身長で13センチ、リーチで20センチ差がある堀口とコールドウェル(C)RIZIN FF/Bellator
6月14日(日本時間15日)、米国ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われる「Bellator 222」にて、Bellator世界バンタム級タイトルマッチに出場する堀口恭司(日本/アメリカントップチーム)とダリオン・コールドウェル(米国/アライアンスMMA)らメインカード出場選手が12日(同13日)、同地の会場前でオープンワークアウト(公開練習)、その後、囲み取材、そして本誌の単独取材に応じた。
ジョン・マッカーシーが「RIZIN世界バンタム級王者」とコールするなか、マディソン・スクエア・ガーデン前の屋外の特設マットの上に立った堀口は、RIZINのオリーブグリーンのオープンフィンガーグローブを着用。
前回のコールドウェル戦同様に、アメリカントップチームの名将マイク・ブラウン、“仮想コールドウェル”として対策を練ってきた長身のジョシュ・スミスをパートナーに、2セットの公開練習を行った。
最初は、コールドウェルと同じサウスポー構えのスミスを相手に、長い手を伸ばしてくるダブレッグテイクダウンをがぶって切ると、遠い間合いからの飛び込み、さらに詰めての連打など、いつも通りの動きを見せた。
続けてブラウンが持つミットには、ワンツーから右アッパー、右ストレートから後ろ廻し蹴り、左ヒザ蹴りから右ハイなどのコンビネーションを披露。
今回の堀口はフロリダからニューヨーク入りしたため、日本での戦いのように時差もなく、順調な仕上がり具合をのぞかせつつも、試運転といった動きで公開練習を終えた。
コールドウェルは圧巻の動きを披露
対するコールドウェルは、ホームらしくアグレッシブな動きでファンを沸かせた。
堀口のように前後に細かくステップするパートナーを相手に、サウスポー構えから、長いサイドキック。遠間からパワフルなダブルレレッグ(両足タックル)でテイクダウン。スタンドでは、首相撲からのヒザ蹴り、一転、放した際でのバックヒジ打ちなど流れるような動きを披露。
また、組んでも河津掛けから前転してのバナナスプリット(股裂き)、ヒザ十字、さらにストレートフットロック(アキレス腱固め)狙いから、フォークスタイルレスリング出身らしく、足を持ってうつ伏せになってからのファンクロール的な動きで立ち上がるなど、サブミッションもいけるとばかりにデモンストレーションを行った。
さらに圧巻は、相手の突進をかわして飛び越え、前転して背後について回してフォール、バックにつきながら長い足をかけての払い腰、バックマウントからの腕十字など、アクロバティックな動きで詰めかけたファンを魅了した。
最後は側転からのバック宙で締めたコールドウェルは、前戦のリングからサークルケージでの戦いになることについて聞かれ、「ここはホーム。おれのものだ。アメリカだぜ?」と観客を煽って見せた。
公開練習後は、各選手が囲み取材。
多くの報道陣に囲まれた王者・コールドウェルは、「とても集中して練習してきたよ。ケージなら、よりプレッシャーを与えられるし、レフェリーに止められて違うポジションから再開ということもない。より圧力をかけて彼を倒す」と自信の表情。
対する挑戦者・堀口は、コールドウェルのホームでのコンディションの良さについて、「前回は日本のリングなど慣れていなかったことも多いと思う。今回、すごいもっと強くなっていると想定して、違う選手だと思って自分も戦います」と気を引き締めると、事前のオッズがコールドウェル有利とつけていることについて問われ、「簡単な試合にならないとは思いますけど、しっかり勝つ試合をしたい」と淡々と、しかし力強く語った。
堀口「RIZINを背負っている気持ちもあるし、2人の王者が戦うことでMMA自体をもっと大きくしたい」
──(現地記者から)練習拠点のフロリダからニューヨーク入りしていかがですか。
「調子はとてもいいです。そんなにニューヨークが好きというわけではなくて。というのも外はビルだらけだし(苦笑)、自分は自然が好きなんで」
──前回はなぜ一本勝ちできたのでしょうか。
「対策を練ったときに、一度、(コールドウェルが)ギロチンで負けていたので、それをやりました」
──今回はケージでの戦いです。
「もともとケージの方がやりやすいですし、アメリカントップチームでの練習もケージなので影響はないです」
──RIZINを経て、UFC時代といまでどう変わりましたか?
