MMA
インタビュー

【Bellator】王者ストッツとGP準決勝で対戦するサバテーロ(前篇)「ヤツもレスラーだけど、MMAレスリングにおいて俺の方がはるかに上」=12.9『Bellator 289』

2022/12/07 15:12
 2022年12月9日(日本時間10日)、米国コネチカット州アンカスビルのモヒガンサン・アリーナにて、『Bellator 289: Stots vs. Sabatello』が開催される。  日本ではU-NEXTで生配信される同大会で、優勝賞金100万ドル(約1億3700万円)の「Bellatorバンタム級ワールドGP」準決勝2試合が行われる。  メインカードでは、現バンタム級暫定王者のラウフェオン・ストッツ(米国)とダニー・サバテーロ(米国)がGP準決勝および同級暫定王座戦(5分5R)を争うほか、もうひとつの準決勝でマゴメド・マゴメドフ(ロシア)とパッチー・ミックス(米国)が決勝進出をかけて対戦する。  大晦日にRIZINとの対抗戦に臨むBellator勢を知るには必見の今大会。本誌『ゴング格闘技』NO.321では、このベスト4から、ATTで堀口恭司と同門のダニー・サバテーロにインタビューを行っており、今回のGPの大一番に向けて特別公開する。  堀口がミックスに判定負けし、まさかの初戦敗退となったGPで、ファンの間で最大のヒートと注目を集めているのが、代打出場枠から勝ち上がったこのサバテーロだ。彼はなぜ一躍主役の座に躍り出ることができたのか? このインタビューを読めば理解できるだろう(text by Horiuchi Isamu)。 中途半端より「愛されるか・嫌われるか」の方が余程いい ──サバテーロ選手、ZOOMインタビューに応じて下さりありがとうございます。 「Absolutely!」 ──GP準々決勝においてレアンドロ・イーゴに完勝。その直後に準決勝で当たる暫定王者のラフェオン・スタッツと舌戦を繰り広げたことで、あなたは一躍MMA界で最も注目を集める選手となりました。あれからどうお過ごしですか。 「イーゴ戦終了のベルが鳴った瞬間から、俺の気持ちはもうスタッツに集中していたよ。ずっとその試合とのことを考えてきた。このトーナメントの組み合わせが決まった時から、あいつと戦うことになると分かっていたし、ずっと楽しみにしていた。世間の連中は、奴こそバンタム級最強だと言っているが、俺にはスタイル的にも相性の良い相手だと思っている。圧倒できるよ」 ──スタッツ戦の話の前に、準々決勝のイーゴ戦についてもう少しお聞かせ下さい。ご自分の戦いをどう評価しますか。 「まあ全体的には『A』かな。フィニッシュできなかったから、A+(最高評価)は付けられない。俺はいつもそれを目指しているから。でもレアンドロ・イーゴのようにフィニッシュするのが極めて困難な強敵と戦うなら、まず勝つことが重要となる。俺の他の試合と同じようにドミネイトできたと思うし、そこは満足している。相手はバンタム級トップの1人だからな」 ──ただ、2Rには、キムラの仕掛けからバックを奪われてしまう場面もありました。 「ああいうことが起きて良かったと思うぜ。俺がBellatorのケージで、多くの視聴者の前で初めて迎えた試練だったから。だからあそこは防御に専念したんだよ。自分に言い聞かせたんだ。“冷静さを保て、パニックになるな、ミスを犯すな”ってね。ああいう場面で多くの選手が焦ってミスして負けてゆくから。だが俺はあの過酷な状況を耐え抜くことができた。落ち着いて守りきり、立ち上がった時は、次のラウンドの反撃を楽しみにしてたんだ。2Rが終わったところでスコアは1対1だった。イーブンの状態に戻って、ここからいつもの3R戦が始まるようなもんだった」 ──なるほど。 「俺が思うに、あの時点で奴の心は折れたんだ。2R終了後の俺たちの態度を比べてみるといい。全然違うから。向こうが圧倒的優勢で終えたラウンド直後であるにもかかわらずだ。