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インタビュー

【Bellator】11カ月ぶり再起戦の渡辺華奈「負けたおかげで、いろいろなことに挑戦してまた強くなれた。ファイターであるために──」=元キック&柔道王者のキルホルツと5.13 英国で対戦

2022/05/12 19:05
 2022年5月13日(日本時間14日)英国ロンドンのSSEアリーナにて、『Bellator 281: MVP vs. Storley』が開催される(U-NEXTライブ配信)。  日本時間土曜日の早朝からのメインカードに、日本から渡辺華奈(FIGHTER'S FLOW)が出場。女子フライ級2位のデニス・キルホルツ(オランダ)と対戦する。  渡辺は、柔道で2016年アジアオープン準優勝、ヨーロッパクラブ選手権準優勝などの実績を残し、MMAに転向。DEEP JEWELS、RIZINで活躍後、2019年12月のRIZIN×BELLATOR対抗戦で、当時3連勝中だったイララ・ジョアニを3R、パウンドでTKO。2021年4月のBellator 255で米国デビューし、アレハンドラ・ララにスプリット判定勝利。Bellator2連勝を飾った。  しかし、2021年6月の前戦でUFCでバンタム級とフライ級で王座挑戦経験のあるリズ・カモーシェ(米国)に右の強打を効かされてのラッシュで1R、35秒でTKO負け。MMAで初黒星を喫した。今回は眼窩底骨折からの約11カ月ぶりの復帰戦にして再起戦となる。  対するキルホルツは、元Bellatorキックボクシング世界女子フライ級王者。キック王国オランダでSLAMM女子60kg級王座に就き、WMTA世界女子スーパーバンタム級王座も獲得するなど、立ち技で47勝3敗という脅威の戦績を持つ。さらに渡辺と同じ柔道のバックボーンも持ち、U15のオランダ王者、U17で準優勝、U20で3位というアスリートだ。  2021年7月にはジュリアナ・ヴェラスケスの持つBellator女子フライ級王座に挑戦するもスプリット判定で惜敗。欧州大会で注目されるなか、“キルホルツの再起の相手”として渡辺が選ばれたともいえる。  打撃に課題を持つ同級3位の渡辺にとって、トップストライカーのキルホルツとの試合は試練のランキング戦であり、カムバックのチャンスの試合でもある。渡辺が認める通り、相性の悪い相手だが、立ち合いで屈せず、組んで抑え込むことが出来れば、綻びも見せる前タイトルチャレンジャーとのマッチアップで渡辺は、アップセットを起こせるか。  渡英前の渡辺に話を聞くと、新たな練習環境での手ごたえ、不屈の闘志を語ってくれた。 今回はポータブル湯船を持っていきます ――ロンドンでBellator女子フライ級2位のデニス・キルホルツと対戦する渡辺華奈選手です。日本時間の5月13日の金曜日の深夜からプレリムが始まり、14日の土曜日の早朝5時からのメインカードに出場となります。これから空港へ向かうということですが(※インタビューは7日に行われた)、すでに鮮やかな髪色ですね。 「はい(笑)。試合のときはいつも赤の髪にしていただいて、今回もそれどおりにしました。4日前にこうしたんですけど、でもたぶんまたすぐ色が落ちてしまうので、持っていきます、また日本から」 ――あっ、そういうものなんですか。 「カラーシャンプーみたいな感じなので、染めるというよりは、直前にまた色を入れて、赤にするという感じなんです」 ――儀式的にいよいよ試合だと、スイッチが入りますか。 「そうですね。あんまり美容室に行くことがなくて、女子としてヤバいんですけど(笑)、あまり試合のときくらいしか行かないんで、美容室に行くと“おお、試合だな”という気がしますね」 ――渡航しての試合は大変ですが、ロンドンには、柔道の実業団時代にも行ったことがあるそうですね。 「合宿で行ったことあって、でも、そのときも柔道してただけなので(苦笑)、観光は半日くらいできたのかな。ロンドン・アイとビッグ・ベンとか行ったくらいですが、街並みがきれいだし、すごくお洒落な紳士な方が多くて好印象なイメージです」 ――ジェントルマンでしたか。 「英国紳士みたいな。柔道選手も男性コーチもすごく紳士的に接してくれました」 ――ロンドン大会で取材したときはカレーばかり食べていた記憶があります。ご飯が美味しくないなか、減量で現地でカレーを食べるわけにもいかないでしょうし……。 「たしかに、ご飯はまずいですね。全然現地で何を食べたか記憶に無いです(笑)。そのときも基本的に日本から持っていったものを食べてましたね。今回もスーツケースいっぱいに、お湯を入れただけで出来るアルファ米とか、出来上がっているおかゆとかパスタとか、鍋も持っていきます。試合前がちょっと難しいですかね。