2021年9月3日(金)シンガポール・インドアスタジアムで開催される「ONE:EMPOWER」に向け、8月31日、平田樹(日本)とアリース・アンダーソン(米国)によるオンライン共同記者会見が行われた。
8選手参加のONE女子アトム級ワールドGP1回戦で戦う平田とアンダーソンは、オンライン会見で隣合う部屋でモニター越しに対面。同時に記者の質問に答えていった。
プロ4戦無敗のままGPに参戦する22歳の平田は、「経験は足りないけど、その分怖いものが無い。このGPに賭けている思いは誰よりも強いし、楽しみな試合なので、そこだけは大事にしたい。周りが何と言おうが、絶対に(みんな)試合は観ると思うので、もし勝った時に強い言葉で強い心を発信したい」と、試合で魅せるとした。
一方のアンダーソンは、Invicta FCで2勝1敗でフルタイムファイターになったばかり。パンデミック時の米国で新型コロナウイルスの感染者の病棟で看護師として働いていた経験を持つ26歳の長身ファイターは、「コロナ病棟での経験は、精神的に私を非常にタフにしてくれました。12時間のシフトは本当に辛かったですが、困難に立ち向かってきました。病院での仕事を退職して、格闘家に専念する機会を得たことで、よりハングリーに、より集中して臨めるようになりました。どんなチャンスでも得られることは素晴らしい」と、米国を代表してGPに出場することに感謝の想いと、より強さを増した自信を語っている。
アグレッシブな打撃と柔道ベースの投げ&パウンド・極めで勝ち星を積み上げてきた平田。長い手足を活かして前蹴り、前手で距離を支配し、柔術ベースの組み技でコントロールするアンダーソン。
果たして1回戦を突破するのは、日本の平田か、米国のアンダーソンか。会見では、平田はシェイプされた身体に黒のドレスの正装で参加。コロナ禍のなか30時間をかけてシンガポール入りしたアンダーソンは、カラフルに髪を編み上げて、会見に出席した。両者との一問一答全文は以下の通りだ。
みんな強くても自分は下から這い上がるだけ(平田)
──平田選手はプロMMA4戦無敗、アリース選手もMMA5勝1敗で、Invicta FCでも2勝1敗と良い戦績を残してきました。まずは平田選手に聞きます。今回の試合は、平田選手のキャリアにとって最もタフな試合になると思いますか。
平田 そうですね。やっぱり経験のことを言われると、自分は全然経験が足りないですが、その分特に怖いものがないので、この試合でまた良い経験が積めるなと思います。
──アンダーソン選手、延期された約3カ月の間に誰とスパーリングを行ってきましたか。またシンガポールまでの移動はどうでしたか。
アンダーソン 私のヘッドコーチは柔道の黒帯でイツキのスタイルと一致しているので良かったです。私のリーチを有効活用して試合に臨むようにトレーニングしてきました。また、シンガポールまでの移動は非常に長かったですが、幸運なことに夜遅くに到着したのですぐにシンガポール時間に慣れました。
──リングでのニックネームを人造人間18号(Android 18)に変更した理由は?
平田 やっぱり似ていると言われることが多かったので。私は強い女の人というイメージがあって、今回から変えました。
──ONEがこのGPで、北米からアリース選手を招聘したことは自信を得るものでしたか。
アンダーソン 自信を得ましたね。私のスキルはこのトーナメントを戦う上で最高のレベルにあると理解しています。ONEはアメリカからの出場選手に私を選出してくれたので、世界中のトップコンテンダーの中からベストな選手の中のひとりとして見てくれていると思います。私はとにかく自分のスキルを発揮して、この女子の中で自分を証明するだけです。
この大会がONEと契約する決め手でした。この女子だけのGPに参戦できることが非常に光栄でしたね。フルタイムで格闘家になることが夢だったので、大きなチャンスだと感じました。格闘家に専念できれば、私は次のレベルに行けると思っています。アメリカを代表してONEに選出されたのは嬉しいですし、誇りに思っています。ONEが私を選出したのは正しかったと証明したいです。
──3カ月試合が延期されたことで、何かポジティブなことはありましたか。
平田 何回も延期になったので、その分いい練習の時間になりました。
アンダーソン 私もイツキと同じ意見です。前向きに捉えることしかありませんでした。 それは、ONEと契約してから当初の5月の試合まで準備期間は8週間しかなかったからです。フルタイムでの格闘家になったばかりだったので、延期は都合が良かったです。これまでは病院で看護師として働いてきたので。この3カ月間はトレーニングに集中することができて、私にとってこの期間は大いに役立ちました。
──今回のトーナメントで最難関だなと思う選手は誰ですか。
アンダーソン 私は初戦に集中しています。トーナメントは1試合に集中しないといけないですし、他の対戦相手のことを考えることはありません。今回のGPに選出された全選手が相応しい実力を備えています。試合では何でも起こりますし、私にとっては全選手が脅威に感じます。全選手がここまで辿り着いた訳ですし、GPに相応しくない選手はいません。レベルが高い女性同士のトーナメントなので何でも起こり得ると思います。
平田 私もアリース選手に同意です。自分は経験も少ないし、年下って言われることも多いので。その分、みんなが強くて自分は下から這い上がるだけだと思う。誰が強いとかではなくて、みんなが強いので。それだけのワールドGPだと思います。
