2021年9月3日(金)シンガポール・インドアスタジアムで行われた「ONE:EMPOWER」で、ONE女子アトム級ワールドGP1回戦に出場し、デニス・ザンボアンガ(フィリピン)を相手に判定2-1で勝利したハム・ソヒ(韓国)が、試合後、リモートの囲み取材に応じた。
第2代RIZIN女子スーパーアトム級王者のハム・ソヒ(韓国)と、ONEアトム級ランキング1位、MMA8勝無敗のデニス・ザンボアンガ(フィリピン)の対戦。
試合は、サウスポー構えのハム・ソヒとオーソドックス構えのザンボアンガの喧嘩四つでの前手争いのなか、ハム・ソヒは外足を取って左ストレートを入れ、ザンボアンガはそこに右を返すという構図に。ザンボアンガは計3度のテイクダウン、2回は背中を着くことなく立ち上がるハム・ソヒに対し、最終Rに背中を着かせ、トップコントロール。細かく右を振るザンボアンガに対し、ハム・ソヒは相手のパワーハンドを押さえながら下から打撃も返している。
最後のビッグテイクダウンは、最終ラウンドでのもの。ハム・ソヒが左ストレートを繰り出したところに、オーソドックス構えのザンボアンガも右を振って頭から飛び込み、バッティングに。この衝突でザンボアンガの右額が割れ、出血。約4分30秒間のインターバルで止血し、再開直後にザンボアンガが右を振って金網まで詰めて尻下でクラッチ。リフトしてテイクダウンを決めている。
判定は2-1のスプリットでハム・ソヒが勝利。試合後に物議を醸した判定だが、ザンボアンガのテイクダウン&コントロール・パウンドと、立ち上がったハム・ソヒの打撃はいかに有効打があったか。
試合後の会見に先に登場した敗者のザンボアンガは、「今は言葉がありません。ユナニマスで私の勝ちだと信じています。コントロールして、打撃も入れました。すべてを出しました。私は何もダメージも負っていません。みんな誰が勝ったか分かっているはず。ONEにもう一度判定を見直して欲しい、すぐにでも再戦をしたい」と涙を流して、勝利を訴えるなか、ハム・ソヒは「なぜこの試合結果に疑問を持たれるのか理解できません。ONE Championshipのルールを理解していれば。ダメージを与えるという点では私が上回っていたことが明らか」と、勝利に自信を見せた。
ONE Championshipは北米のラウンドマストのジャッジと異なり、3Rを通したトータルジャッジ。試合後は常にジャッジについて話し合いが持たれており、評価に変化はあるものの、基本の最優先は、KOや一本により近づくニアフィニッシュだ。そしてダメージを与えることが優先的に評価される。
続いて打撃のコンビネーションとグラウンドコントロール。抑え込んだらいかにダメージを与えるか。その次に、テイクダウンとテイクダウンディフェンス。テイクダウンしたら効果的に殴ること、パスガードが可能ならパスしてダメージを与えたい。そして最後が積極性となる。試合後、勝者は何を語ったか。一問一答の全文は以下の通りだ。
【追記】ONEのチャトリ・シットヨートンCEO兼会長は5日、自身のSNSで「デニス・ザンボアンガとハム・ソヒの試合は、コンペティション・コミッティーによる正式な審査を受けています」と報告している。
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ハイドレーションテストをパスしたのは試合当日でした(ハム)
──2019年大晦日以来の試合で、新たに参戦したONEでデビュー戦を終えました。振り返ってみていかがでしたか。
「そうですね、実際のところ前回の試合から1年9カ月も経ちました。今日試合をしましたが、試合をしたことが信じられないです。試合をすることができてとても嬉しかったですが、現実だと感じなかったです。よし、勝った! みたいな気持ちはなかったです」
──デニス・ザンボアンガ選手の判定勝利を支持する声もありますが、ハム・ソヒ選手はどのくらいこの勝利に自信を得ていますか。
「私が負けたとは絶対に思いません。ONE Championshipのルールを理解していれば。私は他の団体のルールセットとは少し違うのを理解しています。例えばテイクダウン、クリンチで彼女は有効な攻撃が無かったです。優位ではなかったですよね。ダメージを与えるという点では私が上回っていたことが明らかだし、判定について疑問がある人には、もう一度試合を見直して欲しいです。私が負けていたとは思えません」
──ハム・ソヒ選手ご自身は、ザンボアンガ選手との再戦を考えていますか。それとも決着がついていると思いますか。
「なぜこの試合結果に疑問を持たれているのか理解できないです。ザンボアンガ選手の顔を見てみてください。あの顔が結果を物語っていますよね。ファンの方々がもう少し、ONE Championshipのルールを勉強すれば、皆さんも私と同じように感じるでしょう」
──ザンボアンガ選手は試合後のインタビューで、「ONEにもう一度判定を見直して欲しい、すぐにでも再戦をしたい」と話していました。それについてどう思いますか。
