2021年12月31日(金)さいたまスーパーアリーナにて「Yogibo presents RIZIN.33」が開催され、「RIZINライト級タイトルマッチ」として、王者のホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル/ボンサイ柔術)と、矢地祐介(フリー)が対戦した。
試合は2R 3分30秒、腕ひしぎ三角固めでサトシが矢地に一本勝ち。戦前「耐えて凌いで相手の心を折る」と語っていた矢地は、作戦通り、1Rのサトシの猛攻を凌いだが、反撃には至らず。「長く戦いたい」と語っていたサトシも極めを防がれるなか、心を切らさず、2Rに多彩な引き出しを見せて、最後はフィニッシュした。
王座戦のリング上で何が起きていたのか。試合詳報と多くの写真により、その動きを解析。両者のコメントとともに振り返る。
サトシと矢地は2020年8月9日の『RIZIN.22』以来の再戦。初戦はサトシがテイクダウンからマウントを奪い、1R、パウンドでTKO勝利を収めている。
その後サトシは、2021年3月に徳留一樹に一本勝ち。2021年6月の東京ドーム大会で、アゼルバイジャンのトフィック・ムサエフを1R1分12秒、三角絞めに極めて、初代RIZIN世界ライト級王者に。大晦日にジョニー・ケースを相手に、同王座の初防衛戦に臨む予定だっが、オミクロン株感染急拡大を受け、外国人の新規入国が困難となり、今回の矢地戦に臨むこととなった。
対する矢地は、サトシ戦後、2020年9月に大原樹理にも1R TKO負けで連敗を喫したが、KRAZY BEE所属からフリーとなり、ロータス世田谷の八隅孝平に師事し、当時、修斗世界王者だった川名TENCHO雄生、DEEPライト級王者の武田光司の両者に判定勝ちで2連勝をマークしている。今回のサトシ戦に向け、ロータスでのプロ練習で青木真也からもアドバイスを受けている。
サトシのセコンドにクレベル・コイケ。矢地のセコンドには八隅孝平代表らがつく。
1R、いきなり互いに跳びヒザ。サトシの蹴りを掴んだ矢地だが、足を抜くサトシは右を振ると、そこに前手の右フックを合わせに行く矢地。サトシは右のオーバーハンドをヒットさせて、そのままシングルレッグでテイクダウン!
倒される際で片足立ちでコーナーまで歩き上体をコーナー背にする矢地。サトシは、腰を掴んで引き出し一気にマウントを奪うとパウンドから矢地の立ち際にギロチン狙い。首を離したサトシに、背中をコーナーにつけて立とうとする矢地のバックを狙うサトシ。
奥の手首を背中越しに内側から掴んでリストコントロールしながらバックをうかがい、矢地の立ち上がりに背中に片足をかけてボディロックで横に崩して再びテイクダウン。
腕を両脇に挟み亀になる矢地にリアネイキドチョークの体勢に入るが、まだ両足はかかっていない。
腰をずらし、横回転して逃げて正対する矢地は向き直り際の三角絞めを警戒して腕は流されず、両足かつぎの形から突き放して離れようとするが、追うサトシは矢地の右足をつかんで尻餅を着かせるサトシ。
しかし、ここもコーナーまで片足立ちで行く矢地はボディロックするサトシに四つに持ち込んで立ち上がり。ヒザを突いてから体を入れ替える。そこにサトシはなおもダブルレッグへ。
尻餅まで着かせると、矢地はコーナー背に上体を立て、ヒザを浴びながらも立ち上がり、左で差してクラッチを組み右足で小外がけでテイクダウン!