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パンデミックのコロナ感染者病棟で12時間のシフトは本当に辛かったけど──(アンダーソン)
──アンダーソン選手が格闘技をしながら病院で勤務していたことについて、知らないファンの方もいると思うので、詳細をお聞かせください。
アンダーソン このパンデミックの影響で長い間、戦うことが出来なかったという選手も多いと思います。でも私は、パンデミックの期間にコロナ感染者の病棟で働いていていました。その経験は、精神的に私を非常にタフにしてくれました。12時間のシフトは本当に辛かったですが、困難に立ち向かってきました。精神面で強くなることが出来たと感じています。病院での仕事を退職して、格闘家に専念する機会を得たことで、よりハングリーに、より集中して臨めるようになりました。どんなチャンスでも得られることは素晴らしいです。
──アンダーソン選手にとって、アジアで戦うことは初めてになりますが、米国での試合よりも脅威になりますか。
アンダーソン 私にとって脅威になるとは思わないですが、全く違った試合の様相になると思っています。特に新型コロナウイルス感染拡大の影響で、非常に厳しい対策がとられているので。ですが、私にとっては同じケージの中で戦う格闘技の試合です。どこにケージがあろうと、何が起きようと関係なく、私は同じパフォーマンスを出すことが出来ます。
──平田選手は現在22歳。とても若くしてONEのトップファイターとなり、今回の歴史的な大会に参戦することはどんな意味がありますか。ご自身が活躍することで次世代の女性アスリートにどんな影響を与えられると思いますか。
平田 若いからというより、まだ3戦しかしていないのに出させてもらえるのは、きっとONEからも試されているんだと思います。でも、これだけ若いだけあって出来ることもたくさんあると思います。まだまだ、これからたくさん経験を積んでいけると思うと楽しみでしかないです。これから下の子達が来ると思うと、その子達がなりたい選手、憧れる選手になりたいとすごく思います。
──アンダーソン選手も26歳です。今大会への出場で、次世代の女性アスリートにどんな影響を与えられると思いますか。
アンダーソン 女子だけの大会で戦うことで、私は若い世代の女子たちに影響を与えたいです。男性陣が独占してきたスポーツの中で、女性が成功できることを証明したいなと思います。女子だけの大会に参戦できることは本当に光栄なことですね。もちろん、これまでも私は、Invicta FCで女子だけの大会を経験してきました。私たちのような若い女子でも、男性に注目が集まるこのスポーツで成功できると強く言いたいです。女子にとってもワクワクする場所です。
──アンダーソン選手にとっては、今回がONEデビュー戦になります。自身のことをアンダードッグだと感じますか。
アンダーソン 私はこのトーナメントで最大のアンダードックだと感じています。その理由は、ONEで対戦したことがないからです。でも逆に、誰も私が善戦することを期待していないので、プレッシャーを感じる必要がないです。女子アトム級世界GPに選出されるだけの実力があることを証明するだけです。私がアンダードックと呼ばれていることは理解していますが、特に気にならないですね。
──5月から延期になり、他の選手のように自分をプロモーションする時間を作れたと感じますか。
アンダーソン そうかもしれませんが、私はまだONEで対戦したことがないので自分を宣伝することは難しかったです。他の選手は試合の映像があるので割と簡単に宣伝できますよね。ですが、もうそれほど気にしていないです。私はとにかく試合で実力を出して、他の女子と同様に押し出すのに値した選手であることを証明するだけだと思います。
──平田選手は試合でアンダーソン選手がどんなアプローチで来ると思いますか。
平田 柔道の対策はしてくるんじゃないかなと思うんですけど、自分は柔道に拘らずなんでも対応できる練習はしてきたので大丈夫だと思います。
──平田選手、身体がフィットしているように見えますが、この大会に向けてどのような練習に取り組んできましたか。
平田 今まで取り入れていなかったウエイトトレーニングを取り入れました。海外の選手は皆んなフィジカルが強いので、ただ減量するのだけではなく、筋肉をつけて絞っていこうと思いました。一番大きく影響したのはウエイトトレーニングだと思います。
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周りが何と言おうが、絶対に試合は観ると思うから(平田)
──アジアの女子格闘技のレベルは高いと思いますが、アンダーソン選手が戦っていた米国でも、そのくらいのレベルの高さにあると思いますか。
平田 アメリカは女子MMAファイターの人口も多いし、練習相手もたくさんいると思います。経験で言ったら自分よりも何十倍もすごい。ただONEでの試合数は自分の方が多いし、このGPに賭けている思いは誰よりも強いので、そこでは負けたくないです。
──平田選手は、若くして成功を収めていますが、キャリアで何を成し遂げたら成功だと言えますか。
