2021年9月3日(金)にシンガポール・インドアスタジムで開催予定のONE Championship初のオール女子大会「ONE: EMPOWER」に向け21日、V.V Meiこと山口芽生が公開練習を行った。
女子アトム級ワールド・グランプリの交替試合(リザーブマッチ)として、ジュリー・メザバルバ(ブラジル)と対戦する山口は、ボクシングの名コーチ野木丈司氏とミット打ちやデフェンスを披露。遠間から中に入り、接近戦での様々なパンチを見せた。
公開練習後の囲み取材では、延期が続いた今回の女子大会に向け、「いつでも行けるように」トップコンディションを保ち続けてきたといい、新たな技術を採り入れることで「“混ぜる”不安はありましたが、この半年で自分が落ちついて先手を取れる場面が増えてきました」と自信をのぞかせた。
女子練習では、盟友の藤野恵実、黒部三奈、三浦彩佳、浅倉カンナらとも練習。9月19日のRIZINで練習仲間同士で戦う浜崎朱加vs.藤野恵実について問われ、「いろんな思いはありますね。ずっと一緒に練習してきましたし、試合もしました。ここまで来たら、みんなとことん出来るところまでやろうぜ、という気持ちはあります。ほんとうに自分が試合をして、別の団体ではありますけど、RIZINのその試合に繋げられたらな、と思います」と、同時代を生きてきた女子MMAファイターとして、先陣を切る覚悟を示した。
「どの試合よりも白熱した、印象に残る試合をする」──山口芽生の“アイアンハート”が、熱く燃えている。
空手、キックボクシング、ボクシング……混ざることで混乱する部分もあったけど、今ではそれが自然に出せている
──SNSを拝見するとお腹の“板チョコ”も随分くっきりと出て来ているようですね。
「もう半ダースはできてますね(笑)。もうちょっとくぼみをしっかりさせて美味しく仕上げたいと思います。このコロナ禍で、試合が5月末の予定だったのが、そこからいつ試合が再開されるか分からず、ずっと体重を落としたままキープして、試合前のような追い込みを何カ月も続けてきました。キツい時間を過ぎてずっと安定しているので、今回は仕上がるのが随分早くて、朝の時点で(契約)ウェイトを切るぐらいになっています。本来、常にこれくらいで仕上げるべきだったのかもしれないとも感じています。調子はいいです」
──ところで、コロナ関連では現在、入院治療中の田中リングアナウンサーについても投稿されていましたが、交流があったのでしょうか。
「自分も選手コールをやらせていただいたことがあるのですが、シュートボクシングに出たときに何回かコールをしていただきました。そんなにプロレスに詳しくはないのですが、田中ケロさんのことだけは知っていて、そんな方にまさか自分の名前をコールしてもらえるなんて、さらに決めの言葉にもすごく感動して、元気に戻って来ていただけたら、と思っています」
──なるほど。では9月3日のONEでの試合について。どのような練習をしてきましたか。
「準備期間が長かったので、自分が不足していると思うことを、とことん練習できました。たとえば、野木丈司先生にボクシングを教わって、以前よりテクニックの一つひとつをしっかり磨いて来れました。自分でも新たな発見があってすごく楽しいです」
──野木さんとのボクシング練習はいつから行っているのでしょうか。
「2月くらいからです。最初、3月くらいに試合があるかもしれないと言われていて、その後、5月と言われたので、最初の3月に間に合わせように始めていました。半年ちょっとが逆に自分にとってはいい時間で、楽しんで取り組むことが出来ました」
──5月で、と言われたときはどんな試合のオファーだったのでしょうか。
「なんかあの……謎でした(苦笑)。リザーブマッチと言われたときもあり、分からないときもあり……でもトーナメントなので、リザーバーでもいつ怪我人や、コロナの状況で欠場者が出るか分からないですし、今回もリザーバーとして現地に行って、もしかしたら本戦に欠員が出るかもしれないので、そう思って、いままでの経験を活かして、どんな相手でも試合の中で相手の感覚をとらえて戦うことは出来ると思うので、そこまでリザーバーということは考えずに、いつでも行けるようにやってきました」
──試合が決まらない間、焦りはありませんでしたか。
「焦ってはいないですね。少し前──ONEで定期的に試合が出来るようになる前までは、いろいろな女子格闘技の歴史(試合機会が少ないこと)もあったので、そういうことを経験してきたから、ONEで試合をさせていただいている時間は、ものすごく贅沢な時間で、別に期間が空いたからといって焦りは全然無いし、いろいろあってもポジティブに捉えることが出来ました」
──この期間で取り組んだことも?
