名高に続く存在として期待される朝陽は倒すか、倒されるかが信条
2019年6月1日(土)神奈川・横浜文化体育館で開催されるムエタイのビッグマッチ『BOM SEASON II vol.2-The Battle Of Muaythai』。
今大会でサムサー・シリラックムエタイジム(タイ)とルンピニージャパン認定スーパーバンタム級王座決定戦を行うMA日本フライ級王者&ムエサイアム・イサーン・バンタム級王者の朝陽・PKセンチャイムエタイジム(エイワスポーツジム)。
日本人初のルンピニー&ラジャダムナン2大殿堂スタジアム同時制覇を成し遂げた名高・エイワスポーツジムに続く存在として、竜哉・EIWA SPORTSとともに期待されているのがこの朝陽だ。今回の試合はルンピニージャパン王座が懸かっており、獲得すればルンピニーのランキングに反映されることとなる。前回4月大会ではナーキーを2Rでマットに沈めた朝陽の連勝なるか。
5歳でムエタイを始め、初試合は小3。アマ戦績は103勝29敗6分
――名高・エイワスポーツジム選手のルンピニーとラジャダムナンスタジアム認定統一王者誕生を筆頭に若いファイターの活きの良さが目立つ中で、そのトップグループにおられる朝陽・PKセンチャイムエタイジム選手。今回、ホームリングであるBOM史上最大の横浜文化体育館興行で、名高選手、竜哉・エイワスポーツジムと同年代3選手全員がタイトルマッチという大勝負となりました。
「3人揃ってベルトを獲りたいです! 特に僕は、パンチで打ち合ってKOして一番面白い試合する自信があります!」
――若干17歳にしてプロ戦績15戦11勝4敗の好成績。しかも軽量級ながら11勝のうち9KOというノックアウト率は目を引きます。タイ人トレーナーが常駐して、名高選手のようにテクニカルなムエタイスタイルを基調とするのがエイワスポーツジムの特色と思っておりましたが、朝陽選手は例外?
「アマ時代にそんなに倒していたわけではないのですが、2017年3月5日のプロデビュー戦、星野梨衣智選手に1R46秒でKO勝ちして自信を持ちましたが、打ち方を変えたとかでもないんですよ。自分でも不思議です」
――それでも倒せてしまう?
「その代わり、自分も倒れます(笑)。僕の負けた4試合は全部タイでKO負けです。だから、15戦して13KO決着です」
――一番面白い試合をする自信がおありなはずです。
「倒されたいわけじゃないし、無理に倒しにいっているつもりもないのに、どうしてもそうなってしまって(笑)」
――そんな朝陽選手の来歴をお聞きします。生まれも育ちも横浜?
「はい、港北区です」
――家族構成は?
「2コ下の弟がいて二人兄弟です。弟も小6まで一緒にジムでムエタイを習っていたのですが、中学で部活を始めてしまってやめてしまいました」
――ムエタイを始めた年齢ときっかけは? また、それ以前にスポーツは?
「ムエタイ以外に特に何もしたことはありません。始めたのは、幼稚園年長の5歳でした。まだ、エイワスポーツジムができる前で、その前身になる中川夏生会長が主催するサークルから。仮面ライダーやなんとかレンジャーみたいなバトルアクションものが好きで、弟をサンドバッグ代わりにパンチ・キックするようなごっこをしていたら、お母さんが『そんなにやりたきゃ、ちゃんと格闘技をやりなさい!』って、友達が通っていたそのキック教室に通うようになりました。
――5歳とは、最近の早熟ジュニアファイター花盛りの中でも極端な若年です。
「そんなに子供会員はいませんでしたが、遊び感覚で楽しくやっていました」
――初試合は?
「エイワスポーツジムができて、そのサークルの会員がジムに移行したあたりの小3くらいですね」
――すると約5年の練習経験があっての初試合となるわけで、キャリア的に余裕があったのでは?
「それが僕は覚えが悪くって、常に練習でいっぱいいっぱい。だから、試合も緊張し過ぎてよく覚えていません。試合は一応判定勝ちでした」
「多分、138戦103勝29敗6分です」
――凄まじい数字です。勝率も高い。
「けど、挫折しそうな試練もありました」
――それは?
「タイの初試合からタイ戦績は6連敗でした。初めてのタイは、小6の夏休み。ジムの先輩たち、渡辺優太さん、竹内将生さん、名高と僕の4名でクイーンズカップって大きなイベントに揃って出場させていただいてボロボロに負けました。3Rが終わったインターバルで僕が泣き出したものだから、普段は厳しい中川会長が「どうする? タオル投げるか?」と優しく訊いてきたくらいで。それから中学に上がって、春休みや夏休みはタイ合宿で練習も試合もする感じで行っていたんですけど、ずっと勝てなくって。それが中2から中3に上がる春休みで初のラジャダムナンスタジアムのタイ7戦目、そこでKO勝ちできました。連敗が長かっただけに、もの凄く嬉しかったです!」
――アマ時代なれど相当の経験をされていますね。しかもアマチュアキックボクシングではなく、タイでムエタイの試合は、防具なしのヒジ打ちあり、首相撲無制限の5回戦なわけで、それはもう中学生時代の試合でもプロと言っていいでしょう。
「沖縄で中3の時、サムライ・カイト(儀部快斗)選手とやった試合もムエタイルールの5回戦でしたが、中学卒業までの試合は、アマとしてカウントしています」
大崎一貴選手とかやってみたいです
――そんな長いアマキャリアで最も思い出深い試合は?