平田 まだ引退とかは考えたことがないですけど、必ずチャンピオンになるということは目標としてあります。チャンピオンになってからも続けていきたいので、まずはチャンピオンになりたいです。
──アンダーソン選手がアンダードッグだと言われていることについて、平田選手はどう感じますか。また、試合はどういう運びになると思いますか。
平田 Invicta FCの試合に出場して世界で戦ってきた選手なので、その点では自分が経験してきたことのないような試合になると思っています。デビュー戦だとしても、今まで試合数を多くこなしてきたので、自分よりもはるかに経験があるし、この試合は面白い試合になると思います。
──アンダーソン選手、対戦相手の平田選手は無敗でここまで辿り着きました。この戦績についてはどう感じていますか。
アンダーソン 試合だけに集中したいです。私にとってケージに入れば、戦績は関係ないです。イツキが言うように試合中は何でも起きますからね。彼女が若くして成功していることはリスペクトしています。ですが、私にとってはただの1試合に過ぎないです。紙の上で何を書かれようと関係ないです。最終的には金曜の夜に何が起きるのか分かりますからね。
──平田選手はノックアウトパワーもあり、相手の攻撃を止めるスキルもあります。アンダーソン選手はどんな対策を持ってこの試合に臨みますか。
アンダーソン 彼女は力強いパンチがありテイクダウンを奪うことができます。皆さんご存知の通り、私は自分の身長やリーチを生かして距離をうまく使います。長いリーチを生かして試合を進めていきたいです。
──平田選手はこれまでアンダードックと言われたこともありましたが、過小評価されていると思いますか。
平田 期待されていないかもしれないけど、自分の中では楽しみな試合なので、そこだけは大事にしたいです。周りが何と言おうが、絶対に試合は観ると思うので、もし勝った時に強い言葉で強い心を発信したいです。
──アンダーソン選手、平田樹選手は今回、日本を代表してトーナメントに参戦しますが、彼女についての評価を教えてください。
アンダーソン 彼女は才能豊かで積極的で打撃でも寝技でも強みを持っています。彼女は素晴らしい格闘家ですが、それは対戦相手にもよると思っています。なので、今回は彼女の真のレベルを(私が戦って)見せる良い機会だと思います。
──アンダーソン選手は、2017年に敗戦してから現在は2連勝中ですね。より良い格闘家になるために意識してきたことは何ですか。アンダーソン Invictaで唯一負けたのは、病院で勤務している時で、休みを取れなかった時期でした。フルタイムで働きながらトレーニングをして、対戦相手のことを過小評価してしまいました。私はアマを含めたキャリア通算11勝で敗戦はその試合でした。誰と対戦しようと相手を過小評価してはいけないことを私はその敗戦で学びました。試合の時は相手が誰であろうと、常に世界最高の選手と対戦していると考えるようにしています。
──平田選手が過去のインタビューでアンダーソン選手のパンチにはそこまでパワーがないと話していましたが、何か反論はありますか。
アンダーソン 長身の選手は力があまりないように思われているのは理解しています。シンガポールに来てから、平田選手をはっきりと見ることはまだ出来ていませんが、トーナメントに出場する他の選手を見ると私のサイズは皆さんが思っている以上に大きいです。金曜の夜に結果をお見せできると思います。
──平田選手、日本のファンへメッセージはありますか。
平田 「お待たせしました」という気持ちと、「必ず勝って日本に帰りたいです」と伝えたいです。
ONE: EMPOWER
2021年9月3日(金)シンガポール・インドアスタジアムABEMA「格闘チャンネル」、ONE Super Appにて午後8時30分からライブ配信予定
▼ONE女子世界ストロー級選手権試合 5分5Rション・ジンナン(中国)王者ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)挑戦者
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3Rデニス・ザンボアンガ(フィリピン)MMA8勝0敗ハム・ソヒ(韓国)MMA23勝8敗
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3Rアリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)MMA13勝4敗スタンプ・フェアテックス(タイ)MMA5勝1敗
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3Rメン・ボー(中国)MMA17勝5敗リトゥ・フォガット(インド)MMA5勝1敗
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3R平田 樹(日本)MMA4勝0敗アリース・アンダーソン(米国)MMA5勝1敗
▼女子アトム級ワールドGP(交替試合)5分3R山口芽生(日本)MMA21勝12敗1分ジュリー・メザバルバ(ブラジル)MMA8勝2敗1分
▼キックボクシング アトム級 アニッサ・メクセン(フランス)クリスティーナ・モラレス(スペイン)
▼ムエタイ ストロー級 ジャッキー・ブンタン(米国)ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)