「前回のデニス・ザンボアンガ選手との試合もそうですが、やっぱり総合格闘技(MMA)は、立っている状態から始まるので、そこから自分の得意なところに持って行くためにも、やっぱりちゃんと打撃が出来ないと試合を作っていけない。そこがどうしても自信を持って、その形に持っていくような試合がこれまであまりなくて、むしろラッキーでテイクダウン出来たな、一本が取れたな、という部分が多かった。その不安な要素を少しでも減らしたという意図からあらためて打撃に取り組み、自分の形に持っていくようにしました」
──遠間からインファイトに持ち込むミットは、その先のテイクダウンも見据えてのものなのですね。
「自分の体型の特徴によるところも大きいのですが、遠い間合いから落ち着いて打撃を出せる距離を知ることから始まり、近距離になってもちゃんとダメージを与えてからテイクダウンできるようにということでやってきました」
──対戦相手のメザバルバはハイライトビデオしか見つけることが出来ませんでしたが、比較的近い距離で振っている動画を見ました。それも踏まえての練習ということもあるでしょうか。
「そうですね。とにかく相手の打撃をちゃんと見てデフェンス出来れば、自分の攻撃も出せるので、そこをとにかく自信を持って出来るようになりたいと意識してやってきました」
──前戦のデニス・ザンボアンガ戦で距離が掴みづらかったことを改善しようという意図も?
「ザンボアンガ戦ではそれが如実に出ました。結構以前からそこは自分で不安であったので、その不安要素を一個一個無くす作業でした」
──遠くても近くてもより快適でいられるように。遠間といえば、Mei選手のバックボーンである伝統派空手は、東京五輪で荒賀選手が組手でメダルを獲得しましたが、刺激にもなりましたか。
「そうですね。やっぱり総合格闘技はいろんな距離になりますし、空手もボクシングもいろんな局面で出せることがあります。ボクシングをいっぱい練習したからボクシングだけではなく、途中で切り替えて空手の動きを混ぜたり、いい意味で試合で遊べたらなと思っています」
──特に立ち技において、新たな気づきがあったと。
「以前から自分のベースは伝統派空手と思っていて、それを総合に活かすためにどうしたらいいかをずっと考えてきました。ただキックボクシングやボクシングをあらたにやって、空手の色を無くしたくはなかった。どうやったら空手を活かしたまま、総合の試合で戦えるか。
なかなかピュアなキックボクシングや、ボクシングを習うことにためらいがあったんんですけど、これまでにキックボクシングを習いつつ空手も活かしてきた経験があったので、そこに今回、ボクシングも足すことが出来て、ボクシングの距離になればボクシングを活かすことが出来るし、空手の距離になったら自然と空手の技が出るように。すべての局面で、相手の動きを見て、落ち着いて打撃を出せるようになってきたので、スパーで出せていることが試合でも出せたら、すごく楽しいだろうなと考えていて、いまボクシングにハマっています」
──遠間の空手の足運びに加え、ボクシングの距離・ステップも加わった。それはMei選手にとってやりやすい形でしょうか。
「野木先生もそれを踏まえて形を作ってくれていますし、常に死角からパンチが出せるように教えてくださっています。前は直線の動きが多かったのですが、今まで以上に横の動き、角度をつけた動きも混ぜてきているので、それが有効だなと感じています。
これまでだったら、混ざることで混乱する部分もあったと思いますが、でも今はそれが自然に出せている状況です。そこがすごくスパーリングをしていても、自分が落ちついて先手を取れたり、コンビネーションをつけたり、そういう場面が増えてきました。空手もキックもボクシングも活かせているなという実感があります。それが試合でも出せれたらベストです」
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コロナ禍で今まで以上に結束が強まった。私の試合で、2人の試合に繋げられたら
──倒せる手応えも?
