2023年2月4日(土)、韓国スウォンのスウォン・コンベンションセンターにて『Black Combat 5: Song of the Sword』として「BLACK COMBAT」と「DEEP」の5対5の対抗戦が開催された。
BLACK COMBATは、ドラマチックな映像を駆使し、選手のバックボーンとキャラクターを際立たせ、YouTubeでそのストーリーを拡散させることで新たなファンの獲得に成功している韓国の新興MMAプロモーションだ。
日本の「DEEP」は現王者2名と元王者、王座挑戦者を含む5選手を選抜。韓国「BLACK COMBAT」側は、今回の対抗戦に向けて各階級で4選手による選抜戦を行い、代表を決定して対抗戦に臨んだ。
先鋒戦の女子アトム級では、現DEEPミクロ級&DEEP JEWELSアトム級王者の大島沙緒里が、ホン・イェリンに3R、腕十字による一本勝ち。
▼先鋒戦 女子アトム級 5分3R〇大島沙緒里(AACC)11勝3敗[3R 0分59秒 腕十字]×ホン・イェリン(DK Gym)4勝3敗
▼次鋒戦 ライト級 5分3R〇大原樹里(KIBA マーシャルアーツクラブ)32勝18敗3分[1R 4分39秒 KO]×ユン・ダウォン(MMA Story)5勝5敗1分
続く次鋒戦でも、現DEEPライト級王者の大原樹里が、フェザー級から挑戦したユン・ダウォンに1R KO勝ち。DEEPが2勝を挙げている。
この国で私に勝つことができる人はいません(ジョンフン)
DEEP勢が勝ち越しに大手をかけるなか行われた中堅戦のバンタム級では、DEEPから山本聖悟が出場。キム・ミンウの兄でMMA4勝無敗ながら8年半ぶりの復帰戦となるキム・ジョンフンと対戦した。
山本は、フライ級から2022年8月の前戦でバンタム級に転向。石司晃一と対戦し、ダウンの応酬から2Rに逆転KO負け。ROAD FCではキム・ソンオの韓国名でも戦っており、2022年5月のROADではフライ級でイ・ジュンヒョンと対戦し、ケージ際に詰められてのワンツーの右を浴びてKO負け。2021年3月のRIZIN以降、5連敗を喫している。
試合は互いにグローブタッチから。1R、ともにオーソドックス構え。先に左ミドルはジョンフン。大きなワンツースリーから片足を取りに行くと、山本の右足に左足をかけてバック狙い。その頭にヒジを落とす山本は右で小手に巻く。ボディロックから前方に投げるジョンフンに、片手を着きながらも右の小手投げで背中を着かせる山本。
しかしジョンフンはその勢いのままクラッチは外さず横に回して山本の上を取る。左で枕に巻き、ハーフから足を抜こうとするが、左で下から差した山本がブリッジでスイープ! ジョンフンの腕十字狙いを切ると、さらに下から足を手繰りレッスルアップするジョンフンは右足にしがみつく。そこに鉄槌を落とす山本。
ジョンフンは腰に組み、左で差して金網に押し込み、山本の右足に左足を深くかけて右足と挟むと、ボディロックから再び前方への崩し。それを右で小手に巻いて潰す山本に、下のジョンフンはディープハーフから山本の右足を挟んだまま、左で差して両ヒザをマットに立てて、山本が立ち上がったところで足を刈り、押し倒して上を取る。
山本に背中を着かせると、ハーフからパウンドへ。山本はまたも右で差してブリッジして2度目のスイープ。ジョンフンはの立ち際に頭を押さえてヒザ蹴りを入れるが浅い。体を入れ替えたジョンフンは四つからまたもボディロックで回して捨て身気味に投げて、頭を抜いて先に立ち上がり、山本の腰を抱いて押さえ込みに。
しかしここは山本も右で小手に巻いて金網使い立ち上がり。その腰をボディロックして右足を右足にかけて前方に崩そうとするジョンフン。ここも山本は右で小手に巻いて投げるが、ボディロックを外さないジョンフンはその投げを利してローリングさせて上を取る。
そして今度はすぐに右で差してニアマウントに。片足をガードに戻し潜ろうとする山本に、右で脇差し潜らせないジョンフンは左でパウンド。さらに右で腹にパウンドを連打! 山本のブリッジに合わせてまたいでマウントになるとバックマウントへ。両足で4の字ロックを組むと左右で手を入れ替え、リアネイキドチョーク狙いもゴング。
大歓声に山本が先に立ち上がり両手を挙げて、観客を煽る。
2R、先に左ミドルハイをガード上に当てるジョンフン。セコンドの芦澤竜誠は「左回り」と対オーソのセオリー通りではない形で声をかける。
右のフェイントでいったんはジョンフンを下がらせる山本だが、圧力をかけ直すジョンフン。互いに右ストレートの強振は首の横をかすめるが、前に出ているジョンフンは続けて左から右フックをヒットさせると、左ストレートもヒット!