すぐにクローズドガードに入れるサトシは左手で矢地の右手首を掴むと、右手で矢地の首をコントロールして三角絞め狙い。頭を下げさせようとする。その手を首を後方に振って切る矢地は左のパウンド1発。
右手首をコントロールし、クローズドのまま上体を立てて右手で首後ろを掴んで引き寄せたサトシは、瞬時に左足を首にかけに行くが、これを上体を反らして避ける矢地に、すぐに2度目の頭と右手の引き寄せから、左足を右脇下から首にかけて三角絞めに入るサトシ。
右に身体を捩じり、肩から頭を抜く矢地。サトシも引き寄せた右腕を外側に捩じることで、オモプラッタ気味に煽って矢地を前転させる。
三角を解いて際で上を狙うサトシ。ここですぐに立ち上がろうと左で脇を差して亀になる矢地をがぶるサトシは首をコントロールして仰向けにさせて寝かせると、矢地はハーフガードに。
下から足を二重がらみにし、抱きつく矢地。胸に付けられた頭を剥がすサトシは上からヒジ。左腕で矢地の頭を抱えて寝かせてから、矢地のヒザを押して右足を抜いたサトシは、マウント&パウンド!
残り15秒、矢地は両腕をサトシの股の間に入れて前方に送り出して股間を潜り、正対してきたサトシの鉄槌を凌ぎながらエビを打ってインバーテッドで足を脇下に入れて戻して、ガードにしたところでゴング。
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サトシはバックから腕十字、転がすと同時に三角に組んでいた
2R、グラウンドの下からの打撃を受けたか、鼻血が見えるサトシ。消耗はいかに。矢地は1Rの寝技を凌いだことで、組み技を恐れず、前に出て得意の打撃を体重を乗せて打ちたいところ。
矢地はサウスポー構えから左ミドルをヒットさせて左を振るが、そこに右ストレートを打ち下ろしたサトシ。右足を上げるフェイントから、前足に右の関節蹴りを放つ矢地。その片足立ちになったところにサトシは左を振ってのニータップから右足も大きく前に出してテイクダウンを奪う。
サトシはすぐに右脇を潜ろうとするが、そこは背中を着いてバックに回らせない矢地はハーフガードに。サトシは右肩で矢地のアゴにプレッシャーをかけながら枕に巻き、じっくり抑え込む形の寝技に移行。背中を着かされた矢地はサトシのパス際にいったん半身になり、背中を向けながら足を戻して正対。
そこにサトシは落ち着いて右でオーバーフックしながら左で首を抱えてパスガード。その瞬間に亀になる矢地をがぶる。そこからバックを狙うが、腕を伸ばして阻止する矢地はフックガードに戻す。座りながらハーフガードで再び足を二重にからませ、両脇を差して頭を胸につける矢地。
その顔を外してまたいでパウンドを打つサトシは左足でガードを越え、ハーフから鉄槌のサトシ! さらに右で脇を差し、左で枕に抱いて背中を着かせると、腰を切ってパスガード狙い。矢地は二重がらみで右足にからむと、サトシは矢地の左手首をつかんでキムラロック狙い。
両手をクラッチする矢地。そこで右ヒザを抜いてニアマウントになるサトシは、キムラを解き左手でリストコントロールしたままバックへ。
亀になって背中を譲りながら立とうとする矢地の顔をまたいで、掴んでいた左腕にうつ伏せで十字狙い。
手首を掴まれながらもヒジは曲げている矢地は、サトシをまたいで頭にヒザ蹴り1発。
ここで左足で顔を刈ったサトシは矢地を前転させて仰向けにしながら、頭の下に置いた右足と三角に組み、ひっくり返した時点でヒザ裏ですでに両足をロック。
通常のMMAの腕十字のように足を外して向き直りでのエスケープをさせない三角の形で、矢地の左腕を右腕で抱えたまま、いったん右手で自身の左足踵を手前に引き寄せてヒザ裏で両足をしっかり組んでから、矢地の左腕を抱える腕を右手に変えて、自身の左の二の腕を掴んで手前に引き寄せ、最後は左手で矢地のクラッチを引きはがし、腕を伸ばすと、矢地がタップした。
試合後、サトシはリング上でベルトを腰に「ほんとうにクリスマスのときはダイエットがヤダなあ(笑)。もちろん嬉しい。夢がベルトで、日本にRIZINのベルト帰ってきたから」と笑顔で語ると、続けて「榊原さんにお願いがあります。私、堀口(恭司)選手みたいに、Bellatorの選手に勝ちたい、ダブルチャンピオンになりたい。どうですか!? いつも応援ありがとう。私、ほんとうに嬉しいです」と海外の王座挑戦を語った。
試合後、両者はいかに試合を振り返ったか。一問一答の全文を紹介する。
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サトシ「世界のトップ選手と戦いたい」
──試合を終えた率直な感想を。
「本当に嬉しい。さっきも(リング上で)言ったけどクリスマスのときにダイエットするのが嫌だったけど(笑)。今日勝ったからとても良かったです」
──対戦した矢地祐介選手の印象は?