「結局、相手の手の動きが見えないと怖いんですよ。いまはそれが徹底的に見えるように。見てデフェンスして自分が優位な状況で打撃を出せるようにやってきているので、それがスパーリングのなかでは出来ている。試合でも出来れば、相手がどれだけフィジカルが強くて大きくても、自分の動きで対抗できるかなと思います」
──対戦相手の映像はどのくらい見ることが出来ましたか。
「ちょこっとしかなくて、想像でしかないですね。身体がバキバキでフィジカルが強そう。そこで勝負する場面もあるでしょうけど、あまり力対力の対決にせず、うまく打撃を当てられたらいいと思います」
──マスタージャパンでは、黒部三奈選手、藤野恵実選手、三浦彩佳選手、浅倉カンナ選手と練習しているようですね。試合が近い選手もいて、いい練習になっているでしょうか。
「ほんとうに。今までも女子で集まって練習はしていたんですけど、よりこのコロナ禍でみんなの結束が強まったというか、ベテランも多いですし、今まで以上に結束してお互いの試合のサポートをするし、みんな自分たちに出来ることをしようという感じで、殴り合っています(笑)」
──RIZINでは、練習仲間の藤野恵実選手と浜崎朱加選手の試合も発表されました。同時代を生きた選手の試合は刺激になることもありますか。
「そうですね……やっぱりいろんな思いはありますね。ずっと藤野さんとは一緒に練習してきましたし、浜崎さんとも。2人とも試合もしましたし、なんか……ここまで来たら、みんなとことん出来るところまでやろうぜ、という気持ちはあります。ほんとうに自分が試合をして、別の団体ではありますけど、RIZINのその試合に繋げられたらな、と思います」
──今回、ONEでは初の女子大会です。そこに出場する意気込みを教えてください。
「ちょっと前までは男子の試合の中に女子の試合があったときに、女子選手の良さが薄くなって見えていたと思いますが、いまは女子のパワーも技術も上がって、男子の中にあっても見劣りせず見れる試合が増えて、いまは自然と大会のなかに組まれてメインにもなっている。だから、以前の“女子だけの大会”とは違う状況で、今回の女子だけの大会が組まれたと思っています。女子が視聴率の部分でも取れたり、女子の試合が面白い、とちゃんと思って見てもらえる状況下でのこの大会に意義を感じています。そこで期待以上のアグレッシブな試合が──全試合いいカードが揃っているので──自然とそういう大会になるんじゃないかなと期待しています」
──その中で、Mei選手はどんな試合を見せたいと考えていますか。
「やっぱり一番いいのはサブミッションで極める、KOすること。世間的にはGP一色で、いい企画だと思いますけど、さほど気にはしていないです。GPだろうが、ワンマッチだろうが、“無茶苦茶面白いね”と言ってもらえるような試合が出来るように。それだけに向けて頑張っています。どの試合よりも白熱した、印象に残る試合が出来たら、自分のなかでは満足できると思います。期待していてください」
ONE: EMPOWER
2021年9月3日(金)シンガポール・インドアスタジアムABEMA「格闘チャンネル」、ONE Super Appにて午後8時からライブ配信予定
▼ONE女子世界ストロー級選手権試合 5分5Rション・ジンナン(中国)王者ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)挑戦者
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3Rデニス・ザンボアンガ(フィリピン)MMA8勝0敗ハム・ソヒ(韓国)MMA23勝8敗
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3Rメン・ボー(中国)MMA17勝5敗リトゥ・フォガット(インド)MMA5勝1敗
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3Rアリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)MMA13勝4敗スタンプ・フェアテックス(タイ)MMA5勝1敗
▼女子アトム級ワールドGP1回戦 5分3R平田 樹(日本)MMA4勝0敗アリース・アンダーソン(米国)MMA5勝1敗
▼女子アトム級ワールドGP(交替試合)5分3R山口芽生(日本)MMA21勝12敗1分ジュリー・メザバルバ(ブラジル)MMA8勝2敗1分
▼女子アトム級ワールドGP(交替試合)5分3Rグレース・クリーブランド(米国)MMA5勝0敗 vs.(8.27 ビー・ニューイェン vs.ジェネリン・オルシムの勝者)
▼キックボクシング アトム級 アニッサ・メクセン(フランス)クリスティーナ・モラレス(スペイン)
▼ムエタイ ストロー級 ジャッキー・ブンタン(米国)ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)