奴は『ここでフィニッシュすべきだった、もうダメだ』って落ち込んでいたんだろうな。俺が残りの3Rで反撃に転じてくると分かっていたはずだ。そして実際そうなった。残りのラウンドを俺が圧倒的優勢に進めて勝利したというわけだ。だから上々だ。次のスタッツ戦はさらに良くなるぜ。1Rも落とす気がしないな」 ──おっしゃる通りの完勝でした。が、さらに注目を集めたのはケージ上での試合後インタビューでの発言です。試合前にさんざんこき下ろしたイーゴのことは讃えたあなたですが、今度はブーイングする観客たちを『お前ら、戦いのことなど何も分からんプッ○ーども』と罵倒し煽りまくり。すごく生き生きとしていて、ヒールであることを心底楽しんでいるように見えました。 「ああ。俺は試合終了のベルが鳴った瞬間、対戦相手のことはもうどうでもよくなるんだ。気持ちは次の試合に向かっているから、負けた相手をさらに嘲ったり勝ち誇る必要なんてないんだよ。今回もそうだった。で、観客どもについて言えば、とっとと消え失せるがいい(go fxxk yourself)」 ──本日一発目のF爆弾が炸裂です(笑)。 「別に俺にブーイングしようがなんだろうが好きにすればいい。俺はこのスポーツに全てを注いで戦っている。勝利を得ることすらできれば満足だ。誰が俺を気に入ろうが嫌おうが知ったことじゃない。もちろん全員から嫌われたいとは思わないし、好かれるのは結構なことだ。でも嫌われるほうがいい点もあるんだよ。このスポーツへのさらなる情熱や熱量が生まれるからな。だから観客の俺に対するブーイングなぞ、俺の耳には美しい音楽みたいなもんで、まったくいい気分だぜ!」 ──ハハハ! 「で、面白いのはそうやって会場でブーイングしてた奴らに限って、試合後のカジノでは俺に記念撮影やらサインやらねだって来るんだよ」 ──アンチが対面ではファンになると。 「まあ、このビジネスはそういうもんだって俺も分かってるさ。だからファンの反応なんか気にしないよ。好かれようが嫌われようが、ファンがダニー・サバテーロの名前を認知してくれればしめたもんだ。俺のキャリアにおけるストーリーは、ずっとこんな感じで続くだろうよ。俺を試合内外ですごく熱心に応援してくれるファンもいれば、同時にアンチもわんさかいる。俺は嫌われ者と思われてるだろうけど、FacebookやinstagramやtwitterのDMでは『いつだって応援しているよ』ってメッセージを送ってくれるファンも多いんだ。  でも当然、好かれるより嫌われた方がクリック数が伸びるのも事実だ。だから今の状況は俺にはまったく都合がいいぜ。次のスタッツ戦でも別にみんなから応援されたいとは思わない。バッドガイ、悪役で大いに結構だ。あの連中を怒らせることほど愉快なことはない。このままどんどん行くぜ!」 ──SNSでは応援メッセージのほかに、ヘイトメッセージも受け取るのですよね。 「その通りだ。まったく滑稽なのは、そういうのはことごとく中途半端だってことだ。『会ったら殺してやる!』とか、傑作なのばかりだよ。10歳のデブガキかなんかが懸命に書いてるんじゃねえか?」 ──(苦笑)。 「それ以外は、逆にすごく熱心に応援してくれるコメントだ。それがいいんだよ。『ダニー・サバテーロ? そんな選手はどうでもいいよ』なんて言われるより、愛されるか嫌われるかの方が余程いい。そういう状況を作れているという点において、今のところ大成功だ。おかげで次のスタッツ戦は視聴者数も増え、Bellator史上最大の注目試合になるだろうからな! 俺が戦うからそうなるんだぜ。俺の目標は単に王者になること、他の団体も含めた統一王者になることだけじゃなく、Bellatorの顔になることだ。俺に本当に良くしてくれる最高の団体だ。俺もBellatorも、ここからさらにビッグになっていくぜ」 ──鉄のメンタルですね。近年日本ではSNSで有名人に送られる匿名のヘイトメッセージが深刻な問題となっています。サバテーロ選手流のヘイトメッセージへの対処の仕方等、アドバイスがあればお願いしたいのですが。 