空手道では初となる“団体形”の日本一を決する『第1回全日本空手道団体形選手権大会』が7月22日(金)東京・ホテルメルパルク東京イベントホールで開催される。通常と異なり劇場空間による舞台演出を取り入れた第1回目の大会で、いかなる世界が生み出されるのか。「“見せ方改革”の真っ最中」と語る全日本空手道連盟・笹川善弘副会長に大会の見どころを聞いた。
空手の迫力と魅力を伝える団体形
――『第1回全日本空手道団体形選手権大会』が、主に芸術発表の場として利用されるホテルメルパルク東京イベントホールで開催されることになりました。開催の経緯を教えてください。
「団体形は大学生や高校生の大会ではやっていて世界選手権でも種目としてあるのですが、全日本選手権は今回が初めて、第1回目となります。私は道着を着たことがない、空手競技者ではない人間で、2014年の世界選手権で初めて団体形と団体組手を見ました。そのとき団体形がスゴい、カッコいいとインパクトがあったんです。また団体形の日本代表チームは男女とも世界選手権で連覇をしていて、世界で一番美しい団体形チームがいるにも関わらず、日本では全日本選手権が行われていなかったのです。この素晴らしさを伝える舞台を作りたいと思い、今回様々な決議を経て第1回を開催することになったんです」
――空手をされていないからこそ、感じることや見えてくる部分もあるかと思います。笹川副会長が思われる、団体形の魅力はどんなところになりますか?
「私はすごくスポーツが好きで、普段からいろんなスポーツを見るのですが、いわゆるシンクロナイズドされた動きをする競技というと、おそらくアーティスティックスイミングとダンスぐらいしかありません。団体形は、“合図や音楽がないのに、どうしてこんなに一緒に動けるのか!?”と、それがまず驚きで衝撃でした。不思議に感じたぐらいです」
――大会ビジュアルにも「『一致』が生み出す圧倒的芸術」とキャッチコピーがありますが、静寂の中で繰り出される一致した動きが団体形の大きな魅力と言えそうです。
「一致した動きの他にも、五感全てを刺激する演武となってます。道着の擦れる音、その音も近くにいたら波動のように伝わってきて、肌で感じられるんです。空手の種目は形と組手の2つに大きく分かれ、形はさらに団体形と個人形の2つがあります。団体形は全ての種目の中で一番エンターテインメント性が高く、初めて観る方でも分かりやすい競技だと思います。さらに世界で最も美しい団体形チームを男女ともに揃えている国というのは私たちしかいない中で、それが知られていないのはもったいないと思っていました。今回第1回全日本選手権を行うにあたり、最もカッコいい見せ方を追求したかったというのが最初にあります。
その一つとして、より効果的なサイズの会場・場所で見せたいという思いがありました。ですのでフェンシングさんの取り組み(※主に演劇などを上演する新宿の東京グローブ座で全日本選手権を開催した)もスゴいと思って参考にさせて頂き、空手なりにコンバージョンしながら今やらせて頂いています」
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空手の“見せ方改革”
――当日は劇場で行われるということで、通常の大会とは異なる演出も用意されているのでしょうか。
「光と音と舞台装飾に力を入れていて、舞台装飾は団体形のシンクロ性、空手が持つ和の雰囲気と美しさを引き立てるものにデザインして頂いてます。今回はいきなり3位決定戦から始まって、その前に何が起きたんだ? という方たちもいらっしゃると思うので、予選のダイジェストやルール説明動画も流して、“予選を勝ち抜いた人たちが今ここにいます”といった演出もさせて頂きます。初めて見る方も多いでしょうし、自分が初めて空手を見た時の気持ちは大切にしたいと思っています。今はそういった全空連における“見せ方改革”の真っ最中です」
――愛好者だけをターゲットにするのでなく、新しい、より広い層に訴えていくと。
「そうでないと競技として普及・発展ができないですよね。他のプロスポーツは見せ方の工夫で、パッと見て2、3秒で何が起きているか分かることができます。そこが私たちと決定的な違いだと思います。スポーツで普及を目指すなら、やはり理解してもらわなければ普及に繋がらない。分からないものは誰もやりたがらない、というところに尽きます。団体形を今回劇場でやる理由はそこにあって、これが一番いい伝え方なのかなと思っています。たた“劇場でやりたいから”という、そういう考えではないんです」
――より団体形の魅力と意味合いを伝えるために劇場を選択されたと。興味はあるけどこれまで観たことがない、初めてだけど空手を観てみたい、そういった人たちも今大会は入り込みやすそうです。
「金曜日の夜6時から始まって、映画より少し短い90分ですので、その後で飲みに行ってもいいかと思います(笑)。90分という長さはちょうどいいかなと思って設定しています。短過ぎても物足りない感じがありますし、“もう少し観たい”“また来たいな”と思ってもらえれば。それにはやっぱり流れやロジックがあるので、そこはブルーマングループのツアーを制作するトリックスターエンターテインメントさんの知見を借りて、そういった流れを設計させて頂いています。伝統に革新をもたらす表現を五感で堪能して頂きたい」
――新たな形の“空手エンターテインメント”が今回の全日本選手権で誕生することになりそうです。
「団体形は海外の大会では終わった後でスタンディングオベーションが起きるんです。日本だと静かに観戦する雰囲気が あるのですが、劇場だともう少し観客と一つになれる空間なのかなと思いますし、外国の方にも多く足を運んで頂きたいと思います。最後にスタンディングオベーションが起きるのを一つのKPIに置きたいです(笑)」
――大会を楽しみにされる方たちへ最後にメッセージをお願いします。
「全空連で初めての試みとなる空手の表現を五感で楽しんで頂きたいです。今年の連盟のスローガンは「Break Through ~伝統に革新を~」で、これは“伝統を大切にしながら進化を目指す”という意味合いです。私たちなりの“伝統に革新を”というところが今回の表現の仕方に繋がっているので、そこを堪能して頂きたいです」