「もちろん(前回より)強くなった。投げのディフェンス、極めのディフェンスが強くなって良かった。RIZINのライト級のレベルが上がって良かった」
──初防衛に成功しました。
「嬉しい。初めて防衛できた。獲るだけじゃなくて、そのままでいる(保持する)ことが一番難しい。長く防衛できる人は少ないから。初防衛できて良かった」
──今後の展望を教えてください。
「もっと強くなりたい。もっといいを試合やりたい。来年、Bellatorの選手とも戦いたいから、Bellatorのベルトも欲しいから、そのために絶対強くなる。世界のトップ選手とやりたい。誰でもいいから」
──1Rにアタックし続けてフィニッシュできず弱気になることは無かったですか。
「いや。いろんなインタビューで話したけど、本当に2Rまでいきたい(と思ってた)。1Rで極めたりKOしてきていて、本当に2R最後か3Rまでいきたかった。もちろんチャンスできたら極めにいくけど、相手がいろいろディフェンスし、僕もチャンスがなかった。2R目までいったから色々体験出来て良かった」
──Bellatorではライト級のチャンピオンとも戦いたいですか。
「いま、私の階級は(パトリッキー・)ピットブルがチャンピオン。私と彼すごく仲が良い。たまにメッセージで話したり、ムサエフ倒したときもメッセージをくれた。(Belltorが)いいお金払ってから、彼には15分だけ! と言って戦わせるから大丈夫!(笑)」
──「パンチとキックでKOできる」と言っていましたが、戦ってみて打撃はいかがでしたか。
「打撃に自信はあるけど、まだ柔術の癖がある。ちょっとだけ打撃を使ってすぐグラウンドや極め(に行った)。もちろん今日たぶん、打撃を使ってからじゃないと投げができないから、もっと打撃をやると思った。打撃でいけると思ったことは、もちろん自信があります」
矢地「予想外の展開から形に入られてしまった」
──試合を終えた率直な感想を。
「シンプルに悔しいっすね。相手の印象は、前回は特に印象は無いくらいで負けてしまったのでなんとも言えないんですけど、やはり強いなと。仕掛けも多いし、圧力もあるし。ただそのなかでも、負けて言うのもですが、手応えを感じた部分もたくさんあったので、全然ネガティブじゃなくて次に向けてまたベルトに向けて一歩ずつ歩いていこうって思っています」
──最後は笑顔でどんな言葉をかわしていたのですか。
「いやまあ、心は全然笑ってなかったですけどね(苦笑)もう、2回も戦ってね、そういう、なんか顔見知りになっちゃったんで。ただ仲良しこよしやるつもりはなくて、僕は彼がベルトを持っているかぎり、また、ベルトを失ったとしても、彼にまたやりかえすチャンスをもらえるまではひとつずつ戦って勝って行こうと思っているので、全然まだまだこれからだと思っています」
──耐え凌ぐ展開のなか、最後は十字を極められました。予想と違って、サトシ選手が前回より進化した部分は?
「サトシ選手はそのまま強いってだけで、寝技で食らいついて凌いで、作戦通りではあったけど、仕掛けの多さと多彩さで、予想外の展開から一個、形に入られてしまったので、負けてしまったけど、自分の成長を感じました。負け惜しみですけど」
──背中を譲ってもディフェンスし立ってスタンドに戻して相手をジリ貧にさせる、という展開を最後は出来なかった?
「そうですね、はい」