2023年2月12日(日)豪州パースのRACアリーナにて『UFC 284: Makhachev vs. Volkanovski』が開催された。
3年3カ月ぶりのUFC豪州大会の観客数は14,124人で満員。総収益は5,911,598豪州ドル、4,083,141USドルで、豪州開催イベントの最高興行収入を記録した。
そのメインカードの第2試合に、マーク・ハントの弟子のジャスティン・タファ(豪州)が登場した。
ハント同様にサモア系ヘビー級戦士のタファは、大晦日にスダリオ剛に1RKO勝ちしたジュニア・タファの兄。地元の大会に兄弟そろい踏みの予定だったが、ジュニア・タファが負傷欠場で1人メインカード入りした。
MMA前はニュージーランドのラグビーリーグのメルボルン ストームと契約したものの怪我が重なり、ホームレスシェルターでユースワーカーをしていた経験も持つジャスティン。
マーク・ハントのスパーリングパートナーを務め、24歳でMMA転向。2017年5月にMMAデビューを果たすと、4戦目・キャリア1年でUFCと契約するもオクタゴン初戦は苦い1RKO負けを喫した。その後、2勝2敗で2021年12月の前戦では米国のハリー・ハンサッカーを左ハイキックでKOに下している。
対するポーターはUFC3勝2敗。前戦はライトヘビー級のジャイルトン・アルメイダに1R リアネイキドチョークで一本負けしている。
試合は1R、サウスポー構えのタファが圧力をかけると、ポーターは右オーバーハンドで押し戻し。タファは前蹴りから左ストレート。近づくとタファはクリンチボクシングも器用に見せる。
ポーターの右を振っての前進に、タファは下がりながらカウンターの左でアゴを打ち抜くと、さらに返しの右ショートアッパーも当て、ポーターが前のめりにダウン。
タファは追撃のパウンドをせずにポーターを見下ろし、1分06秒、師匠ハントばりのウォークオフKO(※KO後に歩き去る)を決めた。
完全KO勝ちを手にしたタファは、ケージ上でのマイケル・ビスピンのインタビューで、「たった1発のライトフックで歩き去ったこのシーンを振り返ってみよう」と問われ、「You Reach, I teach. that's what happend」と一言。
“向かってくるなら教えてやる”とマイケル・ジョーダンの言葉を引用した。
これは、ジョーダンが引退後にブルズの練習に行ったときに、ルーキーに1オン1を挑まれた時に言った言葉。
36歳で2度目のNBA引退をしたジョーダンは、シカゴ・ブルズの若手コーリー・ベンジャミンが電話で「1対1のゲームなら伝説のバスケットボール選手に勝てる」とジョーダンをこき下ろしたことを聞き、彼と対するためにブルズの練習に参加した。
1オン1で、ベンジャミンがボールを取ろうとしたとき、ジョーダンは冷静にこう答えたという。「You reach, I teach」。そしてベンジャミンの目前でミドルレンジのシュートを決めた。
コート上ではなくケージのなかで、拳を振って向かってきた相手に左を打ち抜いたタファ。ハイライトリールに残るであろうこの一撃は、まさに“向かってくるなら教えてやる”を体現したウォークオフKOだった。