2022年11月19日(土)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT 2022 vol.7』にて、スーパーファイトのKNOCK OUT-BLACKフェザー級3分3R延長1Rで、グ・テウォン(韓国)と対戦することが決まった龍聖(NOPPADET GYM) 。9月の小笠原裕典戦では衝撃の1RKO勝利を見せ、「龍聖第2章の幕開け」を強く印象づけた彼が、今回は韓国人王者相手にどういう試合を見せようとしているのか。また「NOPPADET GYM」所属第1戦としての意識とは?
前回以上の衝撃を目指したい
──9月大会の小笠原裕典戦はいい勝ち方でしたね。
「正直、あんなに早く終わると思ってなくて。昨年の王座決定戦から3試合、自分の中でずっといい試合ができてなかったんですよね。王座決定戦で拳を折ったのが大きくて、そこからパンチの感覚がどうしてもおかしかったんです。特に右が振れないというか、拳が折れたから怖くてとかじゃなくて、ずっと打ってなかったので、感覚を忘れちゃってたと思うんですよ。ミットとかもどうしてもしっくりこなくて」
──感覚が狂ってしまったんですね。
「スパーリングとかでも右は全然ちゃんと打てないし、打ってもへなちょこパンチで。『昔の方がよかったなあ』と思っちゃってて。王座決定戦のあと、メディ・ジライフィ戦、それからRIZINでの魁志戦でも右がしっくりこないままで前回の試合だったんですね。でも練習の中で、何を変えたってわけでもないんですけど、それがしっくりくるようになって、『これだな!』っていう感覚が掴めたんです。それが大きかったですね」
──練習を重ねるうちに戻ったと。
「そうですね。その感覚で試合ができたのがよかった点だったんですけど、あんなに早く終わるとは思ってなかったので、ちょっとビックリしました」
──「ビックリ」というのは「自分の攻撃がこんなに効くのか」という感じ?
「正直、『そんなに効く!? 立てんだろ?』って思ったんですよ。でもタイミングで、相当効いたのかなとは思いますけど」
──ダウンした時とその後の様子を見ると、相当キツそうでしたけどね。
「最初から、ちょっと怖がってるなというのは感じたんですよ。開始前のフェイス・トゥ・フェイスの時に『あ、コイツ一瞬ビビったな』と思って。そこから一気に呑み込めました」
──試合前後の様子も含めて、TOKYO MXの『KNOCK OUT STYLE』で放送されていましたね。見てどう思いましたか?
「番組全体で、『KNOCK OUT』がだんだん大きくなってきたなという感じを改めて受けました。いい流れが来てるのかなと感じますね。テレビで自分の試合が流れて、僕自身というよりも周りの人たちがすごく喜んでくれました。両親もそうですし、ノップも画面を撮ってタイに送ったりしてて。そういうのがあって、僕のモチベーションもさらに上がりました」
──というところで、改めて今回対戦するグ・テウォン選手の印象を聞かせていただけますか?
「試合動画をまだ1試合分しか見てないんですが、後半の方が動きがよくなってる印象があって、スロースターターなのかなと思いました。最後の方はノッてきて自由に動いていて、そこを会見では「憎たらしい」と表現したんですけど。挑発してきたり、ノーガードで自由に動いてみたり、型にとらわれず、変則的に攻めてくる感じですね」
──そういう点が、龍聖選手と似ていると言われる所以だと思うんですが、ご自分ではどう感じますか?
「僕はそんなに危ないことはしないですし、そういうところを含めて『雑だな』と思ったんですよね」
──ノーガードで挑発したりしたら、新しいジムで会長になったノップ先生にものすごく怒られるのでは?
「(笑)。ポジションが安全な位置だったりしたらいいと思うんですけどね。相手には「危ねえな」っていう印象があるので、そこを突いていければいいかなと思います」
──今回もスーパーファイトという位置づけですが、試合のテーマは?
「練習環境が変わってから、格闘技が本当に楽しいんですよ。キツい練習も、どんな練習も本当に楽しくて、どんどん試合がしたいという気持ちで。だから今度の1試合に対するモチベーションじゃなくて、この試合もキャリアの過程の中の1試合に過ぎないという感じなんです。ジムもこれから始まりますし、モチベーションは常に高いです」
──なるほど。
「もちろん結果にもこだわるし、勝ち方にもこだわるんですけど、僕の人生はまだ21年しか経ってなくてこれからの選手としてのキャリアもあるので、その中のただの13戦目かな、という感じです」
──今回は正式に「NOPPADET GYM」所属になっての第1戦ということになります。その意味でも違うのでは?