「よりオールラウンドになりましたし、スキルも上がりましたので、コンプリートファイターになったかなと思います」
──日本のRIZINで成功を収めているのに、なぜこのようなリスクのある戦いをしようと思いましたか。
「MMA、格闘技自体をもっと大きくしたいですし、2つの団体のチャンピオン同士がベルトを賭けて戦えば、日本の格闘技ももっと盛り上がるだろうと思ってやりました」
──今回のコールドウェル選手は、日本で対戦したときよりいい状態で臨めると思います。
「そうですね。前回はやっぱり日本のリングとかに慣れていなかったと思うので。たぶんあまり調子の良さそうな顔もしていなかったですし。今回、すごいもっと強くなっていると思って、違う選手だと思って自分も戦います」
──もし勝てば、2団体の王者という偉業を成し遂げます。それは堀口選手にとってどんな意味を持ちますか。
「そうですね……自分にとってということではなく、MMA全体が大きくなることに貢献できるんじゃないかなと思います。初めて2つの団体のベルトをとることによって格闘技界に新しい流れができてくるのではないかと。例えばUFCのチャンピオンと戦うとか、いろんなことが可能になってくるのかなと思います」
──先日、ヘンリー・セフードがマルロン・モラエスに勝ちました。この試合に勝ったら堀口選手は世界のバンタム級でどんな位置になると思いますか。
「世界のトップと並ぶくらいの位置につくのかなと思います」
──コールドウェル選手はこの試合に勝ったら、ヘンリー・セフードらUFCのトップファイターと戦いたいと発言していますが、堀口選手はセフードやアルジャメイン・スターリング、マルロン・モラエスとどのような試合ができると考えていますか。
「まあ、そうですね……十分、渡り合えると思っているので、まずはこの戦いをしっかり制して、その後でそういったようなことは考えようかなと思います」
──(本誌取材)今日の公開練習で相手をしたジョシュ・スミスはもともとサウスポー構えでしたか?
「もともとサウスポー構えのレスラーなんです。すごい身長も(コールドウェルに)合っているので、対コールドウェルにすごくいい練習相手かなと思っています」
──公開練習では、コールドウェル選手は非常にアグレッシブな動きでした。特にレスリングの動きから関節技、足関節などからのトランジッションも見せました。公開練習用の見せ技的な動きなのかもしれませんが、もしそういう動きをしてきたらむしろ堀口選手にとっては……。
「そうですね。そういう動きをしててくれたら、逆にやりやすいです。関節技の対策はいつもしっかりやっていますし、潰せるんで」
──前戦では堀口選手が勝っていますが、今回はケージでコールドウェル選手のホームです。現時点でのオッズではサイトによって異なりますが、コールドウェル選手有利と出ています。
「やっぱり1回やって勝っていますが、相手も自分の動きとかもわかっているので、そんな簡単な試合にならないとは思いますけど、しっかり、勝つ試合をしたいと思います」
──練習では、あらためて3Rと5Rの違いをどのように感じていますか。前回のように我慢の展開になったときに、堀口選手にとって有利に戦えるような練習をされてきたのでしょうか。
「もちろん、そういった練習をし戦略も練ってきていますが、自分、スタミナがあるので、3Rと5Rであまり気にしていないです」
──今回の公開練習では、RIZINグローブを着用していました。RIZINを背負っているという気持ちも?
「もちろん、ありますね。それと同時にもっともっとMMA自体を大きくしたいなという気持ちもあります」
──Bellatorのベルトを取る気持ちと、RIIZNの王者としてその価値を守るのと、どちらが大きいですか?
「うーん、両方ですね」
──前回のコメントでは「しっかりとKOか一本で勝って“日本人も強いんだぞ”というところを見せたい」と語っていただきましたが、今回は、日本で練習拠点にしている一期倶楽部の生徒たちにメッセージをお願いします。
「しっかり勝ってくるから。みんなも頑張ってください!」