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2021年11月6日(日本時間7日)、米国ニューヨーク州ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンにて、『UFC268』が行われる。
メインイベントは、UFC世界ウェルター級選手権試合。王者カマル・ウスマン(ナイジェリア)と挑戦者コルビー・コヴィントン(米国)が、2019年12月以来の再戦に臨む。
前戦はウスマンが5R、右ストレートを効かせてのパウンドでTKO勝ち。MMA19勝1敗、うちUFCで14勝無敗と、圧倒的な強さで3度王座を防衛し、現在UFCパウンド・フォー・パウンドランキング1位でもある最強王者ウスマンを相手に、MMA16勝2敗(UFC11勝2敗)の挑戦者コヴィントンはいかに立ち向かうのか。
この一戦の見どころを、WOWOW「UFC-究極格闘技-」解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛氏に語ってもらった。
ウスマンのジャブだけが届く距離を潰す必要がある
――『UFC268』のメインイベントはウスマンvs.コヴィントンのウェルター級タイトルマッチ。この一戦を髙阪さんは、どう見ていますか。
「この試合は1年11カ月ぶりの再戦ですけど、単なる再戦ではないな、という気がするんですよ。というのも、このところウスマンのパンチの“殺傷能力”が飛躍的に伸びてるんですよね」
――2021年2月のギルバート・バーンズ戦、4月のホルヘ・マスヴィダル戦と、パンチで圧倒して完全KOしています。
「以前のウスマンは、強いんだけど、いまいち相手を倒し切れてないイメージがあったじゃないですか。もちろん、強すぎるがゆえに相手がなかなか前に出られなかったからでもあるんですけど、相手に攻撃をさせない難攻不落感があった」
――たしかに以前は、“地味強”のイメージがありました。
「それがここにきて、明らかに打撃の殺傷能力が増している。前回のマスヴィダル戦後のインタビューで、“ボクシング技術を磨いてきた”という発言があったと思います。以前から的確なジャブなど、パンチの技術にも定評があったウスマンが、しっかり倒すフィニッシュブローを身につけ、ハマってきた感じがあるんですよね。マスヴィダル戦の最後の右ストレートなんかでも、一切迷いがない打ち方でしたから」
#UFC261 Milestone:
— UFC News (@UFCNews) April 25, 2021
Kamaru Usman (@Usman84kg) is now on the 2nd-longest win streak in UFC history with his 14th consecutive win. Only Anderson Silva's streak of 16 consecutive wins is greater.
――踏み込んで、全体重を右の拳に乗せたようなストレートでした。
「それを踏まえて、あらためて前回のウスマンvs.コヴィントンの試合映像を見返してみたんですよ。そうしたら、だいぶ記憶と印象が違ったんです。記憶では、4ラウンドまでコヴィントンが健闘して接戦だったのが、5ラウンドにようやくウスマンがダウンを奪って勝ち切ったというイメージだったんですが、あらためて観ると4ラウンドまでも、じつはパンチを当てている数はウスマンの方が圧倒的に多いんですよ」
――とくに序盤はコヴィントンの手数が優勢に見えましたが、じつはウスマンのほうが当たっていた、と。
「それはコヴィントンの顔のダメージにも現れているんですよ。出血したり、腫れたりしていたので。でも、観ている人の多くは“なんでコヴィントン、こんな顔になってるの?”と思うような、そんな印象だったと思うんですよね」
――ボコボコにはされてないはずなのに、なぜか腫れているみたいな。
「またコヴィントンの打撃は強打で、ウスマンをグラつかせたシーンもあったので、よけい“コヴィントンがやや優勢”という印象が、とくに前半は強かったと思うんですよ。ところが実際は、ウスマンがしっかりとダメージを与え続けていた。だから5ラウンドの最後のシーンも強烈なフィニッシュブローが当たったというよりは、コヴィントンが4ラウンドまで削られてしまったところに、いい打撃が入ったというのが正直なところだと思うんですよね」
――実際は“ダメ押し”みたいなものだった、と。
「例えば、最後と同じパンチを2ラウンド目くらいでもらっても、コヴィントンは倒れてなかったと思うんですよね。あくまで、時間をかけてダメージが蓄積したからこそ倒れた。でも、いまのウスマンは、早いラウンドからでも倒し切れるくらいにパンチを磨きあげてると思うんです。だから、ウスマンはまだまだ余力、伸びしろを残したまま、チャンピオンになったんだなって」