塩分をカットして、糖質もあまり取れなかったりするので、そこで現地のフルーツとか野菜とかが取れれば、と思うんですけど、最悪、サプリメントとかドリンクはいっぱい持っていって補給します」 ――今回、最後はどのくらい落とす予定ですか。 「だいたい、2キロくらいですね」 ――では、前回よりも通常体重を少し減らして調整されてきたと。 「そうですね。前回がけっこう現地でキツかったんですけど、今回はもうちょっと余裕を持って減らしているんです。でも、やっぱり最後はすごいキツくなると思うので、今回ポータブル湯船を持っていこうと思って、詰めました」 ――膨らませて湯舟を作ると。 「そうですね。空気を入れて。アメリカでは2試合とも部屋に湯船がなくて、簡易サウナが用意されたんですけど、なんかちょっとキツいので。あと、トレーニングする場所とかもかなり寒くて、汗をかくのにとても苦労したので、今回はポータブル湯船を持っていって、部屋で暖房をつけて入ろうかなと思っています」 ――それはかなりの大荷物になりますね。 「はい、それに入場時の柔道衣や、減量スーツ2枚とか、いろいろすごい荷物になっちゃうので、セコンドの方に荷物を少なくしてもらって預けたりして持ち込みます」 [nextpage] 前回、カモーシェ選手にやられたことを── ──2021年6月の前戦では、当初の相手のイリマレイ・マクファーレンから、試合2週間前にリズ・カモーシェに変更となり、世界レベルのMMAの打撃の洗礼を受け、12戦目の初黒星を喫しました。あの後、手術も行ったようですね。 「はい。眼窩底の手術をして、それで打撃練習の再開は9月くらいからでした。カモーシェ戦後に週2回、打撃のジムに通い始めて、PURGE TOKYOで、矢口(哲雄)先生から打撃の指導を受け、対策も練ってもらいました」 ――矢口トレーナーの指導で打撃のスキルをアップした。MMAの打撃としても指導を受けているのでしょうか。 「MMAの打撃をいろいろ研究して教えてくださっていますね。私が柔道出身なので、そのことも考慮して、位置取りとか距離、自分の動きに沿って、ほぼマンツーマンくらいで教えていただいていて、練習でやってきたことが、試合で少しでも出せればと考えています」 ――ハワイ大会では、渡辺選手が敗れたカモーシェがヴェラスケスに4R TKO勝ちで王座を奪取しました。 「試合自体はヴェラスケス選手がコントロールしてて、打撃もうまいし強いなという印象だったんですけど、ワンチャンスをカモーシェ選手がモノに出来る、カモーシェ選手の気持ちがめちゃめちゃ見えた試合だなと感じました。私の試合のときからだと思うんですけど、すごく前に出るようになったんですよね。それまではけっこう見て、ベテランならではの戦い方をする選手だったのですが、私との試合で覚悟を決めてKOする、とばかりに前に思いっきり出てきて、ヴェラスケス戦でもスタイルが変わったなと感じました」 ――そうして迎えるキルホルツ戦。対戦相手の名前を聞いたときにどう感じましたか。 「最初に聞いたときは、前回の(ヴェラスケスとの)タイトルマッチも見ていて、柔道ベースで打撃がすごく強い。身長は160センチで、私が167なので、私より小さいんですけど、リーチが同じくらいなので、そこのアドバンテージもあまりない。前回、自分は打撃で負けてるので、やっぱり相性は良くないのかな、すごい強敵だなという思いでしたね」 ──キルホルツは立ち技で47勝3敗という戦績を持っています。渡辺選手の課題でもある打撃のディフェンス面については──もちろんMMAのなかで被弾しないということについての手ごたえはいかがですか。 「なかなかできなかった部分は多かったんですけど、本当ここ数回の練習、4月に入ってからくらいの練習で、ちょっとできるようになってきて、ギリギリ間に合いそうだなという感触を得ています。まだまだ欠点はあるし、完璧ではないんですけど、少しずつもらわないということが分かってきました。そして今回、秘策も用意しています」 ――前戦まで4連勝していたキルホルツは、2021年7月の前戦で長身のヴェラスケスにスプリット判定負け。あの試合はどうご覧になりましたか。 「全部打撃の攻防で、組み、寝技の展開が1回もなかったので、もうちょっと寝技の展開を見てみたかったというのはありますが、キルホルツ選手、1発を当ててどんどん入って振り回してくるので、やっぱり打撃の怖さはあります。その点、ヴェラスケス選手がけっこうリーチを活かして、しっかりサークリングして足を使って、ポイントポイントを当てていたので、手数はキルホルツ選手のほうがあったのかなと思うんですけど、ポイントポイントで当てたり、テイクダウンをラスト10秒くらいで決めたり、試合巧者だなと感じました」 ──見切りと回転が速く、ヒザ蹴りや近距離パンチも上手い。打撃の怖さのあるキルホルツ選手を相手に、打撃で真正面から打ち合う必要もなく、MMAのなかでいかに対するか。 「自分から行くことも大事だと思っています。