「自分をしっかり持って、ファイターであることだな。必ずしも肉体的な意味だけでなく、精神的な意味においてもだ。前に進み続けるんだ。そうすれば状況は良くなるよ。自分の生活のなかでベストなものを探そうぜ。友達や家族と過ごしたり、常に楽しむんだ。で、ものごとをあまり複雑に捉えたり、考えすぎたりしないことだ。いつもスマイルで、自分をハッピーにしてくれることをするんだ。あいつらの言葉になど耳を貸す必要はない。他人を批判するような連中の言葉などな。そんな奴らはいずれ勝手に消え失せる。  いつもハッピーでいて、またいつもハッピーでいるような人々と一緒にいるようにするんだ。その種のエナジーは伝染するんだよ。いつも不幸で文句ばかり垂れているような連中と一緒にいると、自分も同じようになっちまう。だからポジティブな人間と一緒にいるんだ。この世界にはヘイトよりたくさんのラブがあるんだよ。ヘイトの方がクリックを稼げるのが事実だとしてもね」 [nextpage] これはクレイジースポーツだ。金が貰えようが貰えまいが罵り続けるぜ ──「ヘイトよりたくさんのラブがある」、煽りから一転、熱いメッセージをありがとうございます。さて次は注目のスタッツ戦です。GP準決勝であるとともに、スタッツが持つ暫定ベルトも掛かっています。 「こないだのイーゴ戦とはだいぶ違う試合になるな。イーゴは一つのことに特化した選手だから、そこに気を付ける必要があった。でもスタッツは異なり、あらゆる分野で長けている選手だ。だから楽しくエキサイティングな試合になる。打撃が飛び交い、スクランブルの攻防もたくさん見れるはずだ。でも圧倒して勝つのは俺だ。この試合はBellatorの歴史における最大の試合の一つになるだろうな。今からみんなこの試合のことを話題にしているくらいだから、試合当日は凄えことになるぜ!」 ──あなたとスタッツは、非常に強力なレスリングベースを持っているという点では共通しています。差を付けて勝利するための鍵はどこにあると思いますか? 「“ダニー・サバテーロであること”だ。俺のスタイルで戦うってことだよ。奴もレスラーと呼ばれているが、俺のレスリングがはるかに上さ。もちろん通常のレスリングではなく、全然別のMMAレスリングのことだ。それ以外のすべての分野でも俺が上だよ。打撃もスピードも技術の精度も俺が上回る。そして俺の方が上背もあってリーチも長いから、間合いを保つ能力も高い。俺の方が動きもシャープだし、もちろんコンディショニングでも勝っている。だから試合が長引いても技術の質は落ちないよ。全ての面で俺が上だな」 ──絶対的な自信があると。 「まあ試合ではいろいろと試してリスクも犯してみるさ。たとえ俺が試合中に何かミスを犯したとしても、あいつはそこに付け込んで試合を決めることはできないだろうよ。奴はフィニッシュできるような技はたいして持っていないんだ。打撃にノックアウト・パワーがないし、寝技でもイーゴのような鋭い柔術があるわけじゃない。だからどんな試合展開になっても問題ないよ。打撃でも俺の方が上だし、レスリングの攻防になっても同じだ。奴はレスラーだけど、MMAレスリングに注目すると全然大したことねえよ。 (準々決勝でスタッツは)フアン・アーチュレッタに何度もテイクダウンを取られていたしな。だからどう転んでも、俺のスタイルで戦えば勝てる。もちろん向こうの戦い方に合わせた準備はしなくてはならない。すべての選手が異なる技術の組み合わせを持っているから、そこは考慮する必要はある。でも全体的に見て、この試合は俺にすごく分がいいぜ。俺のキャリアにおいてきわめて重要な試合だ。この試合に勝つことで世間の評価も上がり、スーパースターになれるはずだ。世界最強のファイターと呼ばれることになる」 ──この試合は、強豪同士の一戦であるだけでなく、Bellatorが誇る二大トラッシュトーカーの激突という点でも注目を集めています。そちらの面におけるラフェオンのスキルはどう考えていますか? 