渡部が手にした北斗旗は、各階級優勝者の中でもっともポイント獲得数(一本=8ポイント、技あり=4ポイント、有効=2ポイント、効果=1ポイント)の多かった選手に与えられるもの。この旗を手にした者は、岩﨑弥太郎、長田賢一、加藤清尚、山田利一郎、市原海樹……ら往年の名王者たちの名が刻まれたペナントリボンにその氏名を連ねることになる
2019年5月12日(日)愛知県武道館にて全日本空道連盟主催『2019全日本空道体力別選手権大会』が開催された。
空道とは「道衣と顔面防具を着用して行う総合格闘技」である。道衣&フェイスガード着用によって、無着衣MMAで用いられる技術以外に、頭突き、帯を掴んでの相撲的な攻防、道衣を掴んでの柔道的な投げ、柔術的な襟を使っての絞め技が展開されることが特長。体力別大会では、体力指数と呼ばれる身長と体重を合わせた数値によって、男子5、女子2のカテゴリーに分かれて争う。
▼-260クラス決勝戦
〇渡部秀一(大道塾岸和田支部)
再延長一本勝ち ※腕ひしぎ三角固め
●加藤智亮(誠真会館東伏見道場)
2015年と2017年に-250クラスで全日本優勝を果たした加藤智亮が、大道塾以外の団体所属選手としては初の2階級制覇を目指し、階級アップ。決勝まで駒を進めた。
迎え撃つ渡部は、柔道やブラジリアン柔術のバックボーンを持っていないにもかかわらず、独自のスタイルの絞め・関節技で、過去、数々の番狂わせを演じてきた男。その一方で“寝技の展開は試合時間3分のなかで30秒×2回まで”という制限のなかで絞め・関節技が極められなかった場合には、高い確率で旗を得られないという安定性のなさも併せ持つ。2014年と2016年には-260クラスのファイナリストとなったが、加藤和徳(智亮の兄)に打撃でイニシアチブを握られたまま試合を終え、判定に屈していた。
この日の最終試合。闘いを終えて、精根尽き果てた両者に惜しみない拍手が送られた
そんな智亮と渡部の対戦、やはり智亮が確実に打撃を当て、渡部が寝技に引き込んで絞め技を極め掛けるという展開で、本戦、延長で決着がつかず、今大会唯一の再延長へ。計7分以上に及ぶ闘いの末、遂に渡部が引き込みからの関節技を成功させ、初優勝を果たした。
▼-230クラス決勝戦
〇目黒雄太(大道塾長岡支部)
延長 効果2 優勢勝ち ※目黒に2ポイント(投げからのキメ、ニーインベリーでのキメ)あり
●小芝裕也(大道塾関西宗支部)
目黒は伸びのある左右ミドルで相手をたじろがせ、ミドルをすかされれば右ストレート、ミドルをキャッチされれば蹴り足の脛をシールドにして一本足でのバランスキープで相手の体力を消費させるといった得意の型にはめ込み、戦略的な闘いで過去、無差別全日本ベスト8の実績を誇る小芝を寄せつけず。効果2つを奪い、-230クラス全日本V5を達成した。
過去、空道全日本選手権の連続優勝記録は小川英樹のV7だが、これは-230でV5を達成した後、-240でV2を達成したものなので、目黒が来年も-230クラスで優勝すれば、同一階級での連続優勝としては新記録となる。
▼-240クラス決勝戦
〇寺口法秀(大道塾横浜北支部)
延長旗判定5-0 ※寺口に1ポイント(マウントパンチ)あり。
●伊東 駿(大道塾仙台東支部)
寺口(青)、伊東ともに、170センチ70キロ前後のがっちりした体形ながら、後ろ回し蹴りを巧みに繰り出す
寺口が後ろ回し蹴りを繰り出せば、伊東も後ろ回し、互いに投げで上を取り合い、スイープで上下が入れ替わり……と、拮抗した展開が本戦~延長の6分間、続いたが、マウントパンチにより1ポイントを挙げていた寺口に5本の旗が挙がった。試合コートを下りると、寺口は中学入学~大学卒業まで在籍していた大阪南支部の西出太郎支部長を肩車。育ててくれた師への感謝を表現した。
▼-250クラス決勝戦
〇安富北斗(大道塾総本部)
延長旗判定4-1 ※安富にポイント1(投げ→キメ突き)、玉木にポイント1(左フック)あり
●玉木直哉(大道塾横浜北支部)
日本拳法出身者ならではのストレート系パンチのキレを見せる玉木に対し、安富は上体を正中線からスライドさせながらの右ローや左ハイキック、投げと、多彩な攻めで試合をリードし、投げてからのキメ突きで1ポイントを先取する。続けて右ローでもポイントを取り掛け(旗が1本挙がるが“効果=1ポイント”認定には至らず)、勝負が決まったかに思われた時間帯に、玉木が左フック一閃。効果を奪い返し、ポイントをイーブンに戻した。
安富(青)が制圧したポジションでのキメをみせれば、玉木はヘッドガードが回転する強打を炸裂させる
延長判定で全体の流れを支配した安富に凱歌があがったとはいえ、旗は割れていた。流れをひっくり返すだけの精度の高い一発を持っているが粗削りなスタイルと、打・投・極いずれもそつなくこなすが決定力に欠けるスタイル、対照的なタイプ、双方の良さと課題が浮き彫りになった試合であった。
なお、この他のクラスはリーグ戦で争われ、260+クラスでは、奈良朋弥(大道塾青森市支部)、女子-220クラスでは熊谷鞠月(大道塾早稲田準支部)、女子220+クラスではチツァレフ・タチアナ(大道塾早稲田準支部)が優勝を果たした。
260+クラス。奈良(青)は178センチ、91キロの体格ながら後ろ回し蹴りとみせかけての飛び回し蹴りから右ストレート。前田聡(大道塾大宮支部)から一本勝ちを収めた
女子―220クラス優勝の熊谷(左)と女子220+クラス優勝のタチアナ
◆RESULT
▼最優秀勝利者賞
渡部秀一(大道塾岸和田支部)
▼女子220以下
優 勝:熊谷鞠月(大道塾早稲田準支部)
▼女子220超
優 勝:チツァレフタチアナ(大道塾早稲田準支部)
▼男子230以下
優 勝:目黒雄太(大道塾長岡支部)
準優勝:小芝裕也(大道塾関西宗支部)
▼男子240以下
優 勝:寺口法秀(大道塾横浜北支部)
準優勝:伊東駿(大道塾仙台東支部)
▼男子250以下
優 勝:安富北斗(大道塾総本部)
準優勝:玉木直哉(大道塾横浜北支部)
▼男子260以下
優 勝:渡部秀一(大道塾岸和田支部)
準優勝:加藤智亮(誠真会館東伏見道場)
▼男子260超
優 勝:奈良朋弥(大道塾青森市支部)
▼成績優秀道場
第1位 大道塾横浜北支部
第2位 大道塾行徳支部 大道塾岸和田支部(同率)