「それはだいぶありますね。やっぱり大事な試合だし、前回以上の衝撃を目指したいです」
──あれ以上となると、なかなか大変なのでは?
「あれを続けていくのが大事だと思うし、単純に今、自信があるんですよね。他の選手と比べるわけじゃないけど、たまに、ノリにノって無双するヤツっているじゃないですか。勢いが止められないみたいな感じで。那須川天心とか武尊とかもそうでしたけど。天心も、いろいろキャリアを重ねていくうちに『前の方が強かった』とか言われたりもしてましたけど、一時期、ハンパない時期ってあったじゃないですか。それと似たような感じが、僕は今なんじゃないかと思ってて。ひと皮むけて覚醒するのが、もしかしたら今なのかなと感じてて。だから次も、またしょっぱい試合に戻るんじゃなくて、いい試合、いい勝ち方をしたいですね」
──でも「無双」というと、デビューからKOを続けていた時の龍聖選手を思い出しますけどね。
「それは本当にすごくあって、以前、僕は『倒せないわけがない』と思ってたんですよ。当てさえしたら倒れるというか。でもだんだん『倒れねえな』って感じになっちゃって、自分に対して『成長してねえな』と感じるようになったんですよ。自分では『何でだろう?』と思ってたんですけど、その時に今のジムの社長が『ノップさんとの練習が少なくなってるよ』って言ってくれて。その人は僕が中学生の時からジムで一緒で、夜とかはずっと一緒に練習してたんですね。僕は全日制の高校だったので、以前のジムの昼間のプロ練には行けなかったんです。だからいつも夜に一般会員さんと練習してて、その人ともずっと一緒に練習してて。自分ではやってる側なので分かってなかったんですけど、その人はそこを指摘してくれて、今回の環境になって『ああ、やっぱりそうだったんだな』というのを再確認できたというのは大きいですね」
──では以前のようにノップさんとしっかり練習できているのが大きいと。
「パンチの打ち方とかもそうですけど、練習のキツさで昔を思い出しますね。デビューした頃って本当に練習がキツすぎて、試合前は毎日練習がイヤでイヤで。早く終わりたくて仕方なかったんですよ。でも今は体力もついてきて、キャリアも重ねたのでだいぶ変わってたんですけど、この前の試合で久しぶりにあの感覚を思い出したんです。この前の試合って、昔の自分をみんなに思い出させるような内容だったと思うんですよ」
──確かにそうでした。
「客観的に見て、殺傷能力とかもすごくあったと思うんですよ。そういう点でも『ノップはすげえなあ』と思うし、これをやっていけば間違いないなというのは、改めて思いました」
──経験も積んで体力もアップしたところで、デビュー当時の無双感覚に戻っている感じなんですね。それは最強じゃないですか。
「そうなんですよ。だから今、一番いい時かなと感じてます」
──では次は、それをリングで出すのみ。
「あとはこれから試合までしっかり練習して、試合用に体をビシッと作って、あとは今やってることを淡々とやるだけかなという感じですね」
──では次の試合だけじゃなくて、これからの全てが楽しみですね。
「本当にそうなんです。来年3月の代々木大会もあるし、RIZINもまた機会があれば上がりたいし、海外でも試合がしたくて。最近、本物になりたいっていう気持ちがすごくあるんですよ」
──本物?
「8月にタイに行ってすごく感じたんですよ。後輩のジュニアの選手がタイに行っていて、僕も彼と同じジムに一回だけ行ったんですけど、そこには今ムエタイですごく有名な、1試合でものすごい大金を稼ぐタイ人の選手がいるんです。ジュニアで体重も30kg台なんですけど、メチャメチャ強くて。彼の試合を見に行ってローで倒してる姿を見たら、自分がすごくちっぽけに感じたし、今、「『KNOCK OUT』のチャンピオンだ」って言っても、世界に出れば誰も知らないじゃないですか。まだまだニセモノなのでそういう状況を変えたいし、海外でも試合していきたいなと思ってて、それが最近のモチベーションの一つかもしれないですね」
──今回の試合もそのための一歩という感じですね。では最後に、今回の試合で特に注目してほしいポイントは?
「僕が最後、何で倒すかを予想しながら見てほしいですね。僕は全部の技で倒せるし、これまでもいろんな技で倒してきているので。自分の理想としては、最近はパンチで倒した時はボディばっかりだったので、そろそろ顔へのパンチで脳を揺らして倒したいというのがあるんですけど、それも流れの中ではどうなるか分からないので、何で倒すかを予想して見てほしいと思います」