急遽、メインの5分5R制に変更が影響するもの
――アンカラエフはスタンドで遠い間合いを好みますけど、一方でベースがレスリングですから、距離が近くになったら組みにいくという選択肢もありますよね。
「タックルがありますよね。そこがもうひとつのポイントで、ブラホヴィッチはフィジカルは強いんですけど、テイクダウンを取られることが比較的多いんですよ。王座転落したテイシェイラ戦では何度かテイクダウンを奪われて、最後は裸絞めで敗れているし、前回のアレクサンダル・ラキッチ戦は勝ちましたけど、やはり片足タックルから足をすくわれてテイクダウンを奪われている。
いわゆる“足が軽い”タイプで、上半身のフィジカルが強いから四つ組みの攻防とかは強いんですけど、足への意識が留守になる瞬間が試合の中であるんじゃないかという気がするんですよ。タックルがあるアンカラエフとの試合では、その辺がちょっと不安材料ですよね」
――ましてやアンカラエフはテイクダウンを奪ったあと、強烈すぎるパウンドの持ち主ですからね。
「あのダゲスタン系の選手に共通する上から打ち下ろすパウンドの強さは恐ろしいものがありますからね。“ダゲスタンパンチ”として、通常のパウンドとは区別したくなるほどで(笑)。だからブラホヴィッチ的には、近い距離で打撃を入れたいけれど、タックルを取られたくない。アンカラエフの方は、離れて戦いたいけれど、近くになってもタックルという選択肢がある。ここら辺の交錯した試合作りを両者が求められるところが、この一戦の面白さだと思いますね」
――また、この試合は当初は5分3Rの予定でしたが、タイトルマッチになったことで、急遽5分5R制になりました。この変更も試合に影響しそうですか?
「これはとくにブラホヴィッチのほうに影響が出ると思いますね。アンカラエフの方は、距離を支配してポイントを取って判定勝ちを狙える戦い方ができるので、5R制になってもそこまで戦い方や戦略を変えずにすむと思うんですよ。でも、ブラホヴィッチのほうは早いラウンドからフィジカルを使って、3R以内に勝ち切る戦いをすることが多いので、戦略の練り直しを迫られる可能性が高いと思います」
――逆に言うと、早期決着を狙ってくる可能性もありますか?
「あるでしょうね。それがブラホヴィッチの戦い方であり、強みですから。だから変に直前になって戦略を変えるより、テイクダウンのリスクはしょうがないっていうくらいに、早めの段階から距離をどんどん潰していって、強い打撃を出していってほしいですね。後半スタミナがキツくなるかもしれないけれど、“関係ねえよ、倒すしかねえんだ”ってやってほしい。それでこれまで結果も出してきたんで、そういう試合を期待したいですね」(取材・文/堀江ガンツ)