「私の個人的な意見ですが、ザンボアンガ選手は、ONE Championshipのルールをもう一度勉強すべきだと思います。彼女がONEのルールをしっかり理解していれば、この結果に同意するでしょう。何を言えばいいか分かりません……」
──ザンボアンガ選手と対戦して、彼女へのリスペクトの気持ちは変わらないですか。
「試合前も後も同じです。私はいつでも彼女をリスペクトしています。彼女はONEアトム級1位であり、素晴らしいアスリートです。彼女をリスペクトしない理由なんてありません」
──初のONE Championshipでの独特な計量システム(※水抜き禁止のハイドレーションチェック)もあり、計量では苦労したと聞きました。そして今回の試合ではコンビネーションを使わず、左手のみで戦っていましたが、怪我やフィジカルのコンディションに何かあったのでしょうか。
「今回の試合がONEデビュー戦でした。計量とハイドレーションチェックはいつでも簡単ではないです。慣れるまでに時間がかかるものだと思います。実際に、ハイドレーションテスト(水分の尿比重値)では前日にパスすることができずに、今朝(※試合当日の朝)にパスすることができました。なので、リカバリーに充分な時間がなかったと感じています。そして正直なところ、自分のコンディションも100パーセントではなかったです。(試合で)左手だけを使っていたことについては、戦略の一つでした。相手のザンボアンガ選手の動きや、戦い方を考えた上でのものでした。私はただ練習してきた通りに動きました」
──3Rでのバッティングのアクシデントからの再開で、ハム・ソヒ選手はビッグテイクダインを受けました。インターバルが影響していると考えますか。
「そうですね。相手はあのテイクダウンのために、インターバルを使って充分に休めたと思います。あと、皆さんにも考えて欲しいのですが、あのインターバルの時点でもしデニス自身が勝っていると思っていたなら、あのように私に走って向かってきてテイクダウンをしなくても良かったですよね。彼女は自分が劣勢でいることを分かっていたから、勝つために何かしなければいけない、と思っていたのでしょう。だから判定は合っていたと思います。これが私の意見です」
──試合前のインタビューでこの試合に勝つこと、そしてトーナメントを勝ち抜くことに自信があるとお話ししていました。ザンボアンガ戦を終えてその気持ちは変わらないですか。
「はい、常に変わらないです。いつでも、どの試合でも自分に自信があります」
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ファンが私の相手を決めるなんて、面白いことだと思います
──このGPの準決勝はファン投票でマッチアップが決まりますが、そのことについてどう思いますか。
「とても良いと思います。より楽しんで出来ますよね。ファンが私の相手を決めるなんて、面白いことだと思います」
──選べるなら対戦してみたい選手はいますか。
「誰と対戦したいかは考えたことがなかったですね。出来る限り多くの選手たちと戦いたいです。ONEのサークルでもっと経験を積みたいと思います」
──スタンプ選手がハム・ソヒ選手と準決勝で戦うことに興味を示していました。スタンプ選手とのマッチアップについてはどう思いますか。
「面白い試合になるんじゃないかなって思います。でも何で彼女は私を選ぼうとしたんでしょうかね?」
──トーナメントに勝ち残った選手の中で、ハム・ソヒ選手が一番経験のある選手です。そのことで勝利へのプレッシャーなどを感じますか。
「プレッシャーは何も感じていません。私は2年のブランクを経て戻ってきました。次の試合はもっと良い準備をして、もっと良い動きができるようにしっかり磨いて戻ってきます」
──ファイトパンツに写真をのせていましたが、愛犬が亡くなったと伺いました。一緒に戦っていた、そう感じますか。
「愛犬が亡くなった時と同じタイミングで試合のオファーをもらいました。ちょうど同じ時期でした。神様だけが知っていることでしょうが、これは何か理由があって起きたことだと思います。あの出来事から今日までの間ずっと、愛犬は私の隣にいて、私を守ってくれて、見守ってくれていると思っています。だから、試合に向けてしっかり準備してきましたし、モチベーションにもなっていました。この試合でしっかり結果を残す理由の一つでした」
──日本のファンにメッセージはありますか。
「(※日本語で)応援してくれて本当にありがとうございます。私が、いつ日本で試合をするか分からないけど、応援よろしくお願いします」
──元RIZIN王者のハム・ソヒ選手を応援している人もいると多いと思います。
「とても嬉しい、光栄なことです。ありがとうと感謝の気持ちを伝えたいです。日本では長年戦ってきたので、たくさんのファン、メディアの方が応援してくれているのだと思います」