なんとなく試合を見て入るんじゃなくて、自分から行く。前回、私がカモーシェ選手にやられたように行くこともプランの中にあります」 [nextpage] ここでビビって出られないとファイターじゃない ――そうなったとき、組むことも出来るキルホルツに、いかに得意の胸を合わせた柔道の投げの形に持っていくか。あるいは腰や足の投げ技でなくても、打撃の圧力に屈せず、ダブルレッグやシングルレッグで崩せるか。キルホルツの組み技をどうとらえていますか。 「“柔道選手”って感じです。柔道家の寝技、柔道家のテイクダウンという感じで、MMAファイターという感じはあんまりしないイメージの組みです」 ――引き手を持って、首を掴んで投げる。 「あまり組みの展開になってないので、ちょっと未知の部分はあるんですけど、首投げ、袈裟固めみたいなイメージなので、寝技のスキルは全然、私の方が上回っているんじゃないのかなと思います。やっぱり柔道で負けるとは思っていないので、やってくれたら真っ向勝負するかなと」 ──組みの強さはありますが、繋ぎの部分ではMMAレスリングに課題が残ると。 「レスリングとか、ケージ際での攻防とかもかなり練習してきたので、レスリング技術も前回の試合とはかなり変わってきていると思います」 ――ガードワーク、スクランブルを好むわけでもないキルホルツ選手に、組みでも新たな武器を持って臨むことになりそうですね。レスリングはどう強化されてきたのですか。 「鈴木隼人さんがコーチをしてくれています。ほぼ毎日、週4回見てくれて。この練習も前回の試合が終わって9月くらいから始めて、5月までずっと週4で、MMA全般。レスリングだけじゃなくて、レスリングの動きを組み合わせたMMAの動きとか、細かい際の部分とか、バックチョークとか、いろいろずっと教えていただいたので、毎日ボコボコにされながら、MMAレスリングの厳しさを知り、ちょっとずつ対応できるようになったんじゃないのかなと思います」 ――ケージレスリングとしてもやってきたということなんですね。 「そうですね。ケージレスリングもやってきましたし、グラップリングでは、渡部修斗選手主宰の練習会に行ったりして、隼人さんが来てからは今までの所属の練習よりスパーリングも増えています」 ――トップから抑え込んでパウンドが大きな武器になっていますが、鈴木隼人選手に渡部修斗選手というと、渡辺選手が得意の上からだけでなくバックの展開も……。 「かなり磨いてきたので。今回の相手は柔道選手なので、その展開になることも想定しています。スタンドバックで倒しきれなくてもバックに回れる。そこからの展開もかなり練習してきました。それに、あまり見せたことはありませんが、下になっても大丈夫です。寝技は大丈夫です。だから、早く寝技に持っていきたいですね。スタンドの時間を1秒でも短くしたい」 ――そのためにスタンドで向き合う術があり、投げ以外にも、テイクダウンの幅が増えていると。 「はい。前回の負けがあったので、イメージが悪いと思いますが、やっぱりここでビビって出られないと、自分がファイターじゃないと思うので、出るときは思いっきり前に出て行きます」 ――プロ12戦して初の黒星、怪我もあり、かなり落ち込んだのではと想像していました。 「いや、もう全然前を向いてました。MMAで負けたのが初めてだったので、周りの方もすごくいろいろ気遣ってくださったんですけど、全然そんなの想定内だし、柔道のときもずっと負けてきて、諦めずにやってきました。負けたおかげで、いろいろなことに挑戦してまた強くなれたと思うので」 ――2018年にアルテアガが、2R後半にギロチンでキルホルツを極めています。スタンドでも打ち負けず、ダブルレッグテイクダウンも決めてドロドロのなかで勝った。離されても組む、3R、フルに戦っても勝ちきれる自信は? 「もうトレーニングも練習もいっぱいやってきたので、ラウンドが後半になればなるほど有利だと思っています」 ――現王者がカモーシェで、1位がヴェラスケス。Bellator6勝2敗のキルホルツは2位につけています。前タイトルチャレンジャーに勝てば、渡辺選手にとってはビッグカムバックになります。 「前戦で負けてしまったのに、今回、自分よりランキングが上の選手とやらせていただけて、本当にありがたいことなので、しっかりとこのチャンスをものにしたいと思います」 ――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。 「いつも応援ありがとうございます。まずは試合にしっかり勝って、日本人でも世界で通用するぞ、というのを私がまずは先陣切って見せたいと思います。他にも全然、強い選手はいるんですけど、その一員として見せたいので、期待していてください。応援よろしくお願いします!」
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