――チャンピオンになってから、さらに化けたという。
「その化けるスピードもちょっと尋常じゃないな、と。こうなると身体能力がそもそも高くて、レスリングはトップクラスに強くて、スタミナは化け物だし、それで殺傷能力の高い打撃まで身につけたら、もう手が付けられない状態になってきてますよ」
──まさにパウンド・フォー・パウンドと呼ぶにふさわしいですね。
「だから、今のウスマンに勝つのは相当至難のワザだと思うんですよ。ただ、挑戦者のコヴィントンもまた、化け始めているんです。前回(2020年9月)、前王者のタイロン・ウッドリーとの試合で、ばんばんテイクダウンを奪って、完全にグラウンドで押さえつける試合をやって完勝した。
もちろんコヴィントンはもともとレスリングが強い選手(※NACCディビジョン1でオールアメリカン選出)ですけど、これまでのパンチ主体の戦いではなく、自分の戦いの幅を広げるためにも、あえてウッドリーのようなテイクダウンディフェンスが固い相手に対して、テイクダウンを駆使して勝ちにいったのかな、と思ったんですよ」
――ウッドリーもかつてのウスマンと同様に、なかなかテイクダウンされなくて守りが固い、難攻不落の王者と言われていました。ある意味で“仮想ウスマン”を意識しての試合だったかもしれないですね。
「そうじゃないかと思うんですよ。だから、コヴィントンもまた、前回のウスマン戦とは違った戦い方をしてくるんじゃないかな。ウスマンからテイクダウンを奪うっていうのは、ちょっと考えにくいですけど、組みを混ぜれば、テイクダウンが取れないにしても、ウスマンの独特の距離設定を崩すことにもなると思うんです。
ウスマンはリーチも長くて脚も長い、だから相手からすると“ここなら大丈夫だろう”と思うような遠い距離でも、速いジャブがしっかり届いてくる。前回、コヴィントンはそのジャブをだいぶもらってしまったので、あのウスマンのジャブだけが届く距離を潰すためにも、組んで一回距離をゼロにする。そうすると離れたあと、ウスマンはもう一度距離を作り直さなきゃいけなくなるので、戦略としてはありかなと思いますね」
――逆に言うと、前回とは違った展開を考えないと、打撃まで飛躍的に向上したウスマンに勝つのは難しいと。
「そうですね。もう強さがヤバい段階まできてますから。あのウスマンと組んで戦うという戦略を入れるのは、コヴィントンサイドとしてもギャンブルだとは思うんです。前回、KOされた感触というのは、間違いなくコヴィントンの中に残っているわけで。しかも、ウスマンは2年前より飛躍的に打撃の殺傷能力が上がっているとなれば、普通に考えて、戦略は変えざるをえない。だからコヴィントン陣営が、いったいどんな戦略を練ってくるのか、そこがポイントだと思います。いずれにしても、今回の再戦は、前回を上回るハイレベルな戦いになることは間違いないですね」(取材/文・堀江ガンツ)
WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール
『UFC‐究極格闘技‐ UFC268 in ニューヨーク ウェルター級ウスマン&女子ストロー級ナマユナス、因縁の防衛戦!』
11月7日(日)午前11時[WOWOWライブ]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
11月11日(木)夜10時[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
【メインカード】
▼UFC世界ウェルター級選手権試合 5分5R
カマル・ウスマン(ナイジェリア)19勝1敗(UFC14勝0敗・UFC14連勝中)
コルビー・コビントン(米国)16勝2敗(UFC11勝2敗)
▼UFC世界女子ストロー級選手権試合 5分5R
ローズ・ナマユナス(米国)10勝4敗(UFC8勝3敗)
ジャン・ウェイリー(中国)21勝2敗(UFC5勝1敗)
▼ライト級 5分3R
ジャスティン・ゲイジー(米国)22勝3敗(UFC5勝3敗)
マイケル・チャンドラー(米国)22勝6敗(UFC1勝1敗)
▼フェザー級 5分3R
シェーン・ブルゴス(米国)13勝3敗(UFC6勝3敗)
ビリー・クアランティーロ(米国)16勝3敗(UFC4勝1敗)
▼バンタム級 5分3R
フランク・エドガー(米国)24勝9敗(UFC18勝9敗)
マルロン・ヴェラ(エクアドル)17勝7敗(UFC11勝6敗
【出演】
解説:高阪 剛、堀江ガンツ
実況:高柳謙一
■生中継前後に出演陣のYouTube WOWOWオフィシャル配信!
『スタジオ裏トークUFC268』 WOWOW公式サイト