと異なったところは?
「ホリエについて、想定していたものと何か違ったことがあるかというと、無いです。あらゆる想定に対して準備をしているからです。とくに、今までも試合前と試合後でこんなに違っていて驚いた、ということはありません。打撃でも、全ての面で、準備してきました。勝つために朝から晩までトレーニングし、相手選手を研究して練習してきています。だから全ての動きや彼の戦いのスタイルは想定範囲内だったということです。自分がこれから目指すことは、やはりこの階級でベルトを獲ることが自分の目標であり最終的な目的です」
━━6月24日に北海道でフェザー級のタイトルマッチとして、王者クレベル・コイケ選手に鈴木千裕選手が挑戦することが発表されましたが、この試合の勝者もしくは敗者であるとか、RIZINに出場している選手で、具体的に戦ってみたい選手はいますか?
「それは6月までにですか? 全体的にですか?」
━━全体的にです。
「もちろんベルトをかけた試合をすごく望んでいますが、そこにすごくこだわるつもりはなく、全て、RIZINからオファーがあった対戦相手といつでも試合し、勝利できるように準備しています」
━━3月31日が息子さんの誕生日だったそうでおめでとうございます。アゼルバイジャンに帰国してから息子さんにあげたいプレゼントなど、してあげたいことはありますか?
「来る前に『必ず勝ってくるから、そしたらトロフィーを持ち帰って君にあげる』と約束しています。まず帰ったら、トロフィーと一緒に写真を撮って、プレゼントはそれが一番だと思いますが、小さなプレゼントを考えたいと思います」
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堀江「ケラモフは一瞬の崩しが上手かった」
━━試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。
「本当に悔いなくやってきての負けなので、ちょっとこれからどうしようかなという感じの気持ちですね」
━━戦績として一本負けは初めてですか?
「はい。アマチュア含めて初めてです」
━━1Rにケラモフ選手のパンチを被弾しかなり危うい場面がありました、あのあたりからプランが崩れていましたか?
「そうですね、あの1R目がちょっと効いて、その後に蓄積した感じはしますね」
━━対戦を終えて、ケラモフ選手は戦う前のイメージと違うところがありましたか。
「自分はああいうところではなかなか極められることがなかったり逃げられるのも得意だったのですが、アームの絞めの力が予想以上に、絞めが強かったですね」
━━堀江選手が立ったまま、ケラモフ選手が腕の力で?
「そうですね」
━━試合を終えたばかりですが、今後の展望を教えてください。
「先ほども言ったとおり、ちょっとまだ気持ちの整理がついていないので、しっかり考えていきたいなと思っています」
━━想定以上だったもの、あるいは想定外だったことは?
「今言った通り、極めの強さと、組まれた時の、片足タックル入って、それを持ち上げたりとかっていうところは想定内だったのですけど、そこでのフィジカルの強さだったりとか、あとそこでの殴りの際の上手さだったり。あそこで1発効かされたので、そこが想定外でしたね」
━━感じたパワーというのは、これまで味わったことのないパワーだったのですか?
「なんかこう、パワーというよりも組んできたときの一瞬の崩しとかですね。一回組んでしまえばそこまで驚きはなかったですけど、片足タックル行って、そこからの一瞬の崩しだったりというのが上手かったですね」
━━試合後に、セコンドの方と話し合ったことはありますか?
「うーん……。『あのパンチは覚えてる?』とか、覚えている・いないといった会話です」
━━負傷からの復帰戦で、前の試合から感覚が空いたことは影響していたと思いますか?
「感覚的にはそこまでないんじゃないかなと思ったんですけど、ちょっと分からないですね。そこというより、普通に、負けました
━━外国人選手特有の、際の強さやスピーディーさは?
「感じました」
━━フェザー級の今後を占う試合だったと思います。気持ちの整理がついたらまたこのフェザー級の中で戦っていきたいですか?
「そこも考えてないです」