戦った人間にしか分からない那須川天心の異常に長いリーチ
さらに「天心って実は手が長いんですよ。ヘビー級の選手より長いんです。なおかつ身体が柔らかいので普通の人よりも30~50cmくらいさらに距離があると思います。だから当てて、ちょっとステップバックしたら相手の返しの攻撃は当たらないじゃないですか。志朗が以前に『彼は猿みたいだ』と言っていたじゃないですか、そのことだと思います。一緒に練習したり、やった人間にしか分からないですよ。めちゃめちゃリーチが長いんです。なおかつ伸びるので、普通なら来ないところで当たっちゃうんです。そこで打ち返してももうその場にはいないんです。リーチとスピードとピンポイントで当てる、それが那須川天心の強さですね」と、異常に長いリーチの長さを武尊が把握できていなかったことも勝利のポイントとしてあげた。
「2、3Rの採点はイーブンだったんですけれど、我々の中ではワンサイドゲームでした。天心が一方的に当てているだけで、相手の攻撃はブロックしていました」と、完璧な試合だったとまとめる。
試合後はどんな会話を交わしたのかを聞くと「解説席に来て『会長、俺やったよ』って言ってきたので僕は『よくやった、おめでとう』と言って。その後リングで抱き合った時に『今まで本当にありがとう、お疲れさま』と言いました。終わった後は普通の天心に戻ったので日常会話ですね」とのこと。伊藤代表は「試合も感動したけれど、一番感動したのは両選手が泣きながら話している姿に物凄く感動しました。二人が背負ってきた事の重さが見えてあそこは僕も泣きました。格闘技って素晴らしいなって本当に痛感させられました」と『THE MATCH』一番の名場面だったという。
『THE MATCH』ではRISEとK-1の対抗戦も行われ、RISEが5勝4敗で勝ち越した。これについて伊藤代表は「THE MATCHに出る選手とか関係者の共通LINEがあるんですよ。そこで試合前に言わせてもらったのは、とにかく自分のために勝てと。自分が最も輝くために戦いなさいと。それをすることによって応援してくれる方々に恩返しが出来るし、最終的にはRISEのためになるから自分のために輝いて勝てと。全選手に激励のLINEを入れました」との裏話も。
那須川天心のRISEでのプロキャリアが終わったことについては「しっかり送り出せてよかったなと。でも寂しいですよね。僕の中でもぽっかり穴が開きましたね。ただ天心はこれから未来に向けて走るので、そこはサポートしたいと思っています。寂しいですね。子供が就職して家から巣立つみたいな。そんなイメージです」とした。
そして「天心には今以上に輝いて欲しいし、天心・武尊選手みたいな選手って出てこないと思うんですよ。ただ、ああいう志を持った選手がRISEにもK-1にもいることが確認できたので、彼らが次を盛り上げていく。しのぎを削って5~6人で競い合ってNEXT天心、NEXT武尊みたいなのが出てきたら面白いですよね。すぐには出てこないと思います。ただ、いい選手はいっぱいいるので。あの大会を見てもそうですし、どこを見てもいい選手はいっぱいいるので、そういう選手を引っ張り上げて磨いていくのは必要ですよね」と、NEXT天心を育て上げていくことが自分たちの使命だと語った。