「うーん、色々ありますが、小5の土曜日のある日、近くのキックボクシングサークルの選手たちが出稽古に来て、そこにまだエイワに来る前の名高がいたんですね。名高が学年1コ上だけど年も近いし、仲良く合同練習して『明日は頑張って一緒に勝とうねー』なんて言ってにこやかに分かれて。しかし、翌日の日曜日がうちのジムで開催されるアマ大会だったんですよ。そしたら、対戦相手が名高でした。しかも試合は2RでKO負け。その後、名高とは全部で5戦して5敗。KOは最初だけであとは判定でしたが。最近、エイワに移籍してきたリュウ君(竜哉・エイワスポーツジム)ともアマで5回やっていて2勝3敗です。
――この3名は、盟友であると同時に最大のライバルでもあるわけですね?
「今は、僕が飛び抜けて身体が大きくなっちゃいましたが、長く同階級でしたから特に。今も『練習では負けない』って切磋琢磨して競っていますが、普段はとっても仲がいいです」
――そんな仲良し3人組から、名高選手がとんでもない偉業を成し遂げました。
「まわりから『1歳しか違わない名高が凄いことになって焦りはない?』ってよく訊かれます。けど、それは全然ありません。日本では中川会長、タイではPK会長が僕の試合を組んでいただけるので、そこに従って結果を出せば、必ず名高に続くことができることは間違いないですから。そうは言っても、プロデビューで秒殺KOできた星野選手は、名高の日本プロデビュー戦の相手でもあって、その試合は接戦の判定だったので、その分、嬉しさが倍になったことはありましたけど(笑)。
――PK会長とは、“ムエタイの神”センチャイ・PKセンチャイジムを筆頭に名だたるムエタイトップファイターがひしめく超名門「PKセンチャイムエタイジム」の会長ですね?
「はい、今では、僕のタイの会長です」
――「品川朝陽」の本名で活躍されていた朝陽選手が、いつの間にか「朝陽・PKセンチャイムエタイジム」になっていたのは気にかかるところです。その経緯は?
「プロ3戦目(2017年6月18日)、ラチャシー(・ノーナクシントウキョウ)戦の時、その前々日にKNOCK OUTでワンチャローン(・PKセンチャイジム)と小笠原瑛作選手の試合があったので来日されていたPK会長が試合を見に来られていて、試合直前、僕のモンコン(ムエタイ選手が入場時に装着するヘッドリング)を外してくれたんです(注:ムエタイで試合前にモンコンを外すのは、その選手の師匠格が通例)。そしたら2RにKOで勝って、気に入っていただいて、『うちにおいで』と誘っていただき、中川会長からもそのようにしていただいてこうなりました」
――ムエタイ界ビッグネームのバックアップは強力そうです。
「ルンピニースタジアムのプロモーターですから、自然と僕のホームリングもルンピニーになりました」
――頑張ればチャンスも大きい?
「はい、最高です! 日本では、中川会長にプロでたった5戦目なのにMA日本フライ級タイトルマッチをやらせていただいて、酒井柚樹選手に勝ってプロ初チャンピオンになれました。MAのベルトは、(渡辺)優太さん、(竹内)将生さんが巻いていたので、白くて重くてカッコいいってずっと憧れていたんですよ。それに優太さんと将生さんと名高と僕の4人は、ずっとジムで一緒に練習してきて4兄弟みたいな感じで、けど、僕だけチャンピオンじゃなかったので、その意味でも嬉しかったです!」
――そんな朝陽選手をファイターとして自己紹介すると?
「バリバリのムエマッド(ムエタイ用語:パンチ中心のファイタータイプ)です! 最初に言った通り『倒すか? 倒されるか?』の試合しかできません!(笑)」
――そんな猛ファイターの朝陽選手が今回の試合、どんな試合でどう勝ちますか?
「相手のサムサーは、ルンピニーの賞金トーナメントで準優勝したことがあって、チェンマイのチャンピオンらしいです。前の試合(2019年4月14日)、ムエサイアムイーサンバンタム級タイトルマッチで戦ったナーキー(・ソーシリラックムエタイ)の先輩みたいです。だから、僕の情報も知っているでしょうけど、そんなの気にせずに倒すだけです!」
――ムエタイにはテクニシャンからファイターまで何でもありながら、高度な技術戦がどうしても目につくので、フィームー(万能型)の名高選手がタイ人らしく、朝陽選手のような極端なファイターは異例に感じられます。
「けど、ムエタイのオタク度では、僕が一番です! 動画チェックとか情報収集とか鬼です!」
――そんな朝陽選手の好きなムエタイ選手は?
「やっぱり、クラップダム(・ソーチョーピャッウータイ)やヨードレックペット(・オー・ピティサック)みたいなムエマッドですね」
――日本のリングには興味はありますか?
「もちろんです! 身体が大きくなってバンタム級からスーパーバンタム級がベストになってしまったので、大崎一貴選手とかやってみたいです! あくまでルンピニーとBOMが僕のホームですけど、PK会長と中川会長がGOなら、どこにでも暴れに行きます!」
――「バトル・オブ・ムエタイ」略してBOMが“爆弾”の意の如く、火が付けば大爆発しそうな勢いです。
「はい、『ドカ~ン!』といきますので、是非、ご期待ください!」
(取材・文:BOM広報部)
リングネーム:朝陽・PKセンチャイムエタイジム
フリガナ:アサヒ・ピーケイセンチャイムエタイジム
所属:PKセンチャイムエタイジム
生年月日:2001年10月14日(17歳)
出身地;神奈川県横浜市
身長:168cm
戦績:15戦11勝(9KO)4敗
ステータス:ムエサイアムイーサンバンタム級王者、MA日本フライ級王者