(C)ONE Championship
2022年6月3日(金)シンガポール・インドアスタジアムで開催される「ONE 158: Tawanchai vs. Larsen」で、元ONEフライ級世界王者で現2位のカイラット・アクメトフ(カザフスタン)と和田竜光(日本)が対戦する。
和田は2連勝中。2021年10月の「Road to ONE: 5th Sexyama Edition」で、実力者・竹中大地と対戦し、スプリット判定で勝利すると、2022年1月には体重超過した中国のワン・シュオと61.5kgのキャッチウェイトで戦い、判定勝ちを収めている。
2016年12月にはRIZINでカイ・カラフランスにも判定勝ち。そのカラフランスが7月30日(日本時間31日)の『UFC277』でブランドン・モレノとUFC世界フライ級暫定王座決定戦を争うことも決まるなか、あらためてONEの同級のレベルの高さ、そして和田の実力者ぶりが見えて来る。
対する元王者アクメトフは、MMA28勝2敗。2017年8月にアドリアーノ・モラエスに判定負けで王座陥落し、2018年1月にジェヘ・ユースタキオとの再戦を非常に接戦の内容で落として暫定王座ならず。しかし、以降は、マ・ハオビン、リース・マクラーレン、キム・デファン、ダニー・キンガドにすべて判定勝利するグレコローマンレスラーだ。
精緻な打撃と組みを持つ和田は、テイクダウン&コントロールで極めさせないアクメトフをいかに攻略するか。
俺のことを抑え込めるのかな
──前戦では5連勝中だったワン・シュオを完封しました。ご自身ではいかがでしたか。
「相手はストライカーでどこかの団体のチャンピオンとかで、KOとかで勝って来ていた選手だったんですけど、そこでも勝負するつもりでやって、結局やられることはなくて。ポジション取ったりして、MMAをやって勝てた。まあ、ストライキングで自信持ってやれているなっていう気持ちはありました」
──今回のカイラット・アクメトフはさらに強豪です。新たに取り組んだことなども何かありますか。
「取り組みとしては大きく変わっていないですね。ここ1カ月、2カ月は練習時間が多く取れた。良い練習ができました」
──タフな相手に連勝中ですが、和田選手がランキングに入っていないことについてはどう感じていますか。
「フライ級で僕のこの戦績であれば、入っていなくて当然だと思っていますね。ただ、僕はDJ(デメトリアス・ジョンソン)にしか“負けていない”と思っているので。マクラーレンにも、ヨッカイカーにも。結果として負けがつきましたけど、負けたなと思ったのはDJだけだった。その星が全部逆だったらランカーだとは思いますけど。そうはないので、そりゃそうだなと。負けているので。現状の結果だと当たり前ですね」
──たしかに際どい判定でした。ご自身をランキングに入れるとすれば、どの位置だと思いますか。
「チャンピオン(アドリアーノ・モラエス)は強いし、DJも強いし。あとはカイラットがその次ですよね。僕は、チャンプとカイラット以外とは試合をしている。佑弥は別として。カイラットより自分の方が強いと思っているので。そう考えると2位かなって。でもやってみないと分からないですね」
──直近4戦で3勝かつ2連勝中です。ランカーであり元ONE世界王者との対戦に向けて準備万端でしょうか。
「準備は万端。それこそランキングに入っていない選手なのに、カイラットとできるのはラッキーですよね。一番やりたい選手だったので。実際に、(次に戦いたい選手として彼の)名前も出したりしていました。チャンピオンは別で、僕はDJともマクラーレンとも、キンガッドともやっていますし、カイラットは彼らに良い勝ち方していたので、その相手との試合をオファーをもらったのですぐ『YES』と返答しました。この前勝った時に『誰と試合したいか』と聞かれた時にも、カイラットの名前を出しましたし」
──アクメトフはグレコローマンでカザフスタンの国内王者に3度つくレスラーです。テイクダウンして抑え込む。相手のテイクダウンを切る。強い体幹からパンチを強振する。実際、どうとらえていますか。
「腰も強くて、強いパンチを振ってきて、パンチからのテイクダウンとか、テクダウンディフェンスとか──ガッツのある良い選手だなって思っています。技術がすごいなとかは思わないですけど。過去の試合で言うと、一番最近のダニー・キンガット戦を何度か観ました。動きは頭に入れています。コーチもよく見てくれていて、対策を考えてくれてアドバイスしてくれています。自分の持っているものと合わせて当日戦ってみたいなと。印象は、体が強いなと。組み負けたりするシーンは見ないので、強いんだと思います。
もちろんレスリングが強いと思うので、テイクダウンも警戒しますし。身体が強いからパンチも重かったりするので警戒しています。ただ、彼よりも強いレスラー、グラップラー、ストライカーとも練習しているので、その体験はしてきた。自信というか体験があるので恐れていないです。
──難攻不落と言っていい相手を、和田選手がいかに切り崩すのか、注目しています。