「いやあ、あいつのトラッシュトークなんか全くのゴミだね!」 ──そこまで言いますか(苦笑)。 「まあ確かに奴もガタガタ言うのが好きみたいだが、そのスキルに長けているわけじゃない。いつも噛んでるじゃねえか。記者会見で1対1でやり合えるのが楽しみでならないな。あいつは絶対緊張してプレッシャーを感じ、いろいろ言い間違えたりするだろう。その点でもこの試合は俺には都合がいいんだ。世の中に俺がベストファイターというだけでなく、ベストトラッシュトーカーであることも証明できるからな!」 ──なるほど。 「ただこれはよく言うんだけど、俺は別に場を盛り上げるために相手を罵倒しているわけじゃないんだ。単に俺はもともとこういう奴なんだよ。ひたすら喋り続ける。で、結果的に事実としてファイターとしてもトラッシュトーカーとしても奴より優れているってだけだ。まあ奴がスキルこそ低いものの、トラッシュトークをしたがることは俺にも好都合だ。試合がより楽しくなるからな。  俺と絡むことで奴のマイクの技量の無さが露呈されるよ。それで多くの人は困惑するだろう。奴はいつも相手に一方的にトラッシュトークを仕掛けるだけだから見栄えもいい。でもよく奴の話を聞いてみると、まったくひでえもんだ(fxxkin' sucks)。俺は奴が話している動画を見るたびに、あまりにファッ○○・バッドなんで耐えきれなくなってラップトップを閉じてしまうんだ。まあとにかく、あいつの実力のなさを曝け出してやるのが楽しみだよ。奴はただの人間だし、辛い経験になるだろうな!」 ──子供の頃からこんなに口が達者だったのですか? 「その通り。楽しいんだよ。多くの連中が俺のトークについて、ビジネスを盛り上げるためだとか金のためにやってるんだとか言うけど、奴らもそろそろ分かってきてるんじゃないか。俺は本心で話しているだけだって。もともと口が上手いんだ。他の連中はあらかじめセリフを用意したりするけど、俺はただ俺として話しているだけだ。それが楽しいんだよ。相手に精神的な戦いを仕掛けてる面もあるけどな」 ──と言うと? 「相手をいかに動揺させるかってことだ。(GP出場者決定戦の)ジョネル・ルーゴ戦でも、(準々決勝の)イーゴ戦でもまんまと奴らの頭に血を昇らせてやったさ。試合で奴らはあまりリスクを取らなかっただろう。試合前に気持ちを折ってやったからだ。これはクレイジースポーツだ。脳震盪が起こる率も高いし、半身不随になる危険すらある。だから試合前に対戦相手の目の前で散々罵って、俺は試合では残虐なこともやりかねない、ぶち殺してやるって伝えてやるんだよ。そういう心理戦的な側面に加えて、俺はもともと煽り合いが好きだってことだ。金が貰えようが貰えまいが、俺は相手を罵り続けるぜ」 ──根っからのトラッシュトーカーだと。 「そうやってより注目が集まり、よりプレッシャーがかかり、よりブーイングを受ければ受けるだけ楽しくなるんだ。その結果として次のストッツ戦がビッグファイトになるけど、俺はただ本来の俺であり続けているだけだ。もしも俺が試合前に相手とハグしたり愛想の良いことを言ったりしたら、みんなに俺がどんな人間かを誤解させちまうことになるだろ。俺はケージで対戦相手を殺そうとするような人間なんだから」 ──根っからのファイターでもあるわけですね。 「俺はレスリングをやっていた頃から、ずっとこれをやり終えたらMMAファイターになりたいと思っていたんだよ。大学を卒業したらファイティング(MMA)に行くと決めていた。レスリングをやっているときにも『なんだって俺はこんなバカげた(fxxking stupid)ことをやってんだ。早く“闘いてえ”なあ』って思っていたんだよ。でも学位を取ることも大事だから。いつだってプランBを用意する必要があるしな。だからレスリングに専念することにしたんだよ」(※サバテーロがATTの同門の堀口恭司を語る後篇に続く)
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