ダウンした山本が亀になり頭を抱えたまま、右を被弾。山本は仰向けになって頭を守るも足は効かず。右の鉄槌を浴びるとレフェリーが間に入った。
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日本には本当の最強の選手だけを連れて行く(ブラック代表)
▼中堅戦 バンタム 5分3R×山本聖悟(Team Cloud)4勝11敗1分[2R 0分39秒 TKO]〇キム・ジョンフン(MOAI GYM)5勝0敗
ガッツポーズのジョンフンに、ホームの場内は大歓声。モニターはこれまでと打って変わった両代表の表情を映し出した。
両ヒザ立ちの山本にジョンフンは跪いて両手を取って挨拶。
ケージのなかで「練習と実戦は違うとたくさん感じました。いろいろ足りなかったけど勝ったから、たくさん喜びたいと思います。ありがとう。今日は少し足に力が入りませんでした。緊張したこともあり、途中バカみたいに力を使い過ぎて、自分の1/10も出せませんでした。聖悟選手は5連敗ではあるけれど、とても強い選手だと思うので、よく戦ってくれたと思います。グラップリングでも打撃でもこの国で私に勝つことができる人はいません」と語ると、BLACK COMBATフェザー級のベルトを肩にかけた“ヨジツ”ことユ・スヨン(韓国)がケージイン。
「まず、今日の1試合目と2試合目で韓国が負けて少し気持ちが落ちましたが、3試合目で勝利していただきありがとうございます。試合を見ましたが、実際に日本の選手はフライ級で戦っていることを知っています。しかし、私は今バンタム級です。ライト級選手ともフェザー級選手ともやりました。見てください。韓国で私が最高だと言うことができます」と、バンタム級でのジョンフン戦に前向きなことを語った。
このやりとりに、ブラック代表は「日本で現チャンピオンたちと戦おうと思います。そこには本当の最強の選手だけを連れていきます」と、対抗戦の第2弾が10月に日本で開催されることを示唆。
現DEEPフェザー級王者は牛久絢太郎(※RIZINで朝倉未来戦が決定済み)、バンタム級は石司晃一が暫定王者についている。果たして、日韓王者対決は実現するか。
前日会見では、バンタム級の兄キム・ジョンフンと、フェザー級の弟キム・ミンウが共に、「日本には大スターの兄弟、朝倉兄弟がいます。しかし今回の試合で勝利したら、どちらが“アジア最強の兄弟”なのか決着をつけてみたい」と、日本の朝倉未来・海の朝倉兄弟にも対戦をアピールしており、注目のキム兄弟だ。
そして敗れた山本聖悟にもマイクが渡された。
TKO負けながら、2試合目同様に勝者のコメントの後までケージ内で待つことになった敗者は、「サブミッションを取ろう、相手には取られないようにしたんですが、それだけやろうとしたから負けたと思っています。僕が弱くて負けてしまったので、応援してくれた人にはすご嬉しいんですけど……いつも期待されなくてほんとうに悲しいです。2年前にハルモニ(祖母)が亡くなってから連敗していて、この首輪がずっとハルモニが観てくれていると思って戦ったけど勝てなくて……1回、僕は……いま少年院を出て劣等感を感じたときと同じ気持ちで、新しいことに挑戦しようと思います。引退します。カムサハムニダ」と語り、グローブをマットの上に置いた。
その言葉にブラック代表は「引退することを知りませんでした。聖悟選手の母国のひとつに来て、『とても幸せで、今回の試合に勝つ、ずっと活躍したい』と言って、僕と約束をしたので、ちょっと引退宣言は予想できなくて……。聖悟選手は私たちの選手と戦いましたが、『韓日戦』対抗戦という仕方ないマーケティング方法を取りましたが、人々は知っている。感じる人は、離れていてもみんな同じ人間ですから、私はみんなを尊重して応援します」と言葉をかけた。
山本は1回離れる、とも語ったが、試合直後の感情でこのまま引退となるか、休息となるか。バックステージ映像では「いまはまだ弱いんで結果も負けてしますし、戻れるときが来たら、しっかり準備して戻りたいです」と語っている。
これで対抗戦はDEEPが2勝1敗。勝ち越すにはDEEPは副将か大将のどちらかが勝る必要があり、BLACK COMBATは1敗も出来ない崖っぷちの試合が続く。続く副将戦はジョンフンの弟、キム・ミンウが登場し、中村大介と戦う。
▼副将戦 フェザー級 5分3R中村大介(夕月堂本舗)34勝22敗1分キム・ミンウ(MOAI GYM)10勝2敗
▼大将戦 無差別級 5分3R赤沢幸典(Tristar Gym 日本館/Team Cloud)3勝5敗チェ・ウォンジュン(MMA Story)5勝5敗