「ぶつかり合って。ぶん殴ってやろうかなと思います。もちろん細かい作戦はありますけど、相手は殴られるのを嫌がると思うので。僕も自分が強いと思っているので。シンプルに力とかじゃなくて。ぶつかったときに押し負ける感じはしないですね。テイクダウンされるシーンもあると思いますけど、俺のことを抑え込めるのかなと。彼から逃げられそうだし。やられる気はそんなにしていないですね。」
──フィニッシュはどう想像していますか。
「彼はあまりやられたことがないから、やられたらびっくりすると思うので、びっくりさせてやろうと思います。決めてないですけど、バックチョークが得意なので一本勝ちしたいし、パンチも強いのでKOしたいですけど。僕も堅い試合をするので。大会を盛り上げようとか一切思っていないので。檻の中に入ってどっちが強いんだ、というだけなので、ジャッジ含めてちゃんと見ててくれよなって。シンプルに強い選手ではあると思うので、気をつけなければいけないことはたくさんあると思うし、ミスもなるべくしないように戦いたいなって思います。ただ、単純に強い方が勝つ。ミスするのも実力の内なので。檻の中で、あのルール、時間制限の中でどっちが強いのか決まるだけです」
──相手はランキング上位にいて、タイトル挑戦目前と言っても過言ではないと思います。そんな中でアクメトフにとってもノンランカーの和田選手と戦うのは落とせない試合になるかと。
「確かに向こうからしたらリスクのある試合だとは思います。ただ偉いなと思います。そういう試合を受けたことが。断ることもできたと思いますし。彼が自信がある証拠でもありますよね。とりあえず消化試合というか、勝ってタイトルマッチやらせてくれって言おうとしているのかなって。まあ、偉いなと思いますね。良い戦績があるので、『俺に(タイトル戦)やらせろ』ってアピールすることもできると思うんですけど、僕みたいにランカーじゃない選手を相手にしてくれることは偉いなと思います」
──アクメトフは和田選手のことを「ディフェンシブな試合をする選手」と話していたそうです。そう見られることは和田選手にとっては……。
「そう見えているんですかね。それは見る目がないなと思います。MMAの見立てを分かっていないと思うので、教えます。体験してもらいたいなと思います」
──アクメトフはプロキャリアでは2敗、どちらも判定負けでフィニッシュされたことはありません。今回の勝利の鍵はなんだと思いますか。
「先ほども言いましたが、ぶつかろうかなって思っています。相手が身体強いから、レスリング強いからって相手を過大評価して、そこからディフェンシブな展開になると、相手がやりやすくなってしまうので、相手をびっくりさせようと。打ち合う展開があるかもしれないし、テイクダウンしてカイラット選手がやりたいことを、僕が逆にやる展開もあるかもしれない。もちろんディフェンスに回る場面もあると思います。でも“後手のディフェンス”をしたくない。“オフェンシブなディフェンス”をしたいですね」
──“攻撃的な防御”だと。和田選手は1R 52秒一本勝ちのレコードがあります。これはONEフライ級で2番目の記録となります。また、DJ戦ではおたつロックも含めグラップリング技術で相手を苦しませています。しかし、今回のアクメトフは組みの猛者でもあります。
「僕、グラップラーだと思われがちなんですけど、その意識はないですね。結果そうなっているだけで、ストライカーとストライキングしてもやられていないし、それこそONEに来てからろくに殴られていないんじゃないですかね。ストライキングについては自信がある。それなりに戦える自信がある。それはグラップリングも含めてそうで、僕がやりたいのは“混ぜて戦うこと”なので。良い場面で良い打撃を、良いグラップリングを出すという戦い方になります」
──前回の戦いが終わったあと『DJ戦が叶ったので一人ずつやっつけていくだけ』とコメントされていましたが、今ゴールとしているものは?
「僕がチャンピオンになるっていうこと一択です。どういう結果になっても良い。今はベルトを取りたいなというのだけです。一人ひとりやっつけていくのも、ベルトを取るために必要なので。カイラットがランキング2位で、彼をやっつけたらその上とやる資格があるはず。それが無いと言われても、あるだろと言うつもりだし、それを言うために勝つつもりです」
──アクメトフはよく「自分が次のタイトルマッチ挑戦者またはデメトリアス・ジョンソンの相手だ」と口にします。和田選手としては勝って王座挑戦だと。DJとの再戦を考えることはありますか。
「DJが上にいるんですけど、前に戦ったし。DJもモラエスに負けたし、ランキング1位だけど、ロッタンに勝ったくらいじゃ甘いだろと。この試合で勝ったらタイトル戦やらせてくれよって言いたいですよね。これを勝つことに今は集中しています」
──最後にファンへメッセージをお願いします。
「6月3日の金曜日、あのケージの中で、あの決められたルールの中で、どっちが強いのか、しっかり見ていただけたら嬉